トカゲさんはポカポカしたい   作:蓮太郎

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2. トカゲさん道連れになる

 

「いやー、まさかあそこから掘ってくれる奴がいるなんて思いもしなかった!」

 

「こっちは生きてるとは思いもしなかった」

 

 土の中に首まで埋まってるリザードマンが言い、その様子に呆れているリザードマンことザリュースが言う。

 

 先程まで冷たく死んでいたと思われていたのが土の熱で暖まったのか息を吹き返したのだ。しぶとい生命力だと呆れられても仕方ない。

 

 なお、まだ土から掘り起こされてないのは土で温まりたいからと本人が言っているためである。なお、本人がその気になれば手を借りずにそのまま出ることはできたりする。

 

「しかし、何故あんなところで凍っていた?あそこで足でも滑らせたのか?」

 

「まあ、戦ってたら凍ったって話だ。『流れ星の指輪(シューティングスター)』に願うのは反則だろう…………」

 

「しゅーてんぐ…………?」

 

「こっちの話だ。ところでスルシャーナとか生きてるか?」

 

「スルシャーナ…………まさか六大神の!?」

 

 ザリュースは知っていた。旅で得た情報でたまたま人間が話していた内容にそう言う神がいたと言うことを。そしてその神々を信仰する国こそスレイン法国であり人間以外の種族とほとんど敵対していると言うことを。

 

 そして、その神々が生きてたのは600年前以上だと言うことも。

 

「…………お前は随分昔のリザードマンなんだな」

 

「あ、その反応は相当時間経ってるな?元気には…………してなさそうなのがいいと思うが」

 

 相当の時間が経ったはずなのにケラケラと笑うリザードマンに、再び呆れたように肩を落とす。

 

「…………スルシャーナ神が没して既に600年以上は経っている。それくらい眠っていたんだよお前は」

 

「600年!?そりゃあ身体は動きにくくなる訳だ。あと俺が氷漬けになっていた場所も地表に出る訳だ」

 

 本来ならもっと地下に眠っていたと思っていたリザードマンだが、年月によるゆっくりとした地殻変動にてすこーしずつ地表へ出ていたのである。

 

「ところであんた、名前は?」

 

 暖まったのか土からもこっと腕を出してから身体に乗っている土をどかすリザードマンがザリュースに問いかける。

 

「いきなりどうした」

 

「いやなに、命の恩人の名前を知らないのはどうかと思って」

 

 ザリュースは何度呆れたか分からない。確かに感謝はされどこのリザードマンの生命力を考えたら勝手に溶け出したあたりで動き出しそうな気もした。

 

 だが、悪い気はしないので名乗ることにした。

 

「ザリュース・シャシャ。いまは旅人をしている」

 

「旅人!道理で氷山に来ていた訳だ…………ザリュースさん。俺はメルト・ダウンって名前だ。改めて、ありがとう。ここで出ていなければ出てたのはいつか分からなかった」

 

 メルト・ダウンと名乗ったリザードマンは深々と頭を下げた。

 

 名前の物騒さはこの世界の住人には知らないが、彼はリアルでは原子力発電所に勤めており、使い捨て扱いな点検員として働いていた。

 

 それが知らぬうちに骨髄に染みたのか大抵のアバター名は原子力に関わるものになっている。

 

 閑話休題(それはさておき)、本気で感謝しているメルトを前に、ザリュースは恥ずかしそうに唸る。実は勘で掘り当てただなんて言いにくい。本当に偶然だっただけであって救うなど思ってもいなかったのだ。

 

「しかし旅か。今の世界ってどうなってるんだ?」

 

「世界…………やはり昔の世界を知っているんだな」

 

「おうとも、少なくともザリュースさんよりも当時のことは知ってるはずだ」

 

 その発言を信じるなら目の前にいるのは太古の生き字引。ザリュースの旅の目的である部族の繁栄、そしていずれ来る食糧難への対抗策を知っているかもしれない。

 

「なあ、ザリュースさん。俺もアンタの旅に連れて行ってくれないか?」

 

 思考の海に沈みそうになった時、メルトから声を掛けられた。

 

「あれから600年もたってるんだ。世界だってかなり様変わりしているはずだ。だからその世界ってのを見てみたいんだ」

 

 そう語るメルトの目はキラキラと光っていた。まるで夢から覚めたことで見ていた夢が現実か確かめようとする子供みたいに。

 

 そんなことを輝く目で言われたらザリュースは苦笑せざるを得ない。流れのリザードマンという扱いになっているため他部族はもちろん、異種族からの当たりもやや強めの旅となっている。

 

 言わずもがな危険な旅ではあるが、あの氷漬けから簡単に生還したメルトなら共に生き残れるかもしれない。

 

「あ、もしかして旅が危険だから~とか言っちゃうタイプ?大丈夫、俺、かなり強いから」

 

『公式チート』や『非公式レイドボス』と呼ばれたメルトを知るものが居れば「かなりで済むか!!!」と叫びそうだが、残念ながらこの場にはそのような者(プレイヤー)はいなかった。

 

「ふ、いいだろう。俺もロロロ以外に喋る相手が欲しかったんだ」

 

「ロロロ?ほかにも誰かいるんですね」

 

「ああ、俺よりも寒さに弱いから遠くで待機させている」

 

 多頭水蛇(ヒュドラ)のロロロはザリュースよりも寒いためもっと暖かい場所で待機させているためここにはいない。

 

「へー、どんな人なんだろう。挨拶はしとかなきゃな」

 

 ロロロを同じリザードマンと勘違いしているメルトにふっと笑いながら勘違いを正す時を少し楽しみにしたザリュース。後にロロロはメルトにも可愛がられてザリュースに「甘やかしすぎるな」と怒られることになるが、詳しくはここで語ることではない。

 

 こうして、ザリュースはメルト・ダウンという新たな道連れを得て旅に出た。

 

 兄の下へ戻るまであと半年、その長いようで短く濃い内容の旅で得た物は、後に大きくリザードマンの運命を変えることとなる。

 




ついに明かされた名前、『メルト・ダウン』。次回は時を飛ばして彼を連れて村に戻ってからの生活になります。
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