ディジェが提督です。(SDガンダム×艦隊これくしょん)   作:たくらまかん

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〜司令室〜

霧島
「司令は一年戦争から戦場に立っておられたのですよね?」

大和
「霧島さん!?」

ディジェ
「構わないよ大和。分かった、君には隠せないな。そうだ、俺がガンダムだった」

霧島
「俺がガンダムだ!」

大和
「!?」

霧島
「あ……、すいません。一度言ってみたくて」

ディジェ
「君もよくよく金剛型(姉妹)だな」






夜戦〜アイリッシュ海〜その1

 辺りが漆黒に包まれた闇の中、ベルファスト基地は眠りにつこうともせず、周囲を厳しく警戒していた。そして現在、港には白露型と妙高型の二隻が防備に当たっており、当然の如く猛者が配備されていた。それも七年前、ジオン軍に属していた戦士達である。

「……」

「ザクさん?」

 海上で辺りを見据えながら、夕立が気忙しくモノアイを動かす相棒に緊張しているのかと聞くと、彼は気恥ずかしそうに自分の口部ダクトを撫でた。

 彼ーーザクII改は一年戦争末期、部隊に配備されたものの間も無く終戦を迎えた。つまり戦闘経験は皆無である。そんな彼が何故、祖国の敵であった連邦に居るかと問われれば、平和のために戦いたいという純粋な想いからだった。そんな熱いところをディジェに買われ、型落ちしたモビルスーツにもかかわらず、勇猛果敢で名高い白露型四番艦・夕立の相棒に就いたのである。

「情けないよな。ブルっちまってる。同じジオンが来たら、そりゃもちろん討つけど……」

 真情を吐露すると、ザクのスパイクアーマーに夕立の手が置かれた。モノアイを彼女へ向けると、

「大丈夫ですわ」その表情はあたたかな笑みであった。それ以上言葉は要らない。凝り固まっていた心が柔和していくのを感じ、ザクは強い眼差しを夜空の彼方に向けるーー。

 

「これも夜戦って言うのかしら?」

「しょうがないだろ。深海棲艦(あちらさん)油断出来ねぇんだからよ」

 妙高から少し離れた場所では同じくして妙高型三番艦の足柄がケンプファーと哨戒していた。夜戦を好む者、そして本来であれば強襲を得意とする者を防衛に回すという奇抜な配置だが、それもディジェの作戦である。夜戦を好むからこそ、夜に対して反応が良く、また強襲を得意とするからこそ敵の思惑を読みやすいのである。

「んっく」

 ケンプファーが取り出したスキットルを口元に持っていくと、間をおかずして足柄から非難の声があがる。しかし、彼もどこ吹く風か、水筒の中のアルコールを嗜んだ。

「ちょっと、聞こえているんだから呑むのやめなさいよ!」

「うるせ、こんな絶景を前にしてやらねぇ奴はバカだ」

「そ、それはそうだけど」

 ケンプファーに論破され、足柄は基地の周囲を見渡す。とっぷりと陽の暮れた北欧の海は空気が澄み渡り、紺色で敷かれた空は星々が互いに会話しているかのように輝いている。

「……」

「ほらよ」

「え? きゃっ、ちょっと!」

 声とともに寄越された瓦のように湾曲した水筒に足柄は足元に落とさず両手で抱える。ムッとした表情でケンプファーを見るも、彼は口笛を吹きながら散弾銃の弾倉を見ていた。

「……」

 まったく。

 自分を小娘としか扱わない相方を良くも悪くも思うものの、足柄の手はスキットルの蓋を開けていた。

☆

 司令室に緊張が走っていた。先程、ダカールより入電が届いたのである。詳細はソロモン海域において旧ジオンのエースが深海棲艦と共に現れ、その異名の通りの勇猛さを発揮したという。電信を手にディジェは苦虫を噛み潰した思いに駆られていた。

「まだジオンの妄執に囚われているのか……。しかし」

「提督、本部からは何と?」

「馬鹿げた話さ」

 秘書艦・大和の問いにディジェは吐き捨てるように“紙きれ”を手渡した。その態度から同席していた霧島も連邦政府の物言いを想像し、眉をひそめた。そしてその疑心は大和から電信を回されたことで納得する。

「何ですかコレは……」

 思わず怒気を含んでしまう。そこにはベルファスト基地より艦隊を派遣し、件の敵を必討せよ。つまりソロモン諸島まで遠征しろとあるのだ。まだ北欧周辺の海へ行けというなら呑みやすいが、これでは遠征用の補給も確保しなければならない。その上戦力を裂いた後の編成にも頭を悩ませることは必定だ。

「英雄とおだてられている結果がこれだ。かつてのエースが姿を見せた途端萎縮して、上層部は火傷を負いたくないから兵を出そうともしない。面倒は俺達に押し付けたいのさ」

 何が白い悪魔だ。と静かに奮い立ち、ディジェは悪態をつく。実際にその英雄に憧れている姉がいる立場故、霧島は異見を抱くも言葉には出せずにいた。

「霧島、武蔵を呼んで来てくれるかい?」

「っ、はい!」

 打って変わって冷静さを取り戻したディジェの言葉に霧島は敬礼、直ちに踵を返して退室した。扉が閉まることを見届けた後、ディジェは大和を一瞥して声を出す。

「レッドフレーム、明石に同行を頼むしかないな。それに、強い感覚があるんだ」

 ディジェの含みを帯びた末尾に大和に緊張促す。彼の際立った直感力は大和ですら計り知ることはできないところである。

「大和、夜戦だ。今から言う面子を格納庫へ集めていてくれ。武蔵に指示を出したら僕も直ぐ向かう」

「ーーっ、はい!」

 艦隊の編成を伝え、ディジェは大和が奔る後ろ姿を見送った。その時すでに彼の思惑に艦娘のことはなく、先ほどから身体に起こる嫌悪感への意識しかなかった。

 シャアでもない。同じく勘の冴え渡る者ーーいや、それとも。

 自分の中に渦巻くココロを辿っていたところに、

「提督、武蔵だ」司令室の扉を叩く音が室内に響いた。意識を切り替え、ディジェは即座に入室を促す。大和と同じく信頼のおける艦娘の彼女に頼みたいことがあったのだ。

「それで、用はなんだ? 秘書艦に任命してくれるのか」

「それも悪くないな。だが今回はそうじゃない。こいつを見てくれ」

 先ほど回し読んでもらった電信を武蔵へと手渡す。何のことかと納得しかねる表情も、内容を視認していくごとに険しいものへと変貌する。ーーそして武蔵は溜息をついた。

「どういうことだ、これは?」

「そこにある通りだよ。上は俺達をけしかけたいらしい」

「随分と使ってくれる」

「他の基地で補給を受けながらにしてもかなりの距離だ。航海だけで心身ともに疲弊するサ。しかしーー」

「見過ごせる相手ではなさそう。だろう?」

 武蔵が紡いだ言葉にディジェは苦笑して頷く。かつての敵対勢力だったジオンも地球連邦と友好条約を締結し、七年も経った。にも関わらず、深海棲艦に肩入れするジオン兵が居ることは決して見過ごして良い話ではない。

「君に艦隊を預ける。ソロモン海域へ行ってくれ」

「はっきりした物言いだな。だが、嫌いではないさ」

 ディジェのモノアイから、実力に頼りにしているといった説得力を感じ、武蔵はほんの少し心を揺らした。歯に衣着せぬ彼の率直さが嬉しくもあった。

「武蔵、彼らと共に行くと良い」ディジェの口からは遠征組の編成が明らかにされた……。

★

 基地から出港した艦隊はふたつに別たれ、それぞれの漆黒の海を渡る。ひとつは一路ソロモン海域を目指す遠征組であり、その先頭には武蔵の姿があった。そして、

「提督、ドダイです!」

「ありがとう、大丈夫だ」もうひとつの一群には提督と秘書艦の姿があった。地球連邦にとって、ひいては基地にとって大事な存在が出撃する。本来他の提督にはあり得ないことだが、ディジェだけは違っていた。編成に組まれたまわりの艦娘達はよく思っていないが、一機で万人の兵に匹敵する実力は熟知されているため、その不平不満は闇夜に封じられていた。見上げれば肌寒い風故に空は透き通っており、月と満天の星空が広がっている。周囲を視認するためには艦娘のサーチライトと、モビルスーツ達の光る眼だけが頼りであった。

 そんな中、航行する川内の視線は出航した時からディジェに向けられていた……。

「貴様、まだ認められんのか?」彼女の傍らで海を駆けながら、ガンダムシュピーゲルが呆れを孕んだ声を掛ける。その言葉の厳格な調子を受け、川内の視線が慌てて相方へと急転した。

「だ、だって! 一緒に戦えるのは嬉しいけど、まるで私達じゃ不安だって言いたいのかなって……」

「愚か者ォ!」

 シュピーゲルの怒声が暗闇で響き渡り、川内は小さく悲鳴をあげ、思わず両手で耳を塞いだ。涙を滲ませた眼がシュピーゲルへと注がれる。

「び、びっくりするじゃない!?」

「川内よ、男が決意を持って戦に臨むのが分からんか!?」

 キリッとつり上がった眼を向け、激昂を浴びせられる形に川内は言葉を詰まらせる。確かに、格納庫で集められて作戦が挙げられた時に提督の視線はどこか遠くを見ているようだったのだ。そこに居る者を探すかのように強い意志を宿して……。

「それに、日頃夜戦夜戦と言上していて畏縮しているのではないだろうな?」

「……シュピーゲル、あなた一体誰に言っているのよ」

 含みを帯びた相方の嘲笑に川内は一転して余裕を持った笑みで答える。夜戦の二文字が彼女の心に火を付けたのである。

「ならば、その言葉。俺の背中で語って貰おう!」

「りょーかいっ!」

「「あーっはっはっはっはっ!」」

 未だ基地の領海ではあるものの、静寂な夜に響き渡るふたりの笑い声は喧しくも、他の艦に和やかな雰囲気を持たせた。

「ねー、流石にうるさくない?」

「まぁ、慎ましく行きたいよな」

 後方に位置する暁が相棒のストライクガンダムに面白くなさそうに呟く。実際、非難しつつもそのくりりとした瞳は羨ましそうに輝いているのをストライクは見逃さない。

「よしよし寂しいのか子猫ちゃん」

「んなっ!? 子供扱いしないでよね!」

「分かった分かった」

「ンガー! 撫でるなぁー!」

 ぽんぽんと優しく頭に手をやるストライクに暁は頬を赤く染めて激昂する。 彼と組んでしばらく経つのだが、ずっと女の子扱いしかしないことが暁にとっては不満であった。

 戦場でも逐一自分の心配をするし。もう少し大人の女性に相対するよう振舞ってほしいものだ。というのが乙女の本音である。

「少佐、私だってーー「っ、来るぞ!」は、はい!」

 意見した瞬間、ストライクの表情は頼り甲斐のある兄的でなくなる。そこに居るのはエンデュミオンの鷹と異名を持つ一機のエースである。その姿に暁は思わず気圧されてしまう。ストライクもディジェ同様に直感力が極めて高い。ミノフスキー粒子という厄介なものがあるため、暁をはじめ艦娘の頼みは視界が第一である。そんな中、この艦隊には一隻を除き直感の冴え渡る兵が居る。

 ーー負ける要素などない。

 艦隊の士気は総じて高いものだった。防盾を寄せ、全ての砲を視線の先へと回頭する。

 海の向こうは深海棲艦の姿が見えなくとも、闇はすでに赤黒く染まっていた。

『十二時の方向に敵艦隊を確認、各艦ミノフスキー粒子を散布後モビルスーツ隊発進用意! 繰り返す、十二時の方向に敵艦隊を確認、各艦ミノフスキー粒子を散布後モビルスーツ隊発進用意!』

 提督の指示が伝わり、暁の格納庫からベースジャバーが四機射出され、すかさずジム隊がそこへ降り立つ。

「ようし、ストライク! 出るぞ!」

「援護は任せて!」

「おう。キャノン二機は子猫ちゃんの援護を頼んだぞ!水中からもモビルスーツは来るんだからな!」

 相も変わらず子供のような扱いに暁から不平が挙がるものの、その声は二機のジム・キャノンIIの砲撃でもってかき消されてしまう。

「〜〜〜〜!!」

「暁様、援護で見返してやれば良いのです!」

「とりあえず撃ちましょう!」

「そ、そうよね!? やってやるんだから!」

 よしっと気持ちを切り替え、ジム・キャノンII達に合わせ連装砲を回頭して一斉砲撃を敢行した。その先に臨むエールストライカーとジム・カスタムの三機を眺め、暁は一人前の戦乙女として意識を昂らせるのだった。




〜遠征組〜

雷
「ちょっと! インパルス、ちゃんとエネルギー充填してるの? VPS装甲だからって疎かにしてたらやられちゃうんだからね!?」

インパルス
「うるさいな! あんたは俺の母さんか!?」

雷
「良いから充電する! 換装も済んだの? フォースシルエットにしておきなさい!」

インパルス
「うるさい!」

雷
「うるさくて結構よ!」

プロヴィデンス
「インパルスは新兵だと聞いていたが、楽しくやっているようだな」

武蔵
「まあ、今はこれで良いんじゃないか?」
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