まだ見ぬ世界のポケモン達   作:雪見柚餅子

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猛毒隠し持つごくあくポケモン

 ポケモンバトル。そこには様々な意味がある。一般的に考えられるトレーナー同士のバトルであれば、自らの実力を示すため、あるいは自衛のためが挙げられるだろう。対して野生下であれば、縄張りを守るためであったり、あるいは食料を得るためであったりなど、生きるための手段として用いられることが多い。

 しかしポケモンの中には非常に高い闘争心を持ち、自らの力を誇示するべく、あるいは鍛錬の為に積極的に戦闘を仕掛けるものが存在する。この傾向はかくとうタイプのポケモンに多く、例としてはあくとうポケモン「ズルズキン」やけがにポケモン「ケケンカニ」が挙げられるだろう。

 そしてとある無人島にも、同様の性質を持ったポケモンが存在した。

 

 南海の海に浮かぶ小さな島。温かい日差しに安らぎを覚える波音。それだけならばリゾート地にも思えるような光景。そしてその砂浜にも多くのポケモンの姿が見られる。砂地に寝転がりながら日光浴をするうみイタチポケモン「ブイゼル」。波しぶきを浴びながら岩場でゆらゆらと揺れるふたてポケモン「カメテテ」。他のポケモンから少し離れた場所で木の実を齧るそうこうポケモン「コソクムシ」。様々なポケモンが思い思いに過ごす光景は、心を和ませる。

 聞こえるのは波の音とポケモン達が時折溢す小さな鳴き声だけ。こんな長閑な光景がずっと続く。誰もがそう思っていただろう。

 

ブク……ブク……

 

 しかし、何かが弾ける音が聞こえ始める。それは水面に突如として浮かび始めた泡。不規則に波の合間から浮かんでは割れる。それを繰り返しているが、徐々にその頻度は増え、泡も大きくなっていく。

 砂浜で和んでいたポケモン達もなんだなんだと視線を水面へと移し始める。

 

ブクブクッ……ゴボオォォッ!!

 

 突然、水柱が吹き上がった。そこから飛び出すのは一つの影。それはゆっくりと弧を描きながら、砂浜へと落下していく。それに気付いたポケモン達は我先にと逃げ出す。

 

ドォンッ!!

 

 砂煙を巻き上げ、地面に叩きつけられる影。その正体は、ブイゼルの進化系である「フローゼル」。落下の衝撃で目を回す彼の体には、何かを叩きつけられたかのような痣が残り、首元には締め付けられたと思われる痕が刻まれている。

 フローゼルは高い遊泳能力を持ち、水中戦においては他のポケモンを圧倒する実力を持っている。そんなフローゼルが何故、これほどまでに傷だらけとなっているのか。

 その犯人は水中からゆっくりとその姿を現す。

 

オォォ……

 

 威圧するような声を溢しながら砂浜へと上がってきたのは、「オトスパス」と呼ばれるポケモン。このポケモンは水棲でありながら、陸に上がっては強敵に戦いを挑むという、好戦的な性質を持っていることで知られている。

 しかし通常は青い体を持っているはずのオトスパスなのだが、今しがた上がってきたこの個体は色が異なる。全身は鮮やかな蛍光イエローに染まり、顔は目を縁取るように炎を模したかのような黒いラインが刻まれている。

 どこか凶悪な顔つきをしているオトスパス。そんな彼の前に立ちふさがる姿が有った。

 

オォパッ!!

 

 それは一般的に知られている青いオトスパス。それは黄色いオトスパスに対し、腕を振り上げて威嚇する。

 対する黄色いオトスパスも、通常のオトスパスに対し腕を揺らして挑発した。

 青と黄。互いに異なる色を持つオトスパスであるが、これは「色違い」というわけでは無い。

 

オォォッ!!

 

 先に仕掛けたのは黄色いオトスパス。右腕を大きく振るい、青いオトスパスへと絡みつこうとする。

 

パァァッ!!

 

 対する青いオトスパスはその腕を逆に掴むと、その勢いを活かして逆に黄色いオトスパスを地面へと押し倒す。

 

オォパッ!

 

 そして地面へと倒れ込んだ黄色いオトスパスへの背後へ回ると、その首へ腕を回し勢い良く締め付ける。全身が柔軟な筋肉で出来たオトスパスにとって、この締め付けこそ最大の武器。これによって相手の意識を奪うのが、オトスパスの得意戦術だ。

 黄色いオトスパスは寸前で自らの腕を首元へ潜り込ませることで、完全に首が締まるのを防いだが、それでも技を外すことは出来ない。さらに青いオトスパスは他の腕も黄色いオトスパスに絡みつかせることで、完全に動きを封じようとする。

 このまま勝負が決まるのかと思った瞬間、黄色いオトスパスは頭部の漏斗を背後へ向けるや否や、

 

オォンッ!!

パッ!?

 

 噴き出されるのは墨のような黒い霧状の物質。それを顔面にまともに受けた青いオトスパスは怯み、絡みつかせていた腕から力が抜ける。

 その隙に黄色いオトスパスは技から抜け出すと、反撃と言わんばかりに強烈なパンチを青いオトスパスへお見舞いした。

 

パァスッ!?

 

 思わず仰け反るものの、幸運にも大きなダメージにはなっていない。そのまま青いオトスパスは後ろに下がり距離を取りつつ、顔に付着した液体を拭う。しかしその顔色は優れない。

 その様子を見た黄色いオトスパスはニヤリと笑う。

 

 これこそが、この黄色いオトスパスが突然変異によって体色が変化した「色違い」では無く、独自の成長を遂げた「リージョンフォーム」であることの証である。

 元々、このオトスパスは別の海域に生息していたのだが、そこに生息していたのは「ドククラゲ」や「ハリーセン」といったどくタイプのポケモン達。触れることはおろか近づくことすら危険な相手。弱っている姿を見せれば、容赦なく淘汰される危険な地帯。

 世代交代を経ながらその海域に暮らし続けたオトスパスは、いつの間にか体内に毒を有するようになり、漏斗からは毒が混じった墨を、腕の先からは毒を含んだ粘液を分泌するように変化していった。そして性格も原種以上に攻撃的。さらに獲得した毒を利用した騙し討ちや不意打ちも躊躇なく行う非情さを持つようになった。

 こうして誕生したR(リージョン)オトスパス達は、有毒ポケモン達の巣窟である海域で日々戦っていたのだが、ある日突如として大きな嵐が発生した。原因は海の守り神とも呼ばれる伝説のポケモン「ルギア」。普段は深海や無人島の奥地で眠っているルギアだが、時折浮上しては嵐を巻き起こりながら飛行する姿が見られる。これは別の住処へ移動するためとも、海流を変化させ環境のバランスを取るためとも、様々な憶測が叫ばれているが未だに理由は不明である。

 そんなルギアが起こした嵐に、不運にも飲み込まれてしまったRオトスパスの群れ。彼らはそれまで暮らしていた海域から大きく離れた場所へと散り散りに飛ばされていった。

 その中の一グループが辿り着いた場所こそ、この穏やかな小島の近海だったというわけだ。

 

 この小島には既に原種のオトスパスが生息していたが、そんなことはRオトスパス達には関係無い。目についたものには戦闘を仕掛け、どんなものも利用して勝利する。そんな海のギャングとも呼べるRオトスパス。

 対する原種のオトスパスも目の前の相手から逃げることは無い。挑まれた以上、例え毒を浴びようとも戦い続ける覚悟は既に持っている。

 

オォォッ!!

パァァッ!!

 

 ぶつかり合う青と黄の体。互いに持てる全力を込め、彼らは戦い続ける。

 己の力を高めるため、己の力を証明するために戦う。それがこの小島の新たな日常風景となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


タタッコ(原種)

 

↓ちょうはつを覚えた状態で、レベルアップすることで進化

 

オトスパス
ぶんるいごくあくポケモン
タイプかくとう・どく
たかさ1.5m
おもさ37.8kg
とくせいじゅうなん(いかく)
種族値
HP80
こうげき123
ぼうぎょ95
とくこう70
とくぼう70
すばやさ42
合計480

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1たこがため
1じごくぐるま
1きしかいせい
1ばかぢから
1いわくだき
1にらみつける
1フェイント
1しめつける
15みきり
20かわらわり
25ビルドアップ
30ふいうち
35ちょうはつ
40はたきおとす
45どくづき
50ベノムトラップ
進化たこがため




モチーフはヒョウモンダコ。
分類は往年の女子ヒールプロレスユニット「極悪同盟」から。
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