ここは幻想郷。
現代世界からは結界により完全に隔離され、人間、妖怪、幽霊、神がバランス良く暮らす忘れ去られた者たちの最後の楽園。
自然豊かで危険な場所も多いが、皆不満無く暮らしていました。多分。
そんな幻想郷で結界の管理を任されている神社の巫女がいた。
博麗神社の巫女さん
博麗霊夢である。
特徴的な脇の出ている巫女服に、大きな赤いリボンを頭につけて今日も神社に落ちる木の葉を箒で集めていた。
「はぁ...もうすっかり冬ね」
霊夢は両方をゆっくりと吐く息で温め、首に巻いているマフラーを触る。
「雪が降ってないだけまだマシかな」
霊夢は掃除を再開すると、遠くの空から誰かが近づいてきた。
それは黒い魔女帽子を被って箒に跨がる少女で、霊夢の前にゆっくりと降り立つと元気よく挨拶してきた。
「よっ!霊夢!」
彼女は霧雨魔理沙。
幻想郷にある魔法の森で暮らす人間の魔法使いである。
霊夢は魔理沙の顔を見ると、慣れた様子で挨拶を返した。
「おはよう魔理沙。今日も寒いわね」
「そうだな。神社の周りの木もほとんど葉っぱ落ちちまって骨になったな!」
「骨って...それで、今日は何の用?」
「用がなきゃ来ちゃいけないなんてルールあったか?」
「...つまり暇だから来たのね」
「当たりだぜ」
霊夢は掃除をやめると、神社に向かって歩き始める。
「私も休憩にするわ。お茶飲む?」
「飲む!」
「はいはい」
霊夢は面倒くさそうに振る舞うも、その表情は穏やかだ。
しかしその瞬間、幻想郷全域に大きな振動と轟音が響き渡った。
「きゃあっ!!」
「どわっ!?」
霊夢と魔理沙は巨大な振動と音に体幹を崩して地面に尻をついてしまう。
「ななな、何なんだ今の!?」
「知らないわよ!」
魔理沙はすぐに立ち上がり、箒に跨って空に飛び始める。
「ちょっと確認してくるぜ!」
「あーもう!湯呑とか無事なんでしょうね...」
霊夢はすぐに自宅に戻り、台所に置いてある皿などを確認する。
崩れてはいたが、幸い地面には落ちておらず無事なようだ。
「あーよかった」
「霊夢ぅ!!!」
「今度は何よ」
台所に立っている霊夢に慌てふためいた魔理沙が近づいてきた。
「よよよよ妖怪の山が!!」
「あぁ?今の妖怪の山の連中の仕業なの!?」
「ちち、違うんだぜ!とにかく見てほしい!」
「ちょ!まだ片付けが!」
魔理沙は霊夢の手を掴んで外に出し、共に空へと飛び立つ。
そして二人は幻想郷で最も高い妖怪の山を見て驚愕した。
「な、何よあれ」
「わ、わからんのぜ」
妖怪の山の頂上に巨大な城があったのだ。
しかもまるで無理矢理上から城を落としたかのようにだ。
山では叫び声や悲鳴がここからでも聞こえており、山に住む妖怪達もあまりの出来事に混乱しているのは明らかだ。
「とりあえず確認しに行くわよ」
「だな」
霊夢と魔理沙は妖怪の山へ急速に飛んでいった。
二人は妖怪の山頂上に現れた城を見て、改めてその巨大さと無理矢理感を実感していた。
「まったく無茶する奴もいたもんね」
「あれじゃあ守矢神社や天狗と河童の本部も滅茶苦茶だろうな」
「神奈子や諏訪子も敵に回すなんて。今回の犯人半殺しにされるわよ」
「ちげぇねぇ!だが願ったり叶ったりじゃないか霊夢?巫女と神社のライバルが潰れてよ!」
「この場で叩き落してあげようか?神社にライバルも何もないわ」
「おー、怖っ」
二人が人里付近の上空まで飛んでいると、いきなり目の前に人里で寺小屋を開いている上白沢慧音が現れ二人を制止する。
「止まれ二人共!」
「うおっ!」
魔理沙の箒は急ブレーキを踏んだように急停止し、霊夢は慧音の尋常ならざる表情をみてゆっくりと止まった。
「何よ慧音。異変解決の邪魔しようっての?」
「違うそうじゃない。異変解決には賛成だが今回のは危険なんだ」
「危険?」
「とにかく人里に来てくれ。あの謎の城の情報を得てから行っても遅くはないだろう?」
「遅いのよ。異変解決はスピードが命なんだから」
霊夢は慧音を通り過ぎようとすると、彼女は霊夢の肩を掴んででも止め始めた。
「...何なのよ」
「...あの城に本部を潰された報復として向かった天狗達や河童達がほぼ全滅してる。ようやく帰ってきた者達でさえ怪我が元で死者まで出ているんだ。頼む、話を聞いてくれ」
慧音の言葉を聞いて魔理沙は唾を飲む。
「マジかよ...」
異変で死者を出す事件は魔理沙もこれが初めてだろう。
死者を出す事件では
下手をしたら完全に戦争になる。
霊夢も流石に現状を理解したのか、慧音の言葉を聞いて通り抜けるのをやめる。
「...わかったわ。案内しなさい」
霊夢と魔理沙は急遽城行きを変更し、慧音の案内で人里へと降りていった。
慧音が案内した人里の空き家には、妖怪の山に住んでいる白狼天狗や河童、鴉天狗、果ては大天狗までいる始末。
全員怪我を負っており、傷ついていないものは一人もいなかった。
さらに空き家の外には大きな布で全身を被せられた者達もいて、お坊さん達がお経を唱えている。
霊夢はこの惨状でいつもの異変ではないと確信した。
慧音は近くにいる白狼天狗に話を聞き始める。
「怪我はどうだ」
「いえ...何とか大丈夫です」
「手当はしたが...どうだ、話せそうか?」
「はい」
「霊夢」
慧音は霊夢に場所を譲ると、彼女は白狼天狗に質問し始める。
「あの城は何」
「わ、わかりません。突然空から現れたんです」
「白狼天狗は鼻がいい。何か前兆みたいなのはなかったの?」
「まったく...誰も...気配すら」
「...返り討ちにあったそうね」
「はい...」
「城の中には誰がいたの?」
「人間です」
霊夢と魔理沙はその言葉を聞いて驚いた。
「人間...どういうことなんだぜ」
「あんた達も訓練された天狗でしょ?人間にやられたの?」
「...奴等は完全に武装されてました。鎧に刀、槍、弓、さらには鉄砲まで」
「鉄砲...狩りとかに使われる飛び道具ね。けど」
「私達はその程度じゃ負けはしませんよ」
話を聞いていた白狼天狗の近くにいたもう一人の天狗がゆっくりとの体を起こす。
彼女は白狼天狗の中でも実力が高く信頼も厚い犬走椛であった。
「椛...あんたまで」
霊夢と魔理沙は椛に駆け寄ると、彼女の腕からはまだ出血が止まらないのか包帯が血に染まっていた。
「確かに我々から見てもよく訓練された兵士でした。しかし河童達の飛び道具や大天狗様や鴉天狗様達の前では敵ではありません」
「なら何でやられたのよ」
すると椛が震え始め、顔から血の気が引いていく。
「我々は敵の城の中枢のような広場まで突破しました。けどそこには...そこには化物がいたんです」
「化物?」
「巨大な馬に乗って大槍を振り回す騎馬武者に河童達は蹴散らされ、私達は大弓を背負った武者に斬り刻まれ、空から攻めても大刀を構えた男に手裏剣で叩き落され、大天狗様達は...たった一人の老兵に一太刀で斬り伏せられました」
「...」
「私も含め逃げ出せたのはここにいる人達だけです。他の方々はもうどこにいるのかも...」
椛は目から涙を垂らし、項垂れてしまう。
霊夢は泣いている椛の肩に手を乗せると、空き家から出ていった。
そこには慧音が待っており、神妙な顔つきになっている霊夢に話し始める。
「...聞いた通りだ。この事件の危険さがわかったろう?」
「...そうね」
魔理沙も口元を抑えながら小屋から出て、二人の前でため息を吐く。
「まるで戦争だぜ...」
慧音は魔理沙の言葉を聞いて、顔を横に振る。
「魔理沙...これはもう戦争だ」
魔理沙も慧音の言葉を聞いて異変解決する前のテンションには戻れなかった。
霊夢は人里から見える城を見上げる。
「空からは近づいてみたの?」
「ああ。無事だった鴉天狗が空から偵察してみたが...」
「したが、何?」
「あの城に近づいた瞬間妙な白い霧に包まれ空からは何も見えなくなったらしい。そして鉄砲や弓、巨大な手裏剣のようなものまで出され迎撃してきたとか」
「ふーん...」
「無論鴉天狗の身体能力なら軽く避けて近づいたらしいが...その妙な霧は結界に似た効果があるらしく弾かれたらしい」
霊夢は腕を組んで悩み始める。
これでは彼女達の十八番である空中戦は無理だろう。
しかし正面突破といっても大勢の天狗河童でさえ返り討ちにされる戦力が待ち受けている。
どうしたものかと考えていると、三人の後ろの空間に一つの長い線が入り、線が開くと中には赤黒い世界と大量の目が浮き出る気味の悪い何かが現れた。
こんな奇妙な物を使うのは幻想郷では唯一人。
「早いご登場ね。紫」
その何かから現れたのは、妖怪の賢者と呼ばれ、実質幻想郷の長という立ち位置でもある最強クラスの妖怪。
八雲紫である。
「おはよう霊夢」
「丁度いいわ。あんたがあの城何とかしてよ」
「.....」
「何よ、出来ないっての?」
紫の顔はいつものヘラヘラとした表情はなく、霊夢に淡々と答えを返す。
「ええ、無理よ」
隻狼の同人誌見たら書きたい欲再開したのでよろしくお願いします