まだ見ぬ世界のポケモン達   作:雪見柚餅子

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眠りに誘うゆめくいポケモン

 冬の雪山では寝てはならないというのは、よく聞く警告である。このような警告がされるのは、いくつか理由が存在する。

 まず第一に低体温症の恐れがあるということだろう。降りしきる雪、吹き抜ける風、その全てが山に入った者の体温を奪っていく。動かずいれば徐々に体温は下がっていき、いずれ低体温症になって行動することは不可能となる。そのまま眠ろうものなら、永遠の眠りに繋がりかねないのは自明の理だ。

 そしてもう一つの理由として、遭難者を狙うポケモンが存在するということだろう。分かりやすい例で言えば、ゆきぐにポケモン「ユキメノコ」が挙げられる。ユキメノコは気に入った人間やポケモンを見つけると氷漬けにして自分の巣に持ち帰り、そして魂を食らうとされる。事実、発見されたユキメノコの巣の中には氷漬けにされた遭難者が見つかることが多々有り、ユキメノコの生息する山では冬の入山を禁止している場所も多い。

 そしてユキメノコ以外にも、遭難者を狙うポケモンは存在していた。

 

 とある地方を東西に分断する山脈。そこは年中雪が降りしきり、厳しい寒気が一帯を覆っている。冬にもなると猛吹雪が巻き起こり、入った者へ襲い掛かる。

 この山に入って命を落とした者、消息不明となった者は数知れない。そのため付近に住む人々からは、「死の山」と呼ばれ恐れられている。

 しかしこの山で命を落とす者が多いのは、決して寒さによるものだけではない。この山の頂上付近には、入り込んだ者を襲う危険なポケモンが生息していたのだ。

 

 冬の雪山を歩く一頭のポケモン。凍り付いた枝のような角を持つきせつポケモン「メブキジカ」だ。

 本来、メブキジカは群れで暮らすポケモンだが、この個体は猛吹雪によって仲間と逸れてしまったらしい。仲間の匂いも吹雪によって搔き消され、視界もほとんど効かない。自らがどこに居るのかも分からず、ただ足を進める。

 冬という季節。食料は雪の下に埋もれた僅かな草のみ。鼻先でそれを探り当てては口にするが、その量は決して空腹を満たせるものでは無い。

 仲間と居れば、体を寄せ合うことで体温を保つことが出来るが、仲間と逸れたメブキジカは吹雪の冷たさをその一身で受け止めるしかない。体毛には霜が張り付き、茶色い体は白く染まりつつある。

 そんな中、メブキジカは仲間と餌を求めて歩き続ける。その身にさらなる危険が近づいていることも知らずに……。

 

ゥナ……

 

 風の音に交じって聞こえる何かの声。それに気づいたメブキジカは周囲を見渡すが、その視界は強風で巻き上がる雪で閉ざされ、近くに何があるのかも把握できない。しかし、何かの気配を感じる。

 

ゥナ……

 

 また声が聞こえる。その途端、メブキジカの膝が崩れた。

 

ジッ……?

 

 瞼が重くなり、目を開けることが苦しくなる。両足から力が抜け、立ち続けることが出来ない。頭がぼうっとし、思考が纏まらない。

 

ムゥナ……

 

 声がする度に強い眠気がメブキジカを襲う。必死に抗おうとするが、心地良くも思える感覚からは逃れることが出来ない。

 せめて自らを襲う何者かに反撃するべく頭の角を振るうが、その攻撃が当たることは無い。むしろ動けば動くほど体に疲労が溜まり、眠気が増していく。

 

ジィ……カ……

 

 そしてついにメブキジカの四肢から力が完全に抜け、雪の上に倒れこむ。霞掛かった頭は思考を放棄し、夢へと誘われていく。そして瞼が少しずつ閉じられていく中、メブキジカが最期に見たのは白く丸い姿のポケモンだった。

 

ムゥナ……

 

 雪の上で穏やかに寝息を立てるメブキジカへと近づくポケモン。白い体に灰色の水玉模様を持つこのポケモンこそ、この雪山において最も恐ろしいと言える存在だ。

 その正体は、この雪山にのみ生息する特有の姿(リージョンフォーム)を持ったゆめくいポケモン「ムンナ」。

 通常のムンナは眠っているポケモンの許へ現れては、夢を食べていくという生態を持っており、時に悪夢に苦しむ人間を助けることもある、穏やかなポケモンである。

 しかしこの雪山に生息するR(リージョン)ムンナは通常種とは比べ物にならないほどの危険性を持つ。このRムンナは特殊なエネルギー波を放つことで眠気を誘うのだが、Rムンナが生息するのは極寒の雪山。そこで眠ろうものなら、寒さに強い耐性を持つポケモンでもなければ命を落とすのは必至だ。しかしそうして命の危機に瀕する相手が見る最期の夢が持つ膨大な精神エネルギーを、Rムンナは好んで食べるという恐ろしい嗜好を持っている。

 この恐ろしいRムンナが今なお未知のポケモンであるのは、出会った人間が悉く命を落としているからだ。Rムンナは大雪の時にしか姿を現さず、出会えばその力によって眠らされ、命を落とす。人里にほど近い場所で暮らしていながらも未だに発見されていないのは、そういった理由というわけだ。

 

ムゥナ……

 

 メブキジカが最期に見た夢。それは温かい草原で仲間と共に草を()むという穏やかで幸せな夢だ。その夢を根こそぎ食べたRムンナは満足そうに鳴くと、メブキジカへ背を向けその場を離れていく。

 残されたメブキジカは夢を見ることもなく、その体は降り積もる雪によって埋まっていく。時間が経てば、その体は完全に冷たくなるだろう。

 

 冬の雪山で眠ってはならない。もし眠ってしまえば、恐ろしいポケモンの餌食になってしまうかもしれないのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ムンナ
ぶんるいゆめくいポケモン
タイプエスパー・こおり
たかさ0.6m
おもさ24.5kg
とくせいよちむ・ゆきがくれ(ドリームボディ)
種族値
HP76
こうげき25
ぼうぎょ45
とくこう67
とくぼう55
すばやさ24
合計292

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1こなゆき
1まるくなる
4さいみんじゅつ
8サイケこうせん
12こごえるかぜ
16つきのひかり
20こおりのつぶて
24オーロラビーム
28めいそう
32あくび
36サイコキネシス
40れいとうビーム
44ゆめくい
48みらいよち
52ワンダールーム

 

↓こおりのいしで進化

 

ムシャーナ
ぶんるいゆめうつつポケモン
タイプエスパー・こおり
たかさ1.1m
おもさ69.7kg
とくせいよちむ・ゆきがくれ(ドリームボディ)
種族値
HP116
こうげき45
ぼうぎょ75
とくこう117
とくぼう105
すばやさ29
合計487

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1サイコフィールド
1こごえるかぜ
1つきのひかり
1こおりのつぶて
1オーロラビーム
1めいそう
1あくび
1サイコキネシス
1れいとうビーム
1ゆめくい
1みらいよち
1ワンダールーム
1こなゆき
1まるくなる
1さいみんじゅつ
1サイケこうせん

 

 

 

とくせい名効果
ドリームボディ直接攻撃を受けたとき、30%の確率で相手をねむけ状態にする。ねむけ状態のポケモンは次のターン終了時にねむり状態になる。

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