まだ見ぬ世界のポケモン達   作:雪見柚餅子

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魔の海域のゆうれいせんポケモン

 のりものポケモン「ラプラス」。温厚な性格と高い知性を持ち、その異名通り人を乗せて海を泳ぐことも有り、特にアローラ地方ではライドポケモンとして多くのトレーナーが水上の移動に利用している。また見た目も美しく、その特徴から世界中に愛好家が居り、非常に人気が高いポケモンの一つである。

 しかし、かつてこのラプラスが、絶滅の危機に瀕していたことを知っているだろうか。

 元々、ラプラスは地下水の豊富な洞窟や水温の低い海など限られた地域にか生息せず、滅多に見つけることの出来ないとても希少なポケモンだった。さらに美しい見た目を持つことから、その価値に目を付けたハンター達によって乱獲されたのだ。珍しいポケモンを見世物にするために、飼育して自らの力を示すために、皮を剥いで剥製にするために、殻を装飾品にするために、あるいはその肉を薬に加工するために……。多くのラプラスが様々な理由によって捕らえられ、命を狙われていった。ラプラスは仲間が襲われると積極的に守ろうとする性質を持っていたのだが、それがより多くのラプラスが命を落とす原因となってしまった。傷ついた仲間を守ろうとするラプラスの群れを付け狙うハンター達。その手によって彼らは、自然界でその数を減らしていった。一時は野生でその姿を見ることはまず不可能であると断言されたほどである。

 現在は世界各国で行われている保護活動の推進によって、徐々にその数を増やしており、絶滅の危機からはひとまず脱したと言えるだろう。ただし増えすぎたラプラスが、他のポケモンの生息地を奪うという悪影響を齎しつつあるというデータがあり、まだまだ課題は山積みである。

 

 このかつて人間に襲われたことで命を落としたラプラスが数多く存在するという歴史は、人間とポケモンとの関係を考えていく中で、決して忘れてはいけない出来事である。

 そしてその出来事を今もなお、身を以て語り継いでいる、証人とも言うべき存在が居た。

 

 

 

 広大な海の一角。そこは常に深い霧が立ち込め、10m先すらも見ることは難しい。

 この霧の中に一体何があるのか。かつてそんな好奇心を持った人間が何人も居た。彼らは船や飛行機、あるいはポケモンを使い、この霧の先へ進もうと試みた。しかしその殆どが無事で戻ってくることは無かった。ある者は小回りの利くボートで霧の中を突き進んだが、突然発生した幾つもの渦潮によって船が引きずり込まれた。ある者は頑丈な大船を用意し、多くの乗組員と共に入念な準備をして海域に侵入したが、時間が経つにつれ乗組員たちが恐ろしい幻覚によって発狂し、まともに航行することが出来なくなった。ある者はセスナ機を用意して上空から海域を調査しようと考えたが、霧の中に入った瞬間に計器が誤作動を引き起こし墜落することとなった。

 これらはあくまで戻って来た者達の情報であり、誰にも知られずこの海域に入り込み命を落とした者も居るだろう。

 一度入ったら決して無事で済むことは叶わない。そんな魔の海域として、その場所は恐れられ、人々は立ち入らなくなった。

 

 そんな海域の近くを通る時、地元の船乗り達は恐怖心と緊張を心に秘めながら進むのだが、時折彼らはある音を耳にする。

 それはまるで歌声のような、あるいは女性の悲鳴のような高い音。それを耳にした瞬間、誰もが心の中に強い悲しみを感じ、勝手に涙が溢れてくるとされている。船乗り達はその歌を、かつて嵐に遭って沈んだ船に乗っていた人間の亡霊ではないか、あるいは高波によって子供を流された母親の霊ではないか、はたまた海賊によって愛する者を奪われた女性の魂ではないか、などといった様々な憶測による噂で語っている。

 亡霊なんて馬鹿馬鹿しいと笑う者は居るだろう。しかし、その噂は決して的外れと言うものでは無かった。

 

オオオォォォ……

 

 霧の奥深くに、波間を揺れる一つの影があった。それはまるで幽鬼のように青褪めた血色の無い真っ白な体に、深い水底のような藍色の殻を背負ったポケモン。目に生気は無く、どこか遠くを見つめているように見える。口を開くと、吐かれる呼気は霧となり、体を覆ってその姿を隠す。そして響き渡るのは聞くだけで体が震えそうな、心の奥底を冷たくする悲し気な旋律。

 このポケモンこそ、かつて乱獲され命を落としていったラプラスの魂が、長い時を経て新たな姿(リージョンフォーム)へと変化した存在である。

 似たような例としては、ガラル地方の「サニーゴ」が挙げられるだろう。あちらは環境の急激な変化の影響によって大量絶滅した太古のサニーゴが、ゴーストポケモンとして蘇った種であり、触れた者の生気を吸い取って生きている。

 このR(リージョン)ラプラスもまた、同様にゴーストポケモンとして復活しているのだが、その身から発せられる哀しみは、ガラルのサニーゴの比では無い。

 目の前で失われていく仲間達の命。どこまでも追いかけてくる凶悪な人間の影。そして身を切り裂く痛み。命を落とし、水底に沈むまでの間に刻み込まれたその記憶は、ゴーストポケモンとして蘇ってなお消えることは無く、いやむしろより肥大化していく。

 そんな彼らの悲しみの音色に惹かれてか、この海域には「ゲンガー」や「ムウマ」、「フワンテ」といった他のゴーストポケモン達も多数生息している。そんな彼らが一か所に集っているために、この付近一帯には人間が感知できない特殊なエネルギーが渦巻いている。このエネルギーの影響によって方位磁石や機械類は次々に誤作動を引き起こし、更には幻覚を発生させることも有る。これがこの海域で事故が頻発している大きな要因である。

 

オオオォォォ……

 

 Rラプラスは人間を恨んでいないわけでは無い。いや、むしろ敵意は他のポケモンと比べて遥かに強く、近くに人間が通りがかれば、海流を歪めて海へ突き落そうとするだろう。

 しかしそれ以上に、彼らは悲しんでいるのだ。目の前で次々と仲間を失い、それを助けることも出来ず、自分もただ蹂躙され、全身に痛みを感じながら暗闇へと沈んでいく。その最期の記憶を抱いたまま、自分達が全てを奪われた理不尽に嘆き、哀しみ、海の上を漂いながら悲鳴のような声で歌う。

 いつの日か、彼らの悲しみを理解し受け入れ、その心を癒すことが出来る人間が現れるのだろうか。その時が来るまでRラプラスの歌声は、延々と響き続けることとなるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ラプラス
ぶんるいゆうれいせんポケモン
タイプみず・ゴースト
たかさ2.5m
おもさ198.0kg
とくせいちょすい・シェルアーマー(ほろびのボディ)
種族値
HP130
こうげき80
ぼうぎょ95
とくこう90
とくぼう80
すばやさ60
合計535

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1なきごえ
1みずでっぽう
5うたう
10しろいきり
15いのちのしずく
20ナイトヘッド
25あやしいひかり
30みずのはどう
35のろい
40のしかかり
45シャドーボール
50ゴーストダイブ
55ハイドロポンプ
60ほろびのうた
65ぜったいれいど

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