ディジェが提督です。(SDガンダム×艦隊これくしょん)   作:たくらまかん

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遭遇、深海棲艦モビルスーツ部隊。そして、

 すり抜ける北海の潮風は刺すように冷たく、現在は○八:○○。太陽は未だ登りきってはいない。提督の指示を受け、天龍率いる遠征組は深海棲艦が出現した北海へと航路を取り、速やかに地球連邦北欧領の海を南下していた。

 艦娘六隻に加え、彼女らには相棒となる強力なモビルスーツ、そして戦況に応じて戦法が立てるようジムやハイザックといった支援量産機がそれぞれ編成されており陣容は整っていた。何よりもディジェの見識に基づいている為、各々の信頼関係は総じて良好である。

 ある一組を除いて……。

 

「……」

「……」

 出航してからというものの、天龍はずっとある一点を見つめていた。海の上を走る足を止めずに、右斜め上だけを捉えて放さないでいる。

 すり抜ける風のような特有の飛行音を発する白いモビルスーツ、ガンダムエクシアが天龍に寄り添って飛んでいた。最近、開発されたばかりの太陽炉で稼働する基地でも噂になっている新米である。

 今回、接してみて天龍が知り得たことはエクシアは口数が少ない性格だということである。自分から話し掛けても、そうか、だとか。分からない、といった話題の繋げようがない相槌しか打たないのだ。

 作戦中だからお喋りは、と言われればそこで終わってしまうが、エクシアからそんな厳粛な雰囲気は感じられない。ならばと天龍は知恵を絞る。

 顔を合わせた時から気になっていた相手だ。提督の配慮を無駄にはしたくないし、この先背中を預けあうのだからもう少し距離を縮めたかった。だがその一方、エクシアもエクシアで天龍とどう接するべきか考えあぐねていた。

 基地内でも友と呼べるのはウイングぐらいで、他の同僚とはあまり話す機会もない。摩耶やデュナメスらが頻繁に食堂や遊戯の同行を勧めてくるのは甚だ疑問であるが、問いただすフェイズには達してはいないので言葉には出さない。そして、今回のミッションでエクシアの母艦となる天龍も摩耶達の分類に該当した。

 思い切って理由の説明を要求するべきか、否。感情の表現が達者でない自分だ。彼女を不快に包み、突入するであろう戦闘に支障をきたすわけにはいかない。

 思考の暗闇に様々な意見が光彩を放って点滅する。エクシアはただ視界に広がる空と海をぼんやりとしばらく眺めていたが、左側からの視線に気がつくことにそう時間は掛からなかった。ふと顔だけを動かし、エクシアは天龍と眼を合わせて問い掛ける。

「何か用か?」

「うぉ!?」

 見ていたのはお前だろう。無言の圧力をかけておきながら意表を突かれたかのように慌てふためく天龍にエクシアは心の中で指摘する。ゲタを履いた後続のジム・クゥエル隊が事の成り行きを静観する中、天龍は新しい相方を眺めつつ、バツが悪そうに頬を掻く。

 いざ視線を交わすと言葉が詰まってしまう。何を言えば、無表情な彼を揺さぶることが出来るだろうか。天龍の思考に暗雲が漂いはじめた時、

「……天龍、教えてくれ。俺はまだ、他人とどう接すれば良いか分からない。努力しても先ほどのような返事しか出来ない」エクシアから気持ちが吐露された。

 表情は変わらないものの、眼を伏せて本音を語る少年の姿に驚きを隠せなかった天龍だが、やがて穏やかな笑みを浮かべて彼を眺める。エクシアはエクシアでいろいろと悩んでいたのだ。そうならば、これは彼との距離が近くなったことの証明だろう。嬉しくてたまらなかった。

 親指を突き立てた手を彼に掲げ、天龍は穏やか笑みを浮かべて口を開く。

「そういう気持ちがあるだけ大丈夫だって。あとはお前の気持ちのまま動けば良いさ」

「俺の気持ち……」

「にしても案外、お前も悩むんだな。エクシア」

「能天気な男になったつもりはない」

 ジト目で睨むエクシアに、悪いと詫びるものの。彼の表情が動じたところを目撃したことで天龍の心は晴れやになった。

 もう少しだけで良い。この穏やかな時間を彼と過ごしたい。未だ遭遇することのない敵に対して、天龍は出現しないでくれと強く願うも、禍は水平線の遥か彼方に姿を見せた。

 直感的に心がざわめく。アレらは敵だと、遠くではあるがそこから天に向かって立ち上る邪気が景色を陽炎の如く揺らしていることが見てとれる。

 天龍・エクシア隊のみならず艦隊の誰もが深海棲艦隊へと鋭い視線を注ぐ。ジム・クゥエル四機がすかさずゲタを天龍の前面へと駒を進める。そして隊長機が頭部のアンテナに手を添えて明瞭な声で状況を告げた。

「各艦に次ぐ、現時刻◯八:二◯。十二時の方向に深海棲艦を発見! 数、四。モビルスーツ隊を要している可能性が高い! 繰り返す、十二時の方向に深海棲艦隊を発見! 数、四。モビルスーツ隊を要している可能性が高い! それぞれ砲門を開け、艦隊戦用意! モビルスーツ隊発進用意!」

 豆粒の程に小さくとも、海道を進むごとにその姿は本来の大きさを示す。これまでの戦闘経験から視界に映るのは、黒い巨鮫のごとき姿の駆逐、軽巡。並びに人に近しい身体を持つ戦艦と空母のたった四隻である。

 艦隊にしては少ないが、その分配備されているモビルスーツ隊が厄介だ。先の戦いにおいて連邦の艦が二隻沈められ、モビルスーツも数十機ほど海の藻屑と消えたとの報告である。油断は大敵である。

 天龍と顔を見合わせて強く頷くと、

「ガンダムエクシア、発進する!」エクシアは高らかに開戦の合図を出した。

 天龍の装備する十四センチメートル単装砲が轟音を響かせる中、エクシアとジム・クゥエル隊が前進する。その行動に合わせ、遥か先の敵艦隊からも敵影が続々と出撃した。数はおよそ二十機は下らない。

 しかし、鋼の戦士達の戦意は燻ることは無かった。

ー島風・ゼフィランサス隊ー

「ゼフィランサス、行きます!」

「ゼフィ、待って待って! 私にもゲタ貸してよー!」

「えぇ? 海走ったほうが速いんじゃない?」

「たまには飛びたいのっ!」

「ネモ隊、出ます!」

 

ー叢雲・ブルーフレーム隊ー

「発進後、砲座に着くぞ」

「了解、しっかり護衛しててよ!」

「水中への防御も怠るなよ、ダイバー部隊は続いて海に入れ。ズゴックE、出るぞ!」

 

ー金剛・ゴッド隊ー

「えぇい! 奴らに遅れは取らん! 金剛、艦砲射撃は任せたぞ!」

「了解デース! 私のこの手が光って唸りマぁス! 灼熱、コンゴぉフィンガぁ!」

「叫びが甘い!」

「うえぇ!? おぅまぃごぉ!」

「ハイザック隊、お二人の援護射撃を行ないます!」

 

 

ー加賀、赤城・フリーダム、ジャスティス隊ー

「フリーダム、行きます!」

「援護は任せて下さい」

「ジャスティス、出る!」

「後ろは任せて!」

「105ダガー隊は全員装備をエールストライカーへ。艦隊の周囲に待機するぞ!」

 艦娘達の砲がその先の深海棲艦を捕捉して砲撃を仕掛ける。彼女らの援護を受けながら、戦士達は群青に高く舞った。

 

☆★

 

 天龍は今、レーダーが感知しにくくなっていることに内心苛立ちながら、ミノフスキー粒子の存在に感謝しているという複雑な心境にあった。本来距離をとってドンパチすることが自分のあるべき姿なのだろう。が、性分としては彼らガンダムのように敵の真っ只中に駆ける方に合っていた。

 視界を遮るように辺りを囲む敵モビルスーツ隊は、その漆黒の影から邪悪に歪み、桃色に光る単眼を鋭くこちらに向けている。形状から、かつて一年戦争末期で活躍したモビルスーツで間違いない。ザク、グフやドムに加えジムまで居るのだ。戦没者の怨霊とでもいうのか。

「でもーー」

 左右から押し寄せるモビルスーツに対し、七.七ミリメートル機銃でもって牽制、見出した隙に天龍はすかさず間合いを詰めて斬り伏せた。

「フフフ……怖いか? 怨霊ども!」

 言うや斬り伏せた敵は爆散した。決まった、決まったと自分の決まり具合に天龍の眼にわずかながら涙が滲む。

「天龍、後ろだ!」

「んあ? な、いつの間に!?」

 エクシアに促され、振り向くと彼女の足が止まるところを見計らった黒いジム改がビームサーベルでもって振りかぶっていた。しかし、

 桃色の光刃は降ろされることなく腕ごと爆散した。エクシアのGNビームライフルによって撃ち抜かれたのだ。そのまま彼はジムの身体を実体剣でもって唐竹に断ち斬る、爆発が起きると同時に天龍と背中合わせに海面に降り立った。

「……泣いているのか。そんなに怖かったのだな」

「な、ば! 泣いてねーよ!」

 思わず自分に酔いしれて泣いてしまったなどと恥ずかしくて言えるはずもなく、天龍は頬が熱くなるのを感じながら奥からこちらへ前進してくる駆逐艦へ八つ当たりとして突っ切る。その背が遠くへ行く前にエクシアは後に続いた。艦へ接近するにつれリック・ドムIIやゲルググJと上位機種が繰り出される。駆逐艦もまた接近させまじと機銃や単装砲を全てこちらに向けた。搭載機の支援防御を交え、ビームや実体と大きさ種類ともに豊富な弾丸が暴風雨のように天龍隊の進撃を阻む。これがただの駆逐艦や量産機なら撃ち落とされてしまうだろうが、彼女らには優秀な支援部隊が着いていた。

「天龍殿、エクシア殿。我らが壁となります! 存分にお力を振るい下さい!」

 天龍隊の前面へと移動、ジム・クゥエル隊はそれぞれシールドを掲げ、進行しながら隙間からライフルやバズーカを用いて迫り来る敵を狙撃したが、味方もただで済む訳にいかず、

「お前ら!? もう良い! 後は俺らに任せて加賀のとこに補給へ!」

 各員のシールドが破られ、肩やゲタが破壊される。だが、損傷を受けても彼らは退くことをしない。意地を見せる彼らの姿に天龍は居ても立っても居られなくなる。ジム・クゥエル隊より前に出ようとするも、振り向いた彼らは顔を横に振った。今はまだ早い、そう付け加えて再び支援を続行する。その誇りはやがて視界を覆っていたモビルスーツを焼き払い、蜂の巣にした。瞬く間に天龍隊へ迫っていた火線が薄れていく。

 そして拓かれた海上の先に討つべき敵を捉え、天龍とエクシアはひと息に駆逐艦へと迫った。

 声にならない叫びが浴びせられる。対空砲がふたりに注がれるが、エクシアより放たれたGNダガーが駆逐艦の武装を穿った。だが、まだ攻勢は止むことはない。一度刀を鞘に納めた天龍がすれ違いざまに白刃を解き放った。歯を食いしばりながら装甲を砕き、肉と骨を斬り裂く感触を手で味わう。

「うらあぁぁ、必っ殺っ!」

 気合と共に切断する。直後、天龍の背後で駆逐艦は断面から発光し、耳をつんざく大きな咆哮と共に爆散した。黒い炎が破裂し暴風を伴って大量の水飛沫を飛ばす。やがて海上に駆逐艦の肉塊が紙吹雪のように舞い落ちた。

 勝った。味方が敵艦を撃墜したことにエクシアは安堵する。しかし、不思議なことに天龍の背中は抜刀し、横薙ぎに刀を振ったまま像のように止まっているのだ、途端にまさか相討ちだったのかと嫌な想像をしてしまう。

「……天龍、どうし!?」

 そっと彼女へと近づき、前を見ると、

「どうだ、エクシア? フフン、怖いだろう?」決まった。今度こそ決まった。実戦にも関わらず画的にも素晴らしい勇姿を見せることが出来た為、天龍の表情は緩みに緩んでいた。

「……ダサい」

「ちょ!? 格好良いだろ!? なぁ、お前らもそう思うよな?!」

 振り向き、満身創痍でお互いを支え合うジム・クゥエル達に同意を求めるも彼らからも顔を振られ、同意は得られない結果を迎えた。がくりと肩を落とす天龍を他所にエクシアは周囲の戦況を伺う。依然、戦力は拮抗しているも、味方のモビルスーツによって徐々に深海棲艦のモビルスーツ隊が刃に斬られ、弾丸や砲によって焼かれている。このままなら勝利も容易だ。そう確信するエクシアだったが、敵空母から新たな熱源が飛び出した途端に辺りを激情が覆ったことに驚愕する。

 今だこの海域に残存する漆黒のモビルスーツと同じく、頭から四肢の先まで真っ黒に染まったガンダムタイプが光の翼を広げて大空に舞った。先ほどまでうなだれていた天龍も、威容な怒気に押され、険しい表情を空へ向けている。これで基地に戻れる、そう安心していた矢先に現れたことに彼女は心の底からため息をつく。

 その場に居た全ての者が、怒れる瞳を向けるあのガンダムに厄介さを感じ得ないでいた……。

 

ーマタ戦争ガシタイノカッ! アンタ達ハッ!

 憎悪、悲しみ、虚しさと寂しさが闇として彼を支配しているかのようだった。

 

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