メインヒロインにTS転生したらしいが、細剣じゃなくて刀握りたい 作:星宮ひまり
掲示板ものとして書き始めたはずなのにしばらく掲示板形式がないかもしれないので初投稿です。
明けましておめでとうございます。今年も拙作を宜しくお願いいたします。
新年最初の話は掲示板……ではなくキリト視点です。あ、石は投げないで。
628:名無しの転生者
ついに転生者掲示板に、動画機能が戻ってきたぞぉ!
629:名無しの転生者
チート転生者の協力のおかげだな……『多元思考』の一部を提供して処理を行い、『無限魔力』で燃料確保ってさ
630:名無しの転生者
すげー……俺ら(掲示板転生者)にはできないことをやってのける、そこに痺れる憧れるゥ!
631:名無しの転生者
文句ばっか言ってレス消費することしかできない俺たちとは違うぜ!
632:名無しの転生者
まるで俺らが無能みたいな言い方はやめるんだ!
633:名無しの転生者
実際、適当なこと駄弁る程度しかできないんですけどね
リアルもたぶんニートでしょ
634:名無しの転生者
急に刺すじゃん……
635:名無しの転生者
べ、別に、世界が平和でやることないだけだし……(震え声)
636:名無しの転生者
緊急時に自動でカメラONになるやつもあんの?
637:名無しの転生者
それはない
さすがに負荷がヤバイし、人によってはしょっちゅうONになってウザいからだとさ
638:名無しの転生者
そっか……レスしなくなったスレ主の現状確認ができると思ったのにな
639:名無しの転生者
スレ残ってんなら生きてるんだろうから、気長に待ってやれよ
640:名無しの転生者
各世界で時間の流れが違うし、スレ主は大して待たせた感覚ないかもしれんけどなw
二〇二四年二月十九日。
現在の最前線である五十五層から五つ下の五十層、どこか現実世界の電気街に似た雰囲気を持つ主街区《アルゲード》。その、猥雑とした町並みに紛れて存在する喫茶店……を名乗る怪しげな茶屋にて。
「一つ、依頼を受けて欲しいんだ」
攻略組の青髪イケメンと言えばこの人、とアインクラッドに住まう六、七千人のプレイヤーに認識される男は、その端正な顔に人好きのする笑みを貼り付けてそう言った。
対し、攻略組の人間に《黒いの》だの《ブラッキー》だの、そしてごく一部の厄介な輩には《あんちくしょう》やら《G以下のお邪魔虫》やら悪罵される俺ことレベル七十八片手剣使いキリトは、慣れない笑顔を作ってこう答えた。
「帰れ」
「おっと、どうやら歓迎されてないみたいだな」
「そりゃそうだろ……」
溜息の混じった俺の声に、
「あのな。俺だって攻略をサボっているわけじゃないんだから、普通に忙しいんだよ。そりゃ、トップギルドの副団長を務めるアンタほどじゃないけどさ……」
ディアベルと視線を合わせると表示されるHPバー、その傍で主張する
聖竜連合は第三層で結成された――集まり自体は一層時点からディアベルを中心にして存在していたが、システム的な承認はギルド結成クエストがある三層――《
……彼は、一層から続けていた攻略組の意識改革を、半ばで諦めた。
二十五層で《軍》の前身である《
アイコンを眺めて思考の海に沈み始めた俺を、ディアベルの声が引き戻す。
「まぁ、確かに人が増えて忙しくなったのは事実だよ。オレは副団長だから、書類仕事なんかもあるしね」
「だろうな。だからといって、俺に頼むのはなんでだよ。ギルドメンバーに任務とか言って押しつけりゃいいだろ」
「それができるなら、《黒の剣士》にメッセージを送って呼びつけたりしないさ」
……そりゃそうでしょうね。
わかりきった答えを想像通りに受け取って、俺はやけくそ気味にティーカップを空にする。……このお茶、ミトに飲ませてやろうかな。俺は二度と飲みたくないけど。アスナ……は微妙だけど、リズなら協力してくれるか。
反撃が怖そうな計画は後で詰めることにして、俺はわざわざ貴重な時間を使ってまで呼び出してきた
「……で? 《
果たして、その二つ名の通り見事に髪を青く染め上げた男は「別にグレーなことだからキリトさんに頼むって訳じゃないんだけどね」と苦笑した。
この男は、時折俺たちに依頼と称して厄介ごとを投げてくる。
血盟騎士団の副団長を務め、自身もハイレベルの剣士であるディアベルが俺たちに頼むのは、そのほとんどがトップギルドに在籍する彼が表立って動けないことだ。聖竜連合の過激派(外から見ればほとんどが過激派みたいなものだが)が
もっとも、それだけが理由ではない。彼が持ってくる依頼は攻略組全体に関係し得ることが多く、放置するのはまずいと俺自身も思ってしまうからだ。そうでなくとも、心情的に断りづらいものを持ってこられると、容易には退けられない。……ついでに、話を聞く場にアスナやミトがいると、余計に拒めなくなる。勝手に引き受けても怒られるが。
そして今回は、心情的に断れないものだった。
ディアベルは表情を切り替えると、端的に答えた。
「報復依頼だ」
ずいぶんと物騒な響きに、俺は自然と視線を鋭くする。
こちらの様子を、真剣に話を聞く気になったと解釈したのか、ディアベルは顔の前で手を組むと、ややトーンの落ちた声で続けた。
「五日前、三十八層で《シルバーフラグス》というギルドが、オレンジギルドに襲われて壊滅した。生き残ったのはリーダー一人。そのリーダーが本来の依頼主でね……彼の仲間を殺したオレンジギルドに報復してほしい、とさ」
「……つまり、仇討ち」
「といっても、依頼主は命まで奪えとは言ってなかったよ。牢屋送りにしてほしいようだ」
「それは……」
優しい、と取るべきか。
……いや、その依頼主には理性があったのだろう。或いは、報復として命を奪ったら、彼の仲間を殺した奴らと同じになる……そんな思いがあったのか。
実際に対面したわけではない俺には想像することしかできないが、きっと、凄まじい怒りや憎しみ、数多のどす黒い感情が渦巻く中で、その答えを出したのだろう。
――凄いな。俺には、できそうもない。
もし、アスナやミト、リズが誰かに殺されたとして。
俺は、その犯人を、牢獄に叩き込んだだけで済ませられるだろうか――。
――あのとき。
ダッカー、テツオ、ササマルが殺されて。一度だけ躊躇した俺は、しかし、容赦なく殺人鬼どもを斬り伏せるアスナに追従するように、レッドプレイヤーに剣を振るった。
あれは、切っ掛けだった。あの出来事が、俺を変えた――。
いや。
もともと、俺は自分を――自分の大切な人達を傷つけられると、容易に人に剣を向ける人間だったのだろう。敵だから。殺す気でなければ、自分達が殺されるから。
大切な人を守るために、剣を振るう。
聞こえは良いが、果たして、殺人を正当化する理由などあって良いのだろうか――。
なんて。
すでに幾人もの下劣な
「キリトさん?」
名を呼ばれて、俺は無意識に右肩の後ろ――今はストレージに仕舞われている、愛剣の柄がある場所に伸びていた手を止めた。行き場を失ってしばらくふらふらとさせた後、誤魔化すようにポリポリと頭を掻く。
「あー……そ、それで、そのオレンジギルドの名前は?」
言い切ってから、まるで依頼を承諾したかのような返しじゃないか、と気づくも、もう遅い。
ディアベルはメニューを操作して一つの結晶アイテムを実体化させると、机の上に置いた。
それ一つで一日の稼ぎには十分なレアアイテムを前に、悲しきゲーマーの
「オレンジギルド《タイタンズハンド》――。奴らを、この回廊結晶を使って、牢屋に送ってくれ」
「……ってことは、このコリドーの出口は……」
「《はじまりの街》、黒鉄宮の監獄エリアだ」
恐らく、用意したのは依頼主だろう。ギルドを壊滅させられて、仇討ちのために高価なアイテムを購入した。シルバーフラグスというギルドは前線で聞いたことがないし、全滅した層からして
目の前の濃紺の結晶に籠められた想いを感じ、俺はディアベルに気づかれないように奥歯を噛みしめた。
そして。
「……わかった。引き受ける」
「ありがとう。報酬は――」
「いや、情報屋に払う調査代だけ負担してくれりゃ良いよ」
「それはもちろんオレが払うつもりだが……」
申し訳なさそうな顔をする騎士サマに、俺は肩をすくめてみせた。
「なら、アスナとミトを説得するの手伝ってくれよ」
「それは、キリトさん一人の方が効果的だと思うけどなぁ」
アスナとミトの説得は、思いのほか簡単だった。
というかディアベルの説明をそのまま使っただけで解決した。彼女たちが何を感じて依頼を承諾したのか――或いは、俺のゲーム攻略に関係のない勝手な行動に協力しようと思ってくれたのかはわからない。だが、結果として、俺たちのパーティーは一時的に最前線から引き、中層での情報収集に努めることになった。
情報収集といっても、自分達が探偵よろしく聞き込みやら張り込み調査やらをしたわけではない。本職に任せた方が早いし確実なのは分かっているので、情報屋――主にアルゴを頼った。
依頼料は安くはないが、そこは血盟騎士団の副団長様の財布から出るので問題ない。
まずは、
それと、一応依頼主であるシルバーフラグスのリーダーのことも調べて貰ったが、ごく一般的な中層クラスのプレイヤーであったこと、そして――彼が最前線の
俺はわずかでも疑ったことを恥じると同時、この依頼を絶対に完遂することを密かに誓った――。
そして、依頼を受けて四日。
現在俺は、三十五層にある《迷いの森》で、女の子を泣かせていた。
……訂正。
泣いている女の子の前で、どうしたら良いのかわからず視線を彷徨わせていた。
「ぅう……ぐすっ……お願いだよ……あたしを独りにしないで、ピナ……」
「す……すまなかった、君の友達、助けられなくて……」
《泣いている女の子を慰めるスキル》の熟練度がゼロにほど近い俺は、なんとか狼狽した様子を見せないよう取り繕う。
――俺が原因で彼女が泣いているわけではない、はず。
俺がなぜ最前線から二十も離れた層のサブダンジョンにいるかというと、もちろんディアベルが持ってきた依頼をこなすためである。
オレンジギルド・タイタンズハンドのリーダーであるロザリアという槍使いの女が、二週間ほど前からある中層クラスのパーティーに加入しているという情報を得た。俺たちは、彼女のギルドがそのパーティーを次の獲物に定めたのだと判断し、見張ることにした。
そして、見張りを始めた初日。俺は、そのパーティーが迷いの森で狩りをする様子を《
どうやら戦利品の分配について揉めたようで、パーティーに二人いた女性のうちロザリアではない方――SAOでは珍しいビーストテイマーの少女が、怒って一人で飛び出してしまった。
迷いの森は、その名が表わす通り、踏み込んだ者を惑わせる。ただでさえ先の見通せない鬱蒼とした森であることに加え、数百にも分かれたエリアが一分単位でランダムに入れ替わるという酷い仕様。転移アイテムは直接街に戻れず迷いの森のどこかに飛ばされるため役に立たない。ゆえに、ここを踏破するためには――そして無事に街へ帰るためには、店売りの地図アイテムが必要なのだが……。
――あれはちょっと高いから、普通はパーティーで一人しか持たないんだよなぁ。
俺は以前、必要に駆られて地図を購入していた。何かクエストの開始地点になるのではないかと疑って調査したとき、そして去年のクリスマスにイベントボスを討伐したとき――。そして、今この時も役に立っている。
ただ、ビーストテイマーの少女は地図を持っていなかったようで、ランダムに切り替わるエリアの接続に苦労しているようだった。
この展開を、トラブル発生時から半ば予想していた俺は、本来の目的であるロザリアの見張りを中断し、独りで飛び出した少女を追っていた。少女が自力で脱出できるのならば良い。だが、しばらく経っても少女は外には出られず――ついに俺は、偶然を装って接触することにして……。
どうすれば不審者扱いされず自然に話しかけられるか脳内シミュレートしているうちに、少女が三体のMobとエンカウントし、――使い魔を失ってしまった。
……こう振り返ってみると、一部、俺のせい……のような気がしてくる。
言い訳は、一応ある。
中層クラスのプレイヤーは、圏外に《冒険》に出る際、必要充分以上の安全マージンを取る。俺たち最前線を踏破する攻略組とは比べものにもならないほど危険を減らした――それこそ、その層の主流Mob五体に囲まれても
だから、焦って接触する必要はないと思った。
俺がしゃしゃり出なくとも、彼女一人でなんとかできると思ってしまった。
――それが、間違いだった。
この世界に来てから間違えてばかりだ、と心の中で自嘲して、俺はなんとか状況を好転させるべく口を回す。
「その……羽根、だけどな。アイテム名、設定されてるか?」
少女が大事そうに抱える空色の羽根を指さして言うと、少女は泣きはらした目で一度こちらを見た後、恐る恐るといった手つきで羽根をタップする。そして、表示されたウィンドウを見て目を見開くと、再び大粒の涙を流し始めた。
「ピナの……心……」
「あ、え、待った待った! 心アイテムが残っていれば、まだ蘇生の可能性がある……ぞ」
「え……?」
ぽかんとした顔でこちらを見上げる少女に、俺は記憶の奥底に埋まっている情報群を漁りながら答える。
「確か……四十七層に《思い出の丘》っていうフィールドダンジョンがあるんだけど、そこのてっぺんに咲く花が、使い魔の蘇生用アイテムらし――」
「ほ、ほんとうですか!?」
少女は飛び跳ねるように立ち上がって、しかしすぐに勢いを失う。
「四十……七層……」
「あー……」
少女が考えていることは、想像がついた。
レベルが足りない。装備のランクも、基準に満たない。あくまで中層プレイヤーでの基準として、だろうが……そんなところか。
「実費と報酬さえもらえれば俺が行ってきてもいいんだけど……アイテムの取得にテイマー本人が必要らしいんだよなぁ」
「いえ……情報だけでも、ありがたいです。いつか、レベルを上げて……」
「んと、そういうわけにもいかないんだよ。使い魔が蘇生できるのは、死んでから三日以内なんだ」
「そんな……っ」
少女の顔が再び絶望に染まるのを見て、俺は決心した。
素早くメニューを操作して、トレードウィンドウを呼び出す。交渉対象を目の前の少女に指定し、交換窓へ装備アイテムを次々に入れていく。幸い、最前線のプレイヤーからしたら要らないものだが、中層クラスではそこそこ強いであろう装備はたっぷりとストレージの肥やしになっていた。
トレードウィンドウに気づいたのだろう、少女が困惑の表情でこちらを見る。
「あの……」
「この装備でいくらかレベルの底上げができる。俺も一緒に行けば、たぶんなんとかなるよ」
「え…………あの、なんでそこまでしてくれるんですか……?」
訝しむ少女の顔には、いくらかの警戒の色が混じっていた。
見ず知らずの男が異様に自分に良くしてきたら、そりゃ警戒もするだろう。当然の反応に、俺は苦笑しながら、さてどう返したものかと思考を回す。
――正直に言えば、俺の油断で使い魔を失わせてしまった罪滅ぼしと、本来の目的に利用できるから、だ。
ロザリア――タイタンズハンドの目的は、恐らくこの少女だ。今回の依頼のために色々と中層クラスの人間について調べたが、あのパーティーで一番の有名人で、財を貯めているであろうプレイヤーは、このビーストテイマーの少女――シリカだった。
シリカがレアアイテムである使い魔蘇生アイテム《プネウマの花》を取りに行くことを、タイタンズハンドが知るところになれば、確実にターゲットをこの少女に定めるだろう……。
この世界では、甘い話には裏があるのが常識だ。
罪滅ぼしと言いながら少女を危険な囮に使おうとする、自身の悪辣さに反吐が出そうで――。
俺はなんとか取り繕うと、誤魔化すようにこう言った。
「あー……その、笑わないって約束するなら、言う」
「笑いません」
「キミが……妹に、似てるから」
さて――もう一年半も顔を見ていない妹は。俺の方から避けていた
少女が堪えきれなくなって笑いを零す様を眺めながら、俺は胸の奥でじくりと刺すような痛みを感じた――ような気がした。
ぶっちゃけほとんど変更点がないので次話でシリカの話は終わると思います。
ちなみに前書きのスレで出た動画機能は、たぶん使われない。ワンチャンこぼれ話的な番外編で使うかもしれない……か?
とりあえず、スレ民は連絡ない間、あんな感じでやきもきしてるんやよ……というだけで載っけた。世界ごとに時間の流れが違うので、それぞれの心配度合いも変わってくるんですけどね……(そしてそれが温度差に繋がる悪循環。やだねぇ)。
あと今更気づいたけど、聖龍連合じゃなくて聖竜連合なんやな。全部DDA表記にすれば間違えなくて楽かな……あ、ローマ字ばっかだとどれがどれかわかりにくくなるから駄目? そう……。
Q.あれ、KoBのギルドアイコンって、ショボい十字が書いてあるだけじゃなかった?
A.アニメ一期の奴はさすがに簡易すぎると思うんよ。でも小説の描写は見当たらなかった……気がするので、適当に表現しました。どっかにあったら教えてちょ。(エンブレムそのままなんかな……?)
Q.なんでイッチは掲示板に接続しないねん。
A.気持ちの整理が付くか、どうしようもない事態になったら使うかも? ……メタ的なことを言うなら、圏内事件を一瞬で終わらせるのもなぁ、と思ったので、SAO編終盤までは接続しないつもりです。ただし予定は予定であり以下略。
Q.そもそもイッチのスレ、落ちて消えてない?
A.1000まで行ったから『TSアスナイッチの復帰を待つスレ』みたいなのが立てられて、イッチが再び立てるのを待っています。前書きでの「スレ残ってるなら生きてる」ってのは、スレ主が死亡した場合、過去スレも全て消えることからの発言です。