艦隊これくしょん「Deep・Blue」=スロウス 作:Wandarel
今となっては忌々しいほどに……。
時は流れ、とうとう三年生となった奨吾達は卒業式を迎えていた。
浩介「もうすぐ卒業かぁ。」
青木「考えて見りゃ結構早かったな。」
黄原「結局お前とも決着つけれなかったなぁ青木。」
紫原「でも……まだその機会はあるよ………。」
悠羽「ま、それなりに楽しかったかなあ。」
緑川「先輩達に負けないように頑張らなきゃなぁ。」
龍登「兄貴、俺の艤装まだまだ強化するから待っててな!」
奨吾「期待しておくぞ、龍登。」
この学校では卒業と同時に着任も言い渡される。
めんどうだが服装もしっかりとしておかなければならない。
大抵は白色の軍服を着ているが奨吾の軍服は漆黒であった。
次々と着任先が発表されていく。
青木は蝦夷。黄原は陸奥。紫原は磐前。
そして、浩介は……。
「赤金浩介、貴殿には呉に行ってもらおう。」
浩介「ありがとうございます!」
なんと、あの呉に選ばれた。
呉と言えば英雄の所属していた鎮守府があり、今となっては選ばれたエリートのたどり着く先だ。
この士官学校で卒業着任で呉に行くことになったのは知る限りでも浩介ただ一人だろう。
奨吾「おめでとう、浩介。」
浩介「ありがとな、奨吾。お前が居なかったらここまで辿り着けなかったぜ。」
奨吾「バカ言うなこっからだろうが。」
次は奨吾の番だが、発表者の元帥の顔が曇った。
「熱海奨吾……着任先が不明となっているのだが。」
発表者もまたこの学校の差別思想の事を知らないのだろうな。
奨吾「えぇ。私はそういう風に仕向けられているので。」
挑発気味にそう言うと、アホな教官たち数十名が怒鳴る怒鳴る。
「貴様のような軍人失格者に海軍は必要では無いのだ!即刻この場から消えろ!」
それを機にざわざわと声がし始める。
教官のように消えろという人間と状況が分からず混乱している者。浩介達の講義の声が響く。
奨吾は持っていた木刀を振り上げ、地面に叩きつけた。
奨吾「………言いたいことはそれだけか?」
その一撃と一言でまわりは静まり返った。
奨吾「差別思想があるならそれで結構。だが、俺が認めた奴以外は全て俺に負けているままだということを忘れるな。お前たちがどれほど最初の居場所に優れてようとも俺はテメェらをすぐにでも越す。ゼロからでも始めてやるよ。そんくらいハンデがねぇとてめぇらはすぐピーピー喚くからな。」
悪魔的な笑みを浮かべながら堂々と宣言した。
最初は静かだったが、そこから一気に怒号がひびき始める。
「落ちこぼれ風情が何を!!」
「やはり貴様などここで切り捨ててくれる!!」
「ありえない、ほんとに国の為の戦士なの?」
様々な罵倒がきこえるが、奨吾は涼しい顔をしていた。
奨吾「よし、帰るか。」
浩介「お、おい。いいのかよ?このままだとお前……。」
奨吾「……問題ねぇ。一人なのは慣れてら。」
その時だった。
今までおどおどしてた風にしていた元帥が高らかに笑い始めた。
その声に一同が全員元帥の方へと向いた。
???「……やはりワシの見込み通りであったな小僧。」
奨吾には聞き覚えのある声だった。
奨吾「……なるほどな、アンタ相当な有名人だったんだな。」
黒須 秀次(クロス・シュウジ)。奨吾に初の敗北を叩きつけた男だ。
奨吾「俺はアンタに負けてから何度も鍛え上げてきた。今ここで証明してやらぁっ!!」
奨吾は木刀を持って秀次に走り出した。
今までよりも早く、今までよりも強く踏み込んで距離を詰める。
しかし、秀次はそれを涼しげな顔で受け止める。
秀次「やはりあの男の息子だな、素質は十分だ。しかしワシに打ち勝つにはまだまだ修行不足よ!」
秀次の正拳突きが奨吾の腹部に直撃した。
奨吾「が………まだ……。」
奨吾はそれ以上の言葉を出せず前に倒れた。
そんな奨吾を秀次は背負った。
「元帥殿、その男をどうなさるつもりで?」
今まで奨吾に悪態をついていた教官が発言をした。
秀次「決まっておろう、こやつをワシの江戸鎮守府へと連れていく。」
「元帥殿、お言葉ですがその男は海軍の恥のようなもの。元帥殿の手を煩わせることなど……。」
秀次「ふっ、貴様のような男が教官となるとさぞかしここの人間も腐った思考をしていたのだろうな。」
「え?」
秀次「こやつは海動をも超えるやもしれん。その素質はある。」
「し、しかしその男は!」
秀次「たわけが!同じことを二度も言わせるでない!だからお前はアホなのだ!」
「ぐ……。」
浩介(……奨吾、お前はやっぱり俺よりもすげぇよ。いつか、一緒に戦えるのを待ってるぞ!)
こうして、熱海奨吾は黒須元帥の手によって連れていかれた。
奨吾「……ここは?」
気がつけば見知らぬ場所にいた。
奨吾「そうか……また負けたか。」
そう呟くと扉が開く音がした。
???「あ、起きてるのです。」
声のした方を向くと子供のような声と見た目をしている少女がいたが、奨吾は知っている。
奨吾「駆逐艦娘の電か。」
電「ご存知なのですか!」
奨吾「仮にも将校目指してた人間ですから。」
電「敬語は不要なのです。」
奨吾「じゃ、お言葉に甘えて。」
電「これ、飲むのです。」
お茶を差し出され、すぐに飲んだ。
奨吾「………で、なぜ俺が鎮守府所属になってるのかを知りたい。」
電「正確にはまだ所属している訳では無いのです。ここは江戸鎮守府、黒須元帥の治めている鎮守府で、貴方はここでしばらく鍛錬を積んでもらうと、司令官が言っていたのです。」
奨吾「……へっ、そいつぁ面白い。俺も強くなれて海軍も戦力増強。win-winじゃねぇか。」
電「ただ、司令官が直接戦うわけではないのです。」
奨吾「……ま、普通に考えりゃ指揮系統で忙しいからな。そりゃ俺のような二等兵なんぞに構ってる余裕もないか。」
電「いえ、司令官は過激派と直接戦闘しているのです。」
奨吾(あーれぇー?聞き間違いかぁー?)
電の一言に絶句しそうになるが続けた。
奨吾「いや、流石に司令塔なだけだろ俺みたいな奴じゃあるまいし。」
電「なんなら司令官一人で六艦隊程なぎ倒しているのです。」
奨吾(あーらぁー聞き間違いじゃなかったあ。そっちの意味で忙しいのねぇ)
電「ですので、修行相手は僭越ながらこの電が務めるのです。もちろん、たまには司令官もお相手します。よろしくお願いしますね、熱海提督。」
電が敬礼をしてきた。
もちろん、軍人として敬礼を返さねばなるまい。
奨吾「よろしくお願いします、電。」
そうして、約三ヶ月に及ぶ鍛錬が始まった。
聞けば時間があまりないらしい。
だが、三つほど気になったことがある。
奨吾「そういえば、師匠が出撃するって言っていたな。」
電「イナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデスイナヅマハナニモキイテイナイノデス」
奨吾(これ禁句か。)
奨吾「行くぞ!!」
電「遠慮なくどうぞなのです!」
電の攻撃をくぐり抜け、奨吾は木刀を叩き込んだが、受け止められ正拳突きを食らった。
奨吾「ごふっ!!」
(こいつ、ただの駆逐じゃねぇ!)
電「さぁ、電の本気を見るのです!」
そう言うと電の掌に閃光がともる。
電「私のこの手が光って唸る!お前を倒せと輝き叫ぶ!!」
奨吾「ちょっと待て、色々ダメな気がするそれ!」
電「必殺!!ライトニング!!」
奨吾「ま、待て!!?」
電「フィンガァァァァッ!!」
奨吾「ギョアァァァァァァ!!!」
奨吾は真っ黒になりながら言った。
奨吾「こいつ……ただの電じゃねぇ……言うなれば……ぷらずま……ぐふっ…………。」
電「これが電の本気なのです。」
電がただの電じゃないところである。
秀次「そらそらそらそらそらそらぁっ!」
奨吾「ふげぶごばごおげろべ!!」
秀次「どうしたどうした!貴様脳ではその程度かァ!!」
師匠こと、黒須元帥がイカれた強さをしているところだ。
秀次「これを見て学ぶが良い!!流派東方不敗が最終奥義!」
奨吾「師匠……タイム……。」
秀次「石破ッ!!天驚拳ッ!!」
奨吾「ぎぇぁぁぁぁぁっ!!!」
そんなところで三ヶ月を過ごし、かなり強くなってきた。
秀次「奨吾よ、貴様は見事我が流派東方不敗を習得し、石破天驚拳を伝授した。貴様にはすまないが、愛知の熱海で提督になってもらおう。」
奨吾「熱海……この上ない場所じゃあないですか。ぜひとも。」
秀次「しかし、最近は海軍の穏健派への資材差別も大きくなっておる。大方物資はゼロからになるがそれでもよいか?」
奨吾「上等ですよ師匠、俺はゼロから這い上がってみせますとも。それに……。」
奨吾は試作滑水装置「登龍」と特製の木刀を手に言った。
奨吾「俺にはこいつらがある。」
秀次「ふっ、ならばその姿をしかと今の過激派達に見せつけてくるのだ!!」
奨吾「御意!」
奨吾は敬礼し、江戸鎮守府を去った。
電「司令官、本当に彼は大丈夫なのです?」
秀次「この程度で音を上げるほどの奴では無い。」
秀次は一枚の写真を取りだした。
秀次(貴様の息子の力、このワシの目で見届けさせてもらおう。)
奨吾は噂の熱海鎮守府についたが……。
奨吾「……マジで何もねぇな。」
工廠はボロボロ、噂の妖精とやらもいない。
司令室は何とか原型を保っているが、埃まみれである。
奨吾「……ほう。」
本だけでの存在だと思っていたが、何十、何百年前にあったであろう前線への艦娘の移送などに使われていた大型の武装式輸送艦があった。
だが、今の時代は艦娘の燃費も良くなり使われるのはほとんど見られなくなった。
奨吾「……しゃーねぇ。ご先祖さんには申し訳ねぇが資材不足だ。バラして次の兵装とかに生かさせてもらうぜ。」
奨吾はそれを溶かすことを決めた。
奨吾「が、しかし参ったな。溶鉱炉はあるが俺はそこまで詳しくはねぇからな。妖精でもいりゃなぁ……。」
そう思っていた時だった。
???「ん?」
誰かが奨吾に声をかけた。
奨吾「おん?」
小さいデフォルメされた人間のような姿をしていた。
それは本でよく見た妖精というものだった。
奨吾「本物だ。」
奨吾はそう言うと、妖精にあいさつをした。
???「どうも。貴方は?」
少し大人びた口調をしている。
そして、なんと喋る個体でもある。
奨吾「俺は熱海奨吾。この熱海鎮守府の提督になった男だ。お前の名前は?」
???「私に名前はないな。妖精というのは一つの概念のようなものだから決定的なものは無いよ。」
どうやらかなり知性が高いようだ。
奨吾はここでふと思いついたのが浩介の顔だった。
奨吾「ならお前は今日から
妖介「いい名前だ。気に入ったよ……提督?」
奨吾「好きに呼んでくれ、あだ名でもなんでもな。」
妖介「なら……よろしく頼むよ相棒。」
奨吾「オーライ相棒。ま、申し訳ないが俺は貧乏提督なんだよな。」
妖介「なかなか笑い話にできないワードが聞こえてきたな。」
ここから始まる、熱海の伝説。
歴史の始まりに過ぎないことである。
奨吾「さてと、遠征行くか。」
妖介「人間が行くのか?」
奨吾「艦娘を雇う余裕もないんだよねぇ。」
妖介「ダメじゃないか相棒。」
奨吾「んあ?」
???「うぅ……。」
奨吾「お前は捨て駒にされたんだよ!」
???「そんなこと認めない!!」
次回
艦隊これくしょん「Deep・Blue」=スロウス
第六話「捨てられた艦」
奨吾「だが、お前のそれは俺は見過ごせんな。」