タワー内部に突入した彼女たちだったが、安全地帯を確保したところでユウカはハスミ達から詰められる。
「ユウカさん!?どこに行ってたんですか!それにあの機体は!!!」
「お、落ち着いて....私が全部話すからぁ!」
ユウカが3人をなだめてことの詳細を話す。と、同時に黒い機体が四人の近くに降り立ち、機体をしまうと二人に分裂した。
「ユウカちゃん!」
「えっ...ユウカさんが、ふ、ふたりっ!?」
「あちゃー....。」
ユウカに擬態したエルがブラックリッターを解除したクロエのもとからユウカのもとへ飛び付こうとしてダッシュしているのを三人が見てしまい、混乱していた。ユウカは項垂れるようにやっちまったと言わんばかりの表情。当然3人は警戒し己の持つそれぞれの銃口をエルに向けて引き金を引いた。
「あっ、ちょ!?」
ダダダダダダ
ダァン!!
スナイパーライフルの音とアサルトライフルの音が響きエルはおろかその後ろにいたクロエでさえ巻き添えを食らう。クロエ自体はすぐシールドだけを展開し難を逃れたがエル自体は対応できず穴だらけになった。
「.......…ゆRuさなiい!!!」
エル、キレた。左腕から銃を生やすとたちまち打ち返す。ユウカはいち早く気づき物陰に隠れるも、残りの三人は撃つのに夢中で完全に気づくのが遅れた。
「撃ち返してきたっ!?」
3人も遅れて隠れるが、何発かやはり被弾してしまう。だが、悪夢はここからだった。
「なっ....わたしたちのライフルが!?」
エルの銃弾。すなわちエルの分かたれた本体を撃ち込まれた彼女たちは撃たれた場所から侵食が始まりライフルや体を銀色の結晶体で染め上げていく。ユウカは自らにも被弾することお構いなしに3人の前に出てバリアを貼った。
「え、エルちゃん!今のは三人にとって当然の反応というかなんというか、....だからお願い!その侵食を止めてくれない!今はこんなことで時間を使っていられないの!」
「.....。」
説得していく合間にも3人の身体は蝕まれていき半分くらいが侵食されたところでその勢いは止まった。3人ともすでに気絶しており、おいそれとすぐに動かせるような状態ではなかった。
「.....むー!」
エルは随分不機嫌だった。自分に対し突然銃を向けてきた上そのくせして命乞いはする。正直このまま侵食しきって自分の体にしてやろうかと考えたが、ユウカが前に出てきてバリアを貼ったことでこれが総意ではないとユウカから伝えられた。正直、信じられるわけもない。だが、ユウカが手を伸ばしてきているところを見るに、なにか交換条件があるのだろうかと近づく。
「....クロエさん。」
「んー?どうしたのー?」
「....あなたのエルさん、お借りしてもいいですか?」
「...それって、どういう...?」
クロエにとっても理解ができない質問だった。いつもそばにいてくれたエルを借りるとは一体...。クロエの返事も聞かず、ユウカはエルの身体に触れた。
「エル、どうしても許せないなら、私の体をあなたに預けるわ。あなたが本当に殺さなければならないと感じたのなら、代わりに私を殺しなさい。」
「....はぁっ!?」
クロエはユウカから出た衝撃発言に頭を悩ませた。確かにユウカはすでにエルからも認められているが、だが何をどうしたらそんな思考になるのだろうか。だが、それとは打って変わってエルは震えていた。左手に生成していた銃をしまうとそのままの姿勢でユウカに抱きついた。クロエはさらに理解不能になった。
「....ふぇっ!?」
「....ずるいよぉ....。」
「でも、これであなたはずっと私と一緒に居れる。私はあなたに信用を勝ち取ることができる。winwinの関係ですね、かんぺき〜!」
そういう問題ではないでしょ、とクロエは口にしかけたが、野暮なのでやめた。と、エルがユウカに溶けていく。
「ふふ、...契約、成立だからね!」
ユウカに完全に溶け込んだエルはにょき、と腕から顔を出す。
「.....はぁ、迷惑だけはかけないでよエル....。」
「ユウカは唯一信頼できるから!」
随分と絆されたものだ、とクロエは嗤う。最初はユウカにすら敵対していた彼女が、今では同化を喜んでしに行くまでの仲。その印にユウカの髪が一部だけであるが透き通ったり、くすんだりしたのがひと目でわかった。毛色が変わったりするのは、同化した人物の大きな特徴だったりする。しばらくして、3人の侵食も剥がれていき、薄い水のような金属がユウカのもとへもぞもぞと入り込んでいった。程なくして3人が意識を取り戻した。そうして最初に見た光景は少し雰囲気が変わったユウカ。なんの地獄なんだと言わんばかりである。
「いまのは....いったい....。」
「話を聞いてください!彼女は....クロエさんはとある事情から今回同行してます。それより....リン会長代行はどこに?あの人からの連絡を受けて来たんですけど....。」
意識を取り戻した三人は気まずそうに目線をユウカから逸らす。それを見てユウカはどんどん顔を暗くしていく。
「..なぁんか、トラブル臭いね...。」
いつの間にか見知らぬアサルトライフルを携行したクロエがカコンと軽い音を鳴らして弾倉を交換しているのを見て、やる気満々だと察したユウカも自身のMPXの弾倉を交換する。
「はぁ....せめて、どうにかあの人が苦労しない程度には片付けますよ。」
それすなわち、これから残敵掃討戦へ移るという事を示しており、三人が今日は絶対帰れないと嘆くには十分だった。