卑劣な天才肌が行くボーダーライフ   作:あもう

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基本的には主人公視点でやっていきます。


プロローグ

 

〜第三者視点〜

 

「さて、今日も練習あるのみだな。」

 

トリオン量を無限でトリガーの練習が出来るトリオン訓練室にて『元』A級の隊で隊員をしていた男、神戸真は日課のトリガー研究に励んでいた。

 

彼はいつも通り訓練室のコントロール機の操作をして的を出す。大小様々の的を10個ほど、だいたい高さは1.5mから2m程の人型の至って普通の的のように見える……だがそこには正確なトリオン供給機関の位置が記されていたり、伝達機関の位置が記されていたりする。

 

神戸真は天才であり、変人ある。ボーダー入隊からわずか4日でC級からB級へと昇格、そのまま組んだ隊でワンシーズンでA級昇格という神技を披露していた。当然ほかの隊のメンバーも恐ろしく強かったのだが、全員変人だった。

 

その中でも彼、神戸真は天才的なタイプの変人であった。持ち前のサイドエフェクトも原因の一端を担っているのは間違えないのだろうが、それでも本人の性格的な部分は大きいだろう。

 

B級に昇格した彼はサイドエフェクトの助けも借り、恐ろしい速度でほぼ全てのトリガーの基礎基本を理解した。ここまでならば優秀なB級隊員という位置づけで終わっていただろう。だが彼は多種多様なトリガーの使い方をし続け、そのうちの幾つかは今やボーダーで応用技の一種として広まる始末である。彼の常識外れの技の閃きには当たり外れは大きくある。まさにバカと天才は紙一重である。

 

さらに彼はエンジニアの部屋に入り浸り、様々な事を教わりながら元々高かったエンジニアとしての技術や多種多様な知識、更にはほかのエンジニアによる教えも相まって、エンジニアとしてもある程度の実力を保持している。ボーダーにおそらく唯一であろうエンジニア兼戦闘員、それが神戸真である。

 

そんな彼が当然A級に昇格した際のトリガーオプションについて興味が無いなんてことはありえない。現実問題A級部隊解散後ではあるが、彼は多大なる予算と費用に加えて数人のエンジニアの有給を犠牲にする事でメイントリガー4種とサブトリガー4種の計8種にトリガーオプションを突っ込むという偉業を達成している。

 

玉狛見たく近界のトリガーを参考にしている訳では無い上に大半のトリガーはボーダーのトリガーの強化版のようなものなので一応ランク戦の参加は許されているのだが…。

 

まぁ何はともあれ、神戸真という男がいかに異質かについては最早これ以上の説明は不要だろう。

 

 

 

近界民の技術を独自に研究し「こちら側」の世界を守るため戦う組織、

 

 

 

界境防衛機関「ボーダー」。

 

 

 

彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ、近界民に対する防衛体制を整えた。

 

 

 

…それから約4年

 

 

 

ゲートは依然開いているにも拘わらず、三門市を出て行く人間は驚くほど少ないので、ボーダーへの信頼によるものか、多くの住人は時折届いてくる爆音や閃光に慣れてしまっていく事になる。

 

そんなボーダーの戦闘隊員の中でも大きく分けて3つに別れている。

 

まずは訓練生のC級、こちらはトリガーは攻撃トリガー1本しか使えず、また外部などでの使用も禁止されている…と言っても破る奴がいるとは思えないのだが…。これを違反する奴はよっぽどのバカかメンタルガチ勢しかいないだろう。

 

そしてB級、B級からは正隊員という扱いになるので給料も発生するようになってくる。とは言え出来高制なので防衛任務なんかを入れて沢山稼ぐ必要があるが。

 

そしてこれらの最上位に位置しているのがA級、A級にまでなると固定給が出来高とは別に配布されるようになり、名実共に実力者の異名を持つ事になる。

 

そして神戸はそのA級隊員だった。今は部隊には所属していないのでフリーなので、今後B級に入隊すればB級隊員になるのだが、彼の入隊時期はボーダー設立時の三年半前、A級部隊が解散したのは二年前である。それから彼はほぼ毎日新しい技やトリガーの研究なんかに勤しんだり、実験と称して極々一部の人間と訓練をしているが、人と会う機会もそうは無いため彼の事を知っている人間は少なく、彼の所属していた隊そのものはさらに知っている人間が少ない。

 

かつてのA級3位部隊『伊勢隊』、彼は今、ただ一人そこの訓練室でトリガーを振るっていた。程なくして部屋に戻り、隊の皆で撮った写真を眺めて感傷に浸っていた。伊勢隊にはオペレーターを含めて4人が所属していた。全員変人ではあったが仲も良く、強い部隊だった。だがある日突如として事件は起こる。

 

手段は詳しく分かっていないが、隊の2人、伊勢慎一郎と廻ヶ原恵が向こう側の世界、すなわち近界へと行ってしまったのだ。それもボーダーのトリガーを持って……。

 

当然ボーダーとしてはお怒りモードであり、隊は解散、残りの隊のメンバーであった神戸とオペレーターだった橘綾乃には2年間のランク戦、並びに個人戦の参加の禁止が義務付けられた。だが彼らに取っての問題はそんな事では無かった。

 

この一件で橘はボーダーを退職した。まぁ当然と言えば当然なのかもしれない。神戸もかなりのショックを受けて、一時期はトリガーを握る事すらままならないレベルにまでメンタルを傷付けていた。

 

だが時間というものは傷を風化させてくれる。2年という歳月を経て、彼は心の中である程度の割り切りというものが出来るぐらいには落ち着けるようになっていた。どの道近界へ行ってしまった二人に会うためにはボーダーで強くなる必要があるのだ、ならば強くなるだけである。

 

そして今日、個人戦の禁止の認が解かれる日である。ランク戦は今シーズンまでが禁止であり、来シーズンからしか参加は出来ないが、あと一ヶ月もしないうちに参加出来るようになるだろう……尤も彼を取りたいという隊があるか、あるいは彼に隊長を任せられる人間がいるかしない限りは不可能だが。

 

彼は所定の時間まであと10分である事を確認して会議室へと向かった。

 

 

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〜神戸視点〜

 

今日はようやく個人戦禁止という罰が解ける日だ。この2年間、遠征メンバーに選ばれる為に、ひいては近界からあいつらを取り返す為に俺は鍛錬を積み続けてきた。現役の頃よりも力は上だろう。俺は会議室のドアをノックする。

 

「入りたまえ。」

 

「失礼します。」

 

俺は扉を開けて一礼して入室する。時計の時間は13:55を示している。5分前行動はやはり大事だと思う。最近の小学生は5分前行動をしないと怒られるらしい。軍隊かな?

 

「さて、まずは2年間の謹慎処分、ご苦労だった。今日から個人戦をする事を許可する。但し部隊を組む、並びに部隊に入る事が許されるのは来シーズンからだ。」

 

目の前で淡々とそう告げ、傷を触っているのはボーダーで最も偉い人、城戸司令である。司令と着くだけあってとてつもない権力を持っている。彼に逆らえる隊員がいるとすれば予知予知歩きをする何処かの実力派エリートぐらいだろう。もしくはペンチのようなメンタルの持ち主だがそんな奴がボーダーに入れるとは思えない。

 

他には会議室には他にも本部長である筋金入りのまともな忍田さんやその本部長の補佐である婚期がヤバい恋する乙女の沢村さん、特に言うことが無いメディア対策室長の根付さん、そしてよくお世話になっている開発室長の鬼怒田大先生に昔は何処ぞの裏組織で働いてたなんて噂のある唐沢営業部長、何故かトリオン体の時にもタバコを加えている林道支部長が居る。

 

……今どこかから殺気が飛んできたような、気の所為かな?

 

「わかりました。」

 

俺としてはこれ以上返事する事も無い。もとより分かっていた事だ。内容としても不満は無い……無いが2年も謹慎処分をしていたのだ。ボーダーがどれだけ変わったかはちょっと教えて欲しかった。まぁ自分で見るの方がさらに楽しみだろう。

 

「何か質問はあるかね?」

 

「そうですね……ランク戦にはA級時のトリガーを使用しても宜しいですか?」

 

俺のA級時のトリガーはオーソドックスとは言い難いだろう。とは言え二宮さんなんかもオプションを弄ったトリガーを使っているわけだし問題は無い……といいな。

 

「基本的にはA級時のトリガーを使用する事に制限を付けることは無い、が君の場合は少々事情が異なってくる。」

 

それはそうだろう。俺のトリガーはメイン、サブ合わせて『8個のトリガー』全てが通常のものとは異なる。とは言え殆どは本来あるトリガーの単純な強化版なのだが。

 

「君のトリガーは今あるトリガーの単純な強化版であるものも多い上に、八個全てのトリガーがA級に入ってから改造したオプショントリガーにしている訳だ、流石に全部がランク戦で使えるとなるとランク戦のパワーバランスに支障が出る。」

 

まぁ当然だろう。いきなりB級隊員が上が持っているはずのオプショントリガーにフルボッコにされるとか普通にアウトだろう。とは言え元々A級に上がる際にはA級の強化版トリガーはひとつも無かった訳だし最悪1つも無くても問題は無いだろう。

 

「なので神戸隊員にはA級のトリガーはランク戦時には使用を最大2つまでに控えてもらう。この事には他の面々にも賛成して貰っている。A級の部隊に所属した場合はこの限りでは無いが、我々上層部としてはB級部隊に入って貰い、B級ランク戦の底上げをして貰うのが望ましいと考えている。」

 

「勿論A級個人戦や防衛任務なんかでは使ってもらって構わない。日々訓練に励んで欲しい。」

 

城戸司令に補足する様に忍田さんが続ける。まぁ二つ使えるだけでも御の字だろう……多分。

 

「A級部隊には入るな、という事ですか?」

 

「勿論禁止することは無いが……B級の育成の為にB級の部隊に入ってもらいたいというのが我々の本音だ。命令と言うよりはお願いのようなものだと思って貰って構わない。但し迅の予知ではB級部隊の方が良い未来に繋がるとの事だそうだ。」

 

「分かりました。」

 

要するに拒否権はあるという事か。尤も俺がA級部隊に呼ばれる未来は見えない上に、迅さんが何処まで信用出来るのかも怪しい所ではあるが。

 

「話は以上だ。何か異論はあるかね?」

 

「いや、何もありません。」

 

異論も何も現在のほかの部隊の強さが分からない以上なんとも言えない。

 

「ワシはお主には期待しておる、これからもいいトリガースタイルの開発を期待しておるぞ。」

 

「精進します。それでは私は失礼します。」

 

俺は鬼怒田大先生からの激励を頂きながら会議室を後にした。あまりにもプレッシャーがえぐすぎてあの部屋に居るのが辛かったのだ。あれが霊圧って奴か。

 

俺としては個人戦がしたい。なんせ二年ぶりの対人戦だ。トリガーを的相手に2年も練習していた為に技も数々編み出せた訳だしその練習も兼ねたい所だ。それに俺を入れてくれる部隊や今のボーダーの雰囲気なんかも知りたいところである。

 

 

俺はトリガーを手に個人戦のできるロビーへと向かった。

 




神戸の心の声

→城戸……権力掌握してる怖い人
→鬼怒田……教科書に載せるべき大偉人
→忍田……隊員想いの理想の上司
→沢村……婚期と戦う恋する乙女
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