霊夢と妖夢は葦名城に入るも、奥にある門に阻まれていた。
「まさかの二つ目の門があるとわね」
「斬っても殴っても全く開く気配もない。さらに白い霧のような物を纏っているな」
「それも歪みとやらの影響かしら」
「本城に入れれば屋根に上る必要もなかったが...仕方ない。紫様の作戦通り屋根から行こう」
「そうね」
二人は本城を出て、左側にある屋根へと鉤縄を引っ掛け登り始める。
二人が本城の屋根へと着地すると、目の前には多数の寄鷹衆が出迎えてきた。
「早速出たわね」
「押し通る!」
寄鷹衆は全員が鎌、巨大手裏剣を取り出し二人に襲いかかる。
霊夢は寄鷹衆の攻撃を紙一重で避けつつ反撃の蹴りをくらわせ屋根から落とし、妖夢は彼らの連続攻撃を弾いて押し切っていく。
しかし寄鷹衆も負けずと得物である大手裏剣の重みで 回転の勢いを生み、攻撃と退避を同時に行う寄鷹斬りで彼女らに対応し始めた。
「弾いて反撃しようにも逃げられてしまう...」
「攻撃して壁際に追い込みなさい妖夢。そうすれば逃げ場を無くせるわ」
「りょ、了解!」
霊夢と妖夢は離れられても走って距離を詰めながら攻撃するが、寄鷹衆は遠距離武器を使って足止めをし始める。
そして火を纏った手裏剣を持つ寄鷹衆が近接戦を仕掛け、二人を段々と苦しめ始めた。
「や、厄介過ぎる!」
「面倒くさいわねぇ...」
すると奥の城の屋根に長い紐で繋がれている凧から、大声が響き渡る。
「!?」
二人は大声が聞こえた方角を見ると、こちらに向かって勢いよく飛んでくる寄鷹衆を見つける。
「ちょっ!」
「あ、あんなの避けられ...!」
すると飛んでくる寄鷹衆が二人に当たる瞬間銃声が鳴り響き、彼は血を吹き出して軌道がズレて屋根から落ちてしまう。
「「!」」
寄鷹衆も銃弾が飛んできた方向を見ると、先程二人がいた階段を挟む建物の屋根に火縄銃を構えた鈴仙がいた。
「鈴仙さん!」
「へぇ。やるじゃないの」
すると寄鷹衆の数人が鈴仙のいる屋根へ飛び移ろうとするが、彼女はすぐに後ろに置いてある玉が込められた火縄銃に取り替え引き金を引いた。
鷹のように素早く飛び立つ彼らでも、鈴仙の銃弾は避けられず額を確実に撃ち抜かれ落とされていく。
狩りの達人である鷹が元来餌である兎に落とされていた。
しかし鈴仙のいる建物の下にいた複数の寄鷹衆が屋根まで登ってきて、手裏剣や鎌を構えて彼女に襲いかかる。
「!」
だが鈴仙は襲いかかる寄鷹衆の腕を火縄銃の台株で殴り、さらに銃身を握りしめて混紡のように扱い始めた。
寄鷹衆の攻撃を台株で弾きそのまま横顔を叩きつけ、床に散らばった弾込めしてある銃を拾って起き上がろうとする寄鷹衆の顔面に至近距離で引き金を引いた。
他の寄鷹衆が倒れる仲間を踏み台にして鎌を彼女の顔に突き刺そうとすると、直ぐ様火縄銃を捨てて彼等の武器を持つ手を掴み、胸元を掴んで柔道の一本背負いのように屋根の瓦に叩きつける。
さらに他の寄鷹衆が登ってくるが、鈴仙は火縄銃を二丁拾って左右に構え、彼等の顔面目掛けて引き金を引いた。
その華麗で機械的な動きはいつもオドオドしている普段の彼女からは想像できない非常に高度に訓練されているものだった。
それを見ていた霊夢は口笛を鳴らす。
「迷いもなし。それにいい動きね」
「元兵士とは聞いたことあったけど...あの人数相手でも余裕とは」
「あの変な奴等は鈴仙に任せましょ。私達は本城のどっか入口探さないと」
「はい!」
霊夢と妖夢は本城の屋根を走り抜け、上に柵がない窓を見つけて鉤縄を引っ掛け本城へと侵入する。
二人は葦名城内部に入ると、浅葱色の袴を着て長刀を腰に差した侍達が辺りを警戒していた。
妖夢は音を消しながら彼等の背後に回り込み、白楼剣で胸を刺して引き抜いた瞬間楼観剣で背中を斬ってとどめを刺す。
霊夢は下の階まで突き抜けた場所にいる侍を後ろから蹴って突き落とす。
そうして敵を倒し次の階に進むと、道場のような場所に辿り着く。
妖夢は道場の奥に座る男を見た瞬間、ゆっくりと楼観剣と白楼剣を抜いた。
霊夢もその男から発する殺気に汗を垂らす。
「何よあいつ...」
「...死にかけたが、相当の手練だ」
座っている男は全身のあちこちに血で濡れた布が巻かれており、白の袴を着ている。
そして片手には酒壺、もう片方には盃を持って一人で楽しんでいるようであった。
その男は風見幽香の片腕を斬り落とした剣聖 葦名一心であった。
「...おう、もう来たか」
一心は盃を置くと、大きく息を吐いた。
「この死にかけの爺にお主らを倒すことはできん。遠慮せず入れ」
霊夢と妖夢は一心の言葉に警戒しつつも、道場に入っていく。
「...名前は?」
「一心」
「!あんたが幽香の腕斬り落としたっていう...」
「カカカッ...思い出すだけでも血が滾る女よ」
一心は酒壺を掴んで盃に酒を注いでいく。
「...我が孫、弦一郎を止めに来たか」
「そのつもりよ」
「...ならば、いい」
「...」
「弦一郎の行いは間違っておる。できるものならば止めてやりたいが...何故か...儂は逆らえぬのだ」
「どういうこと?」
「葦名の為...その言葉が脳に染み付き離れぬのだ。葦名の為ならば誉れすら捨てる。まるであ奴の思考が乗り移ったかのようじゃ」
霊夢と妖夢はお互いに顔を見て、一心が何を言っているのか分からなかった。
「梟、お蝶、雅孝、弦一郎、そして葦名の者達は全員気づいておらぬ」
「何に気づいてないのよ」
「己が存在する理由じゃ。皆殺された筈だが...黄泉帰りしたと思うておるのだ」
「?」
「最早葦名の黄泉帰りなど出来ぬ。死すら忘れた亡者には決してな」
すると一心は酒を飲み干し、道場の奥に飾られていた刀を掴んで立ち上がる。
「弦一郎は上に進んだ天守におる」
「...なら通してよ」
「.....弦一郎は総大将。儂は守らなければならぬのだ。葦名の為にな」
すると妖夢は楼観剣と白楼剣を構えた。
「行ってくれ霊夢。この人の相手は私が」
「...お願いするわ。死にかけとはいえ油断しないでよ」
「わかっている」
霊夢は道場の左側にある窓から外に出て、天守へと向かった。