SAOー紅玉を貫く大樹ー   作:明石

16 / 45
第三章 不穏
2層ボス戦


 2024年11月20日 ー残り717日ー

 

 

 2層の攻略は以前が9日間も掛かったのだが、もう情報は揃っているし戦闘にも慣れている今回の攻略組は5日でボス部屋を見付け出してその翌日である6日目にボス戦に挑むこととなった。

 平均レベルも更にレベルを上げて18となったらしいティターニアを除けば11~12ほどになっており、数値的には問題は無い。

 

 しかし、この層のボスはレベルよりも装備を強化して麻痺などの阻害耐性を上げる必要がある。

 そこで商売上手なリズは2日前の攻略会議が終わった後に軍や聖竜連合と俺達相手に、まだ店を持っている訳ではないけれど宣伝をして鍛冶スキル上げとお金稼ぎを同時に行って、更に儲けた金でこの2層で一番値の張るメニューである牛肉料理フルコースを俺達に奢ってくれた。

 

 ウルバスの街と同じくテーブルマウンテンを堀り抜いた場所に作られた村であるタランが2層迷宮区攻略の拠点となっていて、本日13時にこの村の出口でボス戦参加者は集合となっている。

 現時刻は11時半とそれまでまだ時間はあって、俺とリーファ、ユイ、リズ、シリカは借りていた宿屋のオープンテラスにて昼食を調達に行ったアスナを待ちながらアイテムや装備のチェックをしていた。

 

「皆、お待たせ!

 キリトくんオススメの肉まん買ってきたよ」

 

「食べ物もモンスターもほんと牛だらけよね~。

 でも美味しそうじゃない」

 

 大きな紙袋を両手で抱えながら現れたアスナ。

 血盟騎士団の方はヒースクリフの裏切りによってメンバーは減ってしまったけれどようやく再始動といったらしく、彼女もここ数日は四六時中俺達と一緒ではなかったためになんだかとても嬉しそうだ。

 

 10分ほど前から2人で空腹を訴えていた俺とリズが我先にとそのテーブルに置かれた紙袋に手を伸ばしそれにユイ、リーファ、シリカが続く。

 

『いただきまーす』

 

 買ってきたアスナはここ最近久しぶりに見たかもしれない満面の笑顔でその肉まんを食べようと口を開ける皆を見守っていた。

 

「ふわっ!?」

 

 最初に驚きの声を上げたのはシリカだったが、それからワンテンポ遅れてリズやリーファ、ユイからも声が上がる。

 俺はというとこの肉まんを頬張ろうとした瞬間にアスナの企みを察知して手を止めていた。

 

「何これ!?

 こんなの、肉まんじゃないよ~!

 

「これ、明らかにクリームパンでしょ!

 アスナ、何でこんなの暖めてあるの? 」

 

 肉まんであるはずのそれを口にした彼女らの口にはシュークリームを食べた時に気を付けないと溢れ出すクリームのごとく、べっとりと黄色いクリームが付いてしまっていた。

 

 そう、これは肉まんなどではなく中にはカスタードクリームとイチゴっぽい甘酸っぱさを持つ果物の入った通称タラン饅頭と呼ばれるものだが、きっと暖められて販売されているのは開発スタッフの設定ミスのはずだ。

 

「あはははっ。

 私はただキリトくんからイケルって聞いたから買ってきただけよ」

 

『へぇ~』

 

 口に付いたクリームをハンカチで拭く女の子達の様子を見て面白可笑しくといった様子で笑うアスナの全く悪気を感じさせない何気ない一言によって、あっという間に怒りの矛先が俺に向いてしまう。

 

「ちょっと待て!

 確かに美味しいって言ったのは事実だけど、昔の話だからな!」

 

 そう弁明しても効き目は無くてあれこれと言い争いになるが、今日の夕飯は全て俺の奢りとなることを約束させられて彼女らはようやく落ち着きを取り戻す。

 

 そんな一幕のすぐ後、集合時間も近くなり身支度を整えて出発をする俺達。

 まだリーファはレベル4になったばかりでまだボス戦には連れていけないため、ユイと共に留守番で3層主街区が有効化されたらそこで合流することになる。

 

 本人に言ったらぶっ飛ばされるけど、ユイにしてみるとリーファって叔母さんなんだよな…。

 

 

 

 

 待ち合わせ場所となる出口に向かう途中、軍や聖竜連合のメンバー達があちこちを駆け回りタランの村はやけに慌ただしくなっていた。

 なんだろうと思いつつも集合場所へ行くと、シンカーさんとユリエールさん、リンドが言い争いとも取れる様子で何かを話し合っていた。

 

「どうしました?」

 

「アスナさん。

 それがですね、ティターニアから『ボスを倒したので3層の転移門を有効化させておきます』ってメッセージが来て、今それを確かめたらどうやら嘘ではないことがメンバーの連絡によって分かりました」

 

「そんなの有り得ないだろ!

 ここのボスは大型の護衛が2体も段階的に湧くのに、6人だった奴らがそれを捌き切ってしかもボスまで倒したのか!?」

 

 シンカーさんからのあまりにも突拍子の無い現状の説明に驚きが隠せない俺は思わずムキになりながら反論をする。

 

 本来、ボスなんて数人で倒せるものではないのだ。

 いくらレベルが100を越えていようが圧倒的なHP、攻撃力、防御力は変わらず1層のボスであっても数十人は必要なのである。

 

「いや、メッセージによると他の大きいギルドとの合同での挑戦だったらしい。

 先程から風林火山に3層にいるティターニアを引き止めるよう頼んでいて、アスナさんが来たらそっちに向かって事情の聞き取りをしようとしていたところだ」

 

 混乱する俺達4人を一瞥しながら腕を組んで困り果てたような表情を浮かべるリンドが更に説明を加える。

 かつて最強プレイヤーが率いていた血盟騎士団とも衝突する時もあり、トップギルドを自称している聖竜連合のリーダーからすれば自分達の遥か上を行くティターニアの存在は不愉快なのだろう。

 

 あいつら、攻略組との和を乱してまで何がしたいんだ?

 何の目的があって予定よりも早く別のギルドとボス戦に挑んで先へ進もうとしているのか、いくら考えてもその答えは出ないでいた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。