「阿賀野姉進水日おめでとう! これ、プレゼント!」
「ありがとう能代〜!」
「私からも。おめでとう阿賀野姉」
「ありがとう矢矧〜!」
「ぴゃー! 酒匂からもー!」
「ありがとう酒匂〜!」
妹達から受け取ったプレゼントを持ってご満悦な阿賀野。今日は阿賀野の進水日なのである。
「後、妹一同からのプレゼントもあるわよ。今取ってくるわ」
「えー!! まだあるのー!? ありがとうー!!」
矢矧からの予想外の一言に阿賀野は期待と嬉しさで胸を高鳴らせる。
少しして、台座からはみ出す程の大きさのプレゼントボックスを矢矧が押して戻ってきた。
「うそー! なにこれ!? 開けてもいい?」
「いいわよ」
「やったー!」
阿賀野が嬉々としてリボンを解き、プレゼントボックスを開く、そして箱の中にいた、目を弓なりに、口を半開きにして貼り付いた笑顔を浮かべる長良とバチリと目が合う。
「阿賀野。進水日おめでとう!」
そう言ったかと思うと長良はその場でゆるゆると立ち上がる。
「プレゼントの長良だよ!」
「…………」
満面の笑みで長良がそう言うと、阿賀野は長良の両肩を掴む。
「今日から一週間、阿賀野と一緒に」
そしてそのまま力を入れ、長良の身体をゆっくりと下へ沈めていく。
「朝から晩まで生活することによって阿賀野を監視……」
語り続ける長良を無視して阿賀野は下方へと力を加え続ける。長良は長良で阿賀野の行動の一切を意に貸していないように話をし続ける。
「……じゃなくて、一緒に過ごすことで阿賀野のより良い生活をサポート……」
そして話し続ける長良を阿賀野は今一度箱に詰め直す。
「するためのプレゼントなの! これからよろし……」
長良が言い切るより先にスッと蓋をかぶせると解いたリボンを固結びにして今一度箱に封をする。
「はい! それじゃあケーキ食べよっか!」
何事のなかったかのように踵を返そうとした瞬間だった、箱の側面を突き破り勢いよく飛び出した長良の腕が阿賀野を掴む。
「うわ!? うわ〜〜〜〜!!!」
悲鳴を上げて阿賀野は長良の腕を引き剥がそうとするが、長良は決して阿賀野を離そうとはしない。バリッと音を立ててもう一本の腕を突き出し、阿賀野を両腕でがっしりと掴む。
「やめてー!! 引きずり込まないで!! 阿賀野を引きずり込もうとしないでー!!!」
ガタガタと揺れる長良の腕が生えた巨大なプレゼント箱。そのプレゼント箱に引っ張られる阿賀野という異様な光景が繰り広げられている。
「た、助けてー!! 能代ー!! 矢矧ー!! 酒匂ー!!」
姉妹に助けを求める阿賀野。その表情と声色は真に迫っていた……。
「も〜……何やってるのよ阿賀野姉〜……失礼よ?」
「せっかく長良さんが来てくれたのに……」
「ぴゃ〜……」
「何やってるのじゃないよ!!! なにこれ!? どういうこと!?」
呆れて表情でチョコケーキを食べている妹達に対して阿賀野は滅多に出さない迫真の見幕で抗議する。
「なんなのって……さっき言ったじゃん。プレゼントだよプレゼント」
「プレゼント〜?」
「そうそう。阿賀野の進水日に長良自身をプレゼント! どう?」
「……それ阿賀野が長良さんにやった奴じゃないですか……」
長良の進水日、長良の要望により阿賀野は自分自身をプレゼントすることになったことがある。
「うん、だからお返しに阿賀野の進水日には長良をプレゼントしたの! ほら見て、今日は髪もリボンで結んでるんだよ!」
「へ〜……」
長良さんが自分の頭を指差す。すると確かにいつもの髪留めではなく、プレゼント箱と同様の赤いリボンで結んであった。しかし阿賀野の反応は淡白だ。
「……ねえ、このプレゼント考えたの誰?」
阿賀野が姉妹達の方へ視線を移動させつつそう言うと、矢矧がパッと手を上げる。
「……やっぱり」
「何か問題?」
「問題よ〜……みんなには悪いけど阿賀野はこのプレゼントは受け取らないからね!」
「それは残念だけどできないよ阿賀野」
阿賀野の一言に長良が口を挟むと、阿賀野は長良を睨みつけるように視線を長良に向ける。
「……何でですか?」
「阿賀野が今食べてるチョコケーキ。それ長良が作ったケーキだから」
「え? そうなんですか?」
「そう。ケーキと長良は『セット』だから。ケーキ食べたってことは長良も受け取ったってことだよ!」
「え〜……何ですかその抱き合わせ商法……詐欺ですよ……」
長良の一言に阿賀野は落胆する。
「そういうわけだから阿賀野。一週間よろしく」
「え!? ちょっと待ってください! 本当に一週間いるんですか!?」
「着替えとか準備しないとね〜」
「進水日のプレゼントなのに阿賀野を無視して話を進めないでくださいよ! ちょっと能代達もなんとか……なに笑ってるの!?」
焦る阿賀野を妹達は微笑みつつ、無言で見つめるだけだった。こうして阿賀野の新たな一週間が始まるのだった。