夢は世界一のパサーと世界一のストライカー。二人で叶える夢。

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「選別」の無い世界で世界一のパサー目指す『あいつ』が逃げずにボールを蹴れていたら……そんなIFとエゴイスト達が交差するクロスオーバーです。

短編なのでブルーロックキャラは最後チョロっと出るだけです。

後半雑かも。


勇敢な牛

 全国高校サッカー競技大会、東京都大会・決勝

 

 播磨生高校サッカー部は全国大会への切符を懸けたこの試合に臨んでいた。

 後半の終盤に降り出した雨はピッチを泥塗れにしてぬかるみを生み出す。足元が悪い中1点のリードを許してしまっているこの状況は早く脱したい所だろう。

 

 なんとか同点に持ち込もうとペナルティーエリアを走るチームの司令塔、明石靖人はそのドリブル技術と視野の全てを決定的な瞬間を生み出す為だけにフル動員していた。

 

(勝ったら全国!!)

 

 ペナルティーエリアを走りつつ、自身が絶対の信頼を寄せるチームのストライカー、親友の青山仙一へのパスコースを探る。

 しかし敵のディフェンスも明石がゴールに突っ込む事も青山を始めとする仲間へのパスも許しはしない。折角のリードを決して潰させない為に何が何でも明石からボールを奪いにかかる。

 

 泥によるぬかるみ、滑りが死角から飛び出たDFのスライディングを加速させ、明石の足元を捉えてボール諸共明石を弾き飛ばした。

 

『ファウル!PK!』

 

 ホイッスルが鳴り、主審の下したジャッジはファウル。流石に今のは悪質だった。ペナルティーエリアでのファウルによって播磨生高校はPKをもぎ取った。

 

「ナイス明石!」

 

「良くPK取った!立てるか?」

 

「ああ。サンキュ」

 

 青山の手を借りて立ち上がる明石。元々は青山にパスを繋いでゴールを決めて貰う算段だったが、結果オーライだ。残り時間が少ない中、確実にシュートを一本撃てるこの状況はありがたい。

 

「時間無ぇ……ラストプレーだぞ。ビーフになれビーフに!勝ちゃ全国だ」

 

「分かってる」

 

 勇敢な牛と書いてビーフと読む。親友の相変わらずよく分からない気合いの入れ方に返答しながらも呼吸を整え、ゴールに向き直る。

 

(ミスは許されねぇ。決めれば同点。延長で勝つ!勝って全国行くんだぞ俺……!キーパーどっち動く?右か…左か…読まれてたらどうしよう……!!)

 

 じっくりとキーパーを観察しつつ、シュートコースを図る。このPKで1点をもぎ取ればそこですぐに後半は終わる。しかし外したり止められたりしたらもうシュートは撃てないだろう。そうなればリードされている以上、そこで試合は終了。播磨生は負ける。

 

(くそ、重圧(プレッシャー)がハンパねぇ!!外したら即終了だし、俺がチームの命運握ってる……!いけるのかい、いけないのかい、オイ俺……!)

 

 自問自答を繰り返し、気付いてしまった。勝利と敗北の境目に立つ事で自分達の高校最後の年の大会が終わるかもしれない事に。負ければ高校サッカーが終わり……その先が望めない事に。サッカー人生が終わるかもしれない事に。

 

 故に恐怖で足がすくむ。何度も撃ってきたはずのシュートを撃つ事が怖くて仕方がない。決められなければ夢は潰えるから。人生の分岐点で勝負を仕掛ける事がこれ程にまで怖い事だと、明石は知らなかったのだ。

 

(撃てない!俺……撃ちたくない!!)

 

 自分で自分の夢を潰しかねない勝負に明石は出れなかった。PKでのシュートテクがチームで最も優れているのは自分なのに。怖くて息が荒れる。

 中々シュートを撃たない明石の様子がおかしい事に気付いた青山が口を開く。

 

「……おい明石、お前……やっぱりアレなのか?」

 

「へ…?」

 

 気付かれたか?明石自身、自覚していない内に弱腰である事を青山に見抜かれたのではないかと焦る。しかし青山の問いは全く違うものだった。

 

「足、痛めてんのか?」

 

「え?」

 

 青山の中には明石が弱腰である事など、腰抜け(チキン)になっているなどという発想は無かった。常にチームの音頭を取って的確な指示を出してチームを勝利に導いてきた最高のパサー。それが青山仙一の知る明石靖人だったから。

 

「さっきのプレーで痛めたんだろ?スライディングの勢い凄かったからな。実際ファウルだったし、骨いってるかもだな……。顔色も悪いぞ」

 

「え…あ、まあ…ちょっと…くるぶし…な」

 

 嘘だ。

 

 青山の勘違いを都合が良いと思ってしまった。ビビってシュートが撃てないなんて知られたくなかった。サッカー人生が終わるかもしれないのは青山達だって同じなのに。

 そんな明石の心境など知らずに青山は前に出る。

 

「俺が蹴る」

 

「え」

 

「安心しろって。俺が全国に連れてってやるよ」

 

「でもお前PKが苦手……」

 

 そう。青山はFWでもPKは苦手だった。確かに青山は明石のチームメイトの中では一番の実力を誇るストライカーだ。だがそんなストライカーでも不得手なシュートシチュエーションは存在する。青山の場合はPKがそれにあたる。

 それでも青山は蹴る覚悟があった。親友の作ってくれた最後のチャンスを不意にしたくなかったから。

 

「バーカ、良く覚えとけ明石。チャンスってのはこんな時俺のようなヒーローの所に転がって来るもんだ」

 

 軽くストレッチをして身体と緊張をほぐす。

 

「そしてヒーローは、苦手も逆境も関係なくチャンスを確実にズドン!だ!!」

 

 震えが止まった。

 青山の言葉が明石の心に強く響いた。

 

「良し!じゃあ……」

 

「待て」

 

 勝負に出ようとした青山を止める。振り向けば数秒前とは打って変わって鋭く、肝の座った目をした明石が一言述べる。

 

「俺が蹴る」

 

 前に出て明石はゴールの全体を真剣に見渡し、シュートコースを決める。

 

(ありがとう青山……俺、大事な事を忘れてた。お前は世界一のストライカーに……そして俺はそんなお前にパスを届ける世界一のパサーになる!!それが俺達の夢だ!!)

 

 足元に注意しながら明石はゴールを見据えて助走を付けて思い切りボールを蹴り出した。

 

(その夢の為に!人生を懸けた勇敢な牛(ビーフ)になる時が今なんだ!!夢の為にここでゴールを決めたい!!)

 

 もしここで明石が勇気を出せずに青山に蹴らせていれば泥でぬかるんだフィールドに足を取られてただでさえ苦手なキックを盛大にフカしていただろう。

 だがここでは明石が蹴った。恐怖をかなぐり捨て、夢の為に人生を懸けた大勝負に出た。その視野でシュートコースを割り出し、シュートにはストライカーへボールを繋ぐ為のパステクニックを注ぎ込んで、泥で足元が悪い中、確実にゴールネットへとボールが発射された。

 

 敵のキーパーは慌ててボールを掴もうと飛び出す……が、彼はぬかるんだフィールドの上で力み過ぎた。足は滑って飛び付く事も出来ずにすっ転ぶ。当然ボールに手は届かず、ゴールネットに吸い込まれていくのをただただ見届ける事しかできなかった。

 

 同点に追い付いた事で後半で試合は終わらずに延長戦へ突入。互いに疲労と緊張で心身共に大きく消耗しながらも執念深くゴールを狙った。

 

(見える……中盤のこいつらが邪魔だな。あ、すぐ近くに来てる……青山が回り込んでフリーだ。青山への最短コース……!!ここだ!!)

 

 それでも集中と体力を切らす事なく最後にシュートを決めたのはその広い視野で絶好のシュートポイントを見つけた明石のループパスに喰らい付いた青山の強烈なミドルシュートだった。

 

 結果、勝利して東京都大会優勝を勝ち取ったのは播磨生高校。見事に全国大会への出場権を掴み取った。

 

****

 

 数日後、全国大会を控えた播磨生高校サッカー部は部員達で手分けして集めた全国大会出場を決めた各都道府県の代表チームの情報を元に、全国を勝ち抜く為の作戦会議を開いていた。

 

「昨日の埼玉県大会の決勝、勝ったのは松風黒王だってよ」

 

「あの吉良涼介のいるチームか!」

 

 播磨生イレブンは埼玉県の優勝チームの中にいるある一人のFWの名前を聞き、警戒レベルを引き上げる。

 吉良涼介。日本の至宝とも呼ばれる高校生FW。U-18日本代表への飛び級招集まで決定している実力者だ。

 

「対戦相手の一難も惜しかったみたいだな。後半最後の攻撃、このFWが自分で撃ってたら俺達みたいに延長で逆転できたかもしれねーし」

 

「とにかく、全国でも松風黒王とぶつかる可能性は高い。吉良涼介を中心に情報を集めて行こう」

 

 特に司令塔の明石は敵選手の情報を広く深く把握していなければならない。故に仲間達と集めた情報を一つ一つピックアップして対策を練る。まずは一回戦の相手が何処なのかが分からないといけないが。

 

 すると遅れて部室にチームメイトがやって来る。

 

「明石ー」

 

「あれ?若林?」

 

「明石、監督が呼んでるぞ」

 

 監督から呼び出しを受けた明石が職員室で聞かされたのは衝撃的な話だった。

 

「U-18日本代表に招集……!?俺が!?」

 

「ああ、都大会決勝でのPKとアシストが決定打となって高く評価されたらしい。全国大会前には合宿は一旦終わる予定らしいから、行ってみろ。しかもこの合宿、最終日にはU-20相手に練習試合をするらしいぞ」

 

「マジすか!?」

 

 突如として受けたU-18日本代表への招集。世界一のパサーを夢見る明石からすれば願ってもない話だった。

 この合宿で…そしてU-20との練習試合で結果を出せばプロ入りも見えて来る。U-18に呼ばれた時点で大学の強豪チームの目に留まる可能性も格段に上がったのだ。

 

(それにU-18って事は吉良涼介も来るはずだ……!全国大会の前に吉良の情報を得られるのはデカい!!)

 

 当然、二つ返事でこの話を受ける。部室に戻ってこの事を仲間達に打ち明ければチームメイトは大いに盛り上がる。もしかしたらこのチームから未来のプロ選手……それも日本代表が出るかもしれない。そんな夢物語が現実になろうとしているのだ。

 

「すげー明石!PK決めたのも延長でのアシストも凄かったもんなー!!」

 

 しかし盛り上がる仲間達とは反対に、何やら考え込む様子を見せる者がいた。

 

「青山?」

 

 明石が世代別代表に選ばれて、自分は何もない事に複雑な心境なのかと邪推する者もいたが、その答えは全く違うものだった。

 少し気まずそうに鞄から一通の封筒を取り出す青山。そこから出した一枚の紙を開き、明石達に見せる。

 

「実はよぉ、家にこんなん届いたんだ」

 

「日本フットボール連合から……?」

 

「これ……強化指定選手……?」

 

 それは青山が厳正な審査の結果、その実力を認められた事を示していた。世界一を目指すこのコンビにとって二人同時にその為の道が開けた事は幸運以外の何物でもない。

 

「嬉しかったけどよ、全国もあっからどうしたもんかと思ってよ……」

 

 照れ臭そうに目を逸らしながら話す青山。しかし明石の表情は口の端がどうしようもなく釣り上がっていた。今にも破顔してしまいそうな程に喜びの感情が抑え切れていない。それを見た青山の顔も自然と笑みを浮かべ始め、遂に抑えきれなくなった感情を全力で表に出す。

 

「「うおーー!!俺達すげーー!!」」

 

 全国大会前に一旦チームを離れる事にはなるが、播磨生というチームが全国を戦い抜く為にも、この二人の夢の為にもこの招集によるレベルアップは不可欠。明石、青山双方この合宿には参加を決めていた。

 

 下校しながら二人は世界一のパサーと世界一のストライカーになる為の夢を語り合う。

 

「けどU-18日本代表って点で考えるとまだ明石の方が上か」

 

「でも俺もお前もビッグチャンスが来たんだ!絶対モノにしようぜ!マジでプロとかフル代表とかの未来が見えて来る!!」

 

「おう!待ってろ、必ず追い付く!ストライカーとしてな!」

 

 ガッシリと手を合わせ、()()()で合流する事を誓い合う親友。明石はU-18日本代表として、青山は強化指定選手として世界に向けての一歩を踏み出した。

 

 こうして、明石靖人(パサー)青山仙一(ストライカー)……共に世界一を目指すと誓い合ったコンビの行く道は一旦分かれる事となる。

 

 そして……

 

 

「良い脳ミソしてんじゃねーか」

 

「え……糸師、冴……!?」

 

 

 U-18日本代表合宿最終日、U-20日本代表との練習試合で明石靖人は本物の世界レベルの選手と出会い、その実力を目の当たりにする事となる。

 

 

「世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない」

 

「な……」

 

 青山仙一は世界一のストライカーを生み出す、『実験』に身を投じる事になる。

 

 そして何の因果か……

 

 共に夢を叶えると誓った二人が再び相見えるのは、ぶつかり合う敵チームとしてであるという事を……まだ誰も知らない。




元々構想自体は考えてたけど、本誌で潔が周辺視で超越視界(メタ・ビジョン)とか言い出した辺りからもう止まらなくなった。

青山だって「世界一のストライカー」が夢なんだし、ブルーロック呼ばれても良いよね。

この先は明石が糸師冴に高く評価されてブルーロックとの試合に呼ばれるとかかな。

ここまで書いといて何だけど明石と潔の化学反応とか超見てみたい。作画はともかく原作者同じなんだし明石、ブルーロックに出てきてくんねーかな。

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