紫の答えに霊夢は明らかに不満そうな顔になる。
「何よ。またいつもの修行って事?」
霊夢の愚痴に紫は反応せず、真面目な雰囲気を出しながら答える。
「あの城は何故か私の能力が通用しない。天狗達や河童が負けた敗因の一つもそれでしょうね」
「能力が通用しない?」
「ええ。いえ、使えないというのが正しいかしら」
「どういうことよ」
「そのままの意味よ。あの城では能力を使えないようにする淀みのような物が発生してるの。あれじゃあ中に入った妖怪はただ単に力押しすることしかできないわ」
「力押しすればいいじゃない」
「それを押し返せる戦力があそこにいるのよ。天狗達を見たでしょう?」
「ああ、そうだったわね」
紫は腕を組んで人差し指を額に当てる。
「正直お手上げよ。誰がこんなことしたのか見当もつかないの。それに幻想郷の住民の仕業ではないことは確かだし」
「...それで?あの城を落とすとして、正面突破が無理ならどうすんのよ」
紫と霊夢は城を見上げ、ジッと見つめ観察していく。
「完全に妖怪の山頂上にハマってる。周りは全部山の崖...天然の要塞と化してるわね」
「しかも入口は一つで本城への道は一本道。設計したのはかなりのやり手でしょうね。ここまでレベルの設計者なんて現代にいたかしら」
「しかも空からは霧で侵入できず。結界を解くにも集中しなきゃだし迎撃されてちゃまず無理」
「籠城するならこれ以上の城は無いわ」
「籠城が目的?」
「敵の数、食料の量、指揮官、わからないことが多すぎる。わかっているのは能力を封じられた妖怪でも歯が立たない実力者が複数いることと、敵の武装は戦国時代レベルのお粗末なものと言うことだけ」
二人が城について話し合っていると、後ろにいる魔理沙は慧音に話しかける。
「なぁ慧音。お前歴史の先生だったよな」
「そうだが?」
「あの城、お前が記憶してる歴史とかに登場してないのか?」
「うーむ、私もそれを考えていたんだが...あまりの見たことのない城でな。だが天狗達の話を聞く限り安土桃山の...戦国時代と呼ぶ時代の城である可能性が高いぞ」
「戦国時代ねぇ...昔本でちょいと見たことあるくらいだな」
「外の世界の歴史だからな。幻想郷で知る者は少なかろう」
「そういや戦国時代の人間は家紋を旗にして戦ってたらしいな」
「!そうか、その旗印があれば誰の城がわかるかもしれんな!」
慧音は直ぐ様寺小屋へと急いで帰ると、紫が霊夢との話を止めて魔理沙に話し始める。
「残念だけど無駄足よ。私が調べた限りあいつらの旗印は歴史に載ってないわ」
「それを早く言えだぜ。慧音行っちまったぞ」
「万が一もあるわ。調べさせておきなさい」
「まったく...」
すると霊夢は何か考えたのか、紫と魔理沙を見る。
「二人共。あの城の根本に行くわよ」
「!?」
魔理沙は驚き反論しようとするが、紫は魔理沙にもわかるように説明し始める。
「勿論攻める気はないわよ。陸からの偵察、でしょ?」
霊夢は頷くと魔理沙も安堵したのか、緊張の息を吐いた。
「驚いたぜぇ...ならさっさと周っていくか」
魔理沙は勢いよく歩き始め、霊夢と紫も付いていく。
三人は妖怪の山付近に近づくと、圧巻の城に思わず声を漏らす。
「改めて見るとすんごい規模とデカさね」
「男の夢が詰まった城だぜぇ...」
「これじゃあ歩いて攻略なんて大変どころじゃないわ。難攻不落ってやつ?」
「とにかく姿を隠しながら周りましょう。あと私のスキマもここじゃもう使えないわ。貴方達も空飛べない筈よ」
魔理沙は紫の言葉を聞いて飛ぼうとすると、まったく浮きもせず地面から足が離れなかった。
「うお、マジだ。飛べねぇぜ」
霊夢も飛ぼうとするも、魔理沙同様飛べなかった。
「本当ね。厄介な効果だこと」
「それと魔理沙。貴方も魔法使えなくなってると思うわ」
「へ?」
魔理沙は手を前に出し軽い火の魔法を使おうとしたが、掌からは何も出なかった。
「嘘だろマジかぜ!?」
「どうやら魔法も能力とみなされ制限されるようね。これじゃ貴方はただのか弱い女の子」
「く、く、く、屈辱だぜぇ...」
「ご愁傷さまね魔理沙」
三人は隠れながら進み、城の弱点を探っていく。
しかし探れば探るほど弱点は見つからず、三人の表情はどんどん焦りへと変貌していく。
「時々城壁が崩れている部分もあるけど、断崖絶壁で登るなんて妖怪でも無理だわ」
「ったく...面倒くさい城を建てたもんね」
「建てたというか移動してきたと言うべきかしら」
「どうすんのよ紫」
「困った困った...」
すると霊夢は気になったことがあるのか、紫に質問し始める。
「ねぇ紫。私達は確かに飛べないけど、天狗は飛べたわ。何で?」
「天狗は元々飛べる種族だから、淀みからみて能力と見なされてないのかも」
「じゃあ例えばレミリアとか連れてきても、運命操る能力は使えないけど身体能力には問題無いって事ね」
「その認識で間違いないわ」
「なら萃香でも連れてきてもぶっ壊して貰うのもありかな」
三人が話していると、辺りから物音がする。
すぐに三人は警戒し、霊夢はお祓い棒を構え、魔理沙はミニ八卦炉を構え、紫も音がした場所を睨む。
すると木々の後ろから、ボロボロの鎧を着てボサボサの髷に顔には面頬をつけた男が現れたのだ。
「ふぅむ、また戻ってきたか。見知らぬ地ではどうも迷いやすい」
三人はその男が城から来た男と瞬時に悟ると、まず霊夢が飛び蹴りで男の顔を蹴り飛ばし、紫がその腕力を振るい押さえつける。
「はい確保」
「貴重な情報源よ。殺さないようにね紫」
「わかってるわ。魔理沙、ロープ持ってない?」
「本を結ぶやつなら」
「構わないわ。貸して」
紫は男の両手を縛り、軽く持ち上げ肩に乗せる。
「これ以上情報は得られなそうね。なら人里に帰るわよ」
「「賛成」」
三人は急いで人里へと走り出した。