始まりはスカジが姿を消した事だった。
それを私が知ったのは、少し時間が経ってからだった。
スカジは諸事情で人を避けていた。その時の癖が抜けないのか、ロドスでもあまり深い交流をするようなタイプではなかったため、私の耳に入るのが遅くなったのだ。
しかし、彼女は誰にも何も言わず姿を消すような不義理な人間ではない。
何か事情を聞いていないかグレイディーアに相談すると、彼女にしては珍しく目に見えて焦った表情を浮かべた後、私に急ぎの用があるとスペクターを連れて大急ぎで去っていった。後で聞いたところによると彼女達は『海』へ向かったらしかった。
ロドスの皆は彼女たちがスカジを連れ帰ってくるのだろうと深く気にしていなかった。鉱石病にならず、アーツが使えない代わりに人外の運動能力。それらからくる高い任務遂行率。彼女たちへの信頼故に深く突っ込まなかった。この時、もっと話を聞くべきだったのかも知れない。グレイディーアは話す事を渋っただろうが…
結局、彼女達は帰ってこなかった。彼女達の代わりに『海』が来た。
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ピキリと走った頭痛に顔を歪め、報告書に走らせていたペン置く。
見れば時刻は深夜をとうの昔に過ぎて午前4時前を針は刺していた。
事態は相当に深刻だった。あるいは手遅れと言うべきか。
既にいくつかの国は『海』に飲まれてしまったようで連絡は取れない。これまでの情報から恐らくは捕食されたか‘成り果てた’かだろう。
被害を受けたのはロドスも例外ではない。『海』が進行を始めたと一報が入った時、我々は即座にイベリアへ向かった。可能であれば事態の収束。それが不可能ならば情報収集と人命救助。
しかし、イベリアへ向かった我々を待っていたのは夥しい恐魚とシーボーンの波だった。
イベリアの偉大なる火は海に揉まれて掻き消されてしまっていた。
即座に逃走を選択した事が功を奏したのか、なんとかロドスは存続している。ただし、大きな犠牲を払った上でだ。多くのオペレーターが『海』との戦いで命を落とし、さらにロドスアイランド本艦の1/3を切り捨てる事で‘見逃してもらった’のだ。
我々は間に合わなかったのだろう。
僅かな朝日に照らされてキラキラと光る『海』を見ながら、私の意識は暗闇へと落ちていく。まだ、距離はある。現在の移動速度であれば追いつかれることは無い。少しは意識を手放してもいいだろう。ここ最近は理性回復剤を使い過ぎた。使い過ぎは良くないと私をよく叱ってくれたのは誰だっただろう……。夢の中ならまた会えるだろうか。アーミヤ達に。
【海】
イベリアという国が海に面しており、それ以外の国の海と呼ばれているものはそれを模した人工物。
海中にはエーギルと呼ばれる国がかつては存在しており、陸上とは比べ物にはならない繁栄をしていたのだが、怪物という脅威に脅かされ結局は陸のイベリアへ追いやられている。
またかつてのイベリアは海との交流で絶大な力を有していた。
しかし、いずれも過去の話である。
アークナイツwikiより一部抜粋