まだ見ぬ世界のポケモン達   作:雪見柚餅子

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今回も御三家シリーズ。


風化した遺跡のもうかポケモン

 踊り(ダンス)。それは現代では娯楽とも芸術とも称される文化だ。

 音楽に合わせ、思うが儘に体を動かす。人は時にその技術を競い合い、時にコミュニケーションに用い、時に理由も無く自然に行う。ただ言葉では言い表すことの出来ない、そんな不思議な文化である。

 そして言葉を用いないダンスという文化を用いるのは、決して人間だけではない。多くのポケモンもまた、ダンスを様々な用途で用いる。特にポケモントレーナーが身近に感じるのは、バトルの時であろう。ポケモン達はバトルの際、ダンスを用いることによって敵を攻撃したり、自らの能力を上昇させたりすることが確認されている。例えば、「パッチール」や「ドレディア」はフラフラとした独特なステップを行うことで敵を撹乱する。「チルタリス」や「ジャラランガ」は鳴き声や鱗を用いて発生させた音に合わせて踊ることで興奮し、自らのパワーやスピードを上昇させる。

 さらに現代ではバトルだけでなく、ミュージカルやコンテスト等、パフォーマンスという形でダンスが用いられている。特に鍛え上げられたプロのトレーナーとポケモン、その両者が魅せる息の合った演技は、一つの芸術作品とも形容すべき代物であり、その姿に魅了され憧れる若きトレーナーも少なくない。

 

 このようにダンスは種族の垣根を超え、様々な用途で用いられてきた、世界共通の文化なのである。

 そのダンスの起源には、一種の儀式的な意味が存在しているのを知っているだろうか。自然の具現化とも言うべき神(伝説のポケモン)へ向けた、感謝や畏れ、様々な感情を伝える手段として各地で用いられてきた。一般的に知られているものとしては、ジョウト地方のエンジュシティに伝わる舞踊や、アローラ地方の島々に伝わるファイヤーダンスが特に有名だろう。

 そして中には、ひっそりと誰にも知られず長い年月の間、現代まで受け継がれてきたダンスも存在していた。

 

 朽ち果て、蔦が絡み合った古代の都市。遥か昔は多くの人間がこの地に住まい、炎の翼を持つ神を信仰していた。しかし時が経ち、戦争や自然災害に見舞われたこの地から、いつしか人間の姿は消え、残るのは朽ち果てた石造りの建物が並ぶのみ。それらは野生のポケモン達が風雨を凌ぐための巣として利用していた。

 そんな古代の街。その中心にあるのは、太い柱によって支えられた立派な神殿。その石造りの神殿は長い年月によって一部が崩れているものの、未だにその形を遺している。

 壁や柱に刻まれた未知の言語、床に描かれたポケモンを模したであろう紋章……。もし考古学者が見れば、その歴史的価値に驚嘆の声を上げて喜ぶだろう。

 

―ッ

 

 そんな神殿の跡地に響く風を切る音。見ると一際高く石が積み上げられた祭壇と思わしき場所に一つの人影が有った。

 

―ッ

 

 その人影が踊っていた。それはまるで炎を表しているかのように情熱的でありながらも、同時に神秘的なまでに静かな舞。僅かな息遣いと足音、そして大きく振るわれた手足が風を切る音。それらが一つの音楽としてダンスを彩る。

 思わず見たものを見惚れさせてしまうほど美しく、激しく、神秘的なダンス。

 しかしおかしい点がある。ここに人間は数百年もの間住んでいない。では今まさに、この神殿で踊っている人影は何なのだろうか。

 

―ッ!

 

 罅割れた天井から差し込む日差しが、人影を照らす。そこに居たのは、赤紫色の羽毛に全身を包み、燃え滾る炎のような鶏冠を揺らすポケモン。かつてこの地に住んでいた人間と共存していた、特殊な姿(リージョンフォーム)を持ったポケモンの生き残りの姿だった。

 このポケモンの名は、もうかポケモン「バシャーモ」。そう、ホウエン地方で見られるほのおタイプのポケモンである。

 通常のバシャーモは、強靭な長い足を活かした蹴りを得意とする、雄々しい格闘型のポケモンである。しかし古くからこの地に住まい、舞の鍛錬を続けてきたR(リージョン)バシャーモは、原種よりも細身の体を持ち、頭部からは長い飾り羽を靡かせる、美しく優雅な印象を持たせる姿へと変化していた。

 Rバシャーモは戦いを好まず、人間と共に暮らしていたころから伝わる儀礼の舞を踊り続ける。そこにかつてあった神への祈りの意味が残っているのかは定かではない。長い年月によって彼らの生態に組み込まれてしまっただけなのかもしれない。

 だが遥かな時を掛けて研鑽を続けた舞は、Rバシャーモの眠れる力を目覚めさせる鍵となった。

 

―ッ!

 

 かつて崇められた炎の神を讃える舞を無心で情熱的に踊り続けるRバシャーモ。それはRバシャーモ自身の心と体を熱く滾らせる。四肢からは夕焼け色の炎が噴き出し、靡く飾り羽は鋭く風を切り裂く。足を踏み鳴らす音は遺跡全体を揺らしているかのよう。その姿はまさに生ける炎と呼ぶに相応しい姿であった。

 遥か昔から人知れず伝え続けられた舞。それは今や、ただ古き神を崇めるだけの儀礼的なものでは無く、Rバシャーモ自身の力を増幅させる、新たな技と言えるまでのものへと昇華していた。

 

―シッ!

 

 古くから伝わる舞踊。それをRバシャーモはただの動きとして身に着けたのではなく、己の力を高める手段とした。それはかつて多くのポケモン達が生きていく中で、外敵を打ち倒すため、あるいは仲間とのコミュニケーションのために編み出した動作が、いつしか技としての舞に変化していったのと同じである。

 始まりは人間によって作られた儀礼的な舞。それがいつしかポケモンに伝わり、長い年月を経て一つの技として完成された。それは一種の奇跡と言っても良いのかもしれない。

 

―シャッモ!

 

 ポケモン達によって受け継がれた古代文明の足跡。それを人間が知ることになるのは、今はまだ遥か未来の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


アチャモ(原種)

 

↓Lv16で進化

 

ワカシャモ(原種)

 

↓Lv36で進化

 

バシャーモ
ぶんるいもうかポケモン
タイプほのお・エスパー
たかさ1.9m
おもさ51.8kg
とくせいもうか(テクニシャン)
種族値
HP80
こうげき115
ぼうぎょ65
とくこう100
とくぼう65
すばやさ105
合計530

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1しょうりのまい
1ひっかく
1にどげり
1なきごえ
1でんこうせっか
9ニトロチャージ
12みきり
15すなかけ
20つばめがえし
25きりさく
30とびはねる
35きあいだめ
42つるぎのまい
49しねんのずつき
56フレアドライブ
63ブレイブバード
進化じょうねつのまい

 

 

 

わざ名タイプ分類威力命中率PP範囲優先度直接攻撃効果
じょうねつのまいエスパー物理60100101体選択0100%の確率で自分のこうげきを1段階上げ、30%の確率で相手をやけど状態にする。

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