決戦!葦名城!   作:ポン酢おじや

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夢想天生

霊夢は開門を片手にゆっくりと修羅の倒れる方へと歩き出し、彼は起き上がって燃える左腕を構える。

 

「無駄よ」

 

修羅は左腕の炎を増幅し巨大な火の手に変化させ、霊夢の頭目掛けて振り下ろす。

 

しかし炎は霊夢には当たらず、貫通して地面へ落ちた。

 

「!」

 

修羅は巨大な手を左腕に戻し、奥義不死斬りを仕掛け赤い斬撃を霊夢に飛ばす。

しかし斬撃は彼女の体には当たらず、すり抜けて後ろの花々を斬り尽くした。

 

すると霊夢の周りに飛んでいる陰陽玉から光る玉、護符、針を大量に発射し始め、空の色が隠されるほどの弾幕を張った。

 

「この量を弾けるもんなら弾いてみなさい」

 

修羅は燃える左腕を大きけ広げて盾のように扱うも、全ては防げず体の全身でその弾幕を受ける。

 

彼はさらに攻撃を受けつつ反撃を仕掛けるも、霊夢の体には当たらずすり抜けるのみ。

 

葦名の強者を全て殺し、内府の軍勢すら殺し尽くした男が、目の前にいるたった一人の少女に手も足も出ない。

 

殺しの技術を学び、修羅と呼ばれ、人斬りの天才すら勝つことを許さない。

 

あらゆる物から孤高に浮かび飛ぶ事で何者にも干渉させず、全ての攻撃は雲一つない空に消える。

 

歴代の博麗の巫女は必ずこの技を持っており、誰も寄せ付けない己の最強の奥義のみにその名をつけることが許される。

 

つまりこれは博麗霊夢の最強の技。

 

即ち、夢想天生である

 

 

 

霊夢は弾幕を止めて、ボロボロとなった修羅の前に立つ。

 

「.....」

「...私は人間は殺さないわ。けど...妖怪や怪物は別」

「.....」

「貴方はもう人間じゃないわ。ただの化物よ」

 

修羅は拝涙を振り上げ霊夢の頭目掛けて振り下ろしたが、やはり当たらず刃は地面に刺さった。

 

そして霊夢は開門を振り上げ、修羅目掛けて振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

「...」

 

 

 

 

 

開門から溢れる黒い気は修羅の体を斬り裂き、彼は体から血を吹き出して倒れる。

右手に持っていた拝涙は地面に落として転がっていき、左腕から吹き出している炎も消えてしまった。

 

霊夢は血の付いた開門を強く握りしめて、大きく息を吐いた。

 

「...化物とはいえ、人を斬るのは嫌な気分になるわ」

 

霊夢はその場に座ると、倒れる修羅に話しかける。

 

「...エマって人から聞いたわ。九郎とか言う主人に会いたかったそうね」

「.....」

「だんまりか.....」

 

霊夢はゆっくりと立ち上がると、開門を修羅の首目掛けて刃を向ける。

 

「...」

 

あとは刃をこの男の喉元に突くだけ。

そうすればこの異変は終わる。

 

なのに霊夢の腕は震え、修羅の喉に刃を突き立てることができない。

彼は確かに怪物だ。

しかし彼の姿、異変を起こした理由、思いや願いは人である。

 

霊夢は心の中で本当に自分は化物を殺すのかと何度も自問していた。

 

今から殺すのは人間ではないのか?

 

そう考えると霊夢の手は震えて汗が吹き出る。

 

「はぁ...はぁ...」

 

霊夢はやはり刃を突き立てることはできず、後ろに下がって頭を手で押さえる。

 

「私は博麗の巫女...異変を解決しなければいけないの」

 

霊夢は開門を握りしめるも、汗が大量に吹き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめておけ。其処許には辛かろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢は声のする方向を振り向くと、そこには瀕死のエマに手を貸した半兵衛がいたのだ。

 

「あ、あんた!」

「人里では人以外の者が全員倒れ大騒ぎであった。だが、それがしは何故かここが原因とわかっておってな」

 

半兵衛はエマと共に修羅へ近づき、彼の前に彼女を降ろした。

 

「それ、逝く前に伝えよ」

「狼殿.....」

「.....」

 

エマは修羅の姿をじっと見て、静かに涙を流した。

 

「...一度は修羅に墜ちましたが...心の底ではまだ九郎殿が残っていたのですね」

「.....」

「ならば...もう終わりしてください...狼殿。九郎殿は既にこの世にいないのです。彼も...そう願っている筈」

 

修羅はエマの言葉を聞いて、空を見上げながらゆっくりと答える。

 

 

 

「.....承知」

 

 

 

エマは狼の言葉を聞いて安堵し、地面に倒れて目を閉じた。

そして灰となり空へと舞って消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

半兵衛はエマが消えるのを見届けると、霊夢の持つ開門を手から離させ受け取った。

 

「後はそれがしに任せよ。其処許は他の者を救いに行け」

「...私は博麗の巫女よ。この異変は私が...」

「...なれば見届けよ。この結末を」

 

半兵衛は霊夢にそう言い放つと、開門を狼の喉元に突きつける。

 

「.....それがしも思い出したのだ」

「.....」

「其処許が葦名の城に行く前、不死斬りで...願いを聞き届けてくれた」

 

狼は何も言わず、右手で開門をゆっくりと掴んだ。

 

「.....」

「その恩を返したいとは思うていたが.....あの時とは逆になってしまったな」

「.....」

「成る程...其処許がそれがしを斬る前、何故今一度本当にやるかと聞いたのか、今ならばわかる。我ら戦国の世を生きてきたとはいえ、恩人を自らの手で死なせたくはないものだな」

「.....そうか」

「では、共に参るぞ。痛みはあまりない...そう体感したゆえに」

 

半兵衛は狼の喉元に開門を突き刺し、抉ると勢いよく引き抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「九郎様..........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狼は灰となって消えていき、それと同時に幻術『現れ』も完全に解除された為、半兵衛も灰となって消えていった。

 

霊夢は地面に刺さった開門を見て、大きくため息を吐いた。

 

「...終わりね。これでやっと」

 

霊夢は夢想天生を解くと、魔理沙達の元へと向かった。

 




心中に息づく、類稀な強者との戦いの記憶

紫にお願いし、戦いの記憶と向き合うことで、
攻め力を成長できる

斬る喜びに飢えた修羅、かつては葦名に住まう熟練の忍びであった







心中に息づく、類稀な強者との戦いの記憶
今はその残滓のみが残り、
記憶は確かに少女達の酒のつまみとなった

あらゆる強者を斬り、あらゆる弱者を斬った男
怨嗟すら己の力と変え、二刀の不死斬りを操り、全てを極めた

血に染まり、笑みを浮かべるその姿、まさしく鬼

だが、その全ては斬る喜びの為ではなく、かつての主を救う為だったということは、最早知る由もない









『歪み』
拝めば敵の流派技を制限し、弱体化させることができる
形代を消費して、使用する

今は亡き、狼の主がくれた御守りを、無惨に散らし、その願いを利用したもの
それは斬る喜びに墜ちた、修羅だからこそ、編み出せる技なり

歪みの前では、全ての強者がただの餌と化す









『現れ』
拝めば心中の強者達を召喚し、敵に攻撃させる
形代を全て消費して、使用する

かつて狼の忍びの師が見せた、まぼろしを大いに発展させたもの
心中にて思うた事を出現させ、虚を実とする技

しかし忘れぬことだ

所詮はまぼろしであり、既に死んだ者は、決して黄泉帰らぬことを
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