梟は後ろに控える寄鷹衆の方に振り向き、任務の説明をし始める。
「我らの任はこの竹林の先にある永遠亭を落とす事。邪魔する者は排除せよ。逃げる者は追わずただ突き進め」
梟が単純な説明会をすると、隣にいるお蝶が笑い出す。
「ククク...逃げる者は追わずか。あの梟も牙が抜けちまったようだね」
「口答えかお蝶」
「いや...それがあの若殿の指示なのだろう」
「...葦名を黄泉帰らせた暁には一心諸共食ろうてくれるわ」
「身に余る野心を持てば足元をすくわれるとまだわからんのか」
「ふん。よもやこの儂が倒されるとでも?」
「お主も年をとる。全盛はそう長くは続かぬものよ」
「生意気な...」
「さて、そろそろ行くか」
お蝶はクナイを両手に持つと、梟も背中の大太刀を抜いた。
「行け」
梟の合図で後ろにいる寄鷹衆全員が竹林へと突き進む。
寄鷹衆はその人間離れの身体能力を生かし、竹を踏み台にしながら地面に足をつけず空中を移動している。
すると一人の寄鷹衆が、いつものように竹を踏んだ瞬間急に凹んで上から魚を捕まえるような網が現れる。
「ぬおっ!?」
寄鷹衆の数人が網に捕らえられ、下へと転落していった。
そして落ちた地面は巧妙に偽装された落とし穴があり、捕らわれた寄鷹衆は全員斜めに斬られた大量の竹に突き刺さり死亡して灰となった。
それを見ていた寄鷹衆は直ぐ様散らばった他の仲間に聞こえるよう大声を出す。
「罠があるぞ!用心しろ!」
本来ならば声ではなく火花や音で他の仲間に伝える手筈だったが、迷いの竹林には濃霧が常に発生しており火花は勿論だが、近場でなければ音すら防がれてしまうようだ。
その為位置がバレてしまうが大声で注意を叫ぶ他ない。
寄鷹衆は竹の上を移動しているが、梟とお蝶は陸で移動していた。
彼と彼女も寄鷹衆のように移動もできるが、ここにいるうさぎ達を処理するためあえて陸を歩いている。
すると梟が傷の付いた竹を見つけ、辺りを見渡した。
「ふぅむ...」
「迷わされたね。ククク...中々いい場所じゃないか」
竹に付いた傷は先程梟が自分でつけた物であり、さらに場所も若干上に移動している。
「曲がらぬように来たと思うたが...」
「そう惑わせるのがここなのさ」
「解くことは出来るか」
「時間がかかり過ぎる。日が明けることは確実さね」
「既に寄鷹衆にも被害が出ておる。使う他ないか」
「待て、梟」
お蝶は後ろを振り向き六本のクナイを投げる。
すると二人の近くには数人の人型うさぎ達が潜んでおり、持っている弓がクナイによって折られて震えていた。
「ば、バレた!撤退撤退!」
「何で場所バレたの!?」
うさぎ達は逃げようとすると、お蝶はクナイをさらに投げる。
しかし彼女達は鍛えられた忍以上の跳躍でクナイを避けて、竹の上を移動して逃げてしまった。
「ほう...脚は中々鍛えられているな」
「ふふ...蝶が兎を逃したな」
「...これで敵はいない。さっさとやったらどうだい」
すると梟は大太刀を地面に刺すと、両手を合わせて祈り始めた。
「歪みよ起これ。敵に災いを」
その瞬間梟を中心に桜色の気が放たれ、鈴の音が広範囲に鳴り響く。
すると迷いの竹林を覆っていた濃霧が急に晴れ始め、遠くの景色も目視で確認できるようになった。
「便利なものよ」
「左に館がある。あれが永遠亭だろう」
「では、向かうか」
二人は濃霧が消えて露わになった永遠亭へと歩き出した。
「どういう事!?なんで霧が晴れるのさ!」
「わかんないよ!私達の魔力を含めた霧が急に出せなくなったのさ!」
「てゐ!どうしよう」
「ぐぬぬ...こりゃ想定外だね...!」
てゐは迷いの竹林の霧が晴れ、これまでにない慌てようだった。
何百年と隠し続けた永遠亭も既に露わになっており、これでは罠もほとんど意味がなさない。
そして対人の訓練などしたこともない人型うさぎ達も、霧に紛れての奇襲だからこそ敵を倒せる可能性があったが、こうも丸見えでは奇襲もできずやられるだけだ。
「これじゃあ狩られるだけ...!」
すると遠くから他のうさぎ達の悲鳴が轟く。
それを聞いててゐは既に敵はこちらを見つけ、狩りが始まっていることに気づき大声で叫ぶ。
「永遠亭に全速力で逃げろ!!辿り着けない子は竹林の外でもいい!逃げるんだ!」
てゐの大声でうさぎ達は恐怖を露わにして命令通り永遠亭へ向かって走り出した。
「はぁはぁ...!」
てゐの指示は聞こえていたが、追ってくる寄鷹衆を撒けずうさぎがいた。
そして足に寄鷹衆の持っていた鎌が突き刺さり、転倒してしまう。
「あうっ!」
うさぎは立ち上がろうとするも、足に力が入らず引きずりながら移動するが眼の前に寄鷹衆の一人が降り立った。
「あ...」
寄鷹衆が鎌を振り上げ、うさぎの頭に突き刺そうとする。
しかしその瞬間、寄鷹衆の首に竹槍が突き刺さり灰となって消えてしまった。
竹槍を投げたのは、半ば息切れしているてゐであった。
「て、てゐ!」
「立てる!?」
てゐは負傷したうさぎに手を貸して立たせるも、やはり足の傷は深く歩けなかった。
「ど、どうしよう!」
すると二人の後ろから他の寄鷹衆が現れ巨大な手裏剣を投げると、てゐは地面を強く踏んで罠を作動させて、地面に紛れてた竹の壁で手裏剣を防ぐ。
「逃げるよ!」
てゐは負傷したうさぎを肩に担ぎ上げて、全速力で永遠亭へと走り出した。
「他の子は!?」
「大体は逃げたと思うけど...逃げ遅れた子は皆...!」
「くっ...何てこったい!」
てゐは他のうさぎよりも身体能力が高く力も強いためか、同じ体重の子を肩に担いでも寄鷹衆の移動速度を上回っていた。
「怪我は!?」
「痛いけど大丈夫...ごめん、てゐ」
「気にすんなさ!団子食えば治る!」
てゐは逃げていると、眼の前に今までの敵とは違った奴らに出くわした。
「む...?」
それは葦名軍の総大将である梟とお蝶であり、てゐはすぐに寄鷹衆とは別格の実力者だと察した。
「うげぇぇぇ...こりゃ私の幸運も尽きたかな...!」
「ど、どうしようてゐ!」
すると梟は抜いてある大太刀を構える。
「ここであったのもお主の運の尽き。諦めよ」
梟はゆっくりと近づいてくると、後ろから一本の矢が飛んでくる。
お蝶がその矢をクナイで弾くと、さらに二の矢がお蝶の額目掛けて飛んできた。
今度は梟が手裏剣で矢を弾くと、二人は矢の飛んできた方角を見る。
それは永遠亭の建物から飛んできており、相当な距離があるのに正確に地面に落ちず飛んできた矢に二人は驚いていた。
「どうやら何かがあそこにいるようだ」
「見事な腕...いや、最早人の技ではない」
二人が永遠亭に意識が向いている隙に、てゐは直ぐに全速力で逃げる。
二人はてゐなど見向きもせず、永遠亭へ歩みを再開した。
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