シエスタで私たちが歓迎されたかと言うと、まぁ微妙なところだ。
「助けがきた!」と言うものもいれば「感染者どもに助けられてたまるか」と言うものもいる。事ここに至ってもなお鉱石病という高く厚い壁は健在だった。
だが流石に表立って出て行けと言われることもなく、ただ淡々と市長の元へ通された。
ヘルマン市長はセイロンを見て何か言いかけたが口にすることなく、私を見る。
「まずは救援に応じてくれたことに感謝する」
深々と頭を下げようとする市長を慌てて止める。ロドスはどれほど戦力を持っていようと一企業にしか過ぎない。多くの人目に晒されている場所で頭を下げるものではない。
それに恐らくロドスでは…このシエスタを守ることは出来ないのだから。
〜〜〜〜
「状況は聞いているかね?」
こくりと頷きを返す。既にプロヴィデンスから聞いている。
「結構。では、その後の事を話そう」
そうしてヘルマン市長はトランスポーターを各国家に出した後の事を話し始める。
「あれから救援に応えてくれたものはゼロだった。いくつかはトランスポーターの消息が不明になっているので届いてすらいないところもあるが、概ねどこも静観といったところだ。ロドスを除いてはな」
「率直に聞こうシエスタはもう助からないのだろう?」
移動都市が機能すれば、移動都市としてのシエスタは存続の可能性はあるだろう。その為のオペレーターも連れてきている。が、彼のいうシエスタはそちらではないのだろう。
私はどう伝えるべきか幾ばくか言葉を巡らせ、結局シンプルに答えることにした。
えぇ、あちらのシエスタはもうどうにもなりません。あそこまで溟痕が広がってしまった以上、現人類の力では逃げる以外の選択肢はほぼ無いと言っていいでしょう。
「そうか…」
ヘルマン市長は予め分かっていただろうが、改めて言葉として突きつけられ、深々と息を吐く。
「……ならばもう仕方あるまい。市長としての仕事に戻るとしよう。何かここから逃げる算段が?」
軽くうなずき、順番に説明を始める。
まず第一にこの移動都市を移動できる状態にする。中古で買い取られたというこの都市の状態はあまり良く無い。都市移設のために修繕を進めていたようだが、間に合っていないため専門オペレーターによる突貫作業で動けるようにする。
第二に、これ以上の増殖を防ぐために『海』に繋がる水路を封鎖する。現地の状況は不明なため強引な手段に頼る事になるだろうが、後述の理由もあり必須となる。
第三にシエスタに蔓延る恐魚を殲滅する。シエスタを放置すればここから侵攻が広がり対処が困難になってしまう。幸いな事にシーボーンは確認されていないため今のうちに潰しておく必要がある。
「あれらを殲滅?先程君は不可能だと言わなかったか?」
その通り。人類の力では限界がある。だから別の力を借りる。恐魚が来なくともシエスタを滅ぼしていたであろう火山の力を。
シエスタにある火山は詳しく調査が必要だが、計算上ではシエスタ市街を焼き尽くし灰にするのに充分なエネルギーを持っていると思われる。それらを無理矢理噴火させることで恐魚を焼き尽くす。
当然シエスタも溶岩と灰に埋まる事になるが、今後のことを考えれば必要な事となる。
このシエスタが妻の墓標であるとまでいう彼に言うのは残酷だ。実際彼は絶句し言葉を失っている。
……心の整理も必要でしょう。移動都市のチェックの指示などをしますので、一度時間を置きましょう。
私はそう言い一度退室する。セイロンが残りたいというのを承諾し、先に行く。
今の間にオペレーター達へ指示をしなければならない。どうもここはミヅキ曰く臭うらしい。厄介な事にならなければいいが……
PRTSより記録閲覧者様へ
恐らく本記録が今年最後になる事が想像されます。
次お会いできるのは来年になるでしょう。皆様、海の音が聞こえぬ良いお年をお迎え下さいませ。