霊夢、咲夜、魔理沙は門の近くにある家の屋根で葦名軍を見つめていた。
葦名軍は一定間隔で鉄砲と矢を放ってくるが、全て霊夢の結界により防がれてしまっている。
咲夜もナイフをクルクル回して暇そうにしていた。
「ねぇ霊夢」
「何よ」
「戦いってこんな暇だったかしら」
「仕方ないじゃない。あいつら撃ってくるばかりで攻めてこないんだもの」
「流石にどんなバカでも飛び道具効かないって気づきそうなもんだけど」
「魔理沙の仕掛けた魔法地雷地帯の外から撃ってるし...」
「他の門からの報告は?」
「攻めてきてるのはこの門だけ。他の門にも攻撃はしてこないけど、ちゃんと敵はいる。つまり人里は包囲されてるってわけね」
魔理沙は魔法を使おうとするも、全く使えず自分の作った魔法道具を見つめる。
「しっかり能力封じて来てるんだぜ」
「まさか本当に能力使えないとはね」
「だろ?これじゃ私はただの運動神経のいい女の子だ」
「何が女の子よ。窃盗常習犯が」
三人は普段通りに話していると、慧音と鈴仙も屋根に登って合流してきた。
「霊夢、敵はどうだ」
「攻めてこないわ」
「うぅむ。これでは時間の無駄だな」
すると鈴仙は慌てながら霊夢に提案をし始める。
「こ、こっちから攻めるのはどうでしょう?」
「あの銃弾と矢の雨をくぐり抜けて?なら行ってきなさいよ鈴仙」
「え!?む、無理です!」
「私も無理よ。空飛べるならまだしも封じられちゃね」
「な、なら」
「そうね。そろそろ反撃するわよ」
「え?けど攻めるのは無理って」
「人里から出るのは反対よ?けどこっちには同じ飛び道具があるわ」
霊夢が手を挙げると鉄砲を持った狩人達と数本の鉄砲を持った住民達が屋根に登り、葦名軍に狙いを定める。
すると彼女は狩人のリーダーに話しかける
「狩人さん。ここから当たりそう?」
「...三割当たればいいほうだな。距離がかなり離れてる」
「なら外して撃って」
「なぜだ」
「異変の原因とは言え相手は人間。あんた達を殺人者にはしたくないの」
「.....そうか」
狩人のリーダーは味方にわざと外すように命令すると、縄に火をつけて引き金に指を伸ばす。
「撃て!」
霊夢の声で狩人達全員の鉄砲から玉を発射し、葦名軍のいる地面に命中させる。
葦名軍はあと少しで当たりそうだった事に怯え、混乱し始めた。
「次!」
霊夢の声によって狩人達は玉込めしてある別の鉄砲を住民から渡され、直ぐに構えて引き金を引いた。
葦名軍はさらに混乱し、反撃して鉄砲組が撃つも結界で弾かれる。
これでは葦名軍はジリ貧だ。
中には勇敢に門を攻撃しようとする者もいたが、他の仲間に止められ葦名軍は徐々に退き始めている。
その彼等の行動に霊夢は奇妙に思った。
何故攻めてこない?
銃はこちらには効かないのは既にわかっている筈。
人里にいる人達は非戦闘員ばかりであり、装備も魔理沙の道具以外はむしろ劣っている。
対して葦名軍は全員が鍛えられた兵士だ。
近接戦になればまずこちらに勝ち目はない。
ならば彼らがすべき行動は各門を同時攻撃して門を突破する事。
結界も飛び道具や物理攻撃を防ぐが限度がある。
銃弾なんかは何十発も耐えられないし、武器で攻撃されれば長くは持たない。
近接戦に仕掛けないのはこちらとしてもありがたいのだが、敵は何故攻める者を止めた?それが敵の指揮官の命令なのか?敵の狙いは何だ?
霊夢が考え事をしているところに、混乱する葦名軍の後ろからさらに多くの松明が現れた。
魔理沙はその光景に驚き指をさす。
「なんか松明増えたぞ!敵増えたって事じゃねぇか!?」
「そう...かもしれないわ。敵の援軍かしらね」
「どうするよ霊夢!」
「けど何かおかしいわ...」
「確かに、不可思議よ」
霊夢は後ろを振り向くと、そこには慧音と縄で繋がれた半兵衛がいた。
「ちょっと慧音。何敵を連れてきてんのよ」
「この人なら何かヒントをくれるかと思っていてな。それに情報教えてくれたのだから敵ではないだろう?」
霊夢はため息をするも、直ぐに半兵衛に話を続ける。
「不可思議って言ったわよね?何がなの」
「ふむ...松明の数を見るに、あれ程の数を揃えたならば、例え鉄砲を放ってきても攻めるべきであろう。なのになぜ葦名軍は攻めぬのだ」
「鉄砲を恐れてるんじゃない?」
「不倒の葦名衆と呼ばれておる者達が今更恐れるとは思えん。それに...戦に死は付き物よ。葦名の者ならば一番わかっていると思うていたが」
「...なら何で」
「攻められぬ理由があるのだろう。裏を返せば今ここが陥落しては奴等も困るということか」
「陥落しては...困る」
霊夢は半兵衛の言葉に疑問を抱き、ジッと考え込んでしまった。
すると霊夢は咲夜と鈴仙を見ると、少し納得したかのように話し始める。
「...敵の狙いが少しわかった」
すると咲夜や鈴仙が霊夢の説明を聞き始める
「!」
「紫が言ってたのよ。敵は幻想郷の場所を理解している。幻想郷を調べ上げてる情報源がいる筈と」
「それがどうしたのよ」
「奴等は私達がこの人里だけは陥落させるわけにはいかないと、戦力を集中させる事を予測していた」
咲夜と鈴仙は霊夢の言葉を聞いてもあまりピンときていない。
「実際に紫は咲夜や鈴仙を集めて人里の守りは固めた。けど今は包囲され、能力も使えず私達は孤立しているわ。こうして紅魔館と永遠亭の戦力は分散され、二つの場所はいつもより手薄となる」
「なら敵の狙いは戦力の分散ってこと?」
「けどまだ疑問が残るの」
すると鈴仙は霊夢の話に疑問を持ち、質問し始める。
「た、確かにここの防衛を集中させて他の勢力を手薄にすることとはわかりましたが...なら何で敵はここを攻めないんですか?すごい数の兵士がいるのに」
「ええ、私もそう思ってる。何故人里を総攻撃しないのかという疑問は解決してない。あの戦力なら攻めるべきと半兵衛さんも言ってるし」
「他の勢力を攻めてる人達の援軍待ちとかですかね?」
「なら攻めながらでもいいじゃない。攻めつつ援軍も待てばいい話よ」
霊夢、咲夜、魔理沙、霊夢、慧音、半兵衛が悩んでいると、狩人のリーダーが敵軍を見て大声を出した。
「敵が退いていくぞ!」
その言葉に全員が屋根から葦名軍を見ると、確かに葦名軍は全員葦名城へと帰還し始めていた。
住民達は歓喜の声を上げるも、霊夢達は疑問を解決できず納得のいかない表情だった。
葦名軍が徹底していると、他の道から鬼庭刑部雅孝、梟、お蝶、狼、そして一心を背負った寄鷹衆が現れた。
弦一郎は軍を止めて彼等の報告を聞いていく。
「紅魔館は」
「すまぬ弦一郎...兵士は全滅し、落とすことは叶わなかった」
「そうか...傷物にしたならばよい。永遠亭は」
「寄鷹衆を失いはしましたが、蓬莱山輝夜、八意永琳を共に討伐し、陥落させたも同然かと」
「...風見幽香はどうであった」
「一心様は風見幽香の命を奪うことまでは出来ませんでしたが、腕を斬り落とし、奴もこれでしばらくは動けぬかと」
弦一郎はゆっくりと息を吐くと、梟に話しかける。
「梟、使者として八雲紫にこの弦一郎が話し合いの席を設けると伝えよ」
「承知つかまつりました」
梟は立ち上がり、何処かへ走り去ってしまった。
「今宵の戦は終いだ。全員葦名城へと帰還する」
弦一郎は残った葦名軍を指揮し、葦名城へと帰還した。