まだ見ぬ世界のポケモン達   作:雪見柚餅子

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密林に佇むフルーツポケモン

 フルーツポケモン「トロピウス」。長い首に太い四肢、葉っぱのような二対の翼を持つポケモンだ。主にアローラ地方やホウエン地方と言った、暖かな気候の地域に生息し、穏やかな気性も相まって現地では非常に身近なポケモンとなっている。

 しかし、このトロピウスが、元々、希少なポケモンであったことを知る者は少ない。

 

 元々、トロピウスの先祖は熱帯の一部地域にのみ生息していたポケモンだった。現在のトロピウスと異なり、翼は持っていないが、現生種よりも大きな体を持つ彼らには天敵が居らず、島に自生する木の実を食べ暮らしていた。

 しかし、時が経つにつれ、その安寧は破られる。大雨や虫ポケモンの大量発生による食料の不足。外部から移住してきた、凶暴なポケモンの襲来。火山の噴火による火災。様々な要因により、原種トロピウスの生息地は徐々に少なくなっていった。一時期は、その数を大きく減らし、絶滅の危機にも瀕するほどだ。

 だがそんな中、背鰭を発達させた個体が現れた。元々は食料不足から、より多くのエネルギーを得るために光合成しやすい姿へと適応したものだったが、世代を経るにつれ背鰭はより大きく変化し、いつしか翼へと変わっていった。そして飛行能力を獲得した個体は世界中へ広まり、様々な地域へ定着していった。

 これが現在、多くの地域で見られるトロピウスの始まりである。

 

 さて、ここで気になるのは、飛行能力を持たなかった個体はどうなったのかだ。

 実はそれらも確かに現代まで生存している。それも世界中で見られる他のトロピウス達とはまた異なる変化をした姿で……。

 

 

 

 とある密林の沼地。水面からうきくさポケモン「ハスボー」やみずうおポケモン「ウパー」が顔を覗かせ、その頭上ではうすばねポケモン「ヤンヤンマ」が飛び回る。その近くでは獲物を狙い、へびポケモン「アーボ」が息を殺して目を光らせていた。

 そんな沼地の中心に、高くそびえる二本の木の幹が有った。だが何かおかしい。よく見ると沼の中をゆっくりと動いているのが分かるかもしれない。こんな木が動くことがあり得るのだろうか。

 そう、これは木ではなくポケモンである。二本の木の幹のように見えるものの一方には、確かに頭が存在する。

 

トロォウ……

 

 どっしりとした巨体から水を滴らせながら、ノシノシと陸地へ上がって来たのは、背中から植物の葉のような背鰭を生やしたポケモン。細部は異なれど、その姿はトロピウスとよく似ている。

 そう、このポケモンこそ、飛行能力を持った現在のトロピウスと異なる姿へと変化を遂げた、リージョンフォームのトロピウスである。

 R(リージョン)トロピウスの特徴の一つは、その長い尻尾だろう。まるで植物の幹の様にも見えるそれの先端には、喉元に生えるものとよく似た果実が生えており、先端もトロピウスの顔のような形状をしている。これは首と一緒に伸ばすことで木の幹を真似ることで、「ドラピオン」や「ドクロッグ」といった外敵の目を欺くためのものというだけではなく、弱点である頭と見分けを付きにくくすることで身を守るという、二重の擬態の意味を持っている。

 

トロォ

 

 そんなRトロピウスは首を伸ばし、体をぶるぶると震わせて水を振り落とすと、移動し始める。

 巨体が動くたびに、近くの木々が揺れ、止まっていた「ペラップ」や「ココガラ」達が驚いて飛び立っていく。

 そして辿り着いたのは、木々が開けた小高い丘。その中心にRトロピウスが陣取ると、背鰭を大きく広げ、日光浴を行う。

 鬱蒼と木々が生い茂るこの密林の中で、数少ない日当たりが良いこの丘は、Rトロピウスのお気に入りの場所だ。光を浴びながら目を細めたその表情は、まさに心地よさそうだ。

 そのRトロピウスに近づこうとする影が一つ。それはおながポケモン「エイパム」だ。エイパムが狙っているのは、Rトロピウスの喉元と尻尾になった果実。

 他の地方のトロピウスと同様に、Rトロピウスの果実も非常に甘く美味だ。それを求めようとするポケモンは少なくない。だがその入手難度は、他の地方とは比べ物にならない。

 

トロォオ……

 

 太陽の光を浴びながら欠伸をするRトロピウスの死角から、音を立てないように近づくエイパム。抜き足、差し足、忍び足……。警戒をしながら、一歩、また一歩と近づいていく。

 

パム……

 

 そうしてRトロピウスの首元まであと30cmという距離まで近づいたときだった。

 ビュオウッ、という音と共に突風が吹き抜ける。

 

パッ!?

 

 背後からの風に煽られたことで、エイパムはバランスを崩し、その拍子にRトロピウスの体へぶつかってしまった。

 顔面からぶつかったことで赤くなった鼻をさするエイパム。だがすぐにその顔を青くすることとなる。何故なら、間近でRトロピウスが自身を睨みつけながら見下ろしていたからだ。

 

パッ……

トロォオウッ!!

 

 他の地方のトロピウスであれば、この程度のことで怒りを見せることは無かっただろう。それどころか首を下げ、自ら果実を分け与えていたかもしれない。

 だがこのRトロピウスは長年に渡り天敵との生存競争を繰り広げ続けたためか、非常に神経質かつ警戒心が強く、ちょっとしたことでもすぐに攻撃的になる気性の荒さを持っていた。

 今は日光浴して落ち着いている最中に、背後からエイパムがぶつかってきたことが気に障ったようだ。

 

トロォウッ!!

トロオッ!!

トロゥッ!!

 

 さらに一頭が雄叫びを挙げたことで、他のRトロピウス達も興奮し始める。さすがにこれはまずいとエイパムは慌てて逃げ出すが、それを怒りの形相でRトロピウスが追いかける。

 ドスドス、メキメキ、バリバリ…。

 

 地面を踏みしめ、木々を揺らし、枝を折る。巨体が迫りくる恐怖に怯えながら、エイパムは素早さを活かし、木の枝から枝へと飛び跳ねながら逃げ惑う。

 対してRトロピウスは鼻息を荒くしながらも、エイパムを捕まえるのは無理だと判断してか、すぐに追いかけるのを止め、踵を返して丘へと戻る。

 

……

 

 その姿を遠目から見つめる「レディバ」や「パチリス」、「ツツケラ」といった小型ポケモン達。彼らもまた、Rトロピウスの果実を狙う者達だ。無論、気づかれれば危険であるが、そのリスクを冒すに値するものであることは間違いない。

 そしてまた誰かがRトロピウスに近づいては追い返されていく。そして幸運な一匹のポケモンが果実を手に走り出し、それを他のポケモン達が追いかけていく。

 そんな日常に煩わしさを感じながら、陽が沈むと同時にRトロピウス達は森の奥へ姿を消していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


トロピウス
ぶんるいフルーツポケモン
タイプくさ・ドラゴン
たかさ2.2m
おもさ145.0kg
とくせいてんねん・リーフガード(しゅうかく)
種族値
HP109
こうげき93
ぼうぎょ83
とくこう52
とくぼう82
すばやさ41
合計460

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1すいとる
1にらみつける
1せいちょう
1はっぱカッター
1リーフストーム
6あまいかおり
10ふみつけ
16マジカルリーフ
21ワイドブレイカー
30ワイドガード
36ドラゴンハンマー
41のしかかり
46げきりん
50こうごうせい
56ウッドハンマー




モチーフは竜脚類&剣竜類。
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