決戦!葦名城!   作:ポン酢おじや

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死なぬ捕虜

 「...ううむ」

 

男は目を開けると、眼前には睨みつける女達がいた。

どうやら気絶させられ捕虜となったらしい。

 

「...その珍妙な格好から察するに、其処許たちは城に攻めてきた女子共の仲間と見える」

「あら、察しがいいわね」

「良くなければこの戦乱生き残れぬでな」

 

紫は縛られ座っている男の前に屈んで、淡々と話し始める。

 

「名前は?」

「ふむ...それがしは彼岸の者ゆえ名前はないが...皆からは死なず半兵衛と呼ばれておる」

「半兵衛?ありきたりな名前ね」

「それで、それがしに何か用かな」

 

紫は何処から取り出したのか、手には包丁が握られており半兵衛の足に突き刺した。

 

「...」

「半兵衛さん。私達はあの城の情報が欲しいの。教えてくれれば手荒なことはしないわ」

 

紫の笑顔には怒りが感じ取れ、後ろにいる女性達も汗を垂らし恐れているように見えた。

しかし半兵衛は含み笑うと、紫に軽くと言い放つ。

 

「それがしは蟲憑きゆえ、心の臓を刺されても死なぬ。痛みは感じるが...拷問など無駄な事よ」

「へぇ?忠誠心が高いことで結構。けど」

 

紫は半兵衛の足に刺さった包丁を力よく抜くと、もう一度刺そうとしたその瞬間。

 

「まぁ待て。それがしは教えぬとは言っておらぬ」

 

紫は振り下ろす手を止めると、包丁を地面に置いた。

 

「なら教えなさい」

「何を話せばよいか」

「全てよ。貴方が知ってる城の情報全て」

「ふぅむ...それがしも葦名の城の内部はよくは知らぬでな」

「葦名?」

「あの城の名である。葦名にそびえ立つ難攻不落の葦名城。そしてそこに住まうのが国盗り戦の葦名衆である」

 

紫は知らぬ単語に歴史の専門家である慧音を見るも、彼女も首を横に振った。

 

「葦名衆ねぇ...」

「其処許ら、葦名衆を知らぬのか...その威光は過去の物とはいえ世間知らずと言えるな」

「悪かったわね。それでその葦名衆の目的は?」

 

すると半兵衛は不思議そうな顔をして、紫の問いに答える。

 

「其処許はそれがしが葦名衆に見えると?」

「違うの?」

 

半兵衛はため息を吐き、眼の前の女性が本当に何も知らないと確信して説明し始める。

 

「葦名衆はそれがしとは別物よ。整えられた装備に研ぎ澄まされた剣の腕、武勇...この戦乱を駆けた怪物達こそ葦名衆なり」

「なら貴方は?」

「それがしはただの葦名の流れ者。いや、むしろ田村についていた為敵だったとも言えるか」

「その葦名衆の敵だったなら協力してくれない?私達の仲間があいつらにやられてるのよ」

「ふむ...これも何かの縁か。他には何を話せば良い」

 

すると紫の後ろにいた霊夢が二人に割って入って質問し始める。

 

「敵の指揮官は誰よ」

「指揮官...此度の葦名の総大将は葦名弦一郎と聞く」

「弦一郎...そいつが悪の親玉って訳ね。他には?」

「鬼鹿毛に跨がる鬼刑部...葦名でも武勇を誇る七本槍...そして葦名一心といったところか」

「鬼刑部に七本槍に一心」

「特に一心は剣聖と謳われる男。既に家督は弦一郎に譲り病のため隠居の身と聞いておるが...それでも強大な内府が恐れるほどの者よ」

 

霊夢は立ち上がると、慧音の近くによって話し始める。

 

「本当に知らないの?」

「剣聖...それほど有名なら知っているはずだがな」

 

 

 

「何ですって!」

 

すると紫が大きな声を上げると、小屋にいる全員が紫を見る。

 

「どうしたのよ紫」

「.....半兵衛さん、もう一度お願い」

「ふむ」

 

半兵衛は紫に言われた通りゆっくりと話し始める。

 

「足軽達が話していたが...葦名の者はこれから『紅魔館』『永遠亭』『人里』『太陽の畑』とやらを攻めると話していた」

 

半兵衛の話を聞いて全員が驚愕した。

 

「ちょっとちょっと!どういうことよ!?」

「奴等は攻めようとしているってことよ」

「其処許ら。今の地名を知っておるのか?葦名にはない場所ゆえそれがしには分からぬが...」

 

すると小屋にいる全員が外に出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうするんだぜ!?葦名城にいるやつが攻めてくんのか!?紅魔館と永遠亭と人里と太陽の畑に!?」

 

魔理沙が慌てふためいていると、紫も冷静でいられないのか考え込む。

 

「.....」

「すぐに対策練らないとやばいわよ紫。相手は武装して訓練されてる集団なんだから」

「とにかく...とにかく人里を最優先に守りを固めなきゃいけないわ。人里が陥落なんてしたら幻想郷のバランスが崩壊する」

「私と魔理沙、慧音、それにあんたで防衛するってことね」

 

すると紫は霊夢を見て、慌てた様子で話し始める。

 

「いえ、私は仕事ができた。防衛戦力は貴方達だけよ」

 

霊夢は少し驚くと、疑う様子で紫を睨む。

 

「逃げるんじゃないでしょうね」

「違うわよ霊夢。あいつの話が本当なら奴らは幻想郷の場所を把握してる」

「それが?」

「いきなり現れた奴らが何で知ってるのよって話よ。恐らく...幻想郷を調べ上げてる奴がいる筈」

「だからそれが」

「情報はどんな武器よりも厄介なの。その情報源を調べてすぐに排除しなきゃいけないわ」

 

紫の言葉に反論しようとしたが、霊夢も一理あるのか黙ってしまった。

 

「それに恐らく私はこの戦いじゃあまり役には立てないわ。例の能力制限されちゃったら...」

「!」

「すぐ紅魔館や永遠亭にこの事を伝えなきゃならない。能力が使えるうちに私は動く事にする」

 

霊夢も納得したのか、ため息をして魔理沙と慧音を見る。

 

「慧音、人里自警団の連中全員呼んですぐに人里の出入り口を封鎖し守りを固めて。そして住民には農具でも何でもいいから武装させ、女子供は地下のある稗田家に避難。狩人達も狩りから帰らせてすぐに戦闘準備」

「わ、わかった。すぐに伝えるよ」

 

慧音はすぐに自警団の建物へと走り出した。

 

「魔理沙はすぐに家から実験道具や魔導書やら何やら使えそうなもの全部持ってきなさい。それで人でも扱える魔法武器を作るのよ」

「そ、それって爆発魔法込めた魔法瓶とかか?」

「そうよ。敵がもし能力制限してきたら貴方の魔法に頼れなくなる。だから使えるうちに魔法を使って敵を倒せる道具を作るの」

「わ、わかったぜ!アリスとかにも協力してもらってくる!」

 

魔理沙は箒に跨り魔法の森へと急ぐと、霊夢は付近にいる住民に説明し始める。

住民は霊夢の必死の説明に嘘や冗談ではないと悟り、すぐに防衛の準備に移り始める。

 

 

紫も隙間を開くと、霊夢を見て呟いた。

 

「頼むわよ、霊夢」

 

紫はスキマの中に入り閉じて消えてしまった。

 

 

 

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