まだ見ぬ世界のポケモン達   作:雪見柚餅子

85 / 100
今回の主役はリージョンフォームではありません(似たようなものではあります)。


刺激極まるハバネロポケモン

 唐辛子。それは刺激的な辛味が特徴的な野菜であり、世界で最も有名な香辛料だ。

 一言に唐辛子と呼んでも、その種類は非常に豊富であり、気温や温度、土壌成分、天敵の有無といった周辺環境の違いにより、その味は大きく変化し、昨今では品種改良によって数えきれないほどの種類の唐辛子が世界中に存在する。中には全く辛くない唐辛子もあるというのだから驚きだ。

 そしてそんな唐辛子によく似た性質を持ったポケモンが存在する。それがハバネロポケモン「カプサイジ」。日光を浴びることで唐辛子の辛味成分と同じカプサイシン類が生成されるという特徴を持ち、良く育った個体だと、生身で触れただけでピリピリとした痛みを感じるほどだ。その前歯は一部地域では香辛料として様々な料理に用いられている。さらにカプサイジは、くさタイプのポケモンとしては珍しく、ほのおの石に触れることで「スコヴィラン」というポケモンに進化するという特徴を持つが、これは体内の辛味成分とほのおの石が反応することによるものとされる。

 ここで一つ仮説が立てられる。環境によって風味が変化する唐辛子と似た生態を持つのであれば、カプサイジもまた異なる外的要因によって、全く異なる力に目覚めてもおかしくないのではないだろうか。辛味成分に変化を及ぼし得るものを摂取すれば、別の進化をする可能性があるのではないだろうか。

 現在、人類が確認しているカプサイジの進化系はスコヴィランのみである。だが、この広い世界、人類がまだ辿り着いていない土地に、その仮説を裏付けるポケモンが生息していた。

 

 

 

 砂交じりの熱風が吹き抜ける荒涼した乾燥地帯。太陽が照り付ける中、砂地を走る影が二つ。

 

ネッ

 

 前を走るのは、小柄な赤毛のきつねポケモン「クスネ」。狡賢い性格で、他のポケモンの食料を奪うことを得意としている。

 それを追うのは、すらりとした手足とそこから伸びる鋭い鉤爪、砂のような白亜の体色を持つポケモン「ニューラ」。

 ニューラと言えば、黒い体を持つというイメージが強いだろう。しかし、かつてシンオウ地方の山間部に白い体のニューラが生息していたという事実がある。そして今、クスネを追いかけているニューラは、シンオウ地方に生息していたものと近縁の関係に有り、この砂原の環境に適応したリージョンフォームなのである。

 どうやらこのR(リージョン)ニューラはクスネに食料を奪われたらしく、怒りの形相で追いかける。クスネは軽やかなステップでRニューラを振り切ろうとするが、Rニューラは鋭い爪をスパイク代わりにすることで砂に足を取られる事無く、クスネとの距離を徐々に縮めていく。

 

ニュラッ!

ネェッ!?

 

 振るわれる鉤爪をクスネは紙一重で躱していく。Rニューラの鉤爪には毒が含まれており、掠っただけでも瞬く間に体が痺れ動けなくなってしまう。

 そんな恐ろしい連続攻撃を、必死に躱し続ける。だが、このままでは先に体力が尽きるのはクスネだ。疲労で動けなくなるのが先か、毒爪に当たるのが先か……。

 最早、クスネの命運も尽きた。そう思った時だった。クスネの前足が、砂に埋もれていた何かを踏んだ。違和感を感じたものの、それに注意を向ける暇も無く、クスネは駆ける。

 それに続いてRニューラが同じように、地中に潜んだ何かを踏んだ、その途端、砂が弾けた。

 

ラッ!?

 

 Rニューラの体が宙を舞う。砂の中から現れた緑色の蔦のような何かが、鞭のようにRニューラを薙ぎ払ったのだ。

 背後で何かが現れた気配とRニューラの悲鳴で思わずクスネも振り返った。

 そこに有ったのは、深緑の丸い頭部を持ち、先端が真っ赤な唐辛子のように膨らんだ尻尾を持つポケモンが、砂を掻き分けながら地中から這い上がってくる光景。

 その姿を捉えたクスネとRニューラの表情に緊張が浮かぶ。何故ならそのポケモンは、この砂原で最も注意しなければならない存在の一つであったからだ。

 人類にとって未知なる存在。されど、その顔つきには面影が残る。そう、これこそ、カプサイジがこの砂原にのみ生育する希少な唐辛子を摂取したことにより、スコヴィランとは異なる進化を遂げた姿だ。

 

ヴィイイッ!

 

 涼しい砂中で眠っていたところを踏みつけられたことで非常に気が立っているようだ。スコヴィラン以上に気性が荒く攻撃的なこのポケモンだが、その最も恐れるべきところは、クスネとRニューラが警戒の眼差しを向ける先にある、長大な尻尾、その先端にある唐辛子のような形状の針だ。

 カプサイジやスコヴィラン同様にこのポケモンは体内に強力な辛味成分を有しているのだが、それが最も集中している部位こそ、尻尾の先の針である。もしこの針に刺されようものなら、まるで注射針のように傷口へ辛味成分が注入される。そうなれば、まるで真昼の太陽によって熱せられた砂に触れたかのような、ジリジリとした痛みを長時間味わうこととなる。その痛みは、頑丈な体を持つ「カバルドン」であっても悶え苦しむほどだ。

 

ヴィイオッ!!

 

 伸びる尻尾が先に狙ったのはクスネ。鋭い突きがクスネの足元へと迫るが、間一髪、クスネは口にしていた木の実を落としながらも躱すと、そのままRニューラの許へと駆け寄る。ハバネロポケモンの相手をRニューラに押し付けようという魂胆らしい。

 食料を奪った挙句、このような真似をするクスネにRニューラは一瞬、怒りの視線を向けたものの、すぐに自身へと迫る尻尾に、冷や汗を掻いて走り出す。

 

 それから日が沈むまでの間、クスネとRニューラはハバネロポケモンを相手に地獄の鬼ごっこを強いられる羽目となるのだった。

 

 

 

 場所は変わり、霧が掛かる険しい山岳地帯。ここでは今まさに、二体のポケモンによる縄張り争いが繰り広げられていた。

 

ガァッ!

 

 地面をがっしりとした足で踏みしめているのは、ゴツゴツとした黒褐色の鱗に覆われた胴体と、血に染まったかのような赤黒い頭部を持つポケモン。背中から生えるのは、退化し、羽ばたくことの無い翼。そう、それは、この山岳特有のリージョンフォームを持つ「クリムガン」だ。

 この地域周辺の地盤は非常に高硬度であり、掘削能力に優れた「ダグトリオ」ですら掘ることを諦める程に硬い。そんな硬い地盤で巣穴を作るために、R(リージョン)クリムガンの爪は、原種と比べより強靭に発達しており、さらに尖った岩から身を守るための鱗もより頑強となっている。

 そのRクリムガンがジロリと周囲を見渡す。そこには白く濃い霧があるのみ。だがRクリムガンはそこに敵の気配を感じていた。

 

ガッ!

 

 突如として、Rクリムガンの顔目掛けて赤い液体のようなものが飛んでくる。だが警戒していたRクリムガンは右腕でそれを弾き、液体が吹きつけられてきた方向へと視線を向ける。

 

ヴィイッ!!

 

 霧の中から現れたのは、Rクリムガンよりも鮮やかな赤い頭を持ち、腕の代わりに緑色の唐辛子が連なったかのような翼を持つ、翼竜のような姿を持ったポケモン。

 このポケモンもまた、カプサイジがこの山岳地帯にのみ生息する唐辛子を摂取したことで進化した姿である。進化前の姿であるカプサイジや他のハバネロポケモンがいずれも地上で活動を行っていたのに対し、こちらは翼を得たことで自在に空を飛行する能力を獲得し、一日の大半を空中で過ごしているという他にはない独自の生態を持っている。だがその性格は他に負けず劣らず凶暴で、自分の縄張りに入ったものは誰であろうと攻撃を仕掛けるという危険なポケモンだ。

 

ヴィルッ!!

 

 そんなハバネロポケモンは、口から赤い液体をRクリムガンに目掛けて吹き付ける。これはこのポケモンの体内に溜め込まれた辛味成分が濃縮されたエキスであり、もし肌に触れると、その部位にまるで灼熱の炎に包まれたかのような激痛が走ることとなる。

 だがRクリムガンの頑強な皮膚には染み込みにくいようで、その腕で容易く払いのけると、ハバネロポケモン目掛けて逞しい剛腕を振るう。

 

ガァッ!

ヴィッ!

 

 強烈なRクリムガンの爪撃。それをハバネロポケモンは浮上することで回避すると、霧の中へとその身を隠す。

 

ヴィイルッ!

ガァ……

 

 霧へ紛れ縦横無尽に飛行しながら、Rクリムガンへエキスの息吹を放つ。その全てをRクリムガンは腕で弾いていくが、防御に徹するだけでは勝ち目は無い。故にRクリムガンはチャンスを狙っていた。それは霧の薄い場所へハバネロポケモンの影が映るとき……。

 

ガアァッ!!

 

 そしてその時は来た。ハバネロポケモンがエキスを吹き付けようとした瞬間、地面に落ちていた岩を掴むと、それを思いきり投げつけた。

 

ヴィッ!?

 

 Rクリムガンの剛力によって投げつけられた岩は、ハバネロポケモンのエキスを受けても勢いが落ちることは無く、その胴体へ見事命中し、地面へと撃ち落とすことに成功する。

 そして倒れこんだハバネロポケモンへ走りながら、その剛腕を振りかざすRクリムガン。硬い岩盤をも砕く一撃が振り下ろされようとしたその時、

 

ヴィルッ!!

ガアァッ!?

 

 頭を上げたハバネロポケモンが噴出した反撃のエキスが、Rクリムガンの顔にべっとりと付着する。それと同時にRクリムガンはあまりの激痛でその場に倒れこむ。

 全身を覆う頑丈な鱗にはエキスが通用せずとも、粘膜に覆われた眼球はその限りではない。ハバネロポケモンは最初からRクリムガンの眼を狙って攻撃し続けていたのだ。

 瞼を開くことが出来ず、涙を流しても一向に収まる気配のない痛みに悶えるRクリムガン。そこへ悠然と近づくハバネロポケモン。最早、勝敗は決したと言って良いだろう。

 

ヴィイルッ!!

 

 口から放たれた光線が止めとなり、吹き飛ばされたRクリムガンは勢いよく斜面を転がっていった。硬い皮膚に覆われているため、落下のダメージはそれほど無いだろうが、エキスの効果はしばらく……少なくとも一日は消えることは無いだろう。

 そんな敗者に背を向け、ハバネロポケモンは勝利の雄叫びを上げる。その姿はまさに獰猛な竜そのものであった。

 

 

 

 双頭を持つもの。鋭利な尻尾を持つもの。飛翔する翼を持つもの。環境の変化によって、唐辛子のように多種多様な姿へと変化を遂げるカプサイジ。

 もしかすると、また異なる進化を遂げたカプサイジもこの世界には潜んでいるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ニューラ
ぶんるいかぎづめポケモン
タイプじめん・どく
たかさ0.9m
おもさ27.0kg
とくせいすながくれ・するどいめ(どくしゅ)
種族値
HP55
こうげき95
ぼうぎょ55
とくこう35
とくぼう75
すばやさ115
合計430

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1ひっかく
1にらみつける
1すなかけ
6ちょうはつ
12でんこうせっか
18メタルクロー
24どくづき
30あなをほる
36つめとぎ
42きりさく
48こうそくいどう
54いやなおと
60すなあらし

 

↓するどいツメを持たせて、朝か昼にLvアップすることで進化

 

オオニューラ
ぶんるいどくづめポケモン
タイプじめん・どく
たかさ1.3m
おもさ43.0kg
とくせいすながくれ・かるわざ(どくしゅ)
種族値
HP80
こうげき130
ぼうぎょ60
とくこう40
とくぼう80
すばやさ120
合計510

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1フェイタルクロー
1ひっかく
1にらみつける
1すなかけ
1なげつける
6ちょうはつ
12でんこうせっか
18メタルクロー
24どくづき
30あなをほる
36つめとぎ
42きりさく
48こうそくいどう
54いやなおと
60すなあらし
進化フェイタルクロー

 

 

 

クリムガン
ぶんるいほらあなポケモン
タイプドラゴン・いわ
たかさ1.6m
おもさ157.0kg
とくせいさめはだ・かたいツメ(ハードロック)
種族値
HP77
こうげき125
ぼうぎょ100
とくこう60
とくぼう80
すばやさ43
合計485

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1ひっかく
1にらみつける
5いわおとし
10ドラゴンテール
15メタルクロー
20こわいかお
25きりさく
30ドラゴンクロー
35いわなだれ
40かみくだく
45アイアンヘッド
50げきりん
55ばかぢから

 

 

 

カプサイジ(原種)

 

↓デザートスパイスを使用することで進化

 

仮称:スコヴィオン
ぶんるいハバネロポケモン
タイプくさ・じめん
たかさ0.8m
おもさ16.9kg
とくせいようりょくそ・ふみん(かたやぶり)
種族値
HP75
こうげき128
ぼうぎょ80
とくこう63
とくぼう65
すばやさ75
合計486

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1ジョロキアテール
1すなじごく
1にらみつける
1とどめばり
1このは
4かみつく
10せいちょう
13はっぱカッター
17にほんばれ
21タネマシンガン
24ずつき
28しねんのずつき
33ポイズンテール
38かみくだく
44タネばくだん
48ソーラービーム
48パワーウィップ
進化ジョロキアテール
進化すなじごく

 

 

 

カプサイジ(原種)

 

↓ドラゴンスパイスを使用することで進化

 

仮称:スコヴィルム
ぶんるいハバネロポケモン
タイプくさ・ドラゴン
たかさ1.4m
おもさ20.2kg
とくせいようりょくそ・ふみん(ぎゃくじょう)
種族値
HP75
こうげき63
ぼうぎょ65
とくこう128
とくぼう80
すばやさ75
合計486

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1ヒートスパイス
1りゅうのはどう
1にらみつける
1りゅうのいぶき
1このは
4かみつく
10せいちょう
13はっぱカッター
17にほんばれ
21タネマシンガン
24ずつき
28しねんのずつき
33ほえる
38かみくだく
44タネばくだん
48ソーラービーム
48はかいこうせん
進化ヒートスパイス
進化りゅうのはどう

 

 

 

わざ名タイプ分類威力命中率PP範囲優先度直接攻撃効果
ジョロキアテールくさ物理75100151体選択0急所に当たりやすい。10%の確率で相手をやけど状態にする。
ヒートスパイスくさ特殊80100151体選択0×30%の確率で相手をやけど状態にする。




モチーフは「トリニダード・スコーピオン・ブッチテイラー」と「ドラゴンズ・ブレス」。
当初はスコヴィランの進化系を考えていましたが、色々考えた結果、分岐進化となりました。
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