艦隊これくしょん「Deep・Blue」=スロウス   作:Wandarel

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あの時、あの人に出会ったのは本当に幸運だった……。
本当にこれでよかったんだ。
この戦いが無ければ………


第三話「最強の降臨」

いつもの木陰に、軍服を着た人間がいた。

奨悟「……どいてくれないか?」

???「………。」

相手は何も言わない。ならば特に言うことは無いな。

そのまま奨悟は座ろうとした。

???「貴様、その若さでそれほどの強さを持っているか。」

奨悟「……だったらどうするよ?」

???「貴様の腕を測らせてもらうのだ。」

奨悟「………いいぜ、アンタ。」

奨悟は男が立ち上がるのを待っていた。

???「名を名乗らねばな。」

男は立ち上がり構えた。

秀次「ワシの名は黒須秀次(クロス・シュウジ)。ただの中年よ。」

奨悟「腕を測るってんなら容赦しねぇ!」

奨悟が先手を仕掛けた。手にしている特製の木刀を高速で振るった。

が、手応えがない。

秀次「ふん、凄まじい気迫よ。今まで数多の強敵を打ち破ってきたのだろうな。」

奨悟(何っ!?)

男、秀次は奨悟の振るった木刀の先端に立っていた。

奨悟「ふんっ!!」

秀次を振り払い、そのまま二撃目に入る。

だが、それはことごとく避けられる。

秀次「ふん……。」

避ける度に清々しい顔をするものだから余計に奨悟はイラついてくる。

奨悟「どうした!攻撃してこないのか!!」

イラつきが出てきたが、それでも冷静に戦う。

しかし、当たらない。

奨悟(こいつ、どういう動体視力してんだ!!?)

秀次「ならば望み通り攻撃してやろう。」

その言葉を聞いた直後、奨悟は五メートルほど吹き飛んでいた。

全く気付かぬうちに。

そして気づいた時に衝撃が来た。

奨悟「がはぁっ!!!」

そのまま寮の壁に叩きつけられる形でぶつかった。

奨悟(い、今……何が起きた……。)

全く見えなかった。ただその事実が残っている。

秀次「ふん、才ある者は無傷で敵を倒そうとする者。そんな甘い思考が貴様を弱くしてるのだ。」

奨悟「ほざけ!俺は誰よりも努力をしている!!負けるはずがない!」

奨悟がもう一度木刀を振りかざし振るうが、全て避けられる。

秀次「ならばなぜ学を捨てた?なぜ再び学ぼうとしない?」

奨悟「俺は既にその学びを会得した!これ以上は無意味だ!」

そう言った時、奨悟は顔面を殴られ三回転ほどして地面に叩きつけられた。

奨悟「ごふ……。」

秀次「現に今ここでワシに圧倒されてるのは貴様の方ではないか。」

奨悟「………言わせておけば……。」

奨悟は居合の構えを取る。

奨悟の居合術は人を殺しかねない強さをしており、実際に使用し当たりどころが良かったが試合相手に大怪我を負わせた為、自ら使用を封じていた。

奨悟「……死んでも後悔するなよ?」

奨悟は全神経を集中させた。

秀次「この気迫……なるほどな。」

次の瞬間。

奨悟「はァっ!!!」

掛け声とともに音を置き去りにした居合を放つ。

バシィッ!!

だがその至高の一撃は秀次の手に止められた。:

奨悟「な、なんだと………!」

(俺の全身全霊の最強の一撃が素手に……こんなにも容易く……!?)

秀次「これが貴様の全力か。ワシはまだ実力をほとんど発揮しおらんぞ。今度はワシが貴様の実力を思い知らせてやろう。覚悟しろッ!!」

奨悟(まずい!?)

奨悟はもう防御の姿勢が取れない。

刹那、秀次の拳が奨悟に襲いかかる。

見えない、それだけじゃない。今までの痛みより遥かに骨に筋肉に魂に響く連撃。

秀次「未熟!未熟!未熟千万!!だからお前はアホなのだ!」

そうして、吹き飛ばされ壁にぶつけられると同時に秀次が凄まじい勢いで迫る。

その右手に禍々しいオーラをまといながら……。

秀次「ダァァァクネスッ!!」

そして、秀次の右手に頭を捉えられる。

秀次「フィンガァァァァァァァッ!!」

そのままの勢いで壁にさらに深く叩きつけられ、寮の壁に大きくヒビが入った。

奨悟の意識は途絶える寸前だった。

奨悟「こんな………こと……が………。」

秀次「笑止!鍛錬、勉学を積み上げなかった貴様に相応しい末路よ。」

そう言って黒須秀次は立ち去って行く。

奨悟は………立った。

奨悟「………にが……すかよぉっ!!」

意地とプライドだった。まともな一撃も入れられず、負けられない。

その一撃は弱々しくも届いた。

秀次「………ふん、少しは見込みがあるようだな。でぇりゃぁぁっ!!」

トドメに蹴りを入れられ、奨悟は地面を転がりながら意識が途絶えた。

この事は瞬く間に士官学校に広がった。

四国最強の男が所属もしれぬ中年に為す術なく倒されたと……。


翌日、戦略海図の授業にて。

浩介「………ん?」

浩介は珍しいものを見ていた。

奨悟「………。」

教室に奨悟がいたのだ。

浩介「……どうしたんだよ奨悟、授業に出て。」

奨悟「……己の未熟さを知っただけだ。俺は……負けっぱなしでいる訳にはいかない。」

浩介「奨悟………。」

浩介はどことなく思い出した。かつて、出会った中等学部での初めての出会いを。

浩介「お前は負けず嫌いだもんなぁ。」

奨悟「……ふっ、海図に関してはお前の方が上手だ。頼りにさせてもらうぞ。」

「赤鋼!熱海!私語は慎むように!」

浩介「すんません!」

奨悟「へいへい。」

奨悟は残りの授業も全て取り組むようになって行った。

だが、負けた事による弊害として、奨悟ではなく龍登に対してのイジメが見られるようになった。

奨悟「………龍登、こいつは。」

龍登「すまねぇ、兄貴。俺の戦略兵器の砲は現実的じゃなくてカッコ悪いって設計図破られちった。大丈夫、また作るからよ。いつか兄貴が指揮する艦娘の部隊に俺の武器載せてもらうのが夢だから……。」

肩は震えて今にも泣きそうになっていた。

奨悟「………。」

(敗北……これが…。)

翌日

「貴様の設計図など、ただの玩具同然。現実的でないクズみたいな武装だな。」

龍登「返せ!そいつは俺が兄貴の為の!!」

「簡易滑水艤装??こんなものが役立つはずがないだろう。艦娘には滑水機能があるのだからな。」

龍登「違う!これは……これは……!!」

「こんなくだらないものを書く暇があるならまともな装備を……」

その時、後ろから設計図をひょいと取られた。

「な、なにを……!!」

???「ほう……いい装備じゃねぇか。」

「熱海奨悟!!?何故ここに!!」

龍登「あ、兄貴!!」

奨悟「気に入ったぜこれ。こいつがありゃ俺も戦場に出れるじゃねぇか。」

「何を馬鹿なことを。指揮系統がわざわざ戦場に赴く理由などあるまい。こんな貴様のようなクズがいるからこのようにロマンなどと馬鹿げたことしか出来ん貴様の出来損ないの弟も生まれるのだ!」

瞬間、目の前に木刀の先端が眼球一歩手前まで向けられていた。

奨悟「俺をバカにするのは結構だ。だが、兄弟というだけで俺への私怨を俺の仲間や身内にぶつけるなどという無様極まりないことをするのなら………。」

その眼は絶対零度の眼差しだった。

奨悟「次は体の部位がどこか無くなることを覚悟しておけ。いいな?」

「くっ…。」

奨悟の威圧に気圧されてたじろぎ、その場を去った。

残った龍登のクラスメイトから拍手がなる。

奨悟「龍登、こいつは艦娘には無用の長物だ。何故これを作ろうと思ったんだ?」

龍登「よく聞いてくれたぜ兄貴!これは、人が深海棲艦や艦娘を理解する為に必要だと思ったんだよ!こいつの理屈があれば人も海の上を駆け抜けれる!そんで合わせてこの滑水装備もあれば誰しもが波とかを気にせずに海を走り回れる!簡単に言えば超小型化したモーターボートってとこ!これでみんなが海を知って貰えたらきっとみんなも理解できると思うんだ!」

その発言にみんなが共感の言葉を述べる。

奨悟「そうか……ならこいつのプロトタイプが出来たら俺にくれ。」

龍登「え?兄貴には最新モデルを……。」

奨悟「いいんだ。ある程度のノウハウがあれば俺なりに改造も可能だ。そういう意味じゃプロトタイプの方がいい。なんせ俺は悪運が強いからな。」

龍登「……わかった!ならテスト頼むぜ兄貴!!」

奨悟「ふん、その時がきたら任せろ。その前にまずは筆記テストの成績を上げることからだがな。」

龍登「ギクリ…。」

奨悟「この俺が気づかないと思ってたのかバカタレ。」

それを機にゲラゲラと笑う兄弟。


フブレンレッド「君は一体!?」

???「私の名は艦載ライダーZUIUN!!」

奨悟(……誰だあいつ。)

龍登「あ、雨行(アマユキ)さんだ。」

奨悟「知ってるのか?」

龍登「ミホさんと俺の友人。」

奨悟「テメェの友人はまともなやつがおらんのか!!」

本当にこの士官学校にはロクやつがいないことを奨悟は思い知った。

 




???「初めまして。」
奨悟「……お前、なんか特殊なもんは?」
???「はい?」
奨悟「実戦、頼もうか。」
???「いいですよ。」
次回
艦隊これくしょん「Deep・Blue」=スロウス
第四話「我、模擬戦ヲ開始ス」
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