宇宙戦艦ヤマト2199 アカデミー   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「アカデミー」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」、「白色彗星帝国の逆襲」の続編になります。


アカデミー15 到着

 火星、マゼラン市郊外の宇宙港――。

 

 宇宙港に着陸した反ガミラス同盟のメンバーの乗る宇宙船からは、続々とメンバーが降りていた。

 客席の頭上の収納棚から荷物を下ろし、小島夫妻も宇宙船の出口へと向かおうとしていた。

「拓郎」

 小島拓郎を呼び止めたのは、荒垣英子だ。

「予定通り、この後は別行動。私は、宇宙港で会見を開くから。皆を連れてガミラス基地前で、抗議活動をよろしく。出来るだけ派手にやって目立つことね。警察や軍が乱暴して来たら儲けものだわ。その模様をマスコミに宣伝させれば大成功。スポンサーも喜ぶでしょうね」

「段取りは分かってる。防衛大の学生らも合流させるんだ。そうなればさぞいい絵が撮れるだろう」

 小島美咲は、不満そうにしている。

「私は、娘がこんな活動に参加するのは今でも反対なのに、あんたって本当に……!」

「しょうがねぇだろう! 咲は自分の意志でやりたいって言ってんだから!」

「だからって、娘が危険な目にあっても良いっていうの!?」

 言い争いを始めた二人の間に、荒垣英子は割って入った。

「はいはい、そこまで!」

 荒垣英子は、二人の肩に手を置いた。

「後戻りは出来ない。もう、やるしか無いんだよ。こんな所で揉めて、今回のデモ活動からスポンサーに手を引かれたら、あんたたちも困るだろう?」

 小島夫妻は、スポンサーからの莫大な報酬を期待して、借金をしている。彼女の言うとおり、もう後戻りは出来ない。

 二人が押し黙ったのを確認した荒垣は、にっこりと笑った。

「うん、それでいい。私たちは、約束を果たす義務がある。それを忘れないで」

 荒垣は、小島拓郎へ小型の名刺大の小さな箱を手渡した。

「これは?」

「発振器。もし、軍や警察に捕まっても、位置は特定出来る。私と火星に居る仲間たちが必ず助けに行くから。肌見放さず持っていてよ」

「そうか、用意周到だな。ありがとう」

「どういたしまして」

 荒垣英子は、宇宙船の通路を進んだ。

「じゃあ、始めようか」

 

「安孫子プロデューサー」

 機材を抱えた中央通信社のディレクターが空港の税関検査所で並んでいた安孫子に声をかけた。

「荒垣さんが空港で会見を開くと言ってますが、我々はデモ隊と荒垣さんのどっちに着いていきますか?」

 安孫子は、顎を指で撫でて、思案しているようだった。

「俺が空港に残る。カメラマン一人だけ残してくれるかい?」

「分かりました。では、私はデモ隊の方の取材を続けます」

「よろしく」

 その後、税関の先では、既に火星のマスメディアが多数待ち構えており、降りてきた反ガミラス同盟のメンバーへと多数のフラッシュが焚かれる。

 多数の警官が、メンバーを囲むようにして並んでおり、マスコミも近寄れない状況だった。

 安孫子もフラッシュを受けながら、前へと進んでいた。

「結局、警察は手出ししないことにしたのか」

 辺りをよく見回すと、遠巻きに軍の関係者と思われる制服がちらほらと見える。静観する構えらしい。

「ふむ」

 安孫子は、何やら納得した様子で、反ガミラス同盟のメンバーを振り返って眺めた。

 どこにでも居そうな一般人に見えるが、マスコミに向けてプラカードを掲げて、良く見えるようにしている。

「俺も仕事をしなくちゃな」

 安孫子は、携帯端末を手に、いそいそと手を動かした。

 

 それから数時間後。

 

 反ガミラス同盟のデモ隊は、小島夫妻を先頭に空港を出ると、迎えに来た複数台のバスに乗り込んだ。総勢百名以上いるメンバーは、バスに分乗すると次々にガミラス基地に向けて出発していった。

 

 一方で同じ頃、防衛大で抗議活動を行っていたメンバーも、比較的近くにあるガミラス軍基地へと行進を始めていた。

 マスメディアと警察、そして防衛大の教官らが取囲み、彼らの行進を見守っている。

「行っちゃいかん!」

「戻ってくるんだ」

「今なら、まだ間に合うぞ!」

 教官らは、学生らに声を上げている。

 佐渡や、真琴、そしてアナライザーも、その行進の囲みの外にいた。

「何をやっとるんじゃ! 力尽くでも止めるんじゃ!」

 憤慨した佐渡は、警官や他の教官らに叫び声を上げている。しかし、真琴とアナライザーがその身体を抑えていた。

「だっ、だめですよぉ、佐渡先生。上から暴力沙汰は絶対に駄目って言われてるじゃないですか」

「佐渡先生、モウオトシナンデスカラ、無茶ヲシテハイケマセン」

「ぶわっかもん! 教え子らが間違いを犯そうとしているんじゃぞ!? 殴ってでも止めるのが、ワシらの役目じゃ!」

 その前を、佐々木美晴が通り過ぎて行く。

「あっ、佐々木さん!」

「おい、待たんか!!」

 

 美晴には、ちらと佐渡や真琴の姿が視界に映っていた。しかし、もう後戻りは出来ない。

 決意を決めた美晴は、彼らに一瞥もくれずに先へと進んだ。そして、先頭を歩く小島咲に追いつこうと足を速めた。

「はあ……」

 小走りになっていた美晴は、咲の隣に並ぶと、ため息を漏らした。

「佐々木さん、大丈夫?」

「あんまり」

「教官たち、必死だったね」

 美晴は、小さく頷いた。

「私も、ちょっと心が傷んだみたいだ。やっぱり、お世話になった人たちに心配されるのは辛い」

「私たちは、間違ったことはしてないから。堂々としていていいんだよ?」

「そう、なのかな……」

「そうだよ」

 美晴は、心の中の葛藤が大きくなっていた。本当にこれで良かったのか、不安感はどうしても拭えなかった。

「あれ……? 荒垣さん……先輩は?」

「もうここにはいないよ。マゼラン空港に居るお母さんと合流して、一緒に会見を開くんだって。ガミラス基地前で、抗議活動を始めたタイミングで、会見を開いてマスコミの人たちに、私たちの考えをもう一度説明するんだって」

 この学生運動のリーダーなのに?

 そう、考えているのを見透かしたように、咲が続けた。

「大丈夫。私が、彼の代わりをするから。私の両親も来てくれるから、そんなに心配いらないよ?」

 それでも、美晴は、またも不安が増してくるのを感じていた。

 

 

 火星の月、フォボス――。

 

「……はい。そうです。火星の月面に着陸させて、船体は隠蔽しております。万が一にも見つかる事はありません」

 ボラー連邦軍の制服を着た若い士官は、宇宙船の指揮所から何処かへと連絡をとっていた。映像は無く、音声のみである。

 それは、ボラー連邦が初めて開発した遮蔽装置を装備した宇宙船のプロトタイプだった。約半年前に密かにフォボスに着陸して、船体を砂で覆ってあった。簡単な隠蔽工作ではあったが、これまで発見されずにいた。

「はい。運良く、この月面で廃棄された無人の地球の宇宙船を発見しました。恐らく過去に同じ民族同士で戦争をしていた時の残骸と思われます。それに積載されていた核ミサイルをガミラス基地に落とします。はい、そうです。地球人活動家の仕業に見せかけて確実に基地を破壊します」

 相手の音声は、少し雑音混じりだが、はっきりと聞こえる。通信相手が相当近くまで接近しているであろうことがその若い士官も分かっていた。

 

 しばらくして、火星、ガミラス基地司令部――。

 

「通信を傍受した。暗号化されていて、内容は不明だ。発信源を探らせているが、まだ特定出来ていない」

 基地司令官ハイゼルは、頬の髭を弄りながら、メルダに語りかけた。

 メルダはその時、司令部の窓から、基地ゲートの様子を伺っていた。ゲート前には、多数の民間人が集まり、これから抗議活動をしようと準備しているらしい。

 隣接する地球連邦防衛軍の基地で立て籠もり騒ぎを起こしていた学生らの姿も見える。合流して、デモ活動を行うのであろう。

 ゲート内には、ガミラス軍の兵士たちが集まり、デモ隊を警戒しているようだ。

 謎の通信のことからも、やはり、スパイがこの宙域の何処かに紛れているのは間違いなさそうである。あのデモ隊は、そのスパイに踊らされている可能性が高い。

「ディッツ大尉。あんなデモ隊はどうでもいい。放っておけ。既に、ゲルバデス級空母ガロードの発進準備は出来ている」

 ハイゼル司令の言う通り、確かにそろそろ宇宙へと上がり、スパイ本体の動きを警戒した方が良いだろう。

 だが。

 デモ隊には、あの美晴が参加しているはずだ。メルダの胸は少し痛んだ。

 あのような活動に参加した事実は、今後事件が沈静化した後も、余程の事が無ければ、地球軍が許容する事は無いだろう。優秀な学生が、つまらない失敗で、その芽を摘まれるのはいたたまれない気持ちになる。しかも、それをそそのかしたのが、スパイの仕業だとしたら尚更だ。

 そして、美晴は見どころがあった。有象無象の学生らの中で、光るものがあった。彼女が軍に入れば、山本らも良い後輩が出来る事になるだろう。

「ガツンとやってやれ、か……」

「む? なんの事を言っている?」

 ハイゼルは怪訝な顔をしている。

 メルダは、ハイゼルに正面に立ち、それを伝える事にした。

「テロン軍の優秀な学生が、このままスパイの手で陥れられるのを見過ごせません。少々手を貸してやろうかと思っていますが、ご許可を頂けませんか?」

「いったい何をするつもりだ? あまり無茶を言うな。極秘任務なのだぞ。こんな時に……」

「こんな時だからです。私の父も、テロン軍の前途ある若者を見捨てたと知ったら、とてもがっかりする事でしょう」

 ハイゼルは、突然ガル・ディッツ提督の名を出すメルダに目を丸くした。

「……私を脅す気か?」

 メルダは、涼しい顔で言った。

「滅相もありません。ただ、正しい事をしたい、それだけです」

 ハイゼルは、一瞬憤慨して顔を真っ赤に染めて何か言おうとしていた。しかし、再び冷静さを取り戻そうと、噛み締めた歯の間から息を漏らした。

「どうするつもりだ?」

「任務に、一人連れて行きます。実戦で教えてやりたい事がありまして」

 学生を連れて行くだと?

 ハイゼルは頭を抱えた。

 だが、地球軍とガミラス艦隊総司令官と、どちらの責を追うのが良いか、素早く天秤にかけた。

「……お前の能力は、このガミラス火星艦隊でも最高水準にある。任務を果たしつつ、その学生の命も守れ。それを約束出来るなら許可しよう」

 メルダは、ガミラス式敬礼で応えた。

「ありがとうございます!」

 

 それから、メルダはゲート前へ姿を現した。

 大きな声でシュプレヒコールをあげるデモ隊は、ゲート前に陣取っている。各々、プラカードなどを掲げて。

 その姿を、地球のマスメディアが映像に捉えようと囲んでいるらしい。

「大尉。危険ですので、ゲートに近づいてはいけません」

 ゲート内で警戒任務にあたっていた二人の下級兵士が、メルダを止めようとその前に立った。

「そこを退け。基地司令官にも許可をとっている」

 しぶしぶ、その兵士らはメルダの前を空けた。

 メルダは、大きく息を吸い込んだ。

「佐々木美晴! 佐々木美晴はどこにいる!」

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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