ただし、本話は(恐らく)一切関係無い内容となります。
ダンスポケモン「オドリドリ」。このポケモンは花の蜜を主食としているのだが、その花の種類によって異なる四つの姿へと変化するという特徴を持つ。
紅色の花の蜜を吸えば「めらめらスタイル」。熱く激しい気性を持ち、火の粉を撒き散らすほど情熱的なダンスを得意とする。
山吹色の花の蜜を吸えば「ぱちぱちスタイル」。元気で人懐っこい性格で、電気を纏った文字通り痺れるようなダンスを得意とする。
薄桃色の花の蜜を吸えば「ふらふらスタイル」。常にマイペースでフラフラとした足取りで動き、心の底から力が抜けてしまう不思議なダンスを得意とする。
紫色の蜜を吸えば「まいまいスタイル」。滅多に慌てることの無い冷静さを持ち、死者すらも魅了する幻想的なダンスを得意とする。
現在は上記の四種類のオドリドリが確認されている。だがこれが全てではない。そう、まだ発見されていないだけで、別のスタイルのオドリドリも存在しているのである。
南極に近い位置に存在する小島。中央部には岩山が天高く聳え、島を北東部、北西部、南部の三つに分けている。この島には四種類の固有の花が自生し、その花に合わせ、また異なる姿の四種類のオドリドリが生息している。
まず一際目に付く岩山が聳える中央部。標高の高いこの場所では常に突風が吹き荒れ、山頂からゴツゴツとした岩石が頻繁に落ちてくる危険地帯。だがこんな場所にも植物は生育する。硬い岩盤の隙間に根を張り、岩に踏み潰されても枯れる事無く咲き誇るのは吸い込まれそうな漆黒の花。それがあちこちに生えている。
―ドリィッ!―
この危険ながらも美しい花の群生地で、二羽のオドリドリが見合っていた。漆黒の羽毛と頭頂部に丸い鶏冠を持つオドリドリ。そう、この火山地帯に生息する漆黒の花の蜜を吸ったことで姿を変えたオドリドリである。
二羽のオドリドリはどうやら巣を作る場所を巡って争っているようだ。この周辺は地形上、落石があまり落ちてこず、また餌となる花も多い。そんな巣作りするには絶好の場所を奪われまいと、互いに睨み合い、勝負を開始する。
オドリドリの縄張り争いの方法は、勿論ダンスだ。まず最初に一羽がその場でステップを踏み始める。その足取りは軽快かつ激しく、力強い。更に高く跳躍し、体を捻りながら回転を始める。その動きはまるでブレイクダンスのようでもある。
―ドリッ!―
踊り終えると、挑発するように右羽の先端で相手を指す。それに応じるように、もう一羽もその場でダンスを開始。素早い動きを見せたかと思うと停止、そして再び素早いフットワークと緩急のついた動きで相手を翻弄する。
それを見て触発された一羽目が再び踊りだす。今度は地面に翼を付け勢いよく回転。決して重心を崩すことなく、回転の最中にも様々な技を決めて見せる。
―ドリィ……―
荒々しくも流麗なアクロバットの数々に二羽目は圧倒されるが、それでも食らいつこうと、同様にアクロバットを魅せる。だがその技術は未熟。回転の速度も、技のキレも一羽目には及ばない。遂には体勢を崩し、その場に転んでしまう。その時点で勝敗は決した。
―リィ……―
悔しがるように首を垂れる二羽目。だが敗北したことには変わりない。相手へと背を向ける。
―ドリィッ!―
そんな二羽目へ同じように背を向けた一羽目は、翼を高く上げて一鳴き。それは勝者としての勝鬨であり、同時に素晴らしい勝負をして見せた相手に向けたエール。次に戦う時も決して負けはしない。そんな意味が込められたもの。
その鳴き声に二羽目は交わす言葉など必要ないと、その場を飛び去って行く。次に戦う時は決して負けはしない。そんな思いを密かに抱きながら。
場所は変わり、島の北西部。ここは島の中でも一年を通して気候が安定した場所であり、青々とした草原が辺り一面に広がる。そんな草原に生えるのは、若草色の花。あまり目立たない色だが、あちこちに生えたその花から発せられる優しい香りが草原全体を覆い、独自の落ち着いた空気を構築している。
―ドリ!―
そんな若草色の花の蜜を吸ったオドリドリもまた、他とは異なる姿へと変化している。花と同じ若草色の羽毛を持ち、鶏冠は花飾りのような形状へと変化、腰回りにはひらひらとしたスカート状の長い羽毛が伸びている。
そんなオドリドリ達は群れで輪になって踊っている。北西部一帯は食料が豊富であり、わざわざ争う必要も無い事から、このオドリドリは攻撃性が低く、群れで暮らすという生態を持つ。ただそれだけでは無い。
―ドリッ!―
―ドリッ!―
―ドリッ!―
オドリドリが軽やかにステップを踏む度に、周りの草花が生き生きと葉や茎を伸ばして行く。彼らのダンスには植物の成長を早める特殊な力を有しており、これが北西部が豊かな草原となっている理由の一つでもある。
そしてそんな青々とした草原には、オドリドリ以外にも多くのポケモンが集まる。植物と同じようにオドリドリのダンスによって活発化する「ナゾノクサ」や「ハネッコ」をはじめ、「シママ」や「ミルタンク」といった草食のポケモン、さらには花の蜜を吸いに来た「アゲハント」や「アブリボン」……。そしてそれらを狙う肉食のポケモンも当然居る。
―ホオォウクッ!―
上空から飛来したのはもうきんポケモン「ムクホーク」。鳥ポケモンの中でも優れた筋力を有し、大型のポケモンであっても連れ去ることが出来るほどの力を持っている。
そんなムクホークの狙いは勿論、ダンスを踊っているオドリドリ。オドリドリ達も天敵の存在に気が付き、ダンスを中断して逃走を図るが、スピードはムクホークの方が上。上空から狙いをつけると、急降下してその距離を詰める。残り3メートル、2メートル……そして1メートルの距離まで近づいて……
―ホォオウッ!?―
その時、ムクホークの目の前に雷が走り、反射的にムクホークは方向転換を余儀なくされる。
一体何事かと地上を見ると、そこに居たのは青い電光を迸らせる「ゼブライカ」の姿。その瞳はじっとムクホークを睨みつけている。これは偶然ではない。ゼブライカはオドリドリを確かに守ったのだ。
この地に住む多くのポケモンが、オドリドリのダンスによって成長した植物を食料としている。そしてその代わりとして、オドリドリが天敵に襲われた際には協力して守ろうとする、共生関係を結んでいるのだ。
―ミィルッ!―
―ブラィ!―
ミルタンクが岩石を放り投げ、さらにゼブライカの追撃。ムクホークは空高く上昇しそれらを躱すが、このまま妨害され続けながらオドリドリを狙うのは分が悪い。仕方なくムクホークは別の獲物を探すべくその場を後にする。
天敵が居なくなったことを確認すると、再びオドリドリ達は集まってダンスを開始。それを見守るように集まるポケモン達。平和で穏やかな時間は陽が沈むまで続くのだった。
再び場所は変わり島の北東部。北西部とは裏腹に、こちらは乾燥した風が吹き抜ける砂丘が広がる。
そしてこの場所でも、オドリドリが天敵となるポケモンと争っている真っ最中で会った。
―ビルッ!―
砂塵が散る中、オドリドリを襲っているのは、茶色い鱗と鋭い牙が特徴的なさばくワニポケモン「ワルビル」。
―ドリィ―
そのワルビルに襲われているのは、赤土色の羽毛を纏い長い鶏冠を口元を隠すベールのように巻き付けた姿のオドリドリ。言うまでも無いが、この砂丘のオアシスに生える花の蜜を吸ったことで変化した姿である。
―ビルゥッ!―
―ドリッ―
鋭い爪の連撃、長い尻尾による薙ぎ払い、そして大きな顎を使った噛みつき。獰猛なワルビルの攻撃を、オドリドリはゆらゆらと円を描くかのような独特な動きを駆使して回避する。時に翼で往なし、時に砂塵を巻き上げて目晦ましをし、時に大きく跳躍して躱す。その流れる動きの一つ一つがまるで華麗なダンス。もし人間がこの場に居れば、その美しさに見惚れることだろう。だがこの踊りを見惚れることなど決して有ってはならない。
―ビッ!?―
再びオドリドリに噛みつこうとしたワルビルの体が突然固まる。全身が痺れ自由が利かず、立っていることすら儘ならず、その場に倒れこむ。だが地面に倒れた感覚すら、今のワルビルは感じることは出来ない。
何が起きたのか。それはオドリドリの羽に秘密があった。
実はこのオドリドリの姿を変化させる要因となった赤い花。それには強い神経毒が含まれている。もし人間が口にすれば全身が麻痺し、酷ければ数時間の内に命を落とす程の毒である。勿論、多くのポケモンもその花を口にすることは無いのだが、唯一、オドリドリだけはこの花の毒の影響を受けることは無く、それどころかその毒を体内に蓄積する。そして外敵に襲われると、踊るような動きで毒が染み込んだ羽毛を周囲に散らし攻撃するのだ。
―ビ……ルゥ―
それを知らずにオドリドリを獲物として攻撃していたワルビルは、尻尾を僅かに揺らす程度しか動かすことしか出来ない。そんなワルビルを尻目に、オドリドリは華麗なダンスを踊りながらその場を悠々と去っていく。
美しい花には棘がある。いかに美しい舞踏であったとしても、安易に近づいてはならないのだ。
そして島の南部。ここは南極圏に近いということもあって一面が凍てつき、銀世界が広がる北部とは真逆の極低温の世界。生息するポケモンも無論こおりタイプばかりだ。
―ドリィ~―
そんな氷の世界で優雅に踊るポケモンが一羽。誰あろう、オドリドリである。
艶めく紺碧の羽毛を持つそのオドリドリは、凍り付いた海面を滑りながら、跳んだり回ったりして見せ、その動きはまるでフィギュアスケートの様。
何故、このオドリドリは踊っているのか。その理由はすぐに分かることとなる。
―リィ!―
現れたのは、別のオドリドリ。実はこのオドリドリはメスであり、踊っていた方はオス。オスのオドリドリはメスにアピールするためにダンスをしていたのだ。
―ドリィ!―
現れたメスをエスコートするように翼を差し伸べるオス。メスはその翼を取り、二羽は共に氷上を滑り始める。これで第一段階はクリア。だが、まだ油断はできない。上手くメスに合わせて踊ることが出来なければ、その場で振られることとなる。
―リィ~―
―ドリィ~―
響き渡る二羽の鳴き声をメロディの代わりに行われる氷上のダンス。オスは緊張しながらもメスの一挙手一投足に目を光らせ、それに合わせて華麗に動いて見せる。メスもそんなオスの動きを観察しながら踊る。
そんな時間が数分程度続いただろうか。メスがオスに翼を差し伸べると、オスはそれに応じ、二羽はその場で回転。そして次の瞬間、
―ドリッ!―
オスがメスを宙へと放り投げる。だがそれは乱暴なものでは無く、むしろ優しいもの。放り投げられ宙に浮かんだメスは体を捻らせながら最高到達点へと着くと、そのままゆっくりと落下していく。
―リィ―
このまま氷に叩きつけられ……なんてことは無く、オスがメスを優しくキャッチすると、その場で止まりメスを見つめ一鳴き。
―リィ!―
メスも応じるように鳴く。カップル成立だ。オスは嬉しそうに顔をメスに擦り付け、メスも同じようにオスに擦り付ける。
この後、二羽は協力して巣作りし、タマゴを育てることとなるのだが、それはまた別の話だ。
オドリドリ。餌とする花の蜜によって見た目も性質も変化する不思議なポケモン。この果てしない世界には、まだ見ぬ姿、まだ見ぬ踊りを見せるオドリドリがいるのかもしれない。
| オドリドリ | |
|---|---|
| ぶんるい | ダンスポケモン |
| タイプ | あく・ひこう(ばりばりスタイル) |
| くさ・ひこう(ひらひらスタイル) | |
| どく・ひこう(ゆらゆらスタイル) | |
| こおり・ひこう(ひえひえスタイル) | |
| フォルムチェンジ | しっこくのミツを使用 →ばりばりスタイル |
| わかくさのミツを使用 →ひらひらスタイル | |
| あかつちのミツを使用 →ゆらゆらスタイル | |
| こんぺきのミツを使用 →ひえひえスタイル | |
| たかさ | 0.6m |
| おもさ | 3.4kg |
| とくせい | おどりこ |
| 種族値 | |
| HP | 75 |
| こうげき | 70 |
| ぼうぎょ | 70 |
| とくこう | 98 |
| とくぼう | 70 |
| すばやさ | 93 |
| 合計 | 476 |
| おぼえるわざ | |
|---|---|
| レベル | わざ名 |
| 1 | はたく |
| 4 | なきごえ |
| 6 | つつく |
| 10 | てだすけ |
| 13 | エアカッター |
| 16 | バトンタッチ |
| 20 | フェザーダンス |
| 23 | アクロバット |
| 26 | フラフラダンス |
| 30 | はねやすめ |
| 33 | ちょうはつ |
| 36 | エアスラッシュ |
| 40 | めざめるダンス |
| 43 | こうそくいどう |
| 47 | ぼうふう |
モチーフはそれぞれ
ばりばりスタイル→ブレイクダンス
ひらひらスタイル→フォークダンス
ゆらゆらスタイル→アラビアンダンス
ひえひえスタイル→アイスダンス