艦隊これくしょん「Deep・Blue」=スロウス 作:Wandarel
英雄は、敵と和平を組み平和を作り上げた。
だが、それを良しとしない人間も敵も少なからずいた。
これはそんな海を生きた一人の提督の物語。
太平洋戦争が終結した直後深海棲艦からの攻撃に逢い、世界は再び共闘を余儀なくされた。
一向に終わらない戦争。
だが、それを終結へと導いた一人の英雄がいた。
彼は深海棲艦へ交渉をしに行った。お互いに極力平等であるように話し合ったそうだ。
お互いに戦争で疲弊し、消耗も激しくこれ以上の戦争行為は無意味だと彼らは判断し、深海棲艦もその交渉を受け入れ戦争は終わった……。
この事は第一次深海戦争と名付けられ終結した。
だが、その数十年後、海軍は深海棲艦から攻撃を受け、そして深海棲艦もまた、攻撃を受けた。
第二次深海戦争である。だが、第一次と違うのは今の平和な海を願う深海棲艦や軍属の人間がいたことだ。
結果、深海棲艦も軍属の人間も穏健派と殲滅派に分離した。
英雄は再び現れるのか……。
???「……くだらねぇ教本だな。」
少年は教本を閉じた。
ここは愛媛にある松山士官学校。海軍の英雄の出身地でもある。
少年の名前は
士官学校生徒一年生だ。
この松山士官学校においては彼の名を知らない人間はいないが、本来はひっそりと暮らしたかった。
成績優秀なサボり魔で、常に何か本を読んでおり、反逆心も高かった。
そして奨吾は寮のこの木漏れ日を感じれる樹に背中を預けて本を読んでいた。
奨吾「何が海軍の英雄だっての……。英雄様に頼り切りで過去しか見ないアホ共に付き合ってられるか。」
この士官学校では、英雄の出身校でもあり度々その英雄の名を聞くが、奨吾はそれにうんざりしていた。
成績優秀な奨吾はサボろうが特にお咎めはなしだ。
???「またサボりか奨吾。」
奨吾「まぁな、やってられねぇっての。そういうお前も俺を連れ戻しに来たんだろ、浩介?」
彼の名は
情熱に燃え、いつかは誰にも負けない鎮守府を作り上げると息巻いている熱血漢。同じ寮部屋のルームメイトで、孤立してる奨吾をライバル視している。元海軍元帥の孫でもあり、奨吾にとって小学時代からの数少ない友人の一人である。
浩介「まぁいつも通り連れ戻すのは失敗に終わりそうだな。」
奨吾「フッ、俺に勝てるのは俺だけだ。」
浩介「てなわけでよ、俺と海軍チェスしようぜ。新戦術見せてやる!」
奨吾「面白い、やってみせろ。」
海軍チェスとは、それぞれ戦艦、航空戦艦、重巡洋艦、軽巡洋艦、航空母艦、駆逐艦、潜水艦の計7種類の艦種で戦うチェスのようなものだ。
面白いのは、旗艦をどの艦種にも出来、我々軍属に最も関連の深い艦娘を模した形の駒のモデルもある事だ。
奨吾「相変わらずお前の旗艦は吹雪か。」
浩介「当たり前だろ、ワシントン条約制限下で設計された、世界中を驚愕させたクラスを超えた特型駆逐艦の1番艦、吹雪だぞ。もう見た目も可愛いし何よr…」
奨吾「あー、もういい。始めるぞ。」
浩介「あ!まだ話終わってないぞ!」
奨吾「お前のその吹雪に関しての話は長すぎるんだよ。」
この浩介という男、吹雪に関してはかなり饒舌になるいわゆる吹雪ガチ勢というものだ。
(注:奨吾が勝手にそう呼んでいる。)
奨吾と浩介は海軍チェスをしながら語り始める。
浩介「そういえばお前、入学式の時に大胆に宣言してたな。」
奨吾「あぁ、あれはパフォーマンスだ。」
浩介「だが実際そうしてたろう?ほい、潜水艦撃沈。」
奨吾「まぁ、そうだな。あと詰めが甘いぞ浩介。重巡洋艦撃沈だ。」
そう、この熱海 奨吾という男は入学式にあからさまに喧嘩を売った。
奨吾「……俺はアンタたちのような過去の栄光にすがる連中が嫌いだ。だから俺が海軍を根っこから作り直してやる。英雄に頼りきりなこの軍を修正してみせよう。」
この発言に最初は浩介含む数人を除いて教師にも笑われ、そして目をつけられてあからさまな虐めを受けるようになった……が。
奨吾「………ふむ。」
虐めの主犯格との剣道戦で奨吾は真価を発揮した。
剣道戦は最初の決闘は様子見で全ての攻撃をわざと受けてどれほど痛めつけられても止められないことを知った上で受けた。
「またあの時みたいに痛めつけてやるよ!」
そう言って主犯格が木刀を振り上げた瞬間だった。
スパァン!
木刀では決して出ないような音が響く。
奨吾「……面一本。」
どうせ審判が言わないだろうから自分で宣言する。
それと同時に主犯格の被ってた面が割れた。
奨吾「……篭手。」スパァン!
すでに目にも止まらぬ速さで篭手を砕き。
奨吾「………胴。」スパァン!
胴の鎧も砕いた。
「な、い、いつの間に…!?」
奨吾「お前達との決定的な違いを教えてやろう。」
奨吾は居合の構えを取った。
奨吾「怯えることは無い、さぁ向かってこい。」
主犯格のプライドに触ったその発言に雄叫びを上げながら向かってくる。
奨吾「……アホが。お前の行動するパターンなんざ、目を見たらわかる。」
奨吾はその全てを見切っていた。
奨吾「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」
頭を、胴を、腕を、脚を奨吾の持つ木刀が異常とも言える速さで襲う。当然、耐えられない。
十秒ほど連撃を続けたが、すでに主犯の意識は無く、教師に止められた。
奨吾「先生、まだ終わってないですよ。」
「熱海!彼は軍の名家の……。」
奨吾「名家だからなんなんです?」
「考えたらわかるだろう!」
奨吾「……くだらない。家の名前でしかのし上がれないクズなわけですよね。」
「が……あ……」
奨吾「手土産にお前たちにも教えてやる。俺は常に読書をし学びそれを活かして訓練に励んでいる。貴様らの何十倍とだ。」
まわりがザワつく。
奨吾「俺を倒したい、調子に乗ってる俺を潰しに来たいのなら不意打ちでもなんでもしてみろ。その結果が……。」
奨吾は主犯の胴に足を乗せた。
奨吾「このザマになってもいいという覚悟がある奴だけだがな。」
こうして、奨吾は士官学校最強の座を手に入れた。
海軍戦術図においても優秀で誰にも負けたことは無い。
浩介「いやー、ほんとに凄いなお前は。」
奨吾「ふん、当然だ。だが浩介、お前も磨けば光ると思うぞ。」
浩介「なんでさ?」
奨吾「お前のその信念は俺に似たような感じがする。さしずめお前が光で俺が闇ってとこだな。」
浩介「なんだよそれ。」
奨吾「お前の海図による戦略と射撃のセンスは俺も舌を巻くくらいだ。正直追いつかれまいと必死だ。」
浩介「な、なんだよ照れるじゃねぇか……。」
奨吾「ま、海軍チェスで俺に勝てんようじゃまだまだ未熟だな。チェックメイト。」
浩介「あ!しまった!!」
チェスが終わると同時に終業のチャイムが鳴った。
浩介「………寮帰るか!」
奨吾「ふ、そうだな。」
光と闇。
それは彼らは知らずのうちに己の宿命を指していたのかもしれない。
奨吾「浩介、海図のスタイルを見させてくれ。」
浩介「おう、いいぜ!」
奨吾「……月日が流れるのは早いな。」
浩介「たしかにな。俺達も後輩が来るのか。」
???「おっす、兄貴!」
次回
艦隊これくしょん「Deep・Blue」=スロウス
第一話「新たな芽生え」