自然溢れる幻想郷には侵入者を迷わせる森や場所がいくつもあるが、迷いの竹林はその中でも入ればまず自力で出ることは不可能と呼ばれる危険な竹林である。
幽霊や妖怪がさ迷っており、人が入れば骨となり地面に消えるだろう。
しかしそんな危険な場所の最奥に永遠亭はあった。
月の姫であった蓬莱山輝夜、月の頭脳と呼ばれた薬師の八意永琳、月の脱走兵である鈴仙・優曇華院・ イナバ、幸運の長命兎の因幡てゐ。
彼女らは竹林の奥地で偶に薬を人里に売りながらも平和に暮らしていた。
永遠亭 診察室
「成る程...わざわざご忠告感謝するわ。妖怪の賢者さん」
診察室では永琳と鈴仙が八雲紫の話を聞いていた。
「あいつらは必ず今日の夜に攻めてくる。どんな方法で来るのかもわからないけどね」
「し、師匠...!」
「了解したわ。あとはこちらで対処する」
「あぁ、そうそう...それともう一つ。これはお願いであって強制じゃないのを承知で頼みたいんだけど」
「何かしら」
紫は扇子で口を隠すも、笑顔で永琳に言い放つ。
「人里防衛に戦力欲しいから援軍送って欲しいの」
「.....」
永琳は暫く唖然であったが、頭に手を当てて悩むと答えを出す。
「なら優曇華を連れていきなさい」
永琳の言葉に優曇華は目を見開いて驚く。
「ちょっ!?師匠!?何で私が!?」
「私はここを守らなきゃいけないし、てゐは兎達の指揮官的な立場だし...姫様は論外」
「...」
「つまり援軍として適任なのは貴方しかいないの」
「いやいやいや、そもそも断ればいい話じゃないですか」
すると永琳は紫を見ると、彼女は笑顔で何か納得したように答える。
「援軍送ってくださったらそうですわねー...元月のお姫様に新しい玩具を送るのはどうでしょう?あと電気も通しておきますわ」
「.....」
「あ。あと貴方には過去に失われた薬草が入ったパック二袋。どうでしょう」
永琳は椅子から立ち上がると、紫と握手した。
「ちょ、うぇ!?ちょまっ...師匠ぉぉぉ!!」
泣き叫ぶ優曇華は紫と共にスキマへ消えていき、永琳は直ぐ様てゐが従える全ての人型うさぎを庭に集める。
人型うさぎ達は何も聞かされてないので、団子配給でもあるのかと気楽な気持ちで待っている。
すると永琳が皆が聞こえる声量で説明し始める。
「私達の敵がやってきます」
永琳の言葉に全員が固まり、空気は一気に静まり返る。
「敵の狙いはここ。永遠亭及び姫様よ。それを防ぐため貴方達には色々働いてもらいます。日頃食べさせてる団子の分は働きなさい」
するとうさぎ達はざわざわと騒ぎ始めると、一人手を挙げる。
「はいはい、質問」
うさぎ達の中から出てきたのは、この竹林の主とも言える最長寿の兎である因幡てゐであった。
「てゐ、何かしら?」
「その戦いとやらは本当に私達参加しなきゃいけないの?」
「当然でしょ」
「だって正直私達は竹林に入った侵入者を迷わせるのが仕事だし。永遠亭のために戦うなんて契約違反だと私は思うね」
てゐの言葉に他の兎も納得して次々と永琳に対して反対の声を上げる。
「...」
「確かに団子とかは食べさせてもらったけど...果たして命をかける程か?って皆感じると思うなぁ...」
「つまりうさぎ達は今回の戦には不参加ということ?」
「いやいや、そんなことは言ってないよ。けど私達も命かけるんだからそれなりの報酬は欲しいなって」
てゐは嫌な笑顔を浮かべると、永琳をため息をして淡々と話し始める。
「貴方達、最近風邪になった者は?」
永琳の突然の問いかけに、純粋なうさぎ達の何人かは手を上げる。
「...なら最近体がだるいと思っているのは?」
するとまた数人のうさぎ達が手を挙げる。
そして永琳は少し口の広角を上げて、もう一つうさぎ達に質問をする。
「その症状が出たのはこの前振舞ったお団子食べ放題イベントをしてから?」
永琳の質問の意味が分からず、全員唖然である。
「何言ってるのかわからないって顔ね。なら教えてあげる」
永琳はてゐを近くに呼んで、いつの間にか持っていた串団子を半ば無理矢理食べさせる。
その瞬間てゐは真顔のままその場に倒れ、うさぎ達は騒然。
「このお団子に入っていたのはある劇薬よ。実はそのイベントで作ったお団子全てに希釈して入れておいたの」
永琳の発言に全員震え出した。前に食べたお団子に毒入ってましたと言われたら誰でもそうなる。
「勿論てゐのようにすぐ倒れるわけじゃないのはわかっているわ。今の貴方達を見てるから。けど風邪や怠さが出てきてるなんて...興味深いわ。これからどうなるのかしら」
永琳はゆっくりと手を口に当てて、不気味な笑顔を浮かべた。
「解毒薬欲しい人」
うさぎ達は全員が両手を上げて、永琳に駆け寄った。
「永遠亭、守ってくれるわよね」
うさぎ達は全員勢いよく何度も頷いた。
「じゃあ行動開始。竹林の警備を増やして全員武装準備。そして敵が来たら直ぐに知らせなさい。はい解散」
うさぎ達は全員が必死の表情で竹林へと向かっていくと、倒れたはずのてゐが匍匐前進しながら永琳の足を掴む。
「永琳んんん...!」
「あら、お早いお目覚めね」
永琳は懐から紫色の液体が入った瓶を取り出してゐに飲ませる。
彼女は震えながらも立ち上がれるほどに回復し始めた。
「なんてもん食べさせるんだよ!」
「私に吹っ掛けるなんて十万年早いわ」
「てか劇薬の件マジなの!?あの日めっちゃ食べちゃったんだけど!」
「嘘に決まってるでしょ」
永琳の言葉にてゐは唖然となり、段々とその表情は怒りに満ちてきた。
「騙された!」
「詐欺師としてまだまだ甘いわね、てゐ」
「くっそぉー!」
「貴方も永遠亭失ったら色々と困るでしょ?住処もだけど...この幻想郷で生きていく後ろ盾が無くなったら」
「あんた達は不老不死でしょうが」
「さぁ貴方も行った行った。私は永遠亭の守りを固めるから、うさぎ達にちゃんと指示してあげなさい」
てゐはまだまだ不満があったが、永琳の言うことにも一理あるため指示を聞くことに決めた。
「わかったよ。その代わりやられんなよ」
てゐは永遠亭の庭を乗り越え竹林へと走っていった。
すると永琳の後ろの襖から永遠亭の姫である蓬莱山輝夜が現れる。
「永琳」
「姫様」
「何やら騒がしいわね」
「どうやら永遠亭に危機が迫っているようです。姫様も狙われる事になるでしょう」
「あらあら、それは楽しみ」
「ご安心を。私がいる限り姫には誰も近づけません」
「そうね。つまらないの。そういえば優曇華は?」
「人里へ援軍に向かわせましたので、今はいません」
輝夜はさらにつまんなそうに頬をふくらませ、永琳をじーっと見つめる。
「敵が来るまで暇よ。優曇華の代わりに貴方が遊び相手になりなさい」
「はいはい。それで、何で遊びましょうか」
そして太陽が沈み、夜が始まると迷いの竹林の入口に般若面の鼻を伸ばした面と鳥蓑を身に付けた姿の人間達が現れた。
先頭に立つのは、大太刀を背負い、鳥蓑を羽織った大柄な体に、長い白髪を足元近くまで編んだ男。
そして隣には全身にクナイを仕込んだ白髪の老いた女性がいた。
かつて葦名衆に仕えた二人の大忍び
大忍び 梟
まぼろしお蝶である。
UA300越えありがとうございます!
この前隻狼久しぶりにやったら腕なまってて悲しかった