虎口門
弦一郎の命により多くの兵士達は虎口門へと集合していた。
中には侍大将や七本槍も居り、準備が整えばすぐにでも進軍を開始できる状況であった。
すると一人の足軽が開かれた門に立つ一人の女を見つけ、すぐに近くにいた侍大将の一人に報告した。
侍大将は大太刀を鞘から抜いてその女にゆっくりと近づいていく。
「何者か!!」
「ただの死なない女さ」
立っていたのは藤原妹紅であり、彼女は見張り台にあった油を侍大将の前に投げる。
「!」
「ほぅら。火傷注意な」
すると妹紅は手から炎を生み出し侍大将の足元へ投げつける。
すると辺りは油によって火に包まれ、葦名軍は混乱に包まれる。
「能力制限か...私の妖術もかなり弱くなっちゃったな。長い経験で学んだ知識だけど、能力に見なされちゃったかね」
すると妹紅は掌から小さな炎で出来た不死鳥を大量に生み出し虎口門のあらゆるところに飛び出たせる。
妹紅はあちこちに置いてある油に不死鳥を向かわせ、あっという間に虎口門は大火事となる。
兵士達はすぐに消火作業と入るが、指揮官達は怒り狂い刀を抜いて妹紅へ襲いかかる。
しかし妹紅は攻撃を避けずにあえて受け、直接手を彼等の体に触れ、炎を出して敵を火だるまにした。
かつて蓬莱の薬を奪い取り、その罪を償うように痛みも恐れも慣れてしまった不死身の体を最大限利用するのが藤原妹紅の戦い方である。
「...さぁ、次は?」
妹紅は火だるまとなった敵を蹴り飛ばし、両手を広げて敵に挑発する。
しかし葦名軍は刀の達人である指揮官達があっという間に火だるまとなって倒れた姿を見て、誰も前へと足を踏み出せない。
すると葦名軍は左右に別れ、まるで妹紅に虎口門を明け渡すように足軽達は歩を進める。
「?なんだよ、もう降参か」
妹紅は呆気ないとため息をついた。
しかし彼女は知らなかった。
葦名軍が左右に別れたのは、これから来る怪物に自分達が被害を被らない為であることを。
その瞬間虎口門の扉が吹き飛び、角に火のついた藁をつけられた巨大な牛が現れたのだ。
「!?」
火牛は妹紅目掛けて突っ込み彼女はすぐに横に避けるも、火牛は地面に角を指して無理矢理軌道変更してもう一度突っ込んだ。
妹紅も避けられずに火牛の突進を受けて空中に投げ飛ばされる。
「がっ...!」
妹紅は地面に叩きつけられると、腕が逆の方向を向き、足からも血が出ていた。
「なんつうもん出してきたんだ...!」
妹紅はなんとか立ち上がるが、待っていたのは火牛の突進である。
再度吹き飛ばされて虎口門に叩きつけられると、妹紅は大量の血を吐いた。
「がはっ...こ、こりゃ...一回休みかな」
火牛は治まることがなく、扉に叩きつけられた妹紅に突撃してとどめを刺した。
鈍い骨の折れる音が鳴り響き、妹紅はその場で息絶える。
しかし妹紅は目を覚まし、まだ自分の腹目掛けて角を抉っている火牛の目に掌を乗せて炎を出した。
火牛は目を焼かれて直ぐ様暴れ出し、辺りを駆け回る。
「さぁて、復活したはいいけどどうするかな」
妹紅は全ての傷が完治していることを確認すると、火牛が再び突進してくる。
彼女は避けて牛を虎口門にぶつけさせると、上で消火をしていた兵士の一人が落ちてきた。
刀を持った兵士は立ち上がるも、すぐに火牛に吹き飛ばされた。
すると妹紅はその兵士が持っていた刀を拾い、火牛の腹に突き刺す。
「おりゃ!」
火牛は苦しみ出すが、頭を左右に振って妹紅を吹き飛ばす。
すると今度は火縄銃を持った兵士が落ちてきて、妹紅は火縄銃を奪い取って火牛目掛けて引き金を引く。
玉は牛の腹にめり込み、更に苦しそうな声を上げ始めた。
「ざまーみろ」
火牛は更に怒ったのか、妹紅目掛けて突進する。
彼女は避けると近くの高台にいる兵士の近くへと飛び上がり、彼が持っていた槍を奪い取る。
「借りるよ」
妹紅は高台から跳躍し、火牛乗って槍を思い切り突き刺した。
火牛は暴れまわり、彼女も突き刺した槍を手放し地面に落ちる。
その瞬間火牛は妹紅の腹に角を突き刺し、そのまま壁へと突撃した。
「ぐっは...!」
再び鈍い音が響き渡るも、妹紅は気にせず火牛の腹に刺してある刀を掴んで何度も刺して引き抜いた。
火牛も早く死ねと言っているかのように妹紅の腹に力を込めて突進し、彼女も負けじと刀で抉る。
「こんのぉ!!」
すると妹紅の背中から炎で出来た翼が生え、今までとは段違いな再生能力を発揮する。
そして生えた翼から火の粉が辺りに飛び散り、油保管庫にまでいったようで虎口門が大爆発を起こす。
その爆発によって虎口門が崩れ、火によって包まれ消火していた兵士達の多くが灰となって消えた。
妹紅は刀を抜くと、火牛の目を貫いた。
火牛は妹紅から離れてその巨体で辺りを跳ね回り、近くの石垣に強く頭を打ってしまった。
すると脳震盪を起こしたのか、火牛はぐったりと倒れてしまう。
妹紅は火牛の頭に近寄ると、目に刺さった刀を引き抜いた。
「.....火を恐れていただけか」
妹紅は火牛に残った片目を見て、ため息をしながら耳に刀を思いきり刺した。
火牛は一瞬体を揺らすも、すぐに力が抜けて息絶えた。
「怖がらせてごめんよ」
妹紅は刀をそこらに放り投げて、辺りを見渡す。
虎口門は炎に包まれ、あんなに集まっていた葦名軍もいつの間にか城に逃げていなくなっていた。
「...これなら任務完了って言っていいだろう」
妹紅は虎口門を燃やし尽くし、暇になったと彼女も城へと歩みを進める。