霊夢達は太陽の畑の奥に飛んでいった修羅を追っていくと、彼がいる方角から炎の柱が現れる。
それは葦名城の強者達を燃やした炎と同じ、紅くしかし不気味な色であった。
太陽の畑に咲いている花が次々と炎に焼かれて、黒い焦げとなり辺りに舞っていく。
霊夢達は修羅が倒れている場所にたどり着くと、彼から桜色の気が発せられ、上空から桜の花びらが舞い落ちていることに気づく。
「何よあれ」
「ピンク色のなんか出してるぜ?」
「...皆気をつけて...第二ラウンドよ」
霊夢の言葉に全員が聞き入ると、修羅はゆっくりと不自然に起き上がる。
「.....」
修羅は二刀の不死斬りを構え直し、霊夢達を睨んだ。
先程の幻影に不快感を感じているのか、明らかに怒りの雰囲気を出している。
「ここからが本番よ。気を引き締めなさい」
「能力使えるようになったのよ?ならもうあいつに勝ち目はないわ」
「咲夜!ちょっと待ちな」
咲夜は懐から懐中時計を取り出し、能力を使って時を止めた。
「既に貴方の時間は私の物...直ぐに楽にしてあげるわ」
咲夜は修羅の近くまで移動すると、ナイフを彼の喉元に近づけた。
「これで異変は終わりよ」
咲夜はナイフを動かそうとした瞬間、こちらに手を伸ばして大きく口を開けている霊夢を見てしまった。
「...?」
咲夜は霊夢が何を心配しているのか分からなかったが、それは次の瞬間思い知ることになる。
「!!!」
咲夜がナイフを動かそうとすると、なんと修羅の目がゆっくりと彼女の方を向いたのだ。
「なっ!!?」
咲夜はすぐに修羅から離れて、ナイフを構えた。
そして修羅は咲夜が時を止めた世界の筈なのに、ゆっくりと動き始め彼女の方に向かってきたのだ。
「ありえない...!」
咲夜は修羅から十分距離を取って能力を解除した。
霊夢達から見れば咲夜がいきなり移動したのは当然と思うが、彼まで少し移動していることに驚いた。
「!あいつも移動したぞ!?」
「良かった...咲夜は無事ね」
「な、何が起こったんだぜ?」
「咲夜が時を止める瞬間、あいつからほんの少し『歪み』の力を感じたのよ」
「け、けど私はまだ魔法使えるぜ?」
「恐らくほんの一瞬だけなら集中もそこまで必要なく弱い『歪み』を使えるらしいわね。咲夜の時を止めた世界もおかしかったから」
「おかしい?」
「時を止めたならいくら私でも咲夜の行動は見えはしないわ。けど今回はあいつらが動いてるのわかっちゃったのよ」
「そ、そうか?私は見えなかったぜ?」
「超光速で動いてたからね。私か...妖夢も少しはわかったんじゃない?」
霊夢の言葉に妖夢も頷いた。
『歪み』によって能力を阻害され、咲夜の時を操る能力が不完全に発動してしまったのだ。
正確には完全に時が止まった世界ではなく、止まったかのように思えるほど時間がゆっくり進んでいる世界へと。
咲夜は霊夢の説明を聞いて冷や汗をかき、これでもう能力を安易には使えないと奥の手が封じられたのだ。
すると妖夢は楼観剣を構えて、大きく振り上げ刀身に妖力を溜める。
「断命剣!冥想斬!」
妖夢は妖力を溜めて巨大な光る刀身になった楼観剣を修羅目掛けて振り下ろした。
彼女の攻撃は辺りに衝撃と爆風を靡かせるも、修羅は二刀の不死斬りで楼観剣を受け止めていた。
「!?」
自分の一撃がまさか防がれている事に驚くも、妖夢はさらに力を込めて修羅を潰そうとする。
しかしその瞬間、修羅は忍義手から黒い羽を縄でまとめた物を前に出した。
妖夢は急に彼の抵抗が緩んだ事に好機と見て楼観剣で叩き潰す。
「!」
しかしその時黒い霧のようなものが妖夢の体を通過し、黒い羽と赤い羽根が彼女の周りに飛び散った。
ほして先程まで楼観剣の下にいた修羅が、彼女の後ろへといつの間にか移動していた。
「いつの間に...!」
妖夢はすぐに振り返ったが、次の瞬間彼女の周りを舞っていた羽が発火し炎に包み込まれる。
「ああっ!!」
霊夢達は妖夢が炎に包まれた姿に驚き、魔理沙はすぐに妖夢に水魔法を当てて炎を消した。
「だ、大丈夫か!?」
「はぁ...はぁ...な、何とか」
妖夢は楼観剣を地面に刺して支えとし、倒れるのを防ぎ修羅を睨む。
「おのれ!」
妖夢は白楼剣も鞘から出して、修羅に襲いかかる。
それを援護するように咲夜はナイフを投げ、魔理沙は箒を召喚して八卦炉をつけて猛スピードで修羅に突っ込み始める。
すると修羅は二刀の不死斬りの刃を地面につけると、ゆっくりと目を閉じた。
そして襲いかかる妖夢達目掛けて二刀の不死斬りを振り上げると、拝涙から出る赤い気が人の形に形成し始めた。
開門からも同様に黒い気が人型に変化し始める。
妖夢が楼観剣と白楼剣を同時に振り下ろすと、その攻撃を受け止めたのは修羅の不死斬りではなく、なんと赤い気で出来た人型の何かであった。
その人型の何かは気でできた刀を持っており、妖夢の二刀を弾き返す。
「!!貴方は...!」
妖夢はその人型に見覚えがあった。
かつて葦名城で争い、自らの技を美しいと褒めてくれた一心だったのだ。
開門から出た黒い気は魔理沙と咲夜相手に互角以上の実力を発揮した梟に形成した。
そして一心は妖夢に葦名十文字を仕掛けて弾き飛ばし、梟は突撃してくる魔理沙に爆竹で妨害し纏い斬りを仕掛け、咲夜が飛ばしたナイフは修羅が弾いてお返しと手裏剣を投げる。
「ぐわっ!」
「いでっ!」
「くっ...!」
妖夢は防御するも斬撃は防ぎきれず肩と横腹を斬られ、魔理沙は直撃は避けたものの大きく転倒し、咲夜は手裏剣の回転を防ぎきれず左腕を怪我した。
修羅は不死斬りを構え直すと、隣りにいた一心と梟は灰となって消えていった。
「あれが例の幻覚の一つ『現れ』らしいわね」
「まさか一心を出すとは...」
「咲夜!あの月見櫓で見たおっさんが出てきたぞ!」
「言われなくてもわかってるわよ」
すると霊夢は片手に魔法棍棒と、魔理沙達が攻撃している間に自らの霊力と護符で作り上げた特製のお祓い棒を持って修羅に近接戦を仕掛ける。
霊夢は修羅の突き攻撃を見切って踏みつけると、その間に攻撃を仕掛ける。
しかし彼は鉄傘を展開して彼女の攻撃を弾き、踏みつけられている不死斬りを引き抜き反撃に出る。
「!」
修羅は奥義不死斬りを放ち霊夢は魔法棍棒で弾き、棍棒はヒビが入り砕けてしまった。
彼は好機と見るやすぐにもう一度奥義不死斬りを行うも、彼女は護符を目の間に張り出し四角形の結界を二つの召喚して攻撃を防いだ。
そしてお祓い棒で攻撃し、修羅も不死斬りで弾く。
二人の攻め合いは熾烈を極め、修羅は一歩も譲らず猛攻し、霊夢は攻撃を受け流し相手の体力切れを待つ。
「す、凄いんだぜ」
「流石霊夢ってとこね...」
「...」
修羅は奥義不死斬り、葦名流、旋風斬り等あらゆる技術を使い霊夢を攻撃するも、彼女はまるで全ての攻撃がわかっているかのように流し弾いている。
ありとあらゆる攻撃を流し、紙一重で避け、相手にも傍観者にもその無駄のない完璧さに見惚れさせる。
これこそ博麗の巫女であり、幻想郷で唯一異変解決屋として名を轟かせている博麗霊夢の本来の実力である。
「.....」
「.....」
修羅と霊夢は共に何も言わずただ己の武器を振るい、相手を倒すことだけに集中していた。
そして二人の勝負にいよいよ進展が起こった。
修羅は霊夢の攻防に慣れてくると、目を閉じて開門からはお蝶、拝涙からは弦一郎を出現させて、彼女にはクナイを投げさせ、彼は大弓で四連続の矢を撃たせた。
霊夢は両脇に結界を張って二人の攻撃を防ぐと、修羅は先程幽香の家を壊した不死斬り二刀で八の字に刻む斬撃を放つ。
霊夢はスライディングで斬撃をかわし、止めようとしてくるお蝶、弦一郎を地面に張った結界で足の動きを止めて、お祓い棒で二人の後首を弾き消し去った。
修羅は鉄傘を展開して霊夢の攻撃を防ごうとするが、彼女は懐から封魔針を取り出し思いきり投げて傘に突き刺した。
そしてお祓い棒を両手で握り、刺さった針目掛けて全力で薙ぎ払う。
お祓い棒で押された封魔針は硬い鉄傘を貫通し、修羅の左腕にある忍義手を貫いた。
「!」
忍義手にダメージが入り鉄傘が展開できなくなると、霊夢はお祓い棒で忍義手を突き刺し抉る。
そして忍義手で持っていた開門を蹴り飛ばすと、お祓い棒を忍義手から抜いて思いきり振り下ろした。
「その義手は...もう終わりね!」
忍義手は完全に破壊され、修羅の体から離れ地面に落ちてしまった。
霊夢は直ぐ様とどめを刺そうとすると、彼の左手から妙な炎が吹き出した。
普通の炎とは違い妙に明るい色をしている不気味なもので、見るだけで嫌な気配をさせる不可思議な炎であった。
「っ!」
霊夢はすぐに修羅から離れると、彼の左腕を燃やす炎はどんどん大きくなっていき、やがて全身を包み始める。
「ちょっとちょっと!どうなってんのよこれ!」
すると後ろで見ていた三人が霊夢の隣に立って、魔理沙が八卦炉を修羅目掛けて構える。
「今がチャンスだぜ!これで最後だ!」
魔理沙は八卦炉からマスタースパークを発射し、修羅を消そうとした。
しかし彼の左腕から吹きでる炎は巨大な手に変化させ、なんとマスタースパークを止めたのだ。
「!?うそぉっ!?」
魔理沙もその光景に驚愕し、八卦炉のパワーをさらに高めてマスタースパークをファイナルマスタースパークに変化させて修羅を倒そうとした。
しかし彼から出る炎の腕は全く衰えず、魔理沙の攻撃を受け止めている。
そして八卦炉からファイナルマスタースパークが出なくなり、完全にパワー切れとなった。
修羅から生える炎の腕は段々と小さくなり、歪な形をしているが、彼の新たな左腕として完成する。
この結果に流石の霊夢も唾を飲み込み、ゆっくりと立ち上がって全身から炎を灯して赤の不死斬りを構える修羅に恐怖を感じる。
「魔理沙」
「...ああ」
「咲夜」
「...ええ」
「妖夢」
「...うむ」
「あの化物を倒すわよ...何としても!」