卑劣な天才肌が行くボーダーライフ   作:あもう

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今回の新キャラ紹介

香取葉子…通称カトリーヌ。昔華ちゃんが戦闘員としての試験を落とされた事に対してボーダーのお偉いさんに直談判しようと警戒区域に入ってトリオン兵に襲われた所を神戸に助けられてからずっと神戸の大ファン。これが無かったら間違えなく烏丸にミーハーしていたものと思われる。
普段はきつい性格をしているが神戸の前だけでは猫を借りたように大人しくなる事からそう遠くない未来に『香取の機嫌が悪くなったら神戸を連れてくる』という対処法が出来上がるのだが本人達は知らない。
B級に上がってから神戸をこっそりと2年近く探したが、ボーダーの古参にそこまで仲良しな人が居なかった為消息不明で密かにショックを受けていた。皆さんお察しの通り本作のヒロイン候補その1。

三浦雄太…通称ミューラー。香取隊の緩衝材であり常にまぁまぁと言って仲を取り持つ大変な役割をしている。胃薬を定期的に持ち歩くレベルで大変なのだがその事を香取は知らない。いるだけで香取のテンションを保てる神戸の事を密かに尊敬している。香取に一目惚れしたが神戸という圧倒的な強敵を前に心が折れかかっている。頑張れミューラー。

染井華…若くして冷静な判断力と柔軟な発想力を持ったザ・オペレーターみたいな人。香取が戦闘員になれなかった事にムカついて警戒区域に行った事を香取隊で唯一知っており、神戸に助けられた話も聞いていたが香取を助けた人=神戸とはならなかった。神戸は防衛任務が上手い先輩として知っている。

若村麗郎…判断力の鈍い汗かきメガネガンナー。王子に密かにジャクソンと呼ばれている事を本人は知らない。香取とは度々衝突しているが神戸の存在と胃薬を定期的に持ち歩く三浦の姿をたまたま目撃した事によりこれから減っていくものと思われる。犬飼の弟子であり犬飼の事を尊敬している為犬飼に似たスタイルでやりたいと密かに思っている。本話で少し度胸が着いた。

迅悠一…女子のお尻と暗躍が趣味の予知予知歩きをするセクハラ実力派社畜エリートという圧倒的キャラ渋滞に頭を叶えるエリート。未来視を持っている為常にトロッコ問題という重すぎる責務を背負っている。神戸とは昔ある一件があるまではとても仲良しだったがある一件で今の関係に至る。1番悪かった時に比べれば今はマシな方。メタい話では作中で困った事があったらだいたい彼の未来視に全責任が押し付けられるであろうので彼もまた胃薬を飲むべきかもしれない。


香取葉子①

今日は防衛任務…いや、正しくは今日も防衛任務だ。この謹慎を食らった2年間、社会奉仕だかなんだかで深夜帯に防衛任務を良くやらされていた。勿論昼にも入れられていたのだが深夜帯のが割合は多い。元々どこかの実力派エリートのように実力はあったのでソロでも普通に討伐出来た。お陰様…?で一部のオペレーターには俺の名前はよく認知されている事だろう。

 

とは言えそれはあくまでも深夜にソロでやっていた頃のお話、今回は2年ぶりに他の隊と組んでやるのだ。確か名前は香取隊、隊長がマスタークラスのスコーピオンと拳銃を使う万能手で、他の隊員がカメレオンなんかで奇襲もかけられる突撃銃使いと孤月使いだったはずだ。特に隊長の香取は中々強そうだった……それにしてもどこかで見た事あるような…気の所為か?

 

開始10分前に集合場所に行くと既に香取隊はメンバーが二人来ているようだ。

 

「改めまして、本日一緒に防衛任務をやらせてもらいます神戸真です。本日はよろしくお願いします。」

 

俺は自分が先輩であることやボーダーにかなり昔からいた事、自分の実力なんかを棚に上げるつもりは無い。礼儀というのはいつの時代も大切なものなのだ。

 

「あ、……お、俺は香取隊の若村麓郎って言います。よろしくお願いします。」

 

どうやらメガネの彼が若村麗郎君らしい。緊張し易いタイプなのだろうか、どうにも声が震えている気がする。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫大丈夫、これでも俺防衛任務は長いしさ。」

 

B級の上位部隊と聞いていたから慣れているものだと思ったがそんな事は無いのかもしれない。

 

「僕は三浦雄太です。よろしくお願いします。」

 

三浦君は礼儀正しい子のようで深深とお辞儀をする…そんなに深深とお辞儀をされるような人間になったことは無いはずだ。多分。

 

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。」

 

「神戸先輩の方が先輩なので僕達香取隊のメンバーの事はタメ口で呼んでください。」

 

若村君も恐れ多いと言わんばかりに首を縦に振る。

 

「わかった。それじゃそうさせてもらおうかな……あとは隊長の香取さん待ちかな?」

 

時間は残り6分、女子は準備に時間がかかるものなのだろう。集合時間もまだまだあるし気長に待っていよう。

 

『香取隊のオペレーターの染井華です。本日はよろしくお願いします。』

 

「おお、これはこれはご丁寧に、どうもよろしくです。」

 

いきなりの挨拶にちょっとびっくりしてしまったがまぁ無理も無いだろう。

 

『神戸先輩ってここ2年ぐらいよく深夜に防衛任務を入れられていた方ですよね?』

 

「そうだよー、よく知ってるね。」

 

『はい、オペレーターの間では神戸先輩はかなり有名だと思いますよ。』

 

それはどう言う有名だ。深夜帯に入れまくってるキチガイニートとでも思われているのだろうか。そんな不安を察したのか染井さんが言葉を続ける。

 

『言葉足らずですいません。実力があって頼りになるという意味です。』

 

「俺なんか大した事無いと思うけどなぁ。」

 

実際昔も個人戦では迅さんが風迅を持つまでは良くボコされてたしな。どうにも迅さんとは相性が悪い。

 

「それにしても葉子の奴まだなのか…?防衛任務の開始まで残り3分しか無いぞ。」

 

若村君は香取さんと仲が悪いのだろうか…どうにも険悪なムードが漂っている気がする。

 

「まぁまだ3分もあるんだ、のんびり落ち着いて行こうぜ?香取さんが強いってのは聞いてるけど若村君も三浦君も腕がたつんだろ?」

 

仮にもB級上位部隊のメンバーな筈だ。それ相応の実力はあるのだろう。詳しくログなんかを見ていた訳では無いし、最近のボーダーのレベルは分からないが、あの二宮さんの部隊ですら1位とは言えB級。しかも諏訪さん達の隊がB級中位にいる所を見ると、少なくともお荷物を二人抱えて上がれるほどB級上位は甘くない事ぐらいは俺でもわかる。

 

「いや……俺たちは……。」

 

だが二人は何やら苦虫をかみ潰したような顔をしている……こいつら自信無さすぎじゃないか?いくら何でも。

 

「うーん……ログ見た感じじゃあそんな事ないと思うんだけどなぁ、少なくとも磨けば光りそうだなとは思ったぞ?」

 

実際三浦君のフォロー力は目を見張るものがあったし、若村君もそこまで腕が悪い訳では無い。2人とも自分の今の問題点に気付けているか、気づけていたらどう直すかという所が大きく彼らが成長する要因の一端になるのだろう。

 

「あありがとうございます。…あっ、遅いぞ!何してんだ葉子!」

 

若村君は頭を抑えながら後ろを見る。防衛任務までは残り1分程度、まぁ間に合ったし問題無いだろうと俺は思っているのだがどうにも若村君からは苛立っているようなオーラが見える。

 

「別に間に合っだだからい…いで…しょ……え?」

 

香取さんはこちらを驚いたように見ている。何処かでやっぱり会ったことが有るのかもしれない。俺は大学生なので年齢差はある程度あるはずなんだけどなぁ……。

 

「神戸先輩を待たせるなんて……どうした葉子?」

 

若村君も香取さんの様子がおかしい事に気付いたらしく怪訝な表情をしている。

 

「その……神戸先輩、私の事覚えてますか?」

 

何処かで見た事ある顔だけど思い出せません。と言うのは何やら不味いと脳が危険信号を送ってくる。脳から出された最適解は……『覚えているフリ』だった。

 

さて、突然ながらここで俺のサイドエフェクトに着いて少し話そう。俺のサイドエフェクトの名前は『超思考推察加速』と言うものだ。やけに長ったらしい名前だがこれを一言で纏めると「頭の回転が速い」の一言で終わってしまう。勿論これはそんなチャチなものでは無いのだが……まぁ詳しい説明はまた暇な時にでもするとしよう。

 

とにかく、そんなサイドエフェクトがあるお陰で脳から弾き出された結論に従うのがだいたい後々の為だったりする。尤もそれを良くするせいで迅さんとの個人戦はだいたいぼろ負けなのだが。

 

だからここは覚えているフリをする事にした。

 

「もしかして……あの時の子?」

 

少なくとも俺を知ったのが昨日今日という事も無く、かつ一方的に知られているなんてことは無いだろう。多分。

 

「はいそうです!あの時先輩に助けて貰った事…覚えてくれてて本当に嬉しいです。改めまして、香取葉子って言います。その……ボーダーに入った時にB級に上がったらまっさきに神戸先輩にご報告に行こうと思ってたのですが……その、お恥ずかしい話ですが会えなくて、だからその、本日は防衛任務ご一緒出来て本当に嬉しいです。」

 

「「『え……?』」」

 

俺と香取さん以外の3人の声が重なった。まるでこの世ならざるものを見ているような声だった。

 

「神戸先輩、私は麗郎とこっちに来るトリトン兵を殲滅します。雄太と二人でそちらはお願いしても宜しいでしょうか?」

 

「ん?任せろ!よろしくな三浦君!」

 

笑顔で可愛い…笑顔で可愛いのだが何やら背後に怖いオーラが見えた気がする。気の所為だろうか。

 

「待て葉子…お前なんか変……おいこら引っ張るな、待て、おい!」

 

何かを言い残しながら去っていく若村君と香取さんを遠目に見ながら、俺は久しぶりの狙撃銃トリガーを取り出す。と言っても元々使えていた訳ではなく2年前に居なくなってしまった仲間の趣味を繁栄したものに過ぎないのだが……やはりまだ過去に囚われて、割り切れて居ないところはあるのだろうが、ひとまずそちらに対しての思考は今するべきでは無いだろう。

 

何はともあれ今から俺が取り出す狙撃銃の性能を分かりやすく言うならばイーグレット+アイビス÷2が正しいのだろう。名前はテンペスト、鬼怒田さんとの話し合いで近々他の3本の狙撃銃トリガーのように一般配布されるらしいが、今の所はまだ俺専用のトリガーである。

 

シールドをギリギリ削れるぐらいの火力、イーグレット程ではないにしてもかなり広めの射程、そこそこの弾速を持ち合わせた素晴らしい狙撃銃だ。重さはイーグレット程度、連射性能がゴミカスなのだけが玉に傷だが、まぁ何かしらスペックを捨てる必要性はどうしても出てきてしまう。仕方ない。

 

『門が開きました……トリオン兵来ます!』

 

俺がいるからなのだろうか敬語のアナウンスが来た。門がから出てきたのは…?バンダーが2体にモールモッドが一体、バムスターが3体か…いつもより多いな。取り敢えずさっさとバンダーを始末するべきだな。

 

「三浦君、先に俺はバンダーだけ始末するから、それまでこっちに来る残りのトリオン兵の足止めをしといてくれ。」

 

「分かりました。……それにしても神戸先輩って狙撃手だったんですね…知らなかったです。」

 

確かに狙撃銃を持ってはいるが決め付けるのは安易では無かろうか。アレから2年、きっと木崎さんみたいな人もたくさんボーダーにいるだろうに……。

 

「別に狙撃手も出来るってだけなんだけどな。はい1匹駆除完了っと。」

 

俺はさっさと1匹目のバンダーを始末する。勿論本職の狙撃手と比べると腕は劣るが、それでもサイドエフェクトのお陰で逆算すればある程度は狙撃手としての仕事も出来る。

 

2匹目は…おっと、もう攻撃モードに入ってるのか……短気な奴だな。トリオン兵って感情が無い人形見たいな奴のはずなのにどうしてかそう感じてしまう。俺はスコープを覗き、砲撃の構えをしている目を撃ち抜く。うーん…やっぱり東さんみたいにはいかないか。

 

 

「三浦君そっちはどう?」

 

俺は狙撃銃からトリガーをバイパーとアステロイドに変えながら三浦君の方へと向かう。

 

「な、何とか耐えれてます。」

 

三浦君はモールモッドと応戦していた。バンダーは2匹は既に倒しており、あと1匹、それも手傷を追った状態か。対して三浦君はかすり傷程度で済んでいる。とは言えそれも時間の問題か。

 

 

「なるほどだいたいわかった。アステロイド!!」

 

おそらくはモールモッドを倒そうとするとバムスターが邪魔なのだろう。要は戦術的ポジショニングってやつをトリオン兵が取っているのだ。トリオン兵にそんな頭があるかは謎だが、まぁ何はともあれ今のアステロイドでバムスターはあの世行きだ。これで問題は無いだろう。

 

「ありがとうございます……ぐっ…強いっ…!!」

 

三浦君はどうしてモールモッドの固い刃を態々孤月で受けているのか、俺には理解ができなかった。新手の縛りプレイだろうか?

 

「さっさと旋空弧月で潰しちまえよ。そんな奴。」

 

「ぐっ……そんな事言われても…この距離じゃあ…。」

 

恐らく三浦君とモールモッドの距離は4m程度、旋空弧月を打つには充分足りてると思うのだが……。あ、トリオン兵の増援が来た。これは不味いな。

 

「……助けた方がいい?」

 

「……お願いします。」

 

そんなに申し訳なさそうな顔をしないで欲しい。なんとなく彼の弱点は分かった。あんまり発想力が高くないのだろう。よく言えば基本に忠実だが、悪く言えば応用が聞いていない。腕自体はそんなに悪くないのだがどうにも受けに腕が寄っている用にも見える。隊での役割は援護役なんだろうなきっと。だからなのかタイマンはそこまで得意では無いのかもしれない。まぁどんな理由があれ弱点は弱点だな。

 

「バイパー!!…ついでにもういっちょバイパー!!」

 

俺の放ったバイパーは先程まで三浦君とバトルしていたモールモッドの腹部を貫いた。次のトリオン兵は……バドというあんまり見ない飛行型トリオン兵2匹とバムスター5匹か……なんか今日は数が多くないか?いつもよりも数が多すぎる……まるで何処かにワープゲートの座標でもあると言わんばかりに。

 

「うーーん……なんかある気がする…。取り敢えずバイパー!!」

 

だが取り敢えずは目の前のトリオン兵だ俺はバイパーで手前のバムスター2匹を落とす。トリオン兵との戦闘は大半が力押しで何とかなる。流石にこんな雑魚が最高戦力な訳もないと思うが、態々ほぼ毎日少しずつトリオン兵を繰り出す近代民の理由も分からない。どこかしらの一定時期に纏めて出した方が効率がいいと思うのだが……。

 

そもそも近代民はそれだけの知能すらないのかもしれない。気を取り直そう。

 

「アステロイド+アステロイド=ギムレット!!」

 

ギムレットで射程を伸ばせばあら不思議!飛行型トリオン兵のはずのバドも一瞬で消し炭です。

 

 

「グラスホッパー!!からのスコーピオン!C1!」

 

そしてグラスホッパーで寄ってスコーピオンでバムスターを切り刻んで、トリオン兵のサラダ、いっちょうあがり!……笑いのセンスとしては5点ぐらいだな。それも100点満点で。

 

「先輩強すぎませんか……?」

 

三浦君が驚いた顔で行ってくるがこれぐらい普通じゃないか?2年前に居たヤツらはほぼ皆こんぐらいやってのけられただろうし……。

 

「そんな事ない……ん?何だこの虫みたいなトリオン兵、えいっ!」

 

俺らが軽く談笑しているとバムスターの腹の中に居る虫みたいなトリオン兵を見つけた。見た事ない新種だろうか?なんだか戦闘能力があんまりありそうには見えないんだけども……こいつ本当に強いんだろうか。

 

「三浦君、こいつ見た事ある?」

 

「いや、見た事無いです。これってもしかして新種ですか?」

 

どうやら見た事ないらしい。この分だと他のメンバーに見せても多分見たことは無いな。

 

「よし、それなら三浦君はこいつの死骸を鬼怒田さんの所に持って行ってくれ。多分新種のトリオン兵かなんかだろうからさ。それにこっちは片付いたっぽいしな。」

 

「わ、分かりました。行ってきます。」

 

さてと……さっきみたいに沢山潜んでいるかも分からんな。バムスターの腹は全部潰しとくか。

 

「アステロイド+アステロイド=ギムレット」

 

俺はギムレットを合成してバムスターの死骸の腹を削りまくる。これだけ見てると死体蹴りしているやべえー奴である。どこかの『近代民は全て敵だ!』が口癖の元東隊のナイフみたいな三輪を思い出すがあれ一緒にしないで欲しい。

 

……待てよ、となると色々不味くないか?

 

ちょっと変なテンションになったせいで色々と頭がアホになりかけていたが新型のトリオン兵が出たって順当に考えたら不味くないか?俺は良い、問題はあっちに回った香取隊の残り二人だ。

 

「不味い気がしてきた。グラスホッパー!!それと染井さん!強化視覚を頼む!」

 

『了解です。』

 

俺は視覚を上げつつグラスホッパーを使い急ぎ香取さんと若村君の方へと向かう。俺のグラスホッパーは少々特殊で踏み込む時間で飛べる飛距離が決定する。あとは完全にマイナーチェンジだが四角形ではなく正十六角形になっている。まぁそんな事は今はどうでもいい…急げ……急げ…。脳が急げと信号を鳴らしてくる。俺はそれに従うままに急いで残りの2人の方へと向かった。

 

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「クソ!なんなのよコイツ!全然攻撃が入らないじゃない!!」

 

遠目ではあるが香取さんと若村君がまたもや見た事の無いトリオン兵に十字砲火をしている。人型を少し大きくした機械的な見た目をしている。なぜ耳がウサギなのかはちょっとよく分かんないがとにかくオーラがヤバそうだった。

 

「クソっ……麗郎!私が詰めてアイツの気を引くからアンタはその隙を狙って!」

 

「……わかった!」

 

香取さんはどうやら相手のトリオン兵の近くに詰め込み隙を作るようだ。集団戦の強みを活かした理にかなった戦法……の筈なんだが脳は危険だと言っている。香取さんはそのままグラスホッパーで近寄りながらスコーピオンをぶっ刺そうとする。だがトリオン兵は腕でガードした。

 

こいつは今までのトリオン兵とは違う。知性がある上に腕も相当硬い。スコーピオンが腕を貫通出来ていないのか……。

 

「この……クソっ…離しなさいよ!」

 

そのままトリオン兵は香取さんの両腕を掴み自分に近寄せている……なんだか腹が開いた。凄く悪い予感がする。ここから残りはだいたい50mぐらい。腕は異常に硬い上に一刻を争うこの瞬間にあのトリオン兵を倒せるとは思えない。そこら辺のバムスターとはあれは実力が違いすぎる。麗郎君に支持して……いや、麗郎君は何やら固まってるしダメそうだな。

 

 

 

「不味い……間に合うかバイパー!!」

 

俺は『香取さんの頭』目掛けてバイパーをぶっぱなした。幸いにもボーダーには緊急脱出がある。トリオン体の頭を吹き飛ばした程度では何の問題も無いだろう。

 

「食われる……嫌だ…手を離しなさいよ!このッ……!!…えっ!?」

 

『トリオン供給機関破損、緊急脱出。』

 

どうやら間一髪間に合ったらしい。香取さんはそのままボーダー基地へと無事飛んでいった。

 

「若村君も早く逃げて本部から応援を呼んできてくれ……こいつはマズイ。」

 

俺のセンサーがビンビン伝わってくる。コイツは本当にマズイ。国治を舐めている訳では無いが多分国治よりも強い。勿論国治が弱いのではなくこいつが強い。

 

「……わ、分かりました。」

 

若村君はそのまま走ってボーダーへと向かっていった。……さて、時間稼ぎのコーナーだな。

 

「スコーピオン!C5!」

 

取り敢えず不可視の刃…スコーピオンC5で敵トリオン兵の腹を狙う。さっき一瞬見えた感じでは腹は弱そうだった。装甲が硬いのは恐らく腕だろう。ならば弱い所を削り倒すだけだ。

 

「……は?どうなってんだ?」

 

だが敵トリオン兵は俺の攻撃の瞬間に距離を取って一歩引いてきた。コイツ…もしかして目以外で反応しているのか?…もしかして耳か?

 

そう言えばボーダーのA級3位部隊にも耳が良い奴がいるとか聞いたな。聴覚は最近の流行なのか?

 

そんな事を考えているといきなり敵トリオン兵の右腕が何処から来たのか分からない斬撃で吹き飛んだ……これは風刃……てことは迅さんか。

 

ブォン。

 

目の前のトリオン兵の後ろから門が開く。これ以上こいつが増えるのはまずい。一体なら別に勝てなくは無いが1人で10体も相手にすれば間違えなく負ける。

 

……腹を括るしか無さそうだ。

 

だが予想していた自体にはならなかった。そのまま門の中に例のトリオン兵は入り、どこかへと消えていった。目の前にあるのは雲ひとつない青空。

 

「一体何がどうなってるんだあいつは……。一体何者だ?」

 

見た事の無い虫型トリオン兵、そして謎の激強人兎型トリオン兵、それも何故か一体だけで腕を切られたら門に戻って帰って行った。

 

敵の目的はなんだ?テストプレイがしたかったのか?だとしてもこちらにわざわざ情報を与えるメリットが1ミリも無いような気がする。何を考えているんだ一体……。

 

「うーん……逃げられたか。」

 

そんな事を考えていると迅さんが来た。迅さんは未来を視るサイドエフェクトを持っていて、俺の普段の戦い方ととてつもなく相性が悪い。S級になってからはバトルする事も無くなったが、ポケモンで所謂電気タイプと地面タイプみたいなもんだった。

 

「迅さん……あのやばいトリオン兵と虫型のトリオン兵はなんなんだ?」

 

内心この迅さん、それと玉狛には色々複雑な感情を抱いている俺だが、表にそれを出す事は無い。と言っても迅さんならばそれぐらいわかっている気もするのだが。まぁ今この話をするべきでは無いだろう。

 

「うーん……虫型の方は何個か未来が見えるけどどの未来でも虫型の方は解決しそうだから心配しなくても大丈夫だ。問題はあの人兎型のトリオン兵だな。未来がどうにも多い上に朧気で正直現状じゃあなんとも言えない。神戸のサイドエフェクトの方での予想を教えてくれ。」

 

俺のサイドエフェクトは相手の思考を読むのにも適している。何も考えていないやつや天性のセンスで本能的にやっている奴には対戦中無意味と化す弱点があるが理詰めのタイプにはかなり有利が取れる。尤も未来を視て対策してくる迅さんは対象の外なのだが。俺は周りを見渡してある事に気付いたのでそれも含めて話すとしようか。

 

「俺の予想で最もなのはテストプレイって線だな。最初はこっちに情報を与えるし馬鹿な事をしていると思ったがよく見てみればここはカメラの無い視覚。その上俺たちじゃなくて捕まえられそうな香取さんと若村君の方を狙った。あっちは迅さんと俺のサイドエフェクトを知らない事を加味すると…テストプレイとして香取隊の二人だけを攫ってそのまま撤退する線が濃厚だったんじゃないか?」

 

まさか敵も恐ろしい思考回転で最適解を出し続ける脳の持ち主と未来視をする目の持ち主がいるとか予想が着くわけもないだろう。そういう意味ではちょっと同情すら覚えるレベルだ。

 

「なるほどね……。神戸、今回の件は俺に任せてくれ。俺のサイドエフェクトがそう言っている。あとの防衛任務は俺がやっておくよ。」

 

「……わかった。」

 

正直何処まで信用出来るか怪しいものだ。あの時も裏切られたのだから。

 

とはいえ、ここで表立って逆らった所でいい事は無い。俺は言われた通りに防衛任務を任せて基地に戻ることにした。

 

 

果たして彼には何がみえているのだろうか。未来視をする男への推察など出来るはずもない。

 

 

 

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「神戸先輩、すいません……俺……。」

 

基地に戻るや否や香取隊の3人が総出で俺の元へ来た、ただし反応は三者三様だが。一人目の今話している若村君は何やら悔しそうな顔をしている。とは言ってもピンチの時に動ける人間もそう多くは無いと思うんだがなぁ……。

 

「気にしなくていいのよ。またこれから強くなれば良いじゃないか。」

 

「先輩……それはそうなんですが、その……俺に、俺に稽古を付けて貰えませんか?」

 

余っ程悔しかったのだろう事は顔を見れば伝わってくるし、握り拳が震えている事からも明らかだ、とは言っても稽古ってどうやってつければいいのかが全く分からん。三浦君は驚いた顔をしている。

 

「先輩先輩!!私も付けて欲しいです!」

 

今回大ピンチだった隊長の香取さんは何やらヒーローを見るように目をキラキラさせながら言ってくる。その様子を残りの2人が信じられないような目で見ている。お前普段こんな事言わねぇだろと言わんばかりの目である。香取さんの性格が分からないからあれだが普段は二宮さんタイプなのかもしれないな。

 

ちなみに3人目の三浦君はさっきから顔の表情筋が忙しそうだ。ツッコミ枠も楽じゃない。

 

「稽古ってのがイマイチわからんけどまぁ良いよ。……つっても教え方も2人の戦い方もわかんないから取り敢えず個人戦一回してみよっか。」

「「はい!」」

 

表情こそ真逆だが返事がシンクロする2人と、顔の表情筋がブラック企業並に働いている三浦君を連れてそのまま俺たちは個人戦のロビーへと向かった。

 




神戸の心の声

→香取…ヤベェ誰だっけ
→三浦…香取隊の精神安定剤
→若村…度胸あるメガネ
→華…将来ボーダーで幹部してそう。
→迅…一言では言い表せない複雑な感情

←香取…やっと見つけた運命の王子様♡
←三浦…香取を制御できる偉人
←若村…何しても笑って許してくれそう
←華…優秀な先輩。葉子の言ってた人ってまさか…
←迅…?????
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