幻想郷にある霧の湖付近
そこに全てが紅く巨大で不気味な館があった。
紅魔館である。
吸血鬼レミリア・スカーレットを長とし、各地、各勢力にいい意味でも悪い意味でも大きく影響を及ぼし、幻想郷でもまず名の上がる勢力である。
多数の妖精をメイドとして雇い、戦闘部隊や偵察部隊等もメイド長十六夜咲夜の指導の元に組織し戦力面でも有名である。
さらに幻想郷で唯一存在する図書館を保有しており、魔女であるパチュリー・ノーレッジが管理している。
そんな紅魔館に異変の首謀者とされる葦名衆が挑むという情報が八雲紫によりもたらされた。
紅魔館のメイド達は大騒ぎであり、レミリアはすぐに主要メンバーを会議室に集めた。
巨大な円のガラステーブルにレミリアは八雲紫から預かった手紙を置く。
その手紙を十六夜咲夜、パチュリー・ノーレッジ、紅美鈴、フランドール・スカーレットが見つめる。
「見ての通りよ。あのスキマ妖怪が朝っぱらからこの私を叩き起こして何しに来たと思ったら...」
「あの大地震を引き起こした集団が攻めてくる...ねぇ」
「懐かしいと思わないパチェ?私達吸血鬼と魔女に戦いを挑む人間なんて」
「そうね。何十年前かの吸血鬼ハンター集団の奇襲以来かしら」
「くくく...胸躍るとはこの事ね」
レミリアは足をテーブルに乗せると、メイド長の十六夜咲夜が紅茶を入れてカップを彼女の前に置く。
「しかし戦闘となると非戦闘員の妖精メイドは何処かへ避難しなければなりませんね」
「そうね...復活するとは言え目の前で死なれても目覚め悪いし」
「ではフラン様の地下室はどうでしょう。頑丈で扉を閉めれば人間では開けることは出来ないかと」
「そうして頂戴」
「かしこまりました」
咲夜は一礼してから会議室を出ていくと、紅魔館の門番である紅美鈴が心配そうにレミリアを見る。
「だ、大丈夫なんですかね」
「何よ、怖いの美鈴」
「い、いやぁ、私は大丈夫なんですが」
「なら安心なさいな。あんたは他人を気にせず暴れてればいいの」
「そ、そうですかね」
レミリアは用意された紅茶を飲むと、全員に軽々と話し始める。
「咲夜がいないこの場で言うけど、スキマ妖怪から援軍の要請も来ているの」
「ちょっとちょっと。敵が攻めてくるって教えといてわざわざ戦力削って援軍出せって...図太いなんてもんじゃないわよ」
「けどここで援軍を出せばあの八雲紫に貸しができる。これはでかいわよ」
「けど...」
「あら、私とフランじゃ不安かしら?」
パチュリーはレミリアの妹であり、幼い見た目からは想像できないが紅魔館勢力でも最強に相応しい実力を持つフランドール・スカーレットを見る。
「...そうね。レミィ達なら何とでもなるわ」
「その意気よパチェ」
「お姉様、暴れていいの?」
「館や味方を巻き込まない程度ならね」
「おー...楽しみ!」
「ええ、楽しみね」
咲夜が会議室に戻ってくると、レミリアは立ち上がり彼女に言い放つ。
「咲夜、貴方は人里へ行きなさい」
「!」
咲夜は一瞬動きが止まるも、すぐに頷いた。
「紅魔館からの援軍として霊夢に協力するの。ここの守りは私達で任せてね」
「.....かしこまりました。ではすぐに人里へ向かいます」
咲夜はお辞儀をすると会議室を出ていき、パチュリーは少し笑う。
「フフ...咲夜怒ってたわね」
「ちょっと怖かった」
「さて、じゃあ始めましょうか」
「そうね。さぁ楽しみましょう!」
会議室は開かれ、主要メンバーは戦闘準備に取り掛かる。
「パチェ、全部隊の指揮権を貴方に与えるわ。存分に活かしなさいな」
「了解」
「それと...小悪魔には虎の子を用意させときなさい」
「...まだ訓練段階の部隊よ?それにあれはスキマ妖怪にバレたら」
「だから援軍行かせたじゃない」
「...用意はさせとく。苦戦したら投入するわ」
「それでOKよ。美鈴」
「は、はい!」
呼ばれた美鈴はすぐにレミリアの前に立つ。
「一応精鋭部隊を一つ預けとくわ。流石に貴方程動けるわけではないけど助けにはなる筈よ」
「りょ、了解です!」
レミリアは最後に人形を持つフランを見る。
「フラン」
「なぁに?」
「貴方は私と一緒に紅魔館よ。敵が侵入してきたら...」
「倒す!」
「私と一緒にね」
「早く敵こないかなー」
妖精メイド達も館にバリケードを作るなど、武器防具の用意等をし始め、敵の到着を待った。
そして太陽が沈み始め、幻想郷に夜が訪れる。
その瞬間、妖怪の山頂上にそびえ立つ葦名城の門が開いた。
門からは武装した人間で構成される大規模な軍団が登場し、四部隊に別れ幻想郷の各地へと走り出す。
そして分厚い門は再び閉じて、葦名城は不気味な程静まり返る。
紅魔館の周りは篝火によって明るさを保たれ、補強された門は固く閉じている。
広い庭には紅美鈴率いる妖精メイドで構成された精鋭部隊が仁王立ちしている。
屋上ではパチュリー率いる飛び道具を持った妖精メイド達が待ち構えていた。
すると遠くから大勢の人間の声が聞こえてくる。
その声は地面を揺らし、妖精メイド達の耳を震わせ、いよいよ戦が始まると全員が確信する。
それは館にいるレミリアも感じていた。
「ククク....血湧き肉躍る戦を始めましょう」
紅魔館に迫るのは、巨大な馬に乗り、自分の身長を超える十文字槍を片手で持ち、片方の角が折れた兜を被った大男。
かつては葦名の賊として活躍していたが、一心の強さに惚れ込み国盗り戦の葦名衆として鬼と称された武将。
騎馬隊、鉄砲隊、槍隊率いる鬼庭刑部雅孝であった。