まだ見ぬ世界のポケモン達   作:雪見柚餅子

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金色に煌くすなへびポケモン

 「黄金郷」という言葉が有る。この世のどこかには、ありとあらゆるものが黄金によって出来た場所が存在すると。中世の時代には、それを夢見て大海原へと旅立った者も多く居た。

 無論、そんなものはただの噂話でしかなく、実際は存在しない。

 

 ただし、そんな黄金郷によく似た場所は、とある広大な砂漠の一角に存在した。

 

 そこは、かつて大きな川が流れていた。この川の上流には険しい山が聳えていたのだが、この山は世界でも有数の金鉱脈が有り、そこから多くの砂金が川へと流れ出ていた。この砂漠に栄えていた文明は、この砂金を利用して様々な工芸品を作り、他国との交渉に用いていたが、旱魃によって川が干上がったことで滅びたという歴史があるのだが、今は割愛する。

 何はともあれ、この地は多くの金が産出された希少な場所である。そしてその金は完全に失われたのかと言えば、そうではない。かつて川が有った場所は今はもう砂に埋もれているが、その地下にはまだまだ多くの砂金が眠っている。そしてこの砂金の存在が、とあるポケモンの生態に大きな影響を齎していた。

 

 真夜中の砂漠。ギラギラと灼熱の太陽が照り付ける昼時とは真逆に、凍えるような冷たい風が吹き抜ける。

 そんな月明りに照らされた砂漠を通る幾つもの影。整然と隊列を組み一糸乱れぬ行進を行うその影の正体は、金属質の体を持ったむしタイプのポケモン「アイアント」である。

 アイアントの群れは、それぞれの役割によって幾つかのグループに分かれており、例えば巣穴を増築する建築班、巣穴の奥でタマゴの世話をする養育班、天敵に襲われた際に戦う戦闘班等が挙げられる。そして今、巣穴の外を出歩いているのは、食料を探す役割を与えられた狩猟班だ。

 乾いた砂漠では食料は非常に貴重だ。木の実を始めとする植物は満足に生育せず、例え手に入れたとしても、それで群れ全体の飢えを満たすことは出来ない。そのため砂漠に住まうアイアント達は、油断して眠っている他のポケモンを群れで襲撃し、狩りをするという獰猛な生態を持っている。

 眠っている隙に襲ってくるポケモンと言葉にすると非常に恐ろしく感じるだろうが、これもアイアント達が命を繋ぐための行動であり、自然界では仕方がない事である。そして同時に、アイアント達もとあるポケモンに獲物として狙われることもまた仕方がない事なのだ。

 

イァ……?

 

 先頭を歩いていたアイアントが違和感を覚え、立ち止まる。何かが見ているかのような気配。だが周囲を見回しても、居るのはアイアントだけ。気のせいか。そう思って再び歩き始めようとした時だった。

 

イアッ!?

 

 突然、アイアント達の足元が崩れ始める。擂鉢状に穴が開き、底へと砂が流れ落ちていく。アイアント達は引きずり込まれないように、互いの足に噛みついて支え合う。だがその中で、足を滑らせた一匹のアイアントが無情にも穴へと落ちていく。いくら藻掻こうとも、細かい砂の上では踏ん張りが効かず、さらに穴の底に居る何かから砂を浴びせられ、徐々に落ち行くのみ。仲間達もそんなアイアントに憐みの視線を向けるしかない。

 そしてそのアイアントが底に滑り落ち切った時……

 

ジャアッ!

 

 潜んでいた何かがついに姿を現した。

 金色(こんじき)に輝く鱗。蜷局を巻いた胴体。大きな鼻。それは大きく跳びあがり、アイアントの胴体にしっかりと嚙みついた。

 このポケモンはすなへびポケモンの異名を持つ「サダイジャ」。だが通常のサダイジャが砂に紛れる土気色をしているのに対し、このサダイジャは先に記したように金色の体を持っている。色違いだろうか。いいや、違う。このサダイジャの鱗は確かに金なのである。

 サダイジャの首元には砂を溜め込む砂袋という器官が有り、狩りや外敵との戦闘ではこの砂袋に溜め込んだ砂を鼻から噴き出して攻撃するという特徴が有る。だがこの地に生息するサダイジャは砂だけでなく、地中に埋没する砂金も取り込んだことにより、いつしか全身から金の成分が染み出し、金色に輝く体を持つようになったのだ。

 

イァッ!

 

 天敵から逃れようと、アイアントは体を捩らせ、強力な顎でR(リージョン)サダイジャの体に噛みつくが、金属質な鱗はアイアントの外殻よりも硬く、僅かに傷がつくだけでさしたるダメージを与えることは出来ない。

 Rサダイジャはそのままアイアントを砂中の巣穴へと引き摺り込んでいく。

 

イッ、イァーッ!?

 

 仲間を見つめ悲鳴を上げるアイアント。だが迂闊に手を出せば、自分達も獲物になるだけ。故に選択肢はただ一る。

 

イァーッ!!

 

 悲痛な悲鳴を上げ、そのまま砂の中へと姿を消した仲間に背を向け、アイアントの群れは協力しながら地上へと這い上がる。幸いというべきか、他のアイアントに怪我は無い。

 仲間を一匹失ったが、それを悼んでいられる程、暇ではない。夜が明け気温が上がる前に、群れの飢えを満たすための食料を探さなければならないのだから。非情かもしれないが、過酷な自然界では死は付き物。いつまでも引き摺って居られる程、優しい世界では無いのだ。

 

イァッ

 

 リーダーの号令に従い、アイアントは再び獲物を探し歩き始めるのだった。

 

 

 

 その頃、地下のRサダイジャの巣穴。そこにアイアントの亡骸を咥えたRサダイジャの姿が有った。

 

ジャッ

 

 Rサダイジャが獲物を置いて小さく鳴くと、巣穴の奥からもう一匹のRサダイジャが姿を現す。どうやらこの二匹は夫婦のようで、新たに現れたRサダイジャの傍らには幾つかのタマゴが見える。この卵を温めていた番の為に、Rサダイジャは狩りをしていたのだ。

 

ジャアッ!

 

 嬉しそうに獲物を丸呑みするパートナーの姿を見て笑みを浮かべるRサダイジャ。卵が孵るまで、パートナーは巣穴を離れることは出来ない。そのため自分が獲物を狩らなくてはならないのだ。責任は大きいが、大事な家族のためなら苦にもならない。再び獲物を狩るべく、Rサダイジャは巣穴を出ていく。

 

 喰い喰われる食物連鎖。それは時に残酷に見えるかもしれないが、同時に命を繋ぐための自然界の摂理。その摂理に従い、必死に生きるポケモン達の姿は、黄金にも負けないほど輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


スナヘビ
ぶんるいすなへびポケモン
タイプじめん・はがね
たかさ2.2m
おもさ13.5kg
とくせいすなはき・だっぴ(おうごんのからだ)
種族値
HP52
こうげき57
ぼうぎょ75
とくこう35
とくぼう50
すばやさ46
合計315

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1すなかけ
1まきつく
5きんぞくおん
10ぶんまわし
15じならし
20ずつき
25へびにらみ
30あなをほる
35すなあらし
40アイアンテール
45とぐろをまく
50すなじごく

 

↓Lv36で進化

 

サダイジャ
ぶんるいすなへびポケモン
タイプじめん・はがね
たかさ3.8m
おもさ94.0kg
とくせいすなはき・だっぴ(おうごんのからだ)
種族値
HP77
こうげき107
ぼうぎょ130
とくこう60
とくぼう75
すばやさ61
合計510

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1すなかけ
1まきつく
5きんぞくおん
10ぶんまわし
15じならし
20ずつき
25へびにらみ
30あなをほる
35すなあらし
42アイアンテール
49とぐろをまく
51すなじごく

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