「うーん……そろそろ動くかな。」
俺が部屋に籠って何分がたったのだろうか。あれからさらに4人が緊急脱出したのを確認して動く事を心の奥底で決める。
俺が今いるのは民家の近くにあった少し高めのビルだ。この隣にはここよりも少し高いビルがあり、絶好の狙撃スポットである。そしてさっき、下にいる誰かしらと狙撃合戦を行いだした、という訳だ。下にいる相手も狙撃手らしく超遠距離での打ち合いが行われている。下から上に行くのもダルいのでまずは上からかな。
「グラスホッパー!!」
俺はグラスホッパーを使い、下側にいる狙撃手から死角の位置になる所から上へと向かう。狙撃手はおそらくアチラの撃ち合いに熱中している事だろう。
俺がグラスホッパーで加速する事数秒、やっぱり撃ち合いに熱中している狙撃手がいた。それにしても女子小学生か……?どうにも年代が若いような気がする。
さて、JSに不意打ちは心苦しいがそんな事言ってる訳にも行かないな。俺が構えた瞬間に狙撃手の子はこちらに気付いたが、というか気付くの遅くねぇか?
「アステロイド!!」
「……いつの間に…!!シールド!!」
咄嗟に全体にシールドを広げたようだが残念ながら威力特化アステロイドという事もあり、トリオン量に差があった為シールドを突き破ってそのまま狙撃手の子は爆散していく。
『戦闘体活動限界、日浦ダウン。』
さて、緊急脱出の後で下にいる狙撃手も上に俺がいる事ぐらいは気付いただろう。このまま上からおりるのは危険かな。
「バイパー!スコーピオンC4!からのテンペスト起動!」
こちらからは相手が何をしているかは見えないが流石に狙撃手だしグラスホッパーなんか持ってる訳無いと踏んでいいだろう。俺はビルの左側を経由させて、左上からバイパー、透明にしたスコーピオンをぶん投げて真上からスコーピオン、そしてテンペストを起動した状態で右側から俺の狙撃の3段階攻撃で仕留める事にした。念の為リュックの中に『アレ』を用意しておくか。……おっと、また誰かしらが落ちたな。
「さて行きますかね……グラスホッパー!!」
俺はそのまま右側からテンペストを構える。相手はやっぱり狙撃手か……。
「挟み撃ちかいな……グラスホッパー!!」
「は?……狙撃手だよね?君。」
思わず声に出してしまった。バイパーは上に飛んだ事でグラスホッパーによって避けられてしまった上に、透明化させたスコーピオンは運悪くグラスホッパーで飛ばれたせいで外れてしまったらしい。後残ってるのは俺だけか。俺は自分のトリガーをテンペストからアステロイドに持ち替える。
「これで終わりや!」
相手狙撃手は手に持っていたイーグレットを俺のいる方向へと飛ばしてくる。今の俺はシールドを貼る事は不可能、相手の弾もこのまま行けば間違えなく当たるだろう。そして今俺はグラスホッパーの推進力が体にそのまま乗っているのでグラスホッパーを踏んで避けるのは不可能だ。『踏んで』ならの話だが。
「グラスホッパー!!」
と、言うわけで俺は俺と相手狙撃手の一撃の間にグラスホッパーを用意する。グラスホッパーは弾に当たると消滅するが、逆に言えばグラスホッパーに当たるとあっち側の弾も消滅する。普通の隊員は形も変えられないし、防御も1度きりなうえ面積も狭いのでまずやらないだろう。そのうえで技術が必要だ。だが俺はサイドエフェクトがある。それぐらいは朝飯前だ。
見事俺のグラスホッパーと弾が相殺される。
「グラスホッパー!!」
「な……!?嘘やろ!?」
相手狙撃手もこれには驚いたらしい。チャンスだ。
「アステロイド!!」
俺は弾速重視のアステロイドを驚いている狙撃手に向ける。そのまま狙撃手は体が四散していった。
『トリオン供給機関破損、隠岐ダウン。』
さてと……これで一段落だな。次の相手を探すべきだ。俺はバックワームとレーダーを起動し……ている不意をつかれた。
そう、真上から不肖の弟子、麗郎が銃トリガーを構えて落ちてきたのだ。大方カメレオン辺りで忍んでいて、俺のレーダーを見る一瞬の隙を狙ったか。成長したなアイツも。まぁ全然甘いんだけどね。ギリギリまでカメレオンで粘るとかバックワームでレーダーの瞬間を誤魔化すとかさっきのタイミングで打ちに来るとかもっといい手が沢山あっただろうし。
「甘いぞ!!」
しかしこのタイミングで甘かったのは俺の方だった。上に意識を向けて、弾を放とうとした瞬間、俺は左の肘から先を目の前からでてきた透明なスコーピオンによって切り落とされる。俺は咄嗟に放とうとした弾を目の前のカメレオンを起動していた相手に向ける。俺の弾は手が切られた事で起動が多少狂い、相手の左足1本しかとる事ができなかった。が、目の前はそれで十分だろう。数秒の牽制には使えるはずだ。問題は上だろう。
「鉛弾!!」
やはり鉛弾で来るか……。俺は自分が纏っていたバックワームを上に投げる。そして、そのままそのバックワームを上へとグラスホッパーで押し上げる。
麗郎の放った鉛弾は実体のあるバックワームを貫通する事が出来ず、そのまま大量の重しを背負ったバックワームは推進力を保ち麗郎を上まで飛ばす事に成功する。
「なんだと……前が見えねぇ…!?」
「バイパー!」
俺はそのままバックワームに視界を遮られた麗郎を追撃弾でぶっ飛ばす。そのまま麗郎と、このタイミングでもう1人誰かしらが空へと飛んでいくのを確認する。
『戦闘体活動限界、若村ダウン。』
だが当然グラスホッパーとバイパーを飛ばした為俺にガードを貼る余裕は無い。つまりこのままでは目の前の敵に寝首を書かれる事を意味する。
「貰った!」
「グラスホッパー!!」
俺は目の前の敵にグラスホッパーを踏ませ、その位置のタイミングを先程自分が麗郎に放ったバイパーの軌道に通るタイミングで上手い事来るように放つ。そして想定通り目の前のカメレオン使いはシールドを貼ったが火力差で緊急脱出した。
『戦闘体活動限界、歌川ダウン。』
相手からすれば初見殺しもいいとこ、何があったかすらよくわかってないだろう。試作段階だがグラスホッパーを透明化させられるようにしたのは正解だったな。
そのまま何処かで誰かがもう1人倒したのと合わせて2つの光が空に昇っていくのを見ながら、俺はスコーピオンで切られた左腕の切り口に蓋をする。応急処置って奴だ。おっと、また誰か飛んで行ったか……。終盤に入るのも近そうだ。
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「さて、それでは神戸先輩が再び動き出した所から解説をしていきたいと思いますが、まずはその前に三浦先輩が歌川先輩と交戦した所と、諏訪隊の二人と緑川先輩とのやり合い、そして古寺先輩の隠れていた位置を見つけた米屋先輩の奇襲について解説したいと思います!」
「まずは緑川と諏訪隊の二人の戦いだが……一見2対1と不利な状況だったが緑川は自分のスコーピオンを投擲出来るような巨大な手裏剣のような形にしてグラスホッパーで加速して飛ばす事で攻撃の手数を増やしたな。」
風間は内心で神戸の影響だろうと悪態をつく。グラスホッパーの使い方が変にいやらしいのは神戸と迅ぐらいなものだ。
「その奇襲も防いでいる辺りはさすが諏訪隊という感じですね。ですがやはり得意なダブルショットガンの形に持ち込む前に緑川に詰め寄られたのが敗因でしょう。高低差が邪魔で諏訪は思うようにショットガンを当てられなかったですからね…おそらくは緑川の計算通りでしょう。」
「あいつの場合本能でやってそうだけどな……とはいえ無理に狩りに行ったせいで左足1本失っちまったけどな……逆に言えば左足1本で住んでる当たりが恐ろしいが。」
出水は内心で『木虎なら足スコーピオンだな』と思いながら言葉には出さない様にする。緑川がそんな事をするとは到底思えない。緑川はThe・本能タイプだろう。
「古寺はなぁ……なんであれ分かったんだ?あの槍バカに予測なんてできる訳ないだろ?」
酷い言い草だが事実である。
「同じ部隊同士なので味方の癖とかはよくわかってるのかもしれませんね……戦術的に見ても分かりませんからね……。」
東さんを持ってして戦術的に見ても分からないのではどうしようもないだろう。大半の隊員は理解する事を諦めた。
「三浦、若村は共に行動していたようだが……歌川のカメレオンの奇襲で三浦は一撃でやられたな……だが面白いのはその後、近くに神戸がいる事を確認した若村が神戸を共通の敵にして擬似的に2対1を作った所だな。」
「若村の成長を感じますね。結果的に左腕1本しか取れてませんが、勝てない相手同士を上手いことかち合わせたあたりなかなかにえげつないですね。」
「そうですね……それで言うと神戸先輩はあの一撃を咄嗟に対応してみせましたがあの一瞬で何があったのでしょうか?」
大半の隊員には訳が分からなかった事だろう。
「まずは神戸に対して若村は上から、そして若村に意識を割いたところを透明化した歌川が切るという作戦だったはずだ。実際神戸は反応が遅れて左腕を失っている。だがアステロイドを見て退いたのが悪手だったな。神戸を甘く見たな。」
「その後若村はシールドを貼られる事を予期して鉛弾を使っていましたが……それを予測したように神戸はバックワームを投げて無理やり受け切りました。若村が鉛弾を使うのは今回初めて見るので、もしかしたら若村に鉛弾を教えたのは神戸なのかもしれませんね。」
鉛弾、という言葉を聞いてこの場には居ないが…とあるA級部隊の隊長が内心で食いつく事を彼らは知らない。
「相変わらず神戸の発想力は頭おかしいだろ…その後のグラスホッパーで硬化させたバックワームを飛ばして若村の射程を削ったのも上手いな……。」
「射程だけではなく視野も削りましたね。結果として横からのバイパーを上手い事決めています。そして歌川の方ですが……こちらは透明化させたグラスホッパーですね。」
「神戸はグラスホッパーも透明化させられるようにしたのか……元々神戸の強みは大きく分けて二つ。『発想力』と『対応力』だ。力押しも出来なくは無いがアイツは好まないだろう。」
「『発想力』と『対応力』ですか…?」
意外な選出に会場も驚きの声に包まれる。
「ああ、奴は奇襲性が高いが、それもこれも全て発想力が高い故にできる事だ。加えてその場その場での最適な判断力にも優れている。結果対応力として奇襲に強くなっていると言える。」
「けどまぁカゲとか迅さんとか、あとは菊地原みたいな奴には奇襲が聞かないから相性は悪いだろうけどな…。」
「最近は神戸が居なかったからあれだが…神戸と対面する際は一瞬の隙が命取りになる。どんな時でも冷静に対処するように心掛けるといい。」
「なるほど……いよいよ終盤になって来ましたB.B.R!最後に勝つのは一体誰なのか!必見です!」
今話の撃破状況
歌川→三浦
緑川→堤、諏訪
香取→巴
オリ主→日浦、隠岐、歌川、若村
王子→外岡
水上→樫尾
米屋→蔵内、古寺
全体の撃破状況
王子→笹森、南沢、藤沢、船橋、来馬、外岡
神戸→唯我、半崎、茂手木、茶野、秦、乙川、黒江、絵馬(トリオン漏出)、日浦、隠岐、若村、歌川
古寺→間宮、穂刈
歌川→鯉沼、早川、宇都宮、三浦
緑川→吉里、斎藤、丸井、土崎、常磐、堤、諏訪
黒江→月見、漆間
米屋→別役、北添(吉) 、松代、古寺、蔵内
香取→海老名、巴
若村→計良
水上→樫尾
残りのメンバー
オリ主、米屋、緑川、辻、犬飼、北添、水上、王子、小荒井、奥寺、帯島、香取、熊谷、那須、荒船、柿崎、照屋