「ドクター起きてる?」
ノックの音で意識が覚醒する。目頭を押さえながら開いていると伝えると、ブレイズが姿を表した。
「おはようドクター。その様子だと、久しぶりに眠れたみたいだね?」
言われて卓上の時計を見れば、時刻は9時になっていた。5時間ほど眠っていたようだ。
「はい、トランスポーターからの報告書。どこもかしこも酷い有様みたい…あっ」
ブレイズの手から書類が滑り落ちる。慌てて拾おうとするのを制し、私が拾い集める。
「あはは…早く義手にも慣れないとね…」
申し訳なさそうにするブレイズの右手と左脚は、よくよく見れば精巧に作られた義肢である事に気付けるだろう。彼女はイベリアからの撤退作戦時に殿を引き受け、その時に失った。撤退後に救助された彼女は右手左脚の欠損以外にも出血多量による失血、アーツの過度の使用による体温障害などいつ死んでもおかしくない状態であった。
それでも彼女は生き延びた。
1ヶ月の昏睡から目覚めた彼女は自身の状態を確認し、自分がエリートオペレーターとして戦う以前に普通の生活を送るのが困難である現実をすぐさま受け入れた。
それから彼女はしばらくのリハビリを経て、今では私の秘書の1人として働いてくれている。
拾い集めた書類に目を通せば、わかっていたとはいえ良くないことばかり書かれており思わず頭を抱えそうになる。
「漫画とか小説ならこういうシチュエーションになれば人類が団結するんだけど、そう上手くはいかないよね、やっぱり」
肩をすくめて、ぼやくように呟くブレイズの気持ちもよく分かる。
報告書には『海』に対抗するため、感染者を盾にしている旨が書かれている。
感染者を非感染者が差別し迫害する事は悲しいが、テラではありふれた光景だ。『海』という国が団結しなければ対抗できないような相手を前にしても、未だその壁を壊すには至らない根深い問題だ。
元々ロドスはこの源石に関わる全ての問題を解決するための組織であったが、現在ではそれどころではなく、『海』に対抗するため国と国を渡りをつけるような役割が多い。
その業務も、ケルシー、アーミヤを失い私が全て請け負っている現状はスムーズにいっているとは言い難い。
とはいえ、襲撃開始から2ヶ月が経ち、アーミヤ達が行っていた業務の引き継ぎ、私の仕事の分担も進みつつある。
「ま、深く考えても解決しないことはあるよ。やれる事やる、でしょ?」
ブレイズは私の背中を叩きニカッと笑う。彼女は本当に強い。
【エリートオペレーター】
別格の実力と権限を認められたオペレーター。ロドスの中でもトップクラスの個人戦力に加えてリーダーの資質も求められ、ドクター等の優れた指揮官を別個に置かずとも作戦を遂行できるとされる。
ブレイズはロドスの為に戦い。自らの手足を断ち切ってもなお戦い続けた。
エリートオペレーターの責任は時に命より重い。
かつてACEが示したように。
アークナイツwikiより一部抜粋