メインヒロインにTS転生したらしいが、細剣じゃなくて刀握りたい 作:星宮ひまり
プログレッシブでのアスナ、二層でもフードしてたわ。まぁ掲示板の民は間違えることもあるよね、仕方ないね。
あ、今回は掲示板が全く出ないので、興味なければ飛ばして良いですよ。大して重要な情報もないですし。
久しぶりに起動したアリリコで全く操作覚えていなくて《ダブルサーキュラー》すら上手く使えなかったので続きません。
《ソードアート・オンライン》の正式サービスが開始して五分足らずで、《アインクラッド第一階層》にあるプレイヤーの初期開始地点――《はじまりの街》は、プレイヤー達で溢れかえっていた。
誰も彼もが、この先に待ち受けている大冒険に胸を高鳴らせている中、俺――キリトは、先ほどレクチャーを頼んできたプレイヤー・クラインと並んで、落ち合う約束をしている俺のフレンドを待っていた。
「なー、キリトよ。そのフレンドってのはどんな人なんだ?」
購入したばかりの曲刀を弄っていたクラインが、ふと問いかけてきた。
俺は妙に形の良い
「えっと……プレイヤーネームは《めるく男爵Ⅲ世》という、ノリの良い刀使いの男性だよ」
「める……なんて?」
「めるく男爵Ⅲ世。あぁ、最初はまだ《カタナ》スキルが選べないから、クラインと同じく、曲刀を提げてると思うけどな」
ネトゲだといるよな、そういう名前のやつ……としみじみ呟くクライン。
ゲーム……特にMMOと呼ばれるジャンルは、沢山のプレイヤーがいる。その一人一人が固有の名前を持っており、起こりうる混乱を避けるため――或いは、その世界における自分の分身であるという意識を高めさせるためか――名前被りがキャラクター作成時にシステム的に弾かれる場合が多々ある。
ゆえに、本来付けたかった名前の後に番号や記号を付けたり、いっそ誰も付けないような個性的な名前にしたりと、工夫しているのだ。
俺も、もし被りがあったら《†Kirito†》にしていたかもしれない。……いや、さすがに別のマシな名前考えるか。
彼がどのような意図でプレイヤーネームを決めたのかは知らないが、きっと某かの事情があるのだろう。まぁ、気分で変な名前を使う人間がいるのもネトゲだが。
そんなことを考えていると、ふとこちらにまっすぐ向かってくる影が目に入った。
「あ、来た。おーい! 久しぶり、めるくさん」
SAOは自身のアバターを膨大なパラメータから微細に調整できる。だが、彼のアバターは、プレイヤーが手を加える前の姿――すなわち初期アバターのままだった。
ゲームは初期アバターこそが至高だ、との自論を声高に語ったことのある彼は、手を顔の前で合わせながら、こちらに申し訳なさそうな顔を向けてきた。
「あ、すみません。本サービスからは《アスナ》って名乗ることになった……んですよね。……昔の名は二度と名乗るなと脅されて……」
「え?」
「あ、いえ、なんでもないです……」
だんだんと声が萎んでいく彼に、俺は首を傾げた。
――なんで敬語? というか、脅されて……とは?
怪訝な顔をする俺に対し、めるくさん……もといアスナは、すすすっと素早い動きで俺の傍に寄ると、俺の体を盾にするようにしてクラインに向き直った。
「とととところで……そちらのお方は……ど、どちら様で?」
――なんてお手本のようなどもり方なんだ。
震える声で俺の背中越しに問いかけるアスナに、俺はやや引きつった声で赤みがかった髪に悪趣味なバンダナを付けた男を紹介してやる。
「ああ、彼はクライン。さっきレクチャーを頼まれたんだ」
「どうも、クラインだ。同じ曲刀使いなんだってな。
ニカッと笑うクラインに、アスナは「あ、はい……よろしくお願いします……」と小さな声を返した。
なんというか、どうにもアスナは人見知りらしい。
思えば、βの時も俺以外と話しているところを見なかった気がする。他のネトゲ……モニターの前でキーボードやらゲームパッドやらを操作して遊んでいた頃は、他のプレイヤーともまともに会話していた覚えがあるのだが。
フルダイブのSAOは、モニター越しの他のゲームとは違い、実際に顔を合わせているような気分になる。ゆえに、リアルで人と話すのが苦手な人は、このような反応になるのかもしれない。
そう自分に納得させていると、背中からぼそぼそと声が聞こえてきた。
「そのうち課金して名前変えられるようになるだろうし、面白い名前思いつくまで我慢してね」
「は、はぁ」
――この人のこだわりはなんなのだろう。
そう思わずにはいられない俺だった。
「いやー、筋が良いねクラインさん。この調子なら迷宮区で戦っても大丈夫じゃない?」
「あんがとよーアスナ、キリト! おめぇらのおかげでこのイノシシ野郎もちょちょいのちょいだぜ!」
「いーのいーの。同じ刀使いを目指す者として、同志の育成は望むところだからね!」
なんかすぐに打ち解けていた。
最初のビビり様はなんだったのだろう、と思うほどに仲良くなった彼らは、すでにフレンド登録すら済ませていた。
これはクラインのコミュニケーション能力の高さゆえか、アスナがチョロいだけなのか。
「同じネトゲ中毒者だから、話しやすかっただけかもな」
「ん? なに、キリトくん?」
「いや、なんでもない」
失礼な言を誤魔化し、俺はクラインに向き直る。
「さて、と。どうする? まだ練習……狩りを続けるか?」
「ったりめぇよぉ! ……って、言いたいところだけど……」
時間を確認したのだろう。クラインは視線を俺の顔からずらし、「う~ん」と唸った。
「
「なるほどなぁ。……アスナの方は?」
「ゼリー飲料飲んできたから、オールで大丈夫」
「おぉ……準備万端だ」
恐らくサービス開始からぶっ続けでプレイするつもりだったのだろう。俺も明日が月曜日でなかったらそうしていたかもしれない。……いや、夕食を取ったらそこから徹夜で遊ぶつもりではあったが。
感心する俺をよそに、クラインがふと思い出したように言った。
「あ、そうだ。オレ、飯の後、他のゲームで知り合いだった奴らと《はじまりの街》で会う約束してるんだよな。どうだ。紹介すっから、あいつらともフレンド登録しねぇか?」
「え」
「あー……うーん」
アスナが硬直し、俺も思わず口籠もった。
フレンドのフレンドと会う時ほど気まずいものはない。が、俺はそれをクラインに一度課した手前、なんとも断りにくい状況だった。
微妙な反応をする俺たちに何かを察したのか、クラインは特に気落ちすることもなく首を振った。
「いや、勿論無理にとは言わねぇよ。そのうち紹介する機会も来るだろうしな」
「ああ、悪いな。ありがとう」
「すすすすみません……」
謝る俺たちに、しかしクラインは明るい調子で言う。
「おいおい、礼を言うのはこっちの方だぜ! この礼はそのうちちゃんとすっから、精神的に」
にかっと笑い、それからもう一度時計を確認すると、
「……んじゃ、一度落ちるわ。キリト、アスナ。これからも宜しく頼むぜ」
「こっちこそ、宜しくな」
「うん、宜しく、クラインさん」
先にログアウトするフレンドを見送る――そんな《普通のMMOの日常》は、この時までだった。
消えたログアウトボタン。
鳴り響く鐘の音。
赤く染まるフィールドで立ち尽くす俺たちを《はじまりの街》の広場に強制テレポートさせた運営――茅場晶彦が、この世界がデスゲームであることを全プレイヤーの前で言い放った。
「……、」
横に立つ初期アバターの顔は、他の誰よりも落ち着いているように見えて――。
茅場からのプレゼントによって、全てがひっくり返る。
プレイヤーの体を包む光が消え去った後、俺は野武士面になったクラインと互いに指さし合って驚愕していると、クラインとは反対側から聞き覚えのない高い声が聞こえてきた。
「なん――え、は?」
思わず振り向くと、そこには目を見張るほど可憐な少女がいた。
キョロキョロと周りを見回す彼女は、その横顔を一瞬見るだけでも見た者の脳裏を焼き尽くすほどの美貌を有している。艶やかな栗色の髪は腰の辺りまで伸ばされ、その眠たげなライトブラウンの
呆然と少女を見つめながら、俺は彼女の美しさを表わしきれない、貧相な自分の国語力を呪った。
そして、少女はぶしつけに見続ける俺の視線に気づいたのか、こちらに目を向ける。
「ぁ……」
零れた声には、不安な気持ちが表れていて――。
そして、声とは裏腹に異様なほど固まった表情に、俺は言葉を発せなかった。
何も言えない俺に対し、少女はその形の良い口を開く。
「キリト、くん?」
一拍遅れて、自分が呼ばれたのだと気づいた。
この少女は俺の名前――プレイヤーネームを知っている。
いや、それ以前に、俺の隣には――クラインと反対側には、全く弄っていない男性初期アバターのフレンドが立っていたはずだ。
それは、つまり――。
「アスナ……?」
果たして目の前の少女は、小さくこくりと頷いた。
「お、おおお!? ちょちょちょキリの字、そちらのお嬢さんは……?」
後ろから俺の両肩をがっしり掴んでは耳元で騒ぐクラインに俺は肘打ちを一発お見舞いし、次いで、これから起こるであろう事態を素早く予測する。
少女――アスナも同じ考えに到ったのであろうか。いや、美少女に反応する
ともあれ、俺とアスナは目で頷き合うと、クラインの腕を引っ張り、悲鳴の聞こえる広場から脱出する。
「お、おい、キリト……?」
広場の騒ぎはやはり大きく、ある程度離れてもまだ耳に入ってくるが、クラインが俺の手を振り払ったことで足を止めることになった。
「良く聞け、クライン。……茅場晶彦の言葉が全て真実なら、この世界で生き残るためにはひたすら自分を強化していくしかない。そのために、俺はすぐに次の村に行く。お前も一緒に来い」
「MMOの供給するリソースは限られているから、効率を求めるなら、《はじまりの街》周辺が狩り尽くされる前に、早めに次の村に拠点を移す必要があるの」
俺に続いてアスナもクラインを説得するように続けた。
俺たちの言葉に対し、クラインは悩むようなそぶりを見せた後、しかし
「
「クライン……」
「おめぇらにこれ以上世話になるわけにはいかねぇ。気にせず次の村に行ってくれ! これでもオレは前のゲームじゃギルドの頭やってたんだ、おめぇらに教わったテクでなんとかしてやらぁ!」
にかっと笑うクラインに、俺はただ「……そうか」と呟くように返すだけだった。
何も言えなくなって、俺は野武士面の男に背を向ける。
「……何かあったらメッセ飛ばしてくれ。じゃ、またな」
軽く手を上げて、努めて明るく別れの言葉を投げた。
そして、俺は走り出そうとして――。
「キリトくん。《ホルンカ》までずっとダッシュで良い?」
そんなことを聞いてくる声に、俺は思わず足を
「アスナ、さん……?」
「なに? まさかキリトくん、一人で行くつもりだったの?」
言われて、俺は言葉に詰まった。
安全圏である街に残って、ゲームのクリアを待った方が良い。それは間違いない。
だが、自主的にクリアを目指すにしても、俺のように効率だけを求めて動く必要はない。
……効率的な動きといっても、そこに付き纏うリスクは大きい。そんな動きをするくらいなら、クラインや彼の仲間達と一緒にじっくりと鍛えていった方が良いはずだ。
一緒に戦う人数が多い方が、彼女の安全性は高まる。
その、はずで――。
「ソロより、コンビの方が安全でしょ? あなたも私もベータ上がりなんだし、効率も上がると思う」
「それは……」
そうかもしれない。
けれど、クライン達と組んだ方がずっと安全だ。
嫌でも突き放すようなことを言おうとして、しかし彼女の
「……パートナー、でしょ。ベータの時から……ううん。それより前から、ずっと」
いくつものゲームを、彼女……彼だと思っていた時から、二人で遊んだ。
顔の見えない、声を聞いたこともないが、チャット上での絡みで意気投合し、プレイスタイルが妙に噛み合って――そう、何度も何度も共闘した、
たとえネット上だけの付き合いだったとしても、それがいったいなんの言い訳になるのだろう。
「それじゃあ、クラインさん。失礼します」
「お、おう! またな、あす……アスナさん!」
「なんでさん付けに……? まぁいいや。行こ、キリトくん」
妙に挙動不審なクラインに背を向けて、華奢な少女が走り出す。
その驚くほど軽い足取りに、俺は今だけデスゲームになった現実を忘れて、口の端を上げた。
「おいキリト! おめぇ、絶対にアスナさん死なせるんじゃねぇぞ!」
怒鳴るように叫ぶクライン。けれど多分に優しさを含んだその言葉に、俺は振り向かずに返した。
「死なせるかよ、俺のパートナーだぞ!」
鳴り止まぬ嘆きと怨嗟の叫びを背に、俺は未来だけを見て走り続ける。
この世界でできた友人を置いて。《はじまりの街》にいる全てのプレイヤーたちを見捨てて。それでも俺は――俺たちは止まらない。
「目指すは《ホルンカ》。アニールブレードの入手、だよね?」
「あぁ。それが終わったら、アスナの武器更新かな」
夕陽に照らされて赤く反射するアスナの瞳に、吸い込まれるような錯覚を覚えて。
二人の剣士は、百層にも連なるこの浮遊城を登り切るため、勢い良くスタートダッシュを切ったのだった。
ちなみにイッチは現在舞い上がっています。
ネットの友人と一緒に夢のフルダイブゲームで遊びまくれるんだから、仕方ないね。
確認したらお気に入り1000超えててリアルで変な声出ちゃった。やっぱみんなSAO好きなんすね~。
評価もありがとナス! まぁ三話使ってようやっとアニメ一話が終わる程度の遅さなんだけどな……。
なお、原作アスナさんの一人称は「わたし」です。