自然界では、様々な理由でポケモンは争う。縄張りの確保、食料の奪い合い、異性へのアピール、あるいはただの本能……。時に勝ち、時に負け、それらを繰り返してポケモンは成長していく。
しかし、その争いが常にトレーナーが良く知るポケモンバトルのようなものになるとは限らない。種によっては、独自の方法で争い合うものも居るのだ。
とある地方に広がる熱帯雨林。背の高い木々が伸び、一年を通して高温多湿な気候が続くこの森は、広大な面積と、多数の強力なポケモンが生息しているため、未だに研究が進んでおらず、未知の部分が多い。
そんなこの森では、時折、奇妙な音が聞こえる。突風のように速く、あるいは豪雨のように激しい音。それが響き渡ると、森のポケモンが一斉に緊張しだすものの、その音の出所は探索の手が入っていない森の奥地であるため、その正体は未だに掴めていない。
―ドドドォンッ!―
そして今日もその音が響き渡る。
音の発信源は、この森の中でも一際大きな巨木の根元。そこにはこざるポケモン「サルノリ」やビートポケモン「バチンキー」が群れている。
サルノリやバチンキーと言えば、手にしたスティックを用いてリズムを刻むことで有名なポケモンであるが、この二種のポケモンでは、今、森に響く激しい音を発することは出来ない。そう、激しく演奏をしているのは、この二種が進化したポケモンである。
―ドンッ! ドドォンッ!―
音を発しているのは、細くしなやかながらも、強靭な枝を切り株に叩きつけるポケモンによるもの。この森に生息する、リージョンフォームのドラマーポケモン「ゴリランダー」だ。
原種と比べ、頭部から伸びる葉は大きく、代わりに一回りほど小柄な体を持ち、顔には果実の汁を用いた独特なペイントを施した
―ガサリ……―
そんなRゴリランダーの前の茂みが揺れる。それに気づいたRゴリランダーが茂みに視線を向けると、そこからもう一頭のRゴリランダーが姿を現す。
最初に演奏していたRゴリランダーは群れのボスであり、新たに現れたRゴリランダーはまだ進化したばかりの年若い個体である。どうやら群れのボスの座を巡って勝負を仕掛けに来たようだ。しかし、その方法は一般的にイメージされるポケモンバトルとは少し異なる。
―ダアッ!―
若い個体は雄叫びと共に、自らの前に切り株のドラムを並べる。そう、ゴリランダーの勝負の方法とは、演奏勝負だ。ゴリランダーと言えばドラムと言われるほどに、原種もリージョンフォームもドラムの腕前には強い自信を持っている。そんなゴリランダーは最も演奏が上手い個体がボスとなるという生態を持つため、こうして同種間の争いではドラムの演奏で勝敗を決めるという特徴を持つ。
ただ、これ自体は別に不思議な光景ではない。ガラル地方でゴリランダーの演奏を見たことがあるトレーナーであれば、違和感を感じるだろう。原種のゴリランダーはドラムを一つだけ所持し、それを一生使い続ける。例えバトルで破損したとしても、修理して使い続けるほどであり、高いレベルを持つゴリランダーほど年季の入ったドラムを所持していることは有名だ。
だが若いRゴリランダーが取り出したのは、三つのドラム。それを自分を中心として半円状に並べた。
そう。この森に住まうRゴリランダーは、原種とは異なり、複数のドラムを所持している。これはこの森の湿度が非常に高く、ドラムが劣化しやすいというのが理由の一つではあるが、それだけでは無い。
―ドドドンッ!―
挑戦者は自らの技術を誇示するかのように、素早く三つのドラムを打ち鳴らす。一見、すべて同じような形に見えるドラムだが、それぞれ異なる音色を発し、その組み合わせにより複雑かつ重厚なメロディが奏でられる。
元々、Rゴリランダーの先祖も、原種同様に一つのドラムだけで演奏を行っていた。だが、ある日、一頭が複数のドラムを用いて演奏を行うようになった。元々、予備として集めていたドラムを使わないのがもったいないと思ったのか、それとも別の理由かは定かではない。しかし複数のドラムを用いたことで演奏の幅が出ることに気付いた先祖は、より多くのドラムを集めるようになった。時に自分好みの音が出る切り株を求め、何日も森を彷徨い、そうして集めたドラムを用いた演奏は、一つのドラムのみを用いる他の個体の演奏とは一線を画するものだった。
それを聞いた他の個体も、次第にその行動を真似しだし、いつしかこの森にすむRゴリランダー達は、複数のドラムを用いるようになったのである。
―ドドンッ! ドンッ!―
挑戦者たるRゴリランダーは、若いながらも三つのドラムを素早く巧みに鳴らす。その技術は決して他のRゴリランダーに引けを取らない、いや、むしろ並みのRゴリランダーを凌駕するだろう。ボスに挑むのも納得だ。
―ドォンッ!―
汗を飛ばしながら、最後に大きくドラムを鳴らした若いRゴリランダー。全身全霊で演奏し終え、息を切らす彼に、周囲のサルノリやバチンキー達は、歓声を上げる。
だがボスは不敵な笑みを浮かべると、自らのドラムを取り出す。だがその数は挑戦者の倍である六つ。三つのドラムを使いこなすことすら難しいのに、倍のドラムを用いるなと正気の沙汰ではない。
―ダアアアッ!―
だがボスは大きく雄叫びを挙げると、
―ドドドドドドンッ!―
手にした枝で素早くドラムを叩きだす。それはただ力任せに、スピードで誤魔化して、適当に叩いているのではない。一つのドラムからは地面を揺るがすと感じさせるほどの重低音、一つのドラムからは雷を連想させる切れ味、そしてまた一つのドラムからは吹き抜ける突風のような勢い……。一つ一つのドラムから異なる音色を引き出し、それらを巧みに使い分ける。そうして組み合わせられた音色は、一つの交響曲のような世界を作り出し、聞くもの全てを圧倒させる。
―ドンッ! ドドドッドンッ!―
これらのドラムは全て、ボスが長い年月を掛け集めた珠玉の一品。一切の妥協を許さず、自分が求める最高の音を作り上げるために選び抜いた、至高のドラムだ。
そしてそれらの音を100%引き出すために磨き続けた技術。進化するよりも前から、寝る暇も惜しんで修行を続け、辿り着いた境地。
この二つが組み合わせられたことにより完成した、六つのドラムを用いた独自の演奏技術は他のRゴリランダーの追随を許さないものへと昇華された。
―……―
若い個体は、自らが挑戦者であったことすら忘れ、その音色に聞き入る。周囲に居たサルノリ達も、先程まで聞いていた演奏の記憶を容易く塗り替える程のボスの技術に、ただ飲み込まれる。
―ダアアアッ!―
―ドオォンッ!―
最後に咆哮と共に大きな響きが森を駆け抜けた。
それを聞き終え、最初は皆呆然とし、そしてすぐに盛大な歓声が挙がる。最早、勝者はどちらか問うまでも無い。
―ダァ……―
若い個体はボスへ近づくと、服従の証としてドラムを地面に置き、首を垂れる。自らの敗北を認め、群れに入ることを示す恭順の姿勢だった。
―ダァッ―
ボスもそれを認め、笑みを浮かべるが、同時にあることを思い返していた。
この若い個体は自分の演奏に圧倒されつつも、決して目を逸らすことなく自分の演奏に視線を向けていた。それはただ見惚れていたわけではない。自分の演奏技術を余すことなく取り込もうとする姿勢であった。
最近は大した挑戦者も現れず、暇を持て余していたボスにとって、久しぶりに本気で演奏する気になった相手だ。いずれ挑戦しに来るだろう。そんな予感がしていた。
群れの中へと混じる若いRゴリランダー。その視線がずっと自分に向いていることに気付いていたボスは、再び戦う日を楽しみに感じながら、アンコールを求める群れにこたえ、再びドラムの演奏を始めるのだった。
サルノリ(原種)
↓Lv16で進化
バチンキー(原種)
↓Lv35で進化
| ゴリランダー | |
|---|---|
| ぶんるい | ドラマーポケモン |
| タイプ | くさ・あく |
| たかさ | 2.0m |
| おもさ | 88.6kg |
| とくせい | しんりょく(かたやぶり) |
| 種族値 | |
| HP | 95 |
| こうげき | 60 |
| ぼうぎょ | 85 |
| とくこう | 125 |
| とくぼう | 70 |
| すばやさ | 95 |
| 合計 | 530 |
| おぼえるわざ | |
|---|---|
| レベル | わざ名 |
| 1 | ダークビート |
| 1 | ひっかく |
| 1 | なきごえ |
| 1 | ちょうはつ |
| 1 | ダブルアタック |
| 1 | ウッドハンマー |
| 1 | おたけび |
| 1 | バークアウト |
| 1 | えだづき |
| 12 | はっぱカッター |
| 19 | いやなおと |
| 24 | はたきおとす |
| 30 | たたきつける |
| 38 | さわぐ |
| 46 | リーフストーム |
| 54 | がむしゃら |
| 62 | ばくおんぱ |
| 進化 | ダークビート |
| わざ名 | タイプ | 分類 | 威力 | 命中率 | PP | 範囲 | 優先度 | 直接攻撃 | 効果 |
| ダークビート | あく | 特殊 | 80 | 100 | 10 | 相手全体 | 0 | × | 20%の確率で相手のすばやさを1段階下げる。 |