宇宙戦艦ヤマト2199 アカデミー   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「アカデミー」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」、「白色彗星帝国の逆襲」の続編になります。


アカデミー10 学生運動

 防衛大――。

 

 決起集会の翌日、医学科の一部の数十名の学生を中心としたデモ活動が始まった。

 休日ということもあり、講堂でシュプレヒコールを上げる彼らを興味本位で眺める学生らも多くいた。

 防衛大での政治活動は基本的に禁止されていたが、四年生で校友会の委員長である荒垣が活動の中心に居たこともあり、学生らの手で止める動きには繋がらなかった。それどころか、彼らに賛同してデモに参加する者が続出し、次第に百名以上の参加者が集まるまでになっていた。学生らの間でも、親族や友人を戦争でなくした者は多く、このデモをきっかけにうちに秘めた思いを爆発させることになったものとみられる。

 休日を返上して駆け付けた数名の教官らは解散する様に求めたが、彼らはこれを黙殺して講堂を占拠し続けた。

 この事態に、極東管区防衛軍司令部も鎮圧に動こうとしていた。しかし、荒垣と小島は先手を打ってマスメディアを現場に集めていた。マスメディアの目の前で、強制的にデモを解散させる様子を報道させることになれば、世論が彼らに同情的になることを恐れ、防衛軍も容易には動けずにいた。

 

 美晴は、朝から小島咲に呼ばれて彼らの直ぐ側に連れて来られていた。話を聞いて、賛同出来るなら参加して欲しいと朝から懇願されたのである。正直、このような活動をするのは本意ではない。しかし、同室のよしみで友人となった彼女の話をまるで聞かずに断るのも忍びない。咲には、これまでも何度も優しくされていたこともある。

 だから、美晴は黙って見守るしかなかった。

 そうしていると、目の前でデモに参加する人数が増えていくのが良く分かる。そして、咲が集めたメディアのレポーターと思しき人物がカメラマンと共に、近くにいた学生にインタビューを試みている。

「あなたは、どうしてこんな活動を?」

「僕が小さい頃、友達は疎開先の田舎に落ちた遊星爆弾で亡くなった。今でも強く記憶に残る出来事だった。それなのに、そのことは水に流して仲良くしようって学校でそう習ってきた。でも、亡くなった友人たちの死は、いったい何だったのか、ずっと疑問に思っていた。今は、世界中でこのことに声を上げている人たちがたくさんいる。今日、ここでも同じ様な思いをしている仲間がこんなにも大勢いるのを知って、もう、我慢して黙っている必要は無いんだと思ったんです」

 同じ様なやり取りが続く。

 美晴も、その思いは聞けば分かる話だった。

 私も同じ。

 ガミラスはついこの間まで憎い敵だった。そう簡単に割り切れる訳も無かったんだ。戦後九年も経ったと人は言う。だから、もう憎しみを忘れて未来を見るべきだと。だがしかし。たった、九年しか経っていないとも言えるのだ。

 しかし。

 今回の遊星爆弾症候群の治療薬で、父は完治するのかも知れない。その可能性を思えば、このような活動を今するべきではないのではないか?

 そんな時、ふと美晴の脳裏に、メルダの声が聞こえてくる。

 

 ――また私にやられに来たのか。

 生意気な奴だ。

 テロン人のくせに。

 

 メルダの嘲笑する声が聞こえた気がした。

 美晴は無性に腹が立ち、かっと頭に血が上った。

 そこへ、先程のメディアのレポーターが、美晴にマイクを向けて来た。

「あなたは、なぜ今ここに?」

 美晴は一瞬言葉に詰まった。

 だが。

 

「ガミラスの奴らをここから叩き出す!」

 

 美晴は、怒りに任せてそう言い放った。

 近くにいた小島咲が、嬉しそうに美晴の肩を抱いた。

「良かった! これで、あなたも同志ね」

 美晴は、はっとして、彼女の顔を見つめた。

 これで良かったのだろうか?

 そんな二人の様子を、カメラマンのカメラがアップで捉えていた。

 その時、美晴の目の端に、教官の佐渡の姿が見えた。憤慨して何か叫んでいるようだ。彼といつも一緒にいる旧型ロボットが、暴れる彼の体を抑えていた。喧騒にかき消されて、何を言っているのかは分からない。

 どうせ、この集会を止めさせようとしてるだけだろう――。

 

 

 地球、極東管区防衛軍司令部――。

 

 芹沢は、司令部の大型スクリーンに映し出された、マスメディアによる火星の中継映像をちらちらと見ながら、落ち着かない様子で、行ったり来たりしている。

 そんなところへ、彼の待ち人である極東管区の行政長官がようやく現れた。

「中西長官!」

 引退した藤堂に代わり、新たに行政局長官に就任した中西貴美子は、頭の後ろに纏めたひっつめ髪を揺らしつつ、淡々と歩み寄った。彼女は、芹沢よりも背が高く痩せ型で、金のチェーンがぶら下がった眼鏡を掛けたその瞳は、針のような細目で何を考えているか読み取るのは難しい。彼女は、芹沢よりも二十歳近く年下だったが、発言権や決定権は、あちらの方が強い。

「お持ちしておりました。あれをご覧下さい! 火星の防衛大での騒ぎを。マスコミに大々的に報道されてしまっております!」

 中西長官は、それを黙って見つめている。

「長官! 直ぐに、止めさせるべきです!」

 懸命に訴える芹沢を、彼女は見ようともしない。

「先程、指示をしたでしょう。軍を動かしてはなりません」

「しかし! 今のうちに、こんな騒ぎを起こせばどうなるか、わからせてやるべきです! これ以上、騒ぎが広がってしまってからでは遅いのです!」

 中西長官は、冷ややかな瞳をやっと芹沢に向けた。

「世論は、まだガミラスとの友好関係を望んでいる人々の方が圧倒的に多い。現時点では、一部の声の大きい活動家が騒ぎを大きくしようとしている段階です。彼らの背後には、デモ活動を利用して新たな利権を築き、利益を得ようとする者たちがいる。そんな活動は、長くは続きません」

「あそこは、我々の学校ですよ!? いいんですか、あのまま放っておいて!」

「だからこそです。子供を責め立てれば、活動家がそれを更に利用して、賛同者や協力者を拡大しようとするでしょう。それが彼らの狙いです。動くのであれば、彼らが、暴力的な活動を行うのを待ちなさい。軍を動かすのは、その後です。あなたが戦中、地下都市生活時代に、空間騎兵隊にデモ活動の鎮圧を命じていた時とは状況が違います。今は、仮にも平和を謳歌している戦後なのですから」

「あの時は、限られた資源や食料を守るために、やむを得ずやっていた事です。あの時とは事情が違うというのは、私だってわかっていますよ!」

 中西長官は、ふぅと息を吐き出した。

「どうだか」

 芹沢は、その言い草に怒りを抑え込むため、体を震わせて耐えた。

 彼女は、おもむろに持っていた携帯端末を操作し、芹沢に見せた。

「それより、あの騒ぎの首謀者の荒垣と小島について調べがつきました。小島の両親は、新東京市でデモ活動を行っていた反ガミラス同盟の代表者です。荒垣の父親は、数年前に東京でテロ活動を行った世界独立解放戦線に所属していた幹部の一人。今は逮捕されて刑務所に収監されている。両親が離婚したので、今は無関係ということになっています」

 芹沢は、端末に映し出された写真を眺めた。

「なるほど……。活動家の子どもたち、でしたか」

「我々の敵は、地球連邦に敵対しようとする星間国家だけです。正体も分かったことですし、あの程度の騒ぎは、警察に任せておきなさい」

「は、はあ」

 やりにくい……。

 芹沢は、藤堂が引退したのを苦々しく感じた。藤堂であれば、もう少しこちらの言い分を聞いてもらえた様に思われたからだ。

 先日反ガミラス同盟が、火星でデモ活動を行うと宣言したこのタイミング。学生らと協力して騒ぎが広がれば、彼らの意見に賛同が広がることだってありうる。そうなってからでは、遅いような気がするのだ。

「芹沢軍務長官。ガミラスのドメル大使に直ちに連絡をとって。彼女もわかっていると思いますが、この騒ぎはほんの一握りの一部の者たちの仕業だと、念の為説明しておかなければ」

 そうしている間に、大スクリーンの映像は、防衛大の様子から、別の場所へと切り替わっていた。

 二人は、その映像に再び目を向けた。

 

 新東京市郊外の宇宙港で、反ガミラス同盟のメンバーがマスメディアを集めて会見を開いていた。会見の様子を、現地の警官隊も見守っている。

「火星は、連邦政府が渡航を制限していますが、どうなさるつもりでしょうか?」

 反ガミラス同盟のリーダー小島は、様々なマスメディアの質問に、冷静に回答をしていた。

「我々は、平和的に抗議活動を行う為に、本日火星に出発します。渡航制限の件ですが、これは、連邦国家憲法第一条で認められた言論の自由、そして集会、結社の自由に反しており、政府の渡航制限は違憲だと考えます。誰にも、我々を止める事は出来ません」

「しかし、あなた方の行動を阻止すべく、地球と火星間の航路上に宇宙艦隊が配備されたとの情報もありますが」

「もし、我々に宇宙艦隊が攻撃をしてきたとしたら、これは言論の自由に対する重大な挑戦です。マスメディアの皆さんは、我々に対して政府がどのような行動をとるのかを、是非冷静に見守って頂きたい」

 

 この会見の様子は、会場の近くに停車した車から、衛星通信を使って各社が生中継し、亜空間リレーを経由して太陽系中に届けていた。

 プロデューサーの安孫子も、そのうちの一台の中のモニターにて、中継を見つめていた。

「彼ら、上手いですね。あれなら、警察も軍もそうそう手出し出来ないんじゃないでしょうか?」

 安孫子は、そう言うディレクターの藤井に笑顔を向けた。

「かもな。予定通り、今日出発出来そうだな」

「安孫子さんのおかげで、密着取材も獲得出来ましたしね。これで我社がこの件を独占して報道出来ます。ありがとうございました。でも、本当に安孫子さん自ら密着取材に同行するんですか?」

「こんな大きな抗議活動は、戦後初めてなんだぞ? 君だけに任せておけんよ。我々の手で、世論を盛り上げていこう」 

「そうですね。わかりました」

 報道では、今回の抗議活動を社会を二分するような問題と報じているが、実際にはまだまだこの盛り上がりは不足している。メディアの手で、この問題をもっともっと広めなければ。

 二人は、そんな話をしながら車を降りて、反ガミラス同盟の密着取材へと向かった。

 

 

 再び、極東管区防衛軍司令部では――。

 

「艦隊を配備しているというのは、本当?」

 芹沢は、大きく頷いた。

「当然です。少数の艦隊ではありますが、何が起きてもいいように、既に予定航路上に配備を済ませています」

「直ちに後退させなさい。そんなものを、マスメディアに映されたらどうするおつもり? あくまでも、彼らが破壊活動を行うなど、重大な犯罪行為を行わない限り、決して我々から手を出してはなりません」

「いやいや、こちらから手を出すつもりはありませんよ。あくまでも、有事の際の準備ですから」

「いいから、後退させなさい。私の指示に従えないのですか?」

 芹沢は、ぽかんと口を開けた。

 反論を仕掛けたが、この新任の行政長官に何を言っても通じそうもない。

 苦虫を噛み潰したような顔をして、芹沢は返事をした。

「承知しました」

「よろしい」

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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