とある大陸の中心部に広がる、植物も満足に生えない不毛の荒野。
強い日差しと巻き起こる砂によって、幾度となく人間の進出を拒み続けた未開の地の一つだ。
他の乾燥地帯がそうであるように、この荒野に住まうポケモンは「イシツブテ」や「サボネア」、「ビブラーバ」、「ワルビル」など乾燥に強いポケモンがほとんどだ。だがその中に混じって、とある見慣れないポケモンの姿が有った。
―……―
砂を巻き上げた強風が吹きすさぶ中、風に逆らいながら歩みを進める一体のポケモン。肩から背中にかけて広がる灰色の膜をマントのようにたなびかせ、頭からは3枚の鰭が帽子のように広がっている。その出で立ちはまるで荒野を進む旅人のようである。
そんなポケモンを狙う幾つかの影が有った。
―グル……―
小さな唸り声を上げながら物陰に身を潜めるのは「グラエナ」の群れだ。かみつきポケモンの異名の通り、鋭い牙による噛みつきは非常に脅威であり、さらに高い統率力を持つが故の優れたチームワークによる狩りは、多くのトレーナーやポケモンから恐れられている。
そんなグラエナ達は、無防備に荒野を進むそのポケモンを獲物として見做したようだ。一歩、また一歩と音もなく近づいていく。そんなグラエナの群れに、荒野を進むポケモンは気づいた様子は無い。
これは絶好の機会。巣で待つ仲間のためにも、ここで仕留めたい。そんなグラエナ達は、小さく目配せをした後、一斉に駆けだした。
―グルアァッ!―
まずは獲物の動きを止めるべく、先行した数体が腕、足、胴体を狙い仕掛ける。
素早く、全方位から仕掛けられる攻撃。それを躱すことなど不可能……そう思われた。
―……ビッ!―
それは小さくも鋭い音。その音がグラエナ達の耳に入ったと思った瞬間、今まさに牙を突き立てるべく我先にと踊りかかった数体のグラエナがその場に倒れこむ。
一瞬の内に倒れた仲間の姿に思わず動きを止めるグラエナの群れ。その前に立っていたのは、両手の人差し指を銃口のように突き出すポケモンの姿だった。
ガラル地方のトレーナーであれば、人差し指を突き出すその姿に見覚えがあるだろう。そう、ガラル地方に生息するみずタイプのポケモン「インテレオン」。それがこの乾燥地帯に適応した姿こそ、このポケモンである。
世にも珍しい乾燥地帯に生息するみずタイプのポケモン。何故、この
Rインテレオンの粘液は原種よりも粘度が高く、高い保湿性を誇る。これが全身をコーティングしているため、Rインテレオンは強い日差しを受けても、水分を失うことなく活動できるのだ。
そしてこの粘液はただ体を守るだけのものでは無い。それは倒れたグラエナ達が証明していた。
―グ、グル……―
攻撃を受けながらもなんとか立ち上がるグラエナ。しかしその顔色は蒼褪め、足は細かく震えている。これはRインテレオンの指先から放たれた粘液の弾丸に含まれる毒によるものだ。Rインテレオンの粘液には毒性があり、それを受けると体が麻痺して動けなくなる。
思った以上に厄介な獲物であることに気づきつつも、数で圧倒すれば仕留められるはずだと、他より一回り大きい体を持つボスのグラエナは考えたようだ。
―グルゥアウッ!!―
他のグラエナに唸り声で指示を出しつつ、自らも飛び掛かる。もしこれが他のポケモンであれば、あるいは優れたトレーナーであったとしても、統率の取れたグラエナの群れの襲撃を無傷で往なすのは困難だろう。ただ、このRインテレオンでは話は変わる。
―テオッ!―
僅かに声を上げ、Rインテレオンは両手の人差し指をグラエナへ向けると、そこから粘液弾が放たれる。
それを受け倒れるグラエナ。その仲間を飛び越え次へ次へとグラエナ達は襲い掛かる。それは濁流を思わせる波状攻撃。
―グッ!?―
―グルッ!?―
―ガァッ!?―
しかしそのグラエナの群れをRインテレオンは次から次へと撃ち抜いていく。
原種は遠距離から確実に敵を仕留める一発必中のスナイパーのようなポケモンであるのに対し、Rインテレオンは無数の弾丸を素早く放つ、言うなればガンマンポケモン。その早撃ちは、グラエナの群れを決して近づけることは無い。
―グッ……グルゥ!―
仲間が次々と倒れ行く中、唯一ボスだけが歩みを進める。他のグラエナよりレベルが高いのか、毒の回りはそこまで早くは無い。しかし、何度も毒の弾丸を撃ち込まれ続けたダメージは蓄積している。
一歩、また一歩と足を進めるが、その足取りは次第にゆっくりとなり、そしてついに足を止めた。
―……グルゥ―
弾丸を一身に浴び、毒を浴び、それでも尚、ボスのグラエナは倒れることなくじっとRインテレオンを睨む。だがこれ以上戦っても、仲間が傷つくだけ。Rインテレオン一体を仕留めるには、あまりにも犠牲が大きい。そう判断したボスは、Rインテレオンを仕留めることを諦めたようだ。
―グル……―
ボスに合わせ、部下も動きを止める。最早戦意は無い。
それに気づいたRインテレオンも、ボスのグラエナを一瞥すると、背を向けて再び歩き出す。
―グルゥ!―
その後ろ姿を見届けたボスの一声に応じ、グラエナ達は毒に倒れた仲間達を介抱すべく、巣へと運び始める。
獲物は仕留められなかったが、それでも仲間を失わずに済んだのは幸運だ。ボスは毒に痛む体を仲間に支えられながら、Rインテレオンとは真逆の方向へと歩き出した。
一方、グラエナの襲撃を追い払ったRインテレオンも目的地へと近づきつつあった。
―テオ……―
既にその場所を視界に捉え、思わず声が零れる。
長き旅を経てRインテレオンが目指した場所。それはRインテレオンにとって心焦がれる場所であった。
―メソッ!―
―ジメッ!―
―テオッ!―
その場所とは、この乾燥地帯に数える程度しか存在しない、地下水が噴き出すオアシスであり、Rインテレオンの故郷だった。
Rインテレオンがオアシスへ近づいたのを合図に、泉の中から「メッソン」と「ジメレオン」達が一斉に姿を現す。そして泉の畔で休んでいた他のRインテレオンも、挨拶するように手を挙げる。
まだ乾燥に弱いメッソン達は、点在するオアシスを住処とし、いずれ来る進化を待ち続ける。そしてRインテレオンへと進化すると、彼らはオアシスの周りという狭い世界を抜け出し、広大な世界へと旅に出るのだ。
そして旅に出たRインテレオンは、きっかり一年後、故郷へと戻ってくる。それが知らず知らずのうちに構築された彼らのライフサイクルである。
―テオッ!―
―テレオッ!―
そして故郷へと戻った仲間達同士、旅の思い出を語り始める。楽しい思い出、辛い思い出。それらを共有する一年に一度の集い。それがRインテレオンの掛け替えの無い時間だ。
そんな先達の話を聞きながら、メッソン達は思いを馳せる。オアシスの先に広がる世界を。自分が進化した後、どんな旅をするのかを。
そんなメッソンの一体が、いつの日か人間と出会い、より広い世界へと旅立つのはまだ先の話である。
メッソン(原種)
↓Lv16で進化
ジメレオン(原種)
↓Lv35で進化
| インテレオン | |
|---|---|
| ぶんるい | ガンマンポケモン |
| タイプ | みず・どく |
| たかさ | 1.7m |
| おもさ | 44.7kg |
| とくせい | げきりゅう(クイックドロウ) |
| 種族値 | |
| HP | 80 |
| こうげき | 75 |
| ぼうぎょ | 70 |
| とくこう | 125 |
| とくぼう | 70 |
| すばやさ | 110 |
| 合計 | 530 |
| おぼえるわざ | |
|---|---|
| レベル | わざ名 |
| 1 | はたく |
| 1 | しめつける |
| 1 | なきごえ |
| 1 | みずでっぽう |
| 1 | アシッドボム |
| 12 | みずのはどう |
| 19 | なみだめ |
| 24 | ふいうち |
| 30 | とんぼがえり |
| 38 | ヘドロウェーブ |
| 46 | どくびし |
| 54 | あまごい |
| 62 | ハイドロポンプ |
| 進化 | みだれうち |
| わざ名 | タイプ | 分類 | 威力 | 命中率 | PP | 範囲 | 優先度 | 直接攻撃 | 効果 |
| みだれうち | どく | 特殊 | 30 | 90 | 10 | 1体選択 | 0 | × | 3回連続で攻撃する。そのターンまだ行動していないポケモンに対して使うと、威力が1.5倍になる。 |
XYを懐かしんで、群れバトル風味のお話。
個人的には、序盤に登場してやたらすなかけしてくるズルッグが地味に苦手でした。