まだ見ぬ世界のポケモン達   作:雪見柚餅子

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降り頻る雨を裂くしのびポケモン

 とある場所に一年を通して雨雲が晴れる事無く空を覆い続ける不思議な島が有った。降り続ける雨によって浜辺には高波が打ち寄せ、陸では洪水や土砂崩れが頻発。たとえ装備を十二分に整えていたとしても危険が尽きないということから、人間の立ち入りが厳しく制限され、発見から数十年の月日が経った今でも詳細な調査が未だに行われることが無い未開の地でもある。

 そんな危険な島だが、このような場所にも……いや、このような場所だからこそ多くのポケモンが生息している。「パラセクト」や「ヌオー」、「ドロバンコ」など、湿度が高く、肥沃な泥が豊富な環境を好むポケモン達が、島の至る所で暮らしている。

 そんな島の一角に聳える山の麓に見慣れぬポケモンの姿が有った。その姿はしのびポケモンの名で知られる「ゲッコウガ」に酷似している。だがよく観察すれば、体の各部が通常のゲッコウガとは異なることが分かる。群青色の体色こそ同じだが、頭や足は土のようなカーキ色。首周りに巻かれた長い舌も、通常より色が薄いようだ。

 これは色違いという訳ではない。その正体は、この雨が止まない島の環境に適応したことで姿が変化した、固有種(リージョンフォーム)のゲッコウガである。

 

ゴゴゴッ……

 

 突然、低い何かが揺れ動くような音が聞こえ出す。違和感を感じ取ったR(リージョン)ゲッコウガがふと足元を見ると、山の斜面からポロポロと砂利が転がり落ちてくる。

 

コガッ!

 

 次の瞬間、大量の土砂が濁流のように斜面を流れ落ち、Rゲッコウガを飲み込まんとする。だがRゲッコウガは慌てる事無く、その場から素早く跳び退り回避。そのまま土砂は木々や転がっていた岩を巻き込みながら麓へと流れ落ちていく。

 その光景を静かに見送った後、Rゲッコウガは再び斜面へと視線を移す。今の揺れはただの地震ではない。何かが地面で動いた気配を確かに感じ取っていた。

 

ゴゴゴッ

 

 予想を肯定するように、再び足元が揺れたかと思うと、同じように土砂が次々に流れ落ちてくる。Rゲッコウガは冷静に流れ落ちてくる土砂の中から大きな岩の欠片を見分けると、それらを足場に斜面を駆け上がっていく。そして掌に集めた雨水を用いて瞬く間にクナイを作り出すと、地面のある一点へ向けて勢いよく投擲。それは砂や岩を砕き、地面に鋭く突き刺さった。

 

ガアァァネッ!!

 

 それによって地面を砕き土砂を巻き上げながら姿を現した巨大な影。痛みに身を捩りながらも、Rゲッコウガを敵意を持った視線で睨みつけるこのポケモンの名は、てつへびポケモン「ハガネール」。先程から発生していた地鳴りは、全てこのハガネールが巣穴を広げるために移動していたことで起きていたものだ。

 このハガネールは別に敵意や悪意が有って行動していた訳ではない。だがこのまま放置していれば、この近くにあるRゲッコウガの寝床までもが土砂崩れに飲み込まれてしまうかもしれない以上、戦いを避けることは出来ない。

 

ガァッ!

 

 怒りのままに攻撃(アイアンヘッド)を仕掛けるハガネール。だがRゲッコウガは身軽な動きでその攻撃を回避する。そのままハガネールの許へ肉薄しようとするが、ハガネールは続け様に長い尻尾を地面に叩きつける。それ自体はRゲッコウガに命中することは無かったが、力任せに地面に叩きつけたことで石や泥が散弾のように飛び散り、Rゲッコウガを襲う。

 

コウガッ!

 

 身に迫る石の弾丸。小さな一粒すらRゲッコウガは完全に見切り、避け、弾き、撃ち落としていく。

 

ガッ!?

 

 順調に飛び散る石を捌いていたRゲッコウガ。だがその動きが急に止まる。

 

ガネエエエェッ!!

 

 原因は、大きく口を開いたハガネール。その口から放たれた強烈な音波(いやなおと)が、Rゲッコウガの鼓膜を揺らし、動きを封じたのだ。そしてハガネールはその明確な隙を逃さない。太く長い尻尾を鞭のように振るい、Rゲッコウガを薙ぎ払う。

 

ゲッ!?

 

 文字通り鋼のような尻尾の一撃を受け、Rゲッコウガは地面を二、三度転がると、そのまま斜面を流れ落ちる土砂に飲み込まれた。

 その濁流へと消えていく光景をハガネールはしばらくじっと見つめると、勝利を確信し口角を上げる。そして自慢げに鼻息を一つ吹くと、再び巣穴を掘り進めるべく、地面に向かって頭部を突き立てようとし……

 

キィンッ

 

 不意に首筋に鋭い痛み。同時に意識が揺らぐ。何が起きたのか、眩んだ眼を瞬かせながら振り向くと、そこに居たのは水で出来た二振りの刀を手にしたRゲッコウガの姿。何故、土砂に飲み込まれたはずのRゲッコウガが居るのか。その疑問に戸惑いつつも、反撃をしようと試みる。だが攻撃を急所に受けたこと鈍った攻撃は、当然のようにRゲッコウガに命中することは無く……

 

コウガッ!

ガァネ……

 

 擦れ違いざまに放たれた斬撃によって頑丈な外殻を斬り裂かれたハガネールは、地面を揺らしながらその場に倒れこむのだった。

 

コガ……

 

 ハガネールを下したことを確認したRゲッコウガは、脇腹を庇いながら膝を突く。

 実は土砂に飲み込まれたのは、Rゲッコウガが作り出した分身(みがわり)。ハガネールの攻撃が命中する寸前に、入れ替わっていたのだ。だがこの技は自らの体力を大きく消耗する技。それに加え、直撃こそしなかったものの、僅かに尻尾が掠ったことでダメージを受けており、その状態で無理に動いたことで、Rゲッコウガも体力のほとんどを使い果たしていた。

 それでもRゲッコウガは自らの体に鞭を打ち、立ち上がる。雨の音に紛れているとはいえ、今の戦闘は近くに居るポケモン達には気付かれているだろう。無防備な状態を晒していては、漁夫の利を狙ってやってきた他のポケモンに襲われる危険がある。そうなる前にここを離れなければならない。

 

ゲコッ……

 

 勢いが強まる雨の中、Rゲッコウガはその姿を消していく。残ったのは荒れた地面と、気絶したハガネールだけ。

 

 雨が降り続ける不思議な島。この島には、まだ見ぬポケモンが隠れ潜んでいるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ケロマツ(原種)

 

↓Lv16で進化

 

ゲコガシラ(原種)

 

↓Lv36で進化

 

ゲッコウガ
ぶんるいしのびポケモン
タイプみず・じめん
たかさ1.6m
おもさ46.0kg
とくせいげきりゅう(すりぬけ)
種族値
HP72
こうげき110
ぼうぎょ72
とくこう88
とくぼう66
すばやさ122
合計530

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1さみだれのたち
1つじぎり
1つるぎのまい
1くろいきり
1はたく
1みずでっぽう
1なきごえ
1でんこうせっか
10したでなめる
14みずのはどう
19えんまく
23あなをほる
28まきびし
33つばめがえし
42みがわり
49かたきうち
56かげぶんしん
68ハイドロポンプ
進化さみだれのたち

 

 

 

わざ名タイプ分類威力命中率PP範囲優先度直接攻撃効果
さみだれのたちみず物理30-101体選択0切る技。

1ターンに3回連続で攻撃。必ず命中する。




特に意味は有りませんが、本話の舞台は「雨降り注ぐ島のあまぐもポケモン」で登場した島と同一という設定があったり。
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