宇宙戦艦ヤマト2199 アカデミー   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「アカデミー」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」、「白色彗星帝国の逆襲」の続編になります。


アカデミー13 抗議活動の波紋

 学生らが防衛大の講堂を占拠してから二日が経った。

 

 集まった学生は集団で講堂の入口にバリケードを築き、中に立て籠もっていた。この抗議活動の為に準備した食料品などは、最初に持ち込んでおり、一週間程度は活動が出来るはずだった。しかし、予想外に人が増え、今や一五〇人以上となっている。そのせいで、活動期間が少し短くなるが、大きな問題では無い。

 この抗議活動は、やがて来る反ガミラス同盟と合流して、火星ガミラス軍基地前でデモ活動を行う為の同志を集める目的でもあった。その目的は、このまま上手く行けばほぼ達成される。

 

 校友会の委員長荒垣は、デモ活動の代表者として籠城に集まった学生らと日々議論を交わしている。ガミラスのこれまでの横暴なやり方を一つ一つ挙げ、抗議活動そのもの意義について、理解を深めようとしている。

 もう一人の代表者である小島咲は、バリケードを築いたり、この講堂の守りを固める学生たちの士気を高める為に、頑張ろうと声を掛け、食料品を配って歩いた。また、別の学生らが武器として用意した角材や石を集めて各所に配置し、解散させようとやってくる教官らに備えていた。彼らにとって幸いなことに、まだ警察は呼ばれていないようである。穏便に解決したいと大学側が思っている間は、これらの武器を使う事はない。

 そんな彼女を美晴は手伝って一緒に行動していた。

 

「ちょっと暑いね、佐々木さん」

 咲は、講堂の隅に腰掛けると額の汗をタオルで拭い、ボトルの水を口にした。美晴も、近くに置いてあったボトルを掴んで、その横に腰掛けた。

「空調設備も電源を切られてしまったからね」

「教官たちがやったのかな?」

「そりゃ、そうでしょ。昨日、佐渡教官の補佐の、彼女が来てそう言ってたでしょ」

 美晴は、昨日の夜、佐渡と真琴がやって来て大声で怒鳴っていた姿を思い出した。美晴や咲はもちろん、講義を受け持った学生らに必死に声を掛けていた。

 咲は口を尖らせる。

「ひどいなぁ」

 美晴は、そんな咲の表情に癒やされ、思わずくすりと笑ってしまった。

「え〜。なんで笑うの」

「だって……。面白い顔をしてるから」

「それもひどいよ」

 二人は、互いに笑いあった。

 

 咲は、美晴が額の上に被っているゴーグルをしげしげと眺めた。

「そのゴーグルって、何なの? 前にも聞いた時ははぐらかされたけど」

 美晴は、そっと頭からゴーグルを取ると、手にとって眺めた。

「防衛大に入ることが決まった時に、父からもらった。第二次世界大戦の日本の航空隊の兵士が着けていたものなんだって。本物じゃないよ? これはレプリカ」

「どうしてそれをいつも着けてるの? 宇宙科に入るってお父さんは思ってるの?」

「もちろん、父は医学科だって知ってるよ」

 美晴は、うーんと少し悩んだ素振りを見せた。 

「これは、大昔に日本を守る為に戦った兵士の体の一部だったもの。防衛大に入るということは、地球を守る兵士の一人になるのを目指すということ。たとえ、それが医師であろうと、戦場で戦う兵士の一人であることには変わらない。病気で戦えなくなった父は、その思いを忘れぬように、と言ってこれをくれた。父は口下手だったけど、地球を、この平和を、自分に変わって守って欲しいという願いを込めたものなんだと私は思ってる。それを決して忘れないように、私はいつも着けることにした」

「お父さん、大好きなんだね」

「そう、なのかな。……うん。そうかもね」

「あなたのお父さん、遊星爆弾症候群だったよね。あなたのお父さんの病気を治す為に、ガミラスの言いなりになるって選択肢もあった。どうして、この抗議活動に参加してくれたの?」

 難しい質問をしてくる……と美晴は思っていた。

 まだ頭の中で整理が出来ていないことだ。

 ある種、勢いで参加した、というのが本当の所である。

「どうしてかな。父の病気のこともあって、ずっとガミラスは憎い敵だと思っていたのは確かなんだけど」

 美晴は、その時ふと、メルダの顔や声が頭に浮かんだ。

 

 ――また私にやられに来たのか。

 生意気な奴だ。

 テロン人のくせに。

  

 美晴はぎりぎりと歯を食いしばった。

 そんなセリフを、実際にメルダが言い放った訳ではない。そうやって影で嘲笑してると美晴が想像しているだけだ。

「……今は父も母も、マゼラン市の病院に来てるはず。母は、こんな事をしてる私に怒ってる。携帯端末に、何度も連絡が入ってるけど、出ないようにしてる」

 

 昨夜一度だけ、美晴は母からの連絡を受けた。

 

「美晴、あなた何をやっているの? 本当にデモ活動に参加してるの? いったい、どうして?」

「母さん、ガミラスは、私たちを長年苦しめた敵だよ?」

「違うわ。ガミラスは地球の友人でしょ? 父さんの病気だって治してくれる」

「母さんの研究だって、あともう一歩だったじゃない」

「そうだけど、まだ完成はしてなかった。父さんが生きている間に間に合うかもわからなかった。だから、彼らが治療薬を提供してくれるこのチャンスを逃す訳にはいかないの」

「そうやって、また奴らの言いなりになるの? 奴らからの施しで生きていくの!? 私は、もうそんなの耐えられない!」

「言いなりなんかじゃ」

「地球連邦政府は、奴らと何か密約を結んでる」

「それは活動家が言ってる陰謀論だから」

「もう、いい。切るね」

「待って。あなたたちの活動で、ガミラス側が心変わりしたらどうするつもり? お父さんだけじゃなく、大勢の同じ病気で苦しんでいる人から、希望を奪うことになるのよ」

 美晴は、そんな母の訴えを聞きたくなかった為、通信を切断した。そして、それからかかってくる連絡を、すべて無視することにした。

 

「……止めたっていいんだからね? 強制するつもりは無いから」

 昨夜のことを思い出して、悩む美晴は、話しかけられたことに気づいてはっとした。

「……いや、いいの。納得出来ないことは、納得出来ないと、私もそう言うべきだと思ったから」

 頭の中では、本当にこれでよかったのか? という思いがぐるぐると堂々巡りしている。母の言うように、この抗議活動のせいで、やっと治るはずだった父の病気が治せなくなったら?

 美晴は、頭を左右に振り、迷いを忘れようとした。

「小島さんこそ、どうしてこの活動を?」

 咲の表情から、みるみる笑顔が消えた。彼女自身も、これで良かったのか悩んでいるのは同じだった。

「……皆にはナイショだよ?」

 美晴は、うんうんと頷いた。

「地球で活動してる反ガミラス同盟って知ってるよね。私の両親は、その日本支部の代表者を務めてる」

「私も、昨日初めて知って驚いた。小島さんは、そんな大それたことをするタイプじゃ無いと思っていたから、それを聞いてやっと合点がいった」

「父から頼まれたの」

「お父さんから?」

「そう。学生が抗議活動する事で、反ガミラス同盟の活動がより皆んなに注目されるからって。私も、悩んだけど、両親の活動には賛成だったから協力しようと決めたの。それに、荒垣さんも、お母さんが反ガミラス同盟のメンバーで、やっぱり頼まれたんだって」

「そうだったんだ。でも、もしかして何か悩んでる?」

 咲は、小さく頷いた。

「お母さんは私が参加する事に反対なんだ。こんな政治活動は、娘の私がかかわるべきじゃないって思ってるみたい。だから、今両親はとっても仲が悪いみたい」

 二人は、下を向いて、しばらく無言になった。

「いろいろ、上手く行かないもんだね」

「そうだね」

 そんな二人のもとに、荒垣が歩いて来た。

「小島さん。明日、予定通り反ガミラス同盟が火星に到着する。俺の母からさっき連絡がはいった。合流した後の活動について、皆んなに説明するから一緒に来てくれ」

「わかった」

「佐々木さんも、講堂の壇上前に集合してくれよな」

 咲は急いで立ち上がると、美晴を振り返って小さく手を振ってから、荒垣と並んで歩き出した。

 

 

 ガミラス基地敷地内の滑走路脇のハンガーでは――。

 

 山本は、十数名の若い部下を連れ、ガミラス軍基地で、合同訓練のブリーフィングを行っていた。

 一通りブリーフィングが終わると、説明に使った資料を片付ける山本の前に、メルダが現れた。

「これは防衛大の教官殿」

 にやりと笑った山本は、敬礼を決めた。

「止めてくれ」

 二人は、その場を離れて、ハンガーの外の滑走路が見える場所へ移動した。

「玲は、防衛大の騒ぎは知ってるか?」

「もちろん。戦後、防衛大で抗議活動なんて起こるのは初めてだから。こっちでも、その話題で持ちきりだよ。加藤さんなんて、奥さんが渦中の人だから、いろいろ情報は伺っている」

「そっちでは止めないのか?」

「軍は動かない。解散させようとして、暴力沙汰になることを懸念している。マスメディアが目を光らせてるから、何を言われるかわからないし。それにまだ警察も待機中。大学関係者だけで対処してるけど、上手く行ってない」

 メルダは、がっかりした様子で、大きく息を吐き出した。

「面倒な事になったものだ。テロン人にそんなに嫌われていたとはな」

 山本は、真面目な顔をして、メルダの正面に立った。

「一部の地球人にそのような人々がいるのは確かだ。でも、大多数の地球人は、既にガミラス人を友人として受け入れている」

「だが、テロンの報道番組では、そんなことは言ってなかったぞ。多くの人がガミラスをかつての敵国だと認識していると言っていた」

「その報道は決して間違ってはいないが……、言い方の問題だ。私たちの国家はかつて戦争をしていた。私もそうだけど、心の奥底にその時の傷が残っている。でも、それを承知の上で未来の為に多くの地球人はガミラスを受け入れた。だけどそれは、ガミラス人だって同じだと私は理解している。その、地球人に残る傷をマスメディアは抉り出して晒そうとしている。だから、そのような報道はどうしても注目される。地球のメディアは、民間企業だから、ニュースペーパーと視聴率の数字を上げ、それで広告費を稼ぐのが企業としての仕事だ。営利企業である彼らは、その為なら何でもやる。私は、そんな報道よりも、メルダが自身が知る地球人がどのような人々か、よく思い出して欲しい」

 メルダは、少しだけ微笑んで頷いた。

 目の前にいる山本も、以前はメルダに向け、殺したい程の憎悪を向けていたのは確かだ。

 それが、いつしか親友と呼べる程に、かけがえのない友となった。

 二人の絆は、真の地球とガミラスの友好の証。

 それを疑うなど、これまでの二人が乗り越えてきた時間を否定すること。

「そう、だったな。ありがとう、玲」

 二人は、これまで過ごした時間を振り返り、それを噛みしめた。

「メルダ。そういえば、お前が目にかけていたあの医学科の……佐々木とかいう子だけど。どうやら抗議活動に関わっているみたいだな」

 メルダは、腕を組んでため息を漏らした。

「ああ、そうなんだ。いくつかの報道で彼女が映っている映像を私もこの目で見た」

「このまま放っておくの? 気に入ってたじゃない」

「何かしてやりたいとは思ってるがな。どうしていいのかわからない」

「そんなのメルダなら簡単じゃないの?」

 あっさりと言う山本に、メルダは何が簡単なのかと不満げに目を向けた。

「一発、ガツンとやってやんなよ」

「は? ガツンと? 拳で殴れというのか?」

「違う違う」

 メルダは、腕を組んで考え込んだ。だが、答えは出ないようだった。

「いろいろと拗らせた地球人には、メルダの本気をわからせてやればいいじゃない。私にもしたように」

「私の本気……」

 メルダは、山本の言いたいことを何となく理解した。だが、決して簡単ではない。

「そういうチャンスがあれば、やってみよう」

 

 その時、二人が持っていた携帯端末が突然振動した。端末を確認すると、それぞれ加藤と、ガミラス火星基地司令部からの連絡だった。

「こちら山本」

 相手は加藤だった。直ちに基地司令部へ出頭しろとの命令だった。 

「メルダ大尉だ」

 一方のメルダにも、同じくガミラス基地司令部への出頭の命令だった。

 通信を切断した後、二人は互いの顔色をうかがった。

「何の話だろう?」

「それぞれの軍から同時に連絡だからな。共同で何かやるのかも知れん」

 二人は、軽く挨拶を交わすと、それぞれの司令部へと走り出した。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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