阿求は屋敷の奥にある分厚い扉の錠を解くと、地面のさらに下に続く階段を慧音と共に降りていく。
そして地下室へ辿り着くと、阿求はランタンに火をつけて明かりを灯した。
「ここは稗田家の書物庫。歴代の稗田家の人々が幻想郷縁起の他に手に入れた資料を保管している場所です。慧音さんは何回か利用されてますよね」
「ああ。ここには幻想郷ができる前の外の歴史資料もあるからな。教師として興味深い物も沢山ある」
「本当は私以外入ることは禁じられているんですけどね」
「初耳だぞ」
「特別です」
「...ふふっ、それは感謝しなければ。これまでも、これからも」
阿求は笑顔を慧音に見せると、奥の棚にある巻物を取り出した。
その巻物は埃を被っており、かなりボロボロであった。
「かなり古いものだな」
「ええ。少なくとも四百年前の資料です」
「!そんな古いのか!」
「ええ。そしてこれに慧音さんがお依頼された『葦名』という言葉が描かれています」
「!?四百年前の書物にか!」
「今お見せしましょう」
阿求は巻物を開き、慧音に見せる。
そして日が段々と落ち始め、空は蜜柑色に染まる夕暮れ時。
葦名城では多くの兵士が弦一郎の命令により、戦闘準備を行っていた。
その為本城へと繋がる門はまだ固く閉ざされており、見張りの兵士も最小限てあった。
そんな中、大手門前で準備している鬼刑部は、握り飯を食べている途中鳴り響いた轟音に口の中の米を吹いた。
「ゲホッ!ゲボっ!な、何だ!?」
鬼刑部は立ち上がり、櫓にいる兵士を見ると彼らもまた唖然であった。
葦名城の入口から謎の爆発と煙が上がっており、さらに大手門広場の門からも轟音が響き渡る。
鬼刑部はすぐに兜を被り、十文字槍を手に取り鬼鹿毛に乗る。
そして数十人の兵士が武器を構えると、門が吹き飛び壁に激突して木っ端微塵となった。
「なんと...!」
鬼刑部が驚くと、門から現れたのは萃香、霊夢、魔理沙、咲夜、鈴仙、そして紫の親友に仕え、冥界に住む二刀流の従者 魂魄妖夢であった。
「既に私達の倍はいるわね」
「やっぱりこんな堂々と真正面からいって良かったのかぜ?」
「お嬢様も仰っていたわ。『敵と同じよう正面から叩き潰せ』と」
「わ、私もお師匠様や姫様の敵を討ちます!」
「いい修行になると紫様に聞いたが...成る程、確かに良さそうだ」
数時間前
稗田家 会議部屋
八雲紫は葦名城に攻め込むメンバー達を全員集め、どこから出したのかホワイトボードを用意し説明し始める。
メンバーは博麗霊夢、霧雨魔理沙、十六夜咲夜、鈴仙、魂魄妖夢、藤原妹紅、伊吹萃香であった。
「これからの幻想郷を担う少女さん達には感謝しかありませんわ」
「んな挨拶はいらないからさっさと始めなさいよ紫」
「そーだそーだ。気味悪いぜ」
「貴方達...!ま、まぁいいわ。特別に許してあげる。では作戦を伝えるわ」
ホワイトボードに全員の名前を書き込むと、紫は円を書いてグループ分けをする。
「まず本城を奇襲するのは霊夢、鈴仙、妖夢。水手曲輪の月見櫓の調査は魔理沙、咲夜。虎口門には妹紅よ」
「虎口門?」
「虎口門は裏にあるもう一つの出入り口よ。霊夢達には正面から突撃して暴れてもらい、妹紅には虎口門や橋に火を放って足止め」
「足止めだけでいいのかい?妖怪の賢者さんよ」
「ええ。正面からの襲撃で敵は混乱するけど、なら裏口から出ていけばいいと考える筈。敵さんに人里でやられたことをそっくりお返しするのよ。あと火の勢いが強すぎれば中に入る霊夢も丸焦げになるから気をつけて」
「了解だ」
「能力制限されても貴方は蓬莱人。死にはしないけど敵は再生を阻害させる武器を保有してるわ。気をつけておきなさい」
紫は次に魔理沙と咲夜を見て説明し始める。
「妹紅以外のメンバーは萃香の突撃で大手門前まで突破し、魔理沙と咲夜は霊夢達と別れて月見櫓の調査をお願いするわ。敵の術である歪みについて何かわかればいいけど...もしも止められる術が分かれば問答無用で止めて頂戴」
「合点だぜ」
「今回の魔理沙は調査がメインだし、歪みのせいで戦闘で役に立たないでしょう。咲夜の護衛が頼りよ」
「わかってるわ」
紫は最後に霊夢、鈴仙、妖夢を見て、説明を始める。
「貴方達は正面から突っ込んで城へと進み、道中も暴れ回ってとにかく敵の気を引きなさい。そして隊長や指揮官を狙い指揮系統を滅茶苦茶にしちゃいなさいな」
「妖怪の賢者とか呼ばれてる奴がまさかの正面からの突撃作戦ね...」
「それと、葦名城には地下牢という場所があるわ。もしかしたら天狗や河童達が捕まっているかもしれない。もしいたなら解放して共に戦いなさい」
「わかったわ」
「...とにかく敵に余裕を持たせず、人里と魔理沙達に気を向けないようにね」
「萃香はどうするの」
「萃香は大手門前までは援護させるわ。終わったらここに戻ってこさせる。もしも霊夢達がやられた場合の人里防衛の要としてね」
「何よ。萃香がいれば楽だったのに」
すると紫は隙間から剣道などで使う篭手のような道具を取り出し、全員に渡していく。
「これは?」
「全員これを腕に装着しなさい」
紫の言う通りに全員装着すると、手の平に鉤爪と長いロープが現れる。
「おお!?何だぜこれ!」
「生き残った河童に作らせた機械よ。ロープに括り付けた鉤爪をボタンで発射し、高台とかに引っ掛けて再度ボタンを押すと高速でロープが巻かれてひとっ飛びできるわ」
「すんげぇぜ!」
「葦名城の屋根を登るときはこれを使いなさい。あとこれは電気で動くから何十回も使うと電気切れて使えなくなるから過度な使用は控えて」
「けどこれ引っ掛けて敵とかぶん投げられそうだぜ」
「意外と壊れやすいからやめて頂戴」
「何だつまんねぇぜ」
「さぁ、幻想郷の平和のために戦いましょう皆様」
そして現在
葦名城
大手門前広場
鬼刑部は六人目掛けて鬼鹿毛を走らせると、十文字槍を構え突撃する。
すると萃香は攻撃を避けて、槍を掴むとそのまま鬼刑部ごと一本背負いをして地面に叩きつける。
「意外と重いね人間のくせに!!ここは私に任せなよ!」
萃香の言葉に他のメンバーは頷いて、群がる足軽達をよそに大手門に篭手からロープ付き鉤爪を発射する。
そしてボタンを押してロープを巻き上げると、その勢いで大手門を乗り越えた。
「お、大手門を越されたぞ!」
「追いかけろ!」
「そうは...させない!」
萃香は地面を思いきりぶん殴ると、大きな亀裂が彼女の拳中心に入る。
そして地面に出来た巨大な土の塊を大手門前にぶん投げ、門の前にいた兵士と共に土に埋めた。
「いっちょあがり!」
萃香は手についた土を払うと、後ろを振り向き鬼鹿毛に再度乗った鬼刑部を睨む。
「あんたの相手は私だ。本物の鬼に挑めるなんて武士として光栄だろ?」
「おのれ...ならば槍の錆にしてくれるわ!」
小説ストックがなくなってきた...