SAOー紅玉を貫く大樹ー   作:明石

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これから

 1層で彼と出会い、私はその強さに憧れを抱いた。

 2層から協力して一緒に前へ進んでいく中でいつの日にか憧れは恋へと移り変わる。

 

 25層ボス戦直後までの約半年もの間、2人で進んでいけばいくほど私はこの人に徐々に惹かれていった。

 それでも彼の強さに追い付けず負担となってしまってコンビを解消してから血盟騎士団副団長となった私は今にして思えば、恋人にフラれてグレた状態だったのだろう。

 

『攻略の鬼』『狂戦士』などと呼ばれて畏れられ攻略組の命を背負う立場に任命されてしまった毎日の中で独りを選んだ彼を心配して様子を伺うと、別の女の子と仲良く街を歩いていてその怒りを「迷宮区をさっさと攻略しなさい」との建前でもって後日彼にぶつけた。

 しかし、その時にはもうその女の子や新たな仲間は死んでしまって憔悴しきっていた彼は私の心ない冷酷な言葉に立腹し、更に孤独の道へ足を踏み入れていった。

 

 当時の私は憧れの人がまるで別人のように腑抜けてしまったように見えて八つ当たりをしていたようなものだ。

 お互いに言いたいことは山ほどあったはずだけど頑固な意地を張ってずっと話もせずに私はフロアボス攻略に、彼は黒猫団の敵討ちを兼ねて犯罪者狩りに熱を上げた。

 

 そんな互いに反目しあう中で私達の周りにいてくれたリズやシリカちゃん、クラインやエギルさんといった良い人達に支えられながら私とキリトくんはまたコンビを組んでいた時のように背中を合わせて戦ったり、時に冗談を言い合う仲を取り戻した。

 

 今にして思えば、10月半ばの《ラグー・ラビット》の調理を依頼された時からずっとキリトくんと行動を共にしてきた。

 この2ヶ月間で辛いこと、悲しいこともたくさんあったけれども何よりも周りの人の助けがあって想い人と結ばれたことは幸せ以外の何物でもない。

 

 でもその愛する人が何日も行方不明のまま、彼がいなければどうしようもない事件が起こってしまっている。

 

 

 

 

 攻略組への参加を希望していたのに突然のPKによって自分以外が殺されてしまった、と泣きながら話してくれた彼はこれまでギルドで稼いできたお金を大事に使いながらはじまりの街に留まると言い残して去っていった。

 ただ「御愁傷様です。 メンバーのご冥福とあなたのこれからのご多幸をお祈りします」としか声を掛けられなかった自分の無力感に腹が立つ。

 

「……1日から昨日の3日までのPKによる死者は34人と確認されたヨ。

 

 今のところ報告された手口は、物陰から急に数人のプレイヤーが襲ってきて剣を刺したと思えばあっという間にHPが削られて死に至らせル。

 その後はわざと1人だけ目撃者を残して立ち去るものだそうダ」

 

 その後、アルゴさんとの情報提供や対策などの話し合いをしようと適当なNPCレストランに入って席に腰を下ろしてから耳にした彼女の報告には驚きを禁じ得なかった。

 2日間で学校のクラス1つ分ほどの人が身勝手な理由で殺されてしまったという、にわかには信じ難い報告であるが彼女の情報は正確さがウリなので受け止めるしかないのだろう。

 

 しかもその報告された現象はキリトくんがアルベリヒに刺されHPが全損した時と酷似している。

 

「…そのPKに使われた武器はどんなものですか?」

 

「目撃者も極度のパニックで詳細な情報が引き出せないからネ…。

 でも赤く細長い剣だという共通の供述が出てるヨ」

 

 疑問を投げ掛けた後に気付いてしまったけど、確かに自分の仲間がいきなり殺されていく中でそんなものを記憶に留めているはずもない。

 それに、たとえ見ていたとしてもその凄惨な光景を思い出してパニックに陥る可能性があるために無闇に聞き込みも出来ないので詳細な情報はまだ入ってないということかもしれない。

 

「…その剣に色や形が似たものでティターニアのリーダーがキリトくんを刺したのはしっかり見てました」

 

「……キー坊の一件と似てる、成る程ネ。

 でもキー坊とは違って今年に入ってからの被害者は生命の碑でちゃんと死亡が確認されてるし現在地が変な場所でもないヨ」

 

 謎は深まるばかりのこの息の詰まる空気の中、私もアルゴさんもその重圧感を誤魔化すようにテーブルに置かれたティーカップを口許に運んで香り高く甘みのある紅茶を飲み込む。

 

 《Immortal Object》つまりは不死属性を何らかのクエストや装備で手に入れることはできないし、何より現攻略組最強レベルのプレイヤーのHPを数秒で全損できる武器やアイテムも有り得ないとユイちゃんから聞いている。

 それこそ一般プレイヤーアカウントよりも高位の運営スタッフが使うスーパーアカウントかGM専用のマスターアカウントを使って設定を好きなように変更するしか方法は無い、とも。

 

 ティターニアがスーパーアカウントを使っている可能性は高いのではないか。

 攻略組とは10以上も離れているハイレベル、見た目でも分かる高スペック装備、尾行に長けた情報屋をも欺いてきた異常な隠蔽スキルなど不可解な点もそれで説明が付いてしまう。

 それにティターニアとラフコフがPKに使った武器の特徴も現時点で共通点がある。

 

 ティターニアの同盟ギルドはまさかラフコフ…?

 殺人ギルドと運営側が手を組んでいるということだとしたらそれは最悪の組み合わせになる。

 

 キリトくん、私はこれからどうすればいいの?

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