艦隊これくしょん「Deep・Blue」=スロウス 作:Wandarel
戦いの歴史は嘘をつかない。
まだ、まだこの先は………。
奨吾「龍登、武装開発に関しては右に出る者はいないが勉学が足りんのではないか?」
龍登「お、おっしゃる通りです……。」
奨吾は浩介達と一緒に弟の龍登を連れて勉強会なるものをしていた。
青木「しかし奨吾、お前が勉強を俺らとやるなんて明日槍でも降るんじゃないのか?」
奨吾「なんだ、俺が勉強するのがそんなに意外か?」
黄原「いや、お前って群れるタイプじゃないからなぁ。」
浩介「まぁ俺らとしても嬉しい限りだしよしとしようぜ!」
緑川「そうですね!」
紫原「……うん。」
だいぶ、コイツらとの付き合いにも慣れてきた。
そして何より……。
奨吾「………。」ドルルルルル……
龍登「おし、始めてくれ。」
奨吾「行くか。」ブウゥン!!
奨吾は「試作型滑水艤装・登龍」を用いて海を駆けていた。
滑水しながら模擬標的に近づき、木刀を叩き込む。
そして最後は大型の障害物を飛び越え、空中3回転ひねりをして見事に着水した。
龍登「OK、テスト完了。どうだったよ兄貴?」
奨吾「俺を専用に考えてるのならパーフェクトだが、汎用性を求めるならもう少しスピードを下げてもいいだろうな。」
弟、龍登の作ったこの見事な装備がはや二ヶ月で完成させてくれた事だ。
龍登「さすがは兄貴だ。しっかり見抜いてやがらァ。」
理論はさほど艦娘の艤装と大差なく、訓練にも用いり易い。
ある意味、傑作だなこれは。
そして、翌日の夜、全校生徒の集会が行われていた。
「今日は実際の模擬戦をやってもらう。」
戦術科の授業で行われる模擬戦をすることとなった。
奨吾(随分と唐突だな。)
外部からの艦娘の臨時招集、もしくは家柄における個人所持の艦娘の招集をもって成立する模擬戦。
基本的に長期となる為、代表を二名選択の後に行う。
だが、時期はかなり早い方だ。
浩介達もザワついているが、代表は既に決まっていた。
「東代表、戦術科一年、
その瞬間、席にいた人間がざわつき始めた。
奨吾「なんだ?あの一年の女有名人なのか?」
浩介「お前知らないのか?あの一年の子、雷撃戦法のプロだぜ?」
奨吾「ほぉ、そいつは対戦相手のやつは災難だな。」
浩介「ま、球磨型の使い手だからな。そりゃ強いって。」
「そして西代表、熱海奨吾!」
奨吾「…………。」
さらに周りがざわつき始める。
何故なら、外部艦娘の借用手続き等を済ませなければ艦娘不在となり模擬戦そのものが不能なのだ。
教師は模擬戦をする生徒に一週間前に通知をし借用を手伝う義務があったはずだ。
要するに不戦勝にさせ、奨吾に恥をかかせる為だけに仕組まれたものだ。
浩介「待ってください先生!奨吾はまだ艦娘の借用が!!」
「ならば失格というだけだ。この程度も予知できんなど恥を知れ。」
浩介「ッ!!!」
そうだ、偉そうにしている癖にプライドが一部を除いた
奨吾「………。」
「返答がないのなら降参したということでいいな?」
奨吾「……ふっ。」
「……どうするんだ?」
周りにそんな声が聞こえ出した。
奨吾「いいでしょう戦いますとも。」
「艦娘なしで戦うなど不可能だ。」
奨吾「いらねーです。」
奨吾はそう言うと専用艤装「登龍」を出した。
奨吾「こいつと木刀がありゃ十分ですわ。」
異例中の異例だった。
艦娘相手に生身の人間が挑むこと自体が。
あまりにも無謀、笑われているのも聞こえていた。
浩介「……勝てるんだな?」
浩介が分かりきった質問をしてくる。
奨吾「俺は負け戦に挑むほど馬鹿じゃねぇよ。」
「両者共に前へ!」
悠羽「初めまして。」
奨吾「……お前、なんか特殊なもんは?」
悠羽「……はい?」
奨吾「いや、何でもねぇ。実戦、頼もうか。」
悠羽「いいですよ、先輩。」
だいたいこういうのは賭けが行われる。
だがやはり、悠羽の圧勝だと思う人間の方が多い。
「これだから問題児は……。」
「艦娘無くしての戦いなんてできるわけが無い……。」
そうざわめく。
奨吾「随分と人気だな一年生。」
悠羽「そう?貴方こそ相当な人気よ。」
奨吾「……で?丸腰の俺一人相手に負けるなんてことは無いよな?」
悠羽「さぁね。それに丸腰って訳じゃないし。」
悠羽は球磨型六隻を招集した。
悠羽「いい、みんな。相手はどう出るかは分からない。けどやれる限りやってきて。そして……絶対に手加減しないこと。じゃないと狩られるのはこっちだから。」
球磨「悠羽がそこまで言うとはとんでもないやつクマ。」
多摩「だけどやることは変わらないニャ。」
木曾「面白そうじゃないか……。」
「両者ともにルールの確認だ。舞台は第1模擬戦海域、夜戦!どちらかの旗艦が大破判定となれば決着とする!異議は?」
悠羽「ありません。」
奨吾「
「では、模擬戦開始!!」
その声と同時に奨吾はスタートダッシュを決めた。
悠羽「早いな。」
この言葉は二つの意味でだった。
悠羽「各位、砲撃による迎撃を!やれる時は雷撃も。」
球磨「了解クマ!!」
北上「ま、これだけやってりゃ当たるっしょ〜。」
弾丸の雨、そして夜間の視界。
圧倒的に不利だった。
探照灯に捉えられ、すぐに砲撃が来る。
奨吾「将来有望な将校だな。まともに近づけやしない。」
しかし、奨吾の狙いは既に決まっていた。
一瞬の隙だったが、間一髪魚雷をかわした。
奨吾「チッ、流石の雷戦戦法だな。」
油断すればいつの間にか魚雷がすぐそこまで迫ってくる。
だが、奨吾もそれを見越し回避し続ける。
悠羽「もらった。」
既に周囲から魚雷が迫ってきている。
今、彼は回避に集中しているが一方向の魚雷しか見えていない。
ソナーをつけてない人間に分かるはずがないのだ。
大井「これで終わりです。」
奨吾はその言葉を聞き逃さなかった。
瞬間、浩介だけが見えた。
この士官学校において弟の龍登、浩介を含む五人が知っているその顔。
奨吾が勝利を確信した邪悪な笑みを。
浩介「………マジかよ。」
五人の中でたった一人そう呟いた。
黄原がそれを見て、言った。
黄原「あー……あれでも勝てんのかアイツ。」
青木「はっ、ご愁傷さまってとこだろ。」
紫原「……すごい。」
緑川「あの人には勝機が見えていたんだ。」
奨吾は待っていた。
この時を、この瞬間を。
奨吾は戦術において好む事がある。
それは常識ではしないことをし、盤面そのものををひっくり返して相手を驚愕させることだ。
それが上手く噛み合った。
奨吾「雷撃ってのは浮上してる敵の足元に向けるものだ。そのカラクリと行動パターンさえ把握しちまえば!!」
奨吾は魚雷が直撃する寸前に、己の足元に衝撃を与えた。
その反動の水柱と同時に魚雷が炸裂することなく打ち上がった。
木曽「何!?」
奨吾「ふっ、奴さんらの顔が変わったな。」
悠羽「………ウソ。」
奨吾「さぁて、全部返してやるぜウッシャァァァァ!!」
奨吾は特製の木刀で魚雷の全てを悠羽の艦隊全員にめがけて打ち返した。
北上「まぁじか。」
大井「回避!急いで!!」
だが流石は訓練されたメンツだ。直ぐに回避行動に転じた。
そして、全員が回避しきった。
悠羽「続けて攻撃!反撃の隙を……。」
そこまで言った時には既に手遅れだった。
奨吾が先程の位置に居ない。
この時奨吾は艤装の出力を第七戦速にまで引き上げ普通ならば耐えられないGと共に旗艦の球磨の真後ろにいた。
球磨「……クマ?」
後ろの殺気に気づき、振り向いてしまった。
それと同時に奨吾の神速の居合が入る。
一撃で小破。だが、奨吾の攻撃は止まらない。
奨吾「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」
その目にも止まらぬ速さの連撃で球磨は大破となった。
ここに前代未聞の生きる伝説ができた。
人間が艦娘に勝利したという歴史が。
「模擬戦終了!生徒諸君、拍手を!」
静まり返る群衆。
模擬戦の担当の先生もぽかんとしていた。
そこから、浩介が拍手をし始めるとみんなが揃って拍手をしはじめた。
奨吾はそれに答えるように敬礼をした。
奨吾は模擬戦が終わり寮に帰ろうとしていた時だった。
「おい貴様。」
奨吾「………。」
3年生の成績自体は悪くないがぱっとしない。
そのくせプライドは高い男だ。
「貴様のような怠けた態度で軍に勤務するなど許せん!即刻この学校から退去せよ!」
奨吾「無駄に高い学費を払ってまでここに来てるのにそんなことをする理由なんて無いでしょう?」
「貴様……誇り高き軍の意向を……うぐっ!!?」
まためんどくさい説教が始まると思っていたら顔が歪み、脂汗が出ていた。
よく見ると、男の股に女子生徒特有の靴が突き刺さっていた。
悠羽「邪魔、どいて。」
先程戦いを繰り広げたクロノ・ユウが金的を決めていたのだ。
悶絶し倒れる先輩(笑)。
悠羽「熱海奨吾さんですよね?」
奨吾「それがどうした?」
悠羽「先程の戦い、見事でした。私の完敗ですね。」
奨吾「寝言は寝てから言え。あの状況で欲をかいて旗艦以外を叩いてりゃ俺が袋叩きにされる戦略を練ってたろ?」
悠羽「あら、よくご存知で。」
奨吾と悠羽は仮面のような笑顔を向けた。
悠羽「ところで、その木刀は何製ですか?」
奨吾「ガンダニウム合金製だ。」
悠羽「どういうことだってばよ」
そんな会話を繰り広げていた。
「ぐ……うぅ……」
金的を食らった先輩が起き上がろうとしていた。
奨吾「………。」
悠羽「………。」
ふたりが無言で目を見合わせる。
悠羽が奨吾の木刀を手にし、先輩(笑)の脛に直撃させた。
「ぐぁっ!!!あぁぁっ!!」
脛を擦りながら悶絶する先輩(笑)。
悠羽「うわ、ほんとに木製じゃなさそう。」
奨吾「だから言ったろう。先に言っておくが俺は人を騙すのは好きだが嘘をつくのは好きじゃないんだ。」
悠羽「それ両方一緒ですよ。」
「くっ……貴様ら……」
また立ち上がろうとした先輩(笑)を見た奨吾と悠羽は不敵な笑みを浮かべた。
奨吾「……こいつの記憶飛ばしとくか。」
悠羽「賛成です。」
そこから、二人は先輩(笑)を気絶するまで蹴り続けた。
その後、二人は握手をした。
奨吾「よろしく頼むぞ悠羽。」
(こいつ、面白いな。)
悠羽「こちらこそよろしくお願いします、先輩。」
(面白い人。)
芯からドSの二人がお互いの事を認め、手を取った瞬間である。
悠羽「私も戦術司令科の寮に住んでるので同じですね。」
奨吾「そいつは好都合だな。」
二人は高らかに笑いながら先輩(笑)を踏みつけて寮へと向かった。
翌日。
士官学校とは、学年が違えど同じ教室で授業をすることがある。
その時奨吾は見た。
悠羽が自分の所持している艦娘の同人誌を教科書に重ねるようにして真剣な眼差しで読んでいた。
奨吾「………。」
聞きたくは無いが聞くことにした。
奨吾「お前、それはそっちの意味で好きなのかそれとも普通に艦娘として好きなのかどっちだ?」
悠羽はにっこり笑って言った。
悠羽「二刀流〜。」
奨吾「……そうですか。」
奨吾がうっすらと反応して悠羽の隣を見ると紫原も同じように読んでいた。
奨吾「………。」
その時、悠羽と紫原の目が合った。
二人はお互いの本を交換した後に読み、互いに親指を立ててグッとした。
奨吾「……ここにはまともなやつはいないのか。」
青木「お前に言われちゃ終いだろ。」
黄原「いや、お前もだからな。」
浩介「ちゃんちゃん。」
浩介「いよいよ卒業かぁ。」
悠羽「いつかまた会える時が来れば。」
???「待てい!!」
次回
艦隊これくしょん「Deep・Blue」=スロウス
第五話「卒業と着任」
奨吾「待ってたぜ、この時をよぉ!!」