一心は近くで燃える炎に刀を近づけると、炎は刀に乗り移り燃える刀が出来た。
「あらあら...熱そうな武器だこと」
一心は脱力して一瞬で幽香の元に移動すると、炎を纏う刀を振り下ろした。
幽香は攻撃を受け止めると、炎は幽香の皮膚を包み炎上状態にさせる。
「あっつ...!」
幽香は一心から距離を取って燃える手を払って火を消すが、一心はさらに距離を詰めて攻撃してくる。
幽香は素手で受けるのは危険と判断し、回し蹴りを行い靴底で一心の刀を弾いた。
一心は構わす連続で攻撃していくも、幽香は靴で弾いて対応する。
「あちち...その火は厄介ね」
すると一心は後ろに下がり、刀を構えると力をため始める。
「かぁっ!」
刀を勢いよく振り下ろすと、辺りで燃えていたいくつもの炎が共鳴して大きくなり炎の柱が出来上がる。
幽香は炎の熱のあまり腕で顔を隠し、視界も遮られてしまう。
すると炎の中から刀を鞘に納め、居合の構えをした一心が飛び出してくる。
「っ!?」
一心は刀を抜き、一度だけ高速で斬ると直ぐ様鞘に戻した。
彼の渾身の居合は避けることも弾くことも出来ず、幽香は肩を斬られてしまう。
「!見えなかった...!」
しかし幽香はたった一度斬っただけで終わりかと拍子抜けし反撃しようとするが、次の瞬間全身で思い知らされることとなる。
「っ!!」
幽香の体は何十もの斬撃によって全身を斬り刻まれた。
あの刀を抜いた一瞬で彼は文字通り光速で斬り刻み、あまりに速すぎて斬撃だけ残されてしまったのだ。
そして最後に一心は速度ではなく、威力を重視した渾身の居合から繰り出す一撃を幽香に食らわした。
彼女は吹き飛び、この勝負で初めて地面に叩き伏せられる。
ただ斬ること。
その一事に、心を置く。
そうして放たれる連撃は神速である。
研ぎ澄まされた老境の剣聖一心だからこそ、為せる技。
己の名前をつけた剣聖の境地。
秘伝 一心である
「カハッ...」
風見幽香はゆっくりと立ち上がると、腕を抑え全身から出る血を見て笑みを浮かべた。
「はぁ...はぁ...お気に入りの...服だったのに」
一心は構えを解いて立ち上がると、幽香を見て笑った。
「流石風見よ...これを耐えるか」
幽香はゆっくりと息を吸い、思いきり吐くと拳を構える。
「さぁ...!続きをやるわよ!一心!」
一心は刀を振り上げ、幽香は思いきり勢いをつけた拳で弾いた。
すると彼は地面にある炎を刀に纏わせ、思いきり薙ぎ払うと炎が扇状に広がっていき、幽香を炎に包ませる。
「くっ...!舐めるなぁ!!」
幽香は大声で叫ぶと、彼女の中心から放たれる威圧と風で炎が消え去る。
「ほぉ...!」
一心は驚きつつも、威圧を物ともせず攻撃をし続ける。
幽香はもう炎を恐れず彼の連撃を拳で弾き、人間は勿論だが妖怪すら木っ端微塵になる程の力を込めて反撃した。
彼はそれすら弾いて反撃し、幽香も全力を込めて弾き返し、再び二人のぶつかり合いが始まった。
その余波は辺りを滅茶苦茶にしており、幽香の拳の風圧で畑の残った花は撒き散らされ、一心の炎は地面を燃やし尽くし舞い散る花びらに燃え移り火花が舞い散っている。
「こんのぉぉぉ!!」
「おおおおぉっ!!」
幽香の頬が刀により薄く斬り裂かれ、一心の頬も幽香の拳で擦られる。
彼女の拳はさらに血を吹き出し、一心の刀を持つ腕も痺れが生じてきた。
一発でこの辺りが完全に崩壊する一撃を流し続けては、剣聖と呼ばれる彼でも流石に腕に限界が来ているのだろう。
そして一心は今度こそ最後の一撃を決めるために刀を鞘に納めた。
幽香も一心が力を溜めていることに気づくと、彼女も距離を取って息を整える。
「ふぅー...ふぅー...」
幽香の拳は最早血で染まり皮膚はもう見えず、靴もボロボロとなり血が滲んでいる。
「お主を喰らい、儂は葦名を黄泉帰らせる」
「上等じゃない...喰らえるもんなら喰らってみなさい!」
「ゆくぞ!風見幽香ぁぁっ!」
「こい!一心!!」
幽香は右手に己の妖力全てを注ぎ込み、地面を抉り跳躍して一心の真上に移動し、彼の頭目掛けて高速で落ちていき拳を振り下ろす。
一心は全身全霊で刀を抜いた。
幽香は最初は何もできなかった神速の一撃をほんの少しだけ左手で弾くことができた。
「!」
しかし一心が刀を鞘に納めると、なんと先程とは違い幽香の右手を中心に炎を纏った十文字が大量に刻まれたのだ。
「ぐぅぅっ!!」
幽香の顔は苦痛に歪み、右手全てが紅く染まったが彼女は拳を止めない。
そして一心は最後に炎を纏った刀で鞘から出した時の横に薙ぎ払う一撃、そして振り上げた瞬間に光速の一文字による振り下ろし。
彼は威力と速度を強化した葦名十文字を放ったのだ。
秘伝一心すらを踏み台に放つ葦名流奥義。
「.....」
幽香は地面に着地すると、それと同時に近くに落ちる自分の血だらけの右腕を見た。
一心の十文字は修羅の腕をも斬り落とす。
だが今度の一心は最強の妖怪の腕を斬り落としたのだ。
「ぐ...ガハッ」
しかし一心の体は限界を超えて大量の血液を吐き、自らの両腕は秘伝一心 十文字型の反動からか皮膚は破れ血が溢れていた。
幽香は千切れた自分の腕を見つめて、大きくため息をついた。
「...まさか腕を斬られるなんてね」
「ぐ...」
「.....今まであった中で間違いなく一番強いわよ貴方。誇っていいわ」
「カ...カカッ...!お主も...見事の一言に尽きるわ...腕を斬られてもまだ立つか...!儂は既に戦えぬ...仕方なし...此度の勝ちは譲ってやろう」
「あら、光栄だわ」
「なれど...次こそ...儂が.....」
一心はそう言葉を残すとその場に倒れ、刀を落とし意識を失った。
幽香は燃え盛る炎が消えていくのを確認すると、花達が根を操り彼女の右腕を近くまで持ってきていた。
淀みが消え、彼女の能力も復活したのだ。
「また来世で殺り合いましょう。一心さん」
幽香は一心の頭目掛け、足で踏み潰そうとする。
その瞬間、後ろから巨大な手裏剣が飛んできて彼女の背中に当たる。
しかし手裏剣は幽香の鋼鉄と化した皮膚には刺さらず、音を立てて地面に落ちた。
「邪魔が入ったわね...一体誰よ」
幽香は後ろを振り向くも、辺りには誰もいなかった。
彼女は舌打ちをして再び一心の方に視線を向ける。
しかし目を逸らした隙に地面に倒れていたはずの一心が消えており、もう一度辺りを見渡すと幽香の家の屋根に一人の寄鷹衆が一心を抱えこちらを見ていた。
「.....」
幽香は睨みつけるも、すぐに寄鷹衆は一心を抱え葦名城へと走り去った。
幽香は追う事も考えたが、今は自らの腕をどうするかが先決と考え彼を見逃すことにした。
もしまだ一心が生きているのならば、またあの楽しい戦いが味わえるかもしれない。
そう願いを込めて、彼女は一心に背を向ける。
そして頬を紅く染めて、彼女は光悦の表情になった。
「.....ああ...大満足♪また殺りたいわぁ...」
太陽の畑
風見幽香が葦名一心により襲撃されるも、返り討ちにする。