千の言葉を紡ぐ者   作:チキンうまうま

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えっあの…なんかランキング載ったんですか?え?マジで?
その…お気に入り、感想、評価本当にありがとうございます。モチベになります。



え?日刊2位?嘘だろ?


象神の詩①

「スヴェンっと、パットロール〜♪」

「ご機嫌だな、アーディ。」

 

 それはとある日の昼下がり。スヴェンとアーディはオラリオの街中を連れ立って步いていた。彼は時折、『暇だから』という理由でネタを求めて街中を歩きつつ、都市の警備に勤しんでいるのである。

 

「そりゃね!久しぶりにスヴェンとパトロールだよ?何ヶ月ぶり?」

「何ヶ月…いや、2ヶ月もは空いてないだろう?」

「そうかもしれないけどさ!スヴェンはもっと【ガネーシャ・ファミリア(うち)】の仕事を手伝ってくれてもいいと思う!」

「…まあ、一応俺は他派閥の幹部だからな?治安維持に協力したいのは山々だが、そうほいほいと参加するわけにもいかんのだ。」

 

 急に頬を膨らませてきたアーディから目を逸らしつつ答える。

 

「むー…でもお姉ちゃんは、『スヴェンはそのうち【ガネーシャ・ファミリア(うち)】に入るからどれだけ仕事を手伝わせても問題ない』って言ってたよ?」

「仮にも最大派閥の幹部になにをするつもりだあの人!?」

 

 さて何をする気だろうね?

 スヴェンにとって絶対に逆らえない相手であるシャクティの企みに震えつつ、2人は巡回を続けていく。今日は晴天、風もなし。非常に穏やかな1日である。

 

「さあ?お姉ちゃんも私に教えてくれなかったしね。でも、お姉ちゃんのすることなら多分大丈夫だよ!」

「本当だな!?俺あの人に折檻されたこと10や20どころでは無いのだが!?」

「うんうん。多分大丈夫大丈夫!」

 

 アーディは軽く安請け合いをしているが、スヴェンからしたら不安でしかない。るんたったと歩いていくアーディの後ろを追うしか彼にはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「よお、アーディちゃん!いつもありがとね。隣は…彼氏かい?」

 

「あっらアーディちゃん。こんなところで会うなんてねえ。そうだ、これ持ってってちょうだい。普段お世話になってるからそのお礼よ。それとなんだけどね、隣の男の子は彼氏なの?」

 

「あ、アーディお姉ちゃんだ!久しぶりー……って、彼氏連れてる!」

 

 

 

 

 

 

「ほんっっっっとに人気者だなあお前は!」

 

 被っていた帽子を全力で地面に叩きつけつつスヴェンは叫んだ。ちょっと歩けば誰かに(アーディが)声をかけられる。ついでに自分がアーディに手を出した不届き者扱いを受ける。彼は最近のアーディの市井での人気を侮っていた。

 

「いやー…今までここまで声かけられることはなかったんだけどね…。どうしたんだろ?」

 

 そう言って首を傾げるアーディには本当に心当たりがないらしい。なんでだろー?と言いつつ頭を捻った。なんでってそりゃ可愛いからだよ。

 

「…お前が知らんのに俺が知るわけもないだろう。まあいい。この際誰もこの俺に気づかんかったことは気にしない方向でいこう。」

「あ、地味にそこ気にしてるんだ。」

 

 そう、彼がここまで荒れているのには理由がある。スヴェンはあそこまでアーディが声をかけられているのと対照的に、誰一人として『作家のアルブレヒト』として認識されなかったのである。なおアルブレヒト、は彼の苗字である。

 

「当たり前だ!誰も『あの、アルブレヒト先生ですよね!ファンです!(裏声)』って言ってくれなかったんだぞ!?」

「駆け出しのスヴェンにそんなファンがいるわけないじゃん…。」

「ぐはああああ!?」

 

 的確な正論に心を抉られてスヴェンが膝をついた。時にただの言葉は如何なる魔法よりも凶刃よりも恐ろしき武器となるのだ。

 

「あっごめん!いくら本当のことでも言っちゃいけないことと悪いことがあったよね。」

「ぐぼは!?」

 

 無自覚の追撃!スヴェンのハートに999のダメージ!スヴェンはもう虫の息だ!

 完全天然少女による一撃に、第一級冒険者達ですらへし折れなかったスヴェンの心が凄い勢いでへし折れていく。あまりの苦痛についには道路へ倒れ込んだスヴェンに、アーディはその体を必死に揺すって起こそうとする。

 

「…こんな思いをするのなら花や草にでも生まれたかった。」

「そしたら私とお話しできないよ!?いいの?」

「…ああ、アルフィア姉さん、そこにいたんだな…。」

「…見えてる見えてる!見えちゃいけない人見えてるよスヴェン!っていうか、あの人そんなちゃんと出迎えてくれるほど優しくないでしょ!?」

 

 本人が聞いたらゴスペられそうな発言が飛び出しているが、そこは誰も気にしない。そんな2人の謎のコントに周りが生暖かい目を向けるのも気付かず、謎のコントは続いていく。

 

「…墓石には、『この世で最も偉大な作家、ここに眠る』とでも書いてくれ。頼んだぞ。」

「いくらなんでも図々しくない!?っていうか、冒険者(私たち)はそれあんまりシャレにならないよ!?」

 

 ついにスヴェンを引き摺り起こすとアーディがその胸元を掴んで揺さぶりながら叫んだ。果たしてスヴェンの首がガックンガックンなっているがその辺は大丈夫なのだろうか。

 そしてそれが起こったのはそんな2人が何気ない日常を楽しんでいる時だった。

 

「ひったくりだー!」

 

 平穏をぶち壊す事件というのは突然起こるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひったくり…!」

 

 その言葉を聞いた2人の行動は速かった。先程まで死人のようだったスヴェンは即座に跳ね起きると、アーディと共に声の方へと走り出す。たとえ足の遅めの魔道士といえども流石はレベル6。幾度もの昇華を終えた彼は前衛のアーディとほぼ同速で走ることができている。

 

「犯人は!?」

「…いた!あの人!」

 

 彼は走りながら【グリモワール】を召喚すると、アーディの手を借りて犯人を捕捉する。それと同時に、己の()()()を発動させた。その影響によって、彼の舌に謎の紋様が刻まれる。

 

「『───』」

 

 スキルの影響を受けて彼が紡ぐのはもはや声にすらならない声。あまりにも発声が速すぎて声とすら認識できなくなった詠唱。それでもなお、彼ならば魔法を発現させられる。

 詠唱時間の短さに比例して、ほんの僅かにしか魔力は練れなかったが、問題はない。前を走る犯人に向けて、その魔法を行使した。

 

「【リスト・イオルム】!」

 

 それと同時に犯人の足元から光の鞭を生み出すと、即座に拘束する。それは元はティオネの魔法であったのを、スヴェンがコピーした魔法。相手を拘束する、というなかなかに使い勝手がよい魔法であり、このようなパトロール時には非常に重宝する魔法である。

 

「犯人…逮捕!」

 

 倒れ込んだ犯人をアーディが捕縛し、その手に手錠をかける。その手際良い仕事ぶりに、周囲から歓声が上がった。

 

「流石はガネーシャ・ファミリアだ!」

「あれ【象神の詩】だろ?やっぱすごいなぁ。」

「ガネーシャ・ファミリアがいればもう安心ね。」

「アーディちゃん俺と結婚してー!」

「ファンクラブ会員!あの大馬鹿者を処せ!」

「「「「応!!」」」」

 

 いくつか変なのも混じっていたが、概ね住民は安心しているようだ。その様子にスヴェンは小さく安堵のため息をつくと、アーディの後始末を手伝いに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れ時。2人は真っ赤な夕日が照らすオラリオの街を歩いていた。

 

「いやー、今日は大変だったねえ。」

「そうか?起こったのは所詮はひったくり1件。こんなものなどなんのネタにもならん、つまらんものだ。」

 

 そう言ってスヴェンがはあ、とため息をつく中、アーディはニコニコと微笑みながらその顔を覗き込んだ。

 

「そう?私は楽しかったよ?」

「…何がだ。この程度の事件、お前ならいくらでも解決してきただろう。」

「そうじゃなくてさ、」

 

 くるりくるりと踊るようにステップを踏みながらアーディはスヴェンの前を歩いていく。そのまま1つターンを決めると、スヴェンの方を向いて、嬉しそうに笑った。

 

「久しぶりだったから。スヴェンとこうやって2人でいられるの。」

「………」

 

 その言葉にパチクリ、と目を瞬かせるスヴェンにアーディはなおも続けた。

 

「スヴェンがさ、小説書いたり、ダンジョン行ったりして毎日忙しいのは知ってるけど、私だってスヴェンとこうやってお話ししたりしたいんだよ?」

「…それは、すまない。」

「ううん、別に怒ってるとかじゃないから。その代わり、」

 

 つい、と寄ってきたアーディがスヴェンの手を取った。その距離感は2人が小さな頃から変わらないもの。この街の誰よりも長い時間を過ごしてきた相手との距離感。

 

「また、こうやって一緒にいよ?」

「…しょうがないな。」

 

 そう言って笑いかけてくるアーディに、こいつには敵わないな、と思いながら。スヴェンはアーディの隣を歩くのだった。




アーディ
 何度も言いますが僕はあの結末を認めません。

スヴェンのスキル
 【八丁弁士】、読みは【ザ・キャスター】。詠唱が早くなる。ついでに早口言葉も得意になる。ただしこのスキルを使ったからと言って魔力を練る時間が短くなるわけではないので一長一短。
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