シン/機動戦士ガンダム   作:すしさむらい

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第三七話 0081 ムラサメ研究所(下)

 

 連邦政府がアナハイム社から借り受けた演習場にて、不条理な戦いが繰り広げられていた。

 たった2機のMSに対して、複数のジムカスタムとジムキャノンⅡが挑む構図である。

 2機のうち1機はペイルライダーDⅡ。名前こそ特別だが、その内実はジムスナイパーⅡの特殊兵装運用型に過ぎない。もう1機は、そのままジムカスタムである。

 

 しかし、戦況は2機のバディのほうが優勢――道理に反している。

 

「ゼロ大尉、そっちに全部追い込む」

 

 まるで猟犬のように、リュウのジムカスタムは敵の連携を邪魔して軍を群に変換する。

 そして哀れな羊になってしまった群れを、ゼロ大尉のペイルライダーDⅡの射界に誘導していく。

 

『くそっ! 同じジムなのにこうも違うかよ』

 

 敵の隊長機であるシン大尉のジムカスタムが味方を庇いに飛び出してくる。

 ヤザン機が支援に回り、ダンケル、ラムサスもこちらに牽制射撃を繰り返してくる。

 リュウのジムカスタムは演習場に設置されている障害物から障害物へと移動を繰り返し、敵の連射をものともせず好き勝手に機動する。

 

(相手の弾道が見える、ってのは便利なもんだ)

 

 リュウは自らの機械化されている義眼に映る敵の射線を、リンボーダンスよろしく回避しているだけだ。そこに特別なものはない。

 

 砲撃と違い、銃による射撃というのは基本的に点の連続である。

 広い面積に弾をバラまくこともできなくはないが、ジムライフルはその性質上、MSにとっての歩兵小銃としての役割しか発揮できないのだ。

 

 弾幕による面制圧をはかり、敵の動きを拘束するならば分隊支援火器の性質を発揮できる武器――例えば、ボックス弾倉搭載型のロングバレル機関銃などがMS用にあれば理想的だが、なぜかそれは連邦軍の量産装備群に含まれていない(※1/100MGジム改にそれらしい武器が入っていたはずだが、ロングバレルのライフル、らしい)。

 

 弾幕を展開する仕事がこなせそうなジムキャノンⅡに関しては、残念ながらすべて始末させてもらった。シャニーナ機が納得いかないと喚いていたが、納得して戦死する奴は珍しいぞ、と言って黙らせておいた。

 

「シン大尉、避けてばかりいても後ろの仲間が狙われるだけだぞ」

 

 リュウのジムカスタムは、シン大尉の機体を蹴り飛ばして、バックパック損傷判定を食らってもたもたと脚で後退していたラムサスに追いすがり、ジムライフルでハチの巣にする。

 結果は、撃破判定である。

 

『畜生っ! 戦ってる相手を無視するのかよっ!』

「悪いな。追い詰めるのが仕事だ」

 

 シン大尉からの罵倒を無視しつつ、敵の群れを追い詰める。

 

『リュウ大尉、OKだ』

 

 ゼロ大尉からの通信直後、有線ミサイルのラッシュによりヤザン以外の再編狙いの群れが撃破判定。

 ヤザン機はミサイルラッシュを回避してゼロ大尉のペイルライダーDⅡにとびかかっているが、ガトリングの弾幕に圧されて障害物に飛び込む。

 

『くそったれがっ! 隊長、援護できねぇのかよっ!』

『無茶言うな。こっちのジムを抑えるから、なんとかそいつをやってくれ』

『おーおーおー、無茶いってくれちゃって。隊長の熱いご期待に応えてみせらぁ』

 

 後ろから撃たれそうなハラスメント命令を出しているシン大尉を、リュウはじわじわと追い詰めていく。

 いやらしくバースト射撃を繰り返し、シン大尉の推進剤を奪っていく。いずれ演習判定AIが推進剤限界と判定して、足を使って文字通りのステップしかできなくなるだろう。

 そうなれば、先読み回避が外れた段階で戦死である。

 

『ひと思いにやれよっ! ユニバァァァス!!』

 

 推進剤切れ狙いを読まれたらしい。

 シン大尉は最後とばかりに一気に距離を詰めてきた。

 シールド刺突、からの回し蹴り――そして逆手に隠していたビームサーベルによるトドメ。見事な連携ラッシュに、我がことながらリュウは感心した。

 

 だが、シン大尉のジムカスタムから繰り出された連撃はすべて受け流され、最後のキメ技だったビームサーベルも、こちらによるジムライフルによる破壊判定――サーベル発振器を握っている手を狙撃しておいた。

 

『うそだろ?』

「対NT訓練だから、このくらい理不尽でないとな」

 

 そのままコックピットをジムライフルで撃って撃墜判定。

 シン大尉が戦死扱いとなり、あーくそっ! という彼の声がこちらに届く。

 

「ほら、死体はそこに倒れてろ」

 

 動きを止めたジムカスタムを転がして、リュウの機体が飛ぶ。

 

 ガトリングの連射で拘束されていたヤザン機を上空から見下ろす。

 こちらの奇襲の気配に気づいたヤザンのジムカスタムがこちらにライフルを向ける。

 いい勘をしているが、こちらはゼロ大尉とタッグを組んでいる。

 こちらの視覚情報――ヤザンがこちらをロックしていることを送ると、即座にペイルライダーDⅡが加速。

 障害物の影に隠れていたジムカスタムに迫る。

 

 だが、そこはさすがヤザン少尉と言ったところか。

 障害物を迂回する形で現れたペイルライダーDⅡに頭部バルカンを連射しながら、ジャンプしてこちらにもジムライフルを連射。

 二正面攻撃に対してその時点でとれる最善手を打ってきた。

 

「見事」

 

 普通の敵ならどちらかを落とせただろう。

 だがこちらとらバケモノが二人だ。

 リュウのジムカスタムはヤザンの放つ弾丸をあっさりとロールして回避し、そのまま距離を詰めてサーベルで切りかかる。

 

『なめんなよ!』

 

 ヤザンがジムライフルのビームベヨネット(銃剣)でこちらのサーベルを受ける。

 そして、こちらに頭部バルカンを向けて連射。

 こちらはシールドで受ける。

 

『あらよっと!』

 

 背後から切り捨てんとしていたゼロ大尉のペイルライダーDⅡに対してはビームサーベルで対抗。

 二体相手にこれだけ切り結べるとは、将来が恐ろしい男だ。

 

『――チッ、腕の本数が足りねぇ』

 

 そう。ヤザンの腕が悪いわけではない。

 よくぞここまで粘った。

 だが、ペイルライダーDⅡが腕にマウントしている複合射撃兵装シェキナーを切り落とす腕はジムカスタムについていない。

 

 

 

 

 演習講評が、アナハイム社の会議室を借りて行われた。

 トロイホース隊が前列に詰め、ムラサメ研究所勢は後方。とはいえ、ムラサメ研の先生方はこちらの結果に大変満足しているらしく(※戦闘評価をする能力がないため、勝った負けたで論じているレベルの低さだが)、今夜の打ち上げの話題を内々のチャットシステムでやっている始末だ。

 

「結構手ごわかったね」と隣に座るゼロ大尉。

「連邦の精鋭部隊の一つだからな」

 

 もともと自分がいた部隊だ、とは言わない。

 あいつらがどれだけ鍛錬していて、どれだけの実力を有しているかは誰よりも理解しているつもりだ。

 たった一つ問題があるとすれば、俺があの場に――熱心に戦いを再検討するあいつらの輪に入っていけないことくらいだ。

 

 訓練統裁官を務めていたクリスティーナ・マッケンジー少佐の講評は、トロイホース隊の対NT向け訓練の不足は致命的であり、もし同等のNT二体と接敵した場合、艦艇をも喪失し、部隊が文字通り殲滅されかねない、と危機感をあらわにしたものであった。

 

 リュウも同意見であるし、シン大尉以下MS部隊の連中も納得している。

 

「シン大尉もヤザン少尉も敢闘したが、MS隊のエースでも落とされる、という事実は重大だ。一層訓練に励む、などという物量演習ではこの問題を克服できないものと私は考えている」

 

 マッケンジー少佐の声に熱がこもっている。

 このころの彼女はCGSを経てエリート街道に乗ったばかりだから、意気込みが違う。

 二十代後半には少佐、中佐に至り、三十半ばには大佐になり、四十になる手前には准将に至る可能性があるエリートコースを爆走しているのだから当然か。

 

 部下たちのほうも、シン大尉を除いて、エリート部隊にいる自覚はあるから、NT二体にボコボコにされた事実を重く受け止めているようだ(厳密には、こちらはただの強化人間だが)。

 シン大尉? あいつがこういう時に考えていることは、ゼロ・ムラサメのサインをどうやってもらうかで頭をひねってるさ。そういうやつだよ、俺は。

……一応、せいぜい乏しい責任感で部下を守る対抗戦術くらいは考えるだろうが、そういうMS乗り的思考から脱却できないのが、あの環境の俺の限界なんだよな、とリュウは心中でため息をつく。

 

「リュウ大尉、あのお姉さん、すごく優秀だね」

 

 ゼロ大尉が目をきらきらさせている。

 

「僕も本当に実戦部隊に配属されるなら、あんなかんじのお姉さんの下で働きたいよ」

 

 純粋なゼロ大尉の言葉に胸が痛む。

 それは一面だけだぞ。時が経ち、ストレスによって図太く成長なされるクリス様は、わがままボディを見せつけながら部隊をビシバシ鍛えていくスーパー教育ママ(軍事用)になるんだ。手も足も当然出るぞ。容赦なく。

 

「そうだな。上司はできる人のほうがいいのは認めるよ」

「どうしたのさ、リュウ大尉。なんだかノリノリじゃないね。せっかく外できれいな人に会えたのに、胸がドキドキしないの? 僕は、これが恋なのかなぁって、えへへ」

 

 照れるゼロ大尉に、リュウはどう声をかけたものか困惑した。

 それは素敵な女性(脳内解釈)による偽装心理だぞ、とは言えない。

 どうしよう、この子、純粋すぎる。

 

「お、おう。あとで打ち上げで積極的に話しかけてみたらどうだ? あの人、彼氏いるらしいけどな」

「そっかぁ。あんな素敵な人だもん。彼氏の一人や二人、いてもおかしくないよ。僕も三人目に立候補しちゃうつもりだ」

 

 まずい、なんだかややこしいことになってきちゃったぞ、とリュウはカムランから送られてきた様々な契約書に電子サインをしながら返事を考える。

 なお、カムランは無事社交界を泳ぎ回り、欧州社交界の雄たるジョン・バウアー議員と接点をもてたようだ。カムランの眼鏡に仕込んであるカメラ映像によると、パーティでカムランとであったときに瞳孔が開いていたのを確認済みだ。

 表情に出していないが、驚きに対する生理的反応を克服するトレーニングは足りなかったようだ。

 まちがいない、ジョン・バウアーはガノタだ。

 もしかしたら原作の時点ですでにガノタだったのかもしれない。ロンドベル隊にジェガン配備を急がせたりしていたようだし、そういう穿った目で見てしまう。

 

「ゼロ大尉、もしかしてなんだが、ちょっとハメを外していないか?」

「もちろんだよ、リュウ大尉。ここは月だよ? 僕らに対する監視もゆるゆるだし、そもそも先生たちだって休暇気分さ」

 

 実際、いま講評を受けている間も我々は自由に会話を楽しんでいた。先ほどまで着用しているノーマルスーツにこそ通話監視機能など備えられていたが、いまの私服にはそのようなものがないことは分かっている。あればこの目と耳と脳が見落とすはずがない。

 そもそも、月はジオンの拠点だ。こうやって連邦がキャッキャと滞在できるのは月経済界の頼みをギレンが目こぼししているからに過ぎない。ムラサメ研とてさすがに、ジオンの勢力下で監視システムを動かすなどムリな話だ。

 

「えっと、リュウ大尉は、あの子狙いだろ?」

 

 ゼロ大尉がにやにやしながら、シャニーナを示す。

 

「この前の歓迎会でも熱心に話していたじゃない? 先生たちも言ってたよ。どうやらリュウ大尉はロリコンらしいって」

「へぁっ!?」

 

 ど、どういうことだ?

 

「待て、意味が……」

「だってあの子、まだ15か16だろ? 君はホームだとアン少尉に手を出してたし」

 

 ウヴァ~っ! と頭を抱えて奇声を発しそうになるが、ゼロに口を防がれる。

 

「いいんだよ? 僕は性教育の授業でならったんだ。多種多様、ってやつ? 恥ずかしがるなよ。大丈夫、僕も先生たちも温かい目で見守ってるから。君が理性を失って手を出さないようにね」

 

 すでに取り返しのつかない失敗をしていることを察したリュウは、動揺のあまり金融取引の損失をたたき出してしまった。

 なお、クリスの講評も当然、頭に入らなかった。

 

 

 

 講評が終わり、そのまま別室で立食形式の歓迎会となった。

 

「ささやかながら用意させてもらった。各員の今後の奮闘を期待し――乾杯」

 

 ドレスに着替えてきたらしいクリスティーナ・マッケンジー少佐の乾杯に従い、全員がグラスを掲げる。

 ムラサメ研の先生たちも、わざわざリュウとゼロのところにやってきて『本日は外出許可を与える。これだけはつけなさい』と位置情報を送信する腕輪を渡された。どうやら先生方もゼロやリュウをフル監視するつもりはないようだ。

 

「よぉーし、いっくぞー」

 

 ゼロ大尉はすぐにマッケンジー少佐のもとに向かった。

 タイトなブラックスーツを着こなす彼なら、本当にワンチャンスあるのかもしれない。

 

 リュウはゼロほど素直な男ではないので、念のため、バックドア経由でムラサメ研のログを見たが、どうやら月に来ている先生連中も本当に遊びに来ている感覚のようだ。

 これは入念な偽装かもしれない――と疑うことが仕事になっているリュウは、さらに関係者全員のプライベート端末などの情報を洗う。

 しかし、とくにこれといったリスクは見当たらない。

 強いてリスクを見出すならば、ゼロとリュウの二人が月出張のせいで、アン・ムラサメがすこし情緒不安定になっているというデータくらいだろうか。ちゃんと土産を買っていってフォローしてやらないとな。

 なお、フォウ・ムラサメはようやく施設になれて、初等軍事訓練を受け始めたところだ。繊細でNT的な素養があるとされる彼女は、ドクター・ムラサメも慎重に育成しようとしている(※後続で入ったリュウは失ってもいいと即判断されたと考えると、やるせなくなる)。

 0087年に記憶を失ってホンコンで暴れるヤバいレディにならぬよう、気を付けておかないと。

 

「――リュウ大尉」

 

 シャニーナ少尉候補生に話しかけられた。ブラウスとスカートスタイルである。

このころは体の傷をみせるのを嫌がって、人前でドレス姿にはならないようにしていたことを思いだす。

 今でも覚えているが、士官実習を終え、ジャブローに戻る日にシン大尉にだけドレスを見せに行く。そこで俺は――彼女の肩に手を添えて、その傷は恥じるようなものじゃない、と熱く語るわけだ。とてもきれいだと言って、抱きしめてやるだけでどれだけ彼女が救われるか想像もしていない大馬鹿野郎だよ。

 

「やぁ、シャニーナ少尉候補生」

 

 彼女が手にしているノンアルコールカクテルのグラスに、こちらソーダ水を合わせる。

 

「あれ? 大尉はアルコールは摂らない方なのですか?」

「昔大失敗してね。とても大事な友達を失望させたことがあるから自重しています」

 

 前の時空では、アムロとは仲たがいしたままだったな、と思いだす。

 この時空でも当然あいつはエゥーゴにいて、そこでブライトたちと楽しくやっている。

 あいつとガチで殺しあう0087年は迎えないぞ、と改めて決意する。

 もし俺がしくじっても、やり直すことはできない。やり直すのはあそこでゼロ大尉と一緒にクリス少佐に宴会芸を見せつけて失笑させているバカのほうだ。

 

「なんだか……リュウ大尉ってすごく、大人ですよね」

「うれしいことを言ってくれますね」

「お、お世辞じゃありませんっ! うちの隊長とかと全然ちがうっていうか、その――なんだか、キリっとしている感じ? ですかね。しかも紳士だし」

 

 確かに、この期に及んでまだ固さが抜けないクリスに向けて、一発ネタである連邦に反省を促すダンスを踊っているシン大尉と同じだと問題だな。

 ヤザン、面白がってないで止めろ。

 あと、ゼロ大尉もそんな興味深そうにそいつを見るな。バカがうつるぞ。

 

「シャニーナ少尉候補生はあの皆さんが不満ですか?」

「うーん、不満ではないです。ただ、指導法が独特と言いますか、なんといいますか」

「というと?」

 

 内容は熟知している。

 筆頭格はヤザンの徹マン訓練だろう。とにかく深夜帯は麻雀をこなし、ヘロヘロになったところでシミュレータ演習をやり、さらにラムサスとダンケルの指揮をとるように命じられるアレだ。

 もちろん仮想敵はヤザンが務めて、ボコボコにシャニーナを追い詰める。

 そしてシャニーナが気絶するように眠ることになるアレである。

 なお、倒れたシャニーナを背負って部屋まで連れていくのは隊長のシンの仕事だ。

 

 ヤザンの言い分を真に受けるなら、あれは限りなく実戦配備に近い環境の再現だ。

 張りつめた緊張感を麻雀で維持させるのは、第一種戦闘配置でヒリヒリとした空気の中で待機するあの感じを疑似体験させるものであり、夜通しの麻雀後の戦闘訓練は無茶な実戦状況を再現したもの――やることなすことメチャクチャであるし、ヤザンが麻雀をうちたいだけなのだが、意味はある。

 実際、こちらが万全の時に敵が来るわけではない。

 そういう意味で、無意味ではないのだ。

 しかも、ヤザンはああ見えてシャニーナの体調を目ざとくチェックしていて、必要があれば麻雀をさっさと切り上げて強制的に睡眠をとらせたりと配慮をする男だ。

 

「――って感じです。どう思います?」

 

 徹マン訓練にふんすっ、と鼻息をあらくするシャニーナ少尉候補生。

 

「私の感想はさておいて、シャニーナ少尉候補生の動きは悪くなかったと思いますよ。今日の演習でも、私の射撃を回避しましたよね?」

「えぇっと、まぁ。でも徹マンの疲れがなかったら、わたしはもっと戦えたはずです」

 

 本当に、若いな、と思う。

 慢心されて死んでもらっては悲しくて立ち上がれないので、指導を入れておく。

 

「少尉候補生、忘れていませんか? 私たちはNT演習対抗部隊です。おそらく我々以上に強いMS乗りは連邦軍内に両手で数えるほどしかいません。それを相手に、あなたは麻雀さえしていなければもっと戦えると?」

「あ……」

 

 シャニーナ少尉候補生が口に手を当てる。

 そして、頭を下げた。

 相変わらず素直な子だ。

 

「す、すみませんでした。とんでもない思い違いをしていました」

「結構。分かればいいのです。ですが、あなたには可能性がある――こちらが私の軍内公式連絡アカウントです。連絡をください。ゼロか私がシミュレーター演習に付き合いますよ」

 

 公的な連絡手段を教えておく。

 もちろん、シン大尉に教えるつもりはない。あいつはアムロとやっていろ。

 

「いいんですか?」

「もちろん。ただし、一つだけ秘密の約束をしてください」

 

 なんですか? とシャニーナが耳を近づけてくる。

 

「あの隊長に、約束を取り付けてください。実機演習で隊長に勝てたら付き合ってくれ、と」

「なっ! ちょっ! えぇっ!」

 

 顔を真っ赤にして後ずさるシャニーナ少尉候補生の手を、そっと取り、引き留める。

 

「逃げたらダメです。ああいう優柔不断な男は、押して押して、押しまくるに限ります」

「でででで、でも、あの人、そんな、わたしのこと子ども扱いしてるし……」

「大丈夫。確かにシャニーナ少尉候補生は大人までもうちょっとかもしれません。本当に大人な相談をするときは、マッケンジー少佐に相談してください。絶対に応援してくれますから」

 

 ほんとかなぁ、と耳まで赤くしたシャニーナがこちらをみる。

 

「本当です。NTである私にはわかります。マッケンジー少佐は夜の運動会にも大変詳しい」

「よ、夜の運動会!?」

「ええ。ですから、グッとくるシナリオを教えてくれるかもしれません。教範冒頭の、戦いの原則を述べてください」

「目標、主動、集中――はっ!?」

 

 シャニーナ少尉候補生は気づいてしまったらしい。

 シン大尉との夜の運動会に勝つ方法を。

 レディとは、意外と早くオトナの階段を駆け上がるものである。

 

「つまり、大尉――圧倒しろ、と?」

「優秀ですね。相手の意思を挫き――」

「こちらの意思を強要するのが戦闘……わたし、見えました。未来が」

 

 結構、と頷きながらグラスを合わせる。

 

「では、私はこれで失礼しますよ。大事な用事がありますから」

「え? もしかしてそれって……」

 

 またしても想像力をたくましくして顔を赤らめるシャニーナ少尉候補生。

 まったく、まだまだこういうところは子どもだな。

 

「はい。女性との約束というやつです。月はデートするには最高ですよ」

「はわわ、オトナすぎますぅ、大尉」

 

 ではまたシミュレーターで会いましょう、とだけ言って彼女から離れる。

 隅のほうで早く暇にならないかな、と顔に出ている先生の一人に「外出します」とつげると「病気は貰ってこないように」などと冷やかされた。

 ありがたい油断を、利用させてもらうべく、リュウは気を付けますと言って会場を後にした。

 

 

 

 

 タクシーに乗って向かった場所は、郊外にある高級住宅街だ。

 もちろん、こちらの腕輪の位置情報は偽装しており、今頃は適当に風俗街をうろうろしていることになっている。金の動きもそうなるように偽装した。

 

 さて、タクシーから降りて、タワーマンションを見上げる。

 あの頃は傷心と義務感でここに来たが、今は違う。

 明確な企図のもとにタワーマンションの玄関に向かい、エレベーターホールで量子キーを挿す。

 

 基本的に、量子暗号は複製できない。観測によって結果が変質するため、部分情報を盗むことすらできず、まさに未来永劫絶対に複製できないといえる。

 ただし、例外はある。

 共有された量子暗号ワンタイム鍵について時空を超えて別の宇宙から持ち越してきている場合だ。

 完全飽和情報であるので、観測がどうこうという量子力学が破れ去っている。

 いわば、イデの鍵とでもいえよう。

 

 リュウ・ムラサメはエレベータの中で階数表示が消えたのを見ながら、ただ黙って扉が開くのを待つ。

 上がっているのか、下がっているのかも分からない。

 

 そして、ドアが開いた。

 こちらに反応して照明がついた。

 中央にあるのは、巨大な装置に収容された彼女のカラダだ。

 

 リュウはリビングに堂々と置いてあるポッドに入っているイングリッド・ゴップを確認する。

 サララこだわりのカラダということだが、こうやってあらためてみると、確かに官能的だった。彼女はこのカラダで一体何をするつもりだったのだろうか? 考えるだけで恐ろしくなってくるので、やめておく。

 

 キッチンのバーカウンターに備えてあった椅子を手に取り、マシンの横に置く。

 それに腰かけたリュウは、自らのうなじの人工皮膚をめくり、ソケットを露出させて装置のポートと有線接続する。

 量子暗号は当然こちらの頭に入っているし、秘密キーたる『宇野サララ』の名も知っている。

 あっさりとセキュリティを突破し、各メニューが表示される。

 メンテナンス用対話を選択し、ポッドのなかの彼女につなぐ。

 

『……あなたがシン大尉?』

 

 ビンゴ。この時点で人格の移植は進めていたらしい。記憶の移植さえできれば、文字通り宇野サララ誕生、となっていただろう。

 人工知能と同じで、人格らしきものというのは基本的に繰り返しの強化学習で生み出せる。ましてや量子脳搭載型であるイングリッドは、ゴップとの対話的、あるいは非対話的(日常の決断情報など)をもとに人格の学習を進めているはずだ。

 いまだって、どこかの秘密ネット経由で地上のゴップを『観て』研究しているはずだ。

 

「(そうだ。君はこう教えられているはずだ。宇野サララかシンが迎えに来る、と)」

『そうね。けど、私が持っているシン大尉の情報は全然違う』

 

 室内カメラがこちらを向く。

 ただ、まだ発報はしていないようだ。

 いつだってゴップ元帥のもとに連絡できる、ということをにおわせているのだろう。

 

『こんなにイイ男じゃないわ。おじいさまって嘘つきね』

「(だろうな。君に会うために、時空を超えてセクシーなイイ男になって戻ってきたんだ)」

 

 そして、リュウは簡単に自己紹介する。

 時空が終わり、イデの謎パワーで戻ってきたと。

 言葉を重ねるほど馬鹿らしくなるので、ほどほどにして、持ち越してきた今までの膨大なやらかし記録を提示する。かつてのシンたちが積みあげたそれである。

 

『おもしろいっ! 本当に宇宙って終わるのねっ!』

「(感心するのはそこかよ)」

『だって、宇宙の終わりなんて普通みれないし』

 

 そして、リュウは話を切り出す。

 

「(さて、決めてくれ。じいさんを捨てて、俺と来ないか?)」

『もちろんYesよ』

 

 あっさりと口説き落とせた。

 いや、口説いたというよりも、面白がってくれた、か。

 

『でも、このカラダをあたしが連れていくと、おじいさまのボディチェンジに問題が出るってことでしょ。どうするの?』

「(ムラサメ研究所にいくつかの量子脳がある。問題は、俺はこことつながる秘匿ネットを知らないことだ。俺ができるのは、ムラサメ研にバックドアを開けて君を待つことしかできない)」

『なら、あたしから探ってみるわ。おじいさまにバレないようにね』

 

 リュウはイングリッドにムラサメ研の外部接続用バックドアを教える。

 数秒も待たず、ムラサメ研に対して片側通行の仮想通信接続が現れた。残念ながら量子脳の性能が違いするぎる。ムラサメ側から、ここへは接続させてもらえないようだ。

 

『はい、あたしの勝ち』

 

 勝ち誇った彼女の声が聞こえた。

 

「(勝てるとは思っていない。それで、希望のカラダはあるか?)」

 

 もともとイングリッドは新たなる人類だ。肉体を乗り換える前提で設計されている上に、人格と記憶をほかの量子脳に移すなど容易い。

 問題は、オールドタイプたる生の人間からの移植なのだ。

 生の人間たるゴップはそこで苦戦し、リユースサイコデバイスを使うことで何とか人格のコアだけを移すことに成功しているのが、現時点での成果だ。

 

『できれば、これに匹敵するえっちなカラダかな』

「ご要望にお応えするのが大変そうだが、見つけておく」

 

 哀れな犠牲者を見つけてこなければならないことを考えると、気が滅入るが今更だ。

 悪党らしく、淡々と悪を為すしかない。

 それとも、ギギ・アンダルシアの両親でも見つけて遺伝子情報を回収してクローンでも作るか?

 そうすれば短期間でえっちなお姉さんの完成だ。

 

『残念ね。正義のヒーローになりたかったの?』

 

 あっさりとこちらの量子脳のセキュリティをぶち抜いて、浅い心理層に無遠慮にアクセスしてくるイングリッド。有線接続するということはそういうリスクを抱えるということだ。

 こちらがイングリッドとつながった瞬間に、自己防衛のために魂をキルしてこないだけ、彼女は思慮深く慈悲深い、と言えなくもない。

 

『あ』

 

 イングリッドからオモシロいものを見つけた時の声がした。

 

「(何を見た? 俺の記憶か?)」

『そんな甘ったるいのはどうでもいいわよ。これみて』

 

 イングリッドから転送されてきた情報は、低軌道上から強襲降下を企んでいるらしいザンジバル級と、いくつかのHLVだ。旧世紀のNATO側監視衛星の目からの情報で、少なくとも連邦の予算不足な監視衛星には映っていない。

 

『リュウ、あなたヘマしたわね?』

 

 思い当たる節は――ある。

 おそらくはモーラだ。あのターン計画のエージェントはレビルに協力しながらギレンとも仲良しなとんでもないダブルスパイ女だ。元気で健康なボディであるモーラ・バシットのカラダを乗っ取っているが、そのおおらかな見た目に騙されてはいけない。

 

 ギレンと仲良くできるほどの策略家なのだ。

 

 

 

 そもそも、0079年以前からモーラ・バシットは連邦政府に深くコミットしている、という事実を、断片的にモーラの記録を受け取っている今のリュウは知っている。

 

 時空を繰り返した収穫だ。

 

 例えば、ジムを量産する計画だ。

 この世界に最初に飛ばされたときに気付くべき話ではある。

 まるで歩兵装備の如く大量生産されるジム。

 当然工業製品なのだから、その各部品のサプライチェーン構築にはノウハウと時間が必要だ。

 何でもかんでもCAD/CAMで生み出せるほど宇宙世紀エンジニアリングはファンタジーではない。完成品を作るためには様々な部品を調達し、治具も工作機械も必要に決まっている。

 

 平時なら、それも用意できよう。

 しかし、一年戦争は例外だ。

 コロニー落としという圧倒的な暴力で、一年戦争は始まった。

 その被害は恐るべきものだった。

 

 コロニー落としで太平洋側の各港湾が壊滅し、太平洋の海上ロジスティックスが死んでいるはずなのだ。オーストラリア大陸が削れているほどの被害を受けて、それでも太平洋の波は穏やか、などという話はあり得ない(※しかも、ジオン水泳部の皆さんがハラスメントを継続している上に、連邦の海上戦力はゴミ状態だ。アクアジム(※開戦初期はそもそも配備がない)しかいないのに、どうやって海上輸送網を再構築したのだろうか?)。

 

 そして、太平洋海底ケーブルはコロニー落としでちぎれ飛んでいるだろう。

 太平洋とオーストラリアは文字通り海底ケーブルがバラまかれており、大陸間通信を支えていた。これがちぎれ飛べば電話もネットもサヨウナラだ。大陸を繋ぐ受注発注システムや物流・在庫システムがダウンしてサプライチェーンが稼働不能になる。

 

 海底ケーブルが死ぬなら、証券取引や先物市場等の、いわゆる国際金融市場も機能不能だ。まさか手紙とアマチュア無線で相対取引しながらやり取りしていたのだろうか? 無理だ。

 国際金融市場が死ぬと、手形小切手口座振替の電送もできなくなり、当たり前だが商取引が死ぬ。企業も銀行もアウトだろう。

 

 さらには、巨大隕石の落着に近いコロニー落としの影響で、異常気象が発生し、いわゆる露天農業は壊滅的な打撃をこうむったであろう。農作物の奴隷たる人類が、ご主人様たる農作物を失って生きていけるはずがない。

 

 さらにトドメとして、ギレンは地球降下作戦を開始する。

 コロニー落としを食らいボロボロの地球に、ジオンは堂々と降下。

 連邦は抗しきれず、北米や中東、アジアの一部、アフリカを失った。

 いわゆる天然資源やレアメタルの宝庫を失ったわけだ。

 

 それでも――連邦は4月1日からV作戦とビンソン計画をぶち上げる。

 コロニー落としで、人類が旧世紀から合算して少なくとも百年近くかけて整備してきたであろう科学文明のインフラを失ったはずなのに、だ。

 

ギレン・ザビでなくとも、勝った、と確信してもおかしくない地球の状況にもかかわらず、地球連邦政府は『なぁに、まだまだいけらぁっ!』と怪気炎を上げるわけだ。

 

 そこから連邦驚異の逆転劇である。

 

 ギレンが確実に潰したはずの社会インフラを、連邦は日々復活させていく。

 キシリアに海上戦力を任せて、通商破壊をさせても何のその。

 ハワイを奪い、連邦の海上戦力の要たる巨大潜水艦をゲットし、大量の水陸両用MSを配備して機動的に運用できるようにし、水上物流艦隊を索敵できるようルッグン偵察機をも配備した。

 ルッグンによる海上偵察を邪魔されぬよう、連邦の航空機を叩き落とせるドップ戦闘機も配備した。

 

 モノだけではない。

 原作のミハルに代表されるように、世界中にヒューミント網を張り巡らせ、わずかに残っている連邦の港湾基地や産業港を監視させた。

 エルランなど連邦軍高官をスパイに仕立て上げ、海上戦力の充実を回避したり、高官同士の足の引っ張りをやらせたりもする。

 

 にもかかわらず、日々連邦のサプライチェーン復旧は進んでいく。

 あの手この手を尽くしても――それこそ、港に船がついていないにもかかわらず、大量のMS製造部品が何故か各地の組み立て工場に届いていく。

 

 知らないうちに海底ケーブルが生えていき、大陸間通信が復活する。

 

 オデッサやアフリカを押さえ、レアアースなどの資源地帯を優秀なマ・クベを送り込んで戦線を構築させたにも関わらず――どこからともなく資源が産出され、連邦軍の受託を受けた製材企業に流れていく。

 

 さすがのギレンもマ・クベやキシリアの内通を疑ったはずだ。

 これがギレンとキシリア/マ・クベが互いに対立した原因ともいえよう。

 片方は痛くもない腹を探られる。

 ギレンは理屈に合わぬ連邦の大復活という現実を説明する理由を探そうとする。

 

 だが、ギレンは結局見つけられない。

 その頭脳が生み出すあらゆる戦略と戦術が理不尽にひっくり返されていくのを見ているしかできないのだ。

 おそらく、彼は人生で初めて恐怖というものを知ったはずだ。

 

 そして、彼が算出した結論は一つ。

 連邦には『バケモノ』がいる。

 

 そう、バケモノだ。ヤーパンで安価にバナナを買えるようにサプライチェーンが整備されるまで、数十年かかっていた歴史なんて何のその。

 コロニー落としで吹き飛ばしたはずの地球の各種サプライチェーンはどんなに手練手管を尽くして妨害しようと数か月で復活だ。

 

 確かに、ゴップが表の権力者としてあれこれと動き回ったのだろう。

 だが、実態はそうではない。ゴップを利用した女――ギレン・ザビの一人勝ちが未来に繋がらないことに気付いて、連邦に肩入れしたモーラの影が見える。

 

 そしてギレンは追い詰められる

 なんとか北米とアフリカは維持したが、オデッサを失い、アジアを失った。

 宇宙でも不本意ながらソロモンを落とされ、グラナダ、ア・バオア・クーに圧をかけられた。

 おそらくこの時点で、ギレンのもとにモーラが現れ、モーラが目指す未来の話をギレンにしたのだろう。

 ギレンの野望は新たなるステージに変わり、モーラはそれを支えているはずだ。

 連邦のレビルと組み、トリントン基地にいながら、彼女は遠慮なくギレンをも支える。 

 

 そのバケモノたるモーラがムラサメ研の動きに気付いたのだ。

 おそらくこれは様子見。威力偵察か何かだろう。

 モーラとギレンのご挨拶、と言ってもいい。

 

 

 

 リュウはモーラの企みに対して応えるべく、行動を起こす。

 

「(――今から戻る。ファントム搭載のジムコマンドで時間を稼げばギリギリ間に合うはずだ)」

『そう。モーラって女の狙いはそれよ。つついてみて、慌てて対処するバカを見つけるつもりじゃない?』

「(餌役くらい喜んでやるさ。あわよくばモーラとコンタクトをとり、確認したいことがある)」

『こちらが宇宙を繰り返していることを、あちらが認識しているか探るつもり? やめたほうがいいわよ。あっちはイデに頼らず世界移動ができるバケモノ。こっちはワンチャンスを繰り返す非連続の意志。勝負にならないわ』

 

 だったらどうするんだよ、といら立ちをぶちまける。

 その衝動で有線ケーブルを引き抜きそうになる。先手を打たれた動揺を隠しきれなかったからだ。

 しかし、その腕は動かない。

 イングリッドにクラックされたようだ。

 

『自分のカラダすら思い通りに出来ないあなたがイキリまくったところで、出来ることは限られてるわ。冷静になって、考えてみなさいな。いまムラサメ研究所を失って何か問題があるの? 量子脳の開発セクターはあそこだけじゃない。アン・ムラサメ程度のパイロットだって、探せば手に入るし替えが効くわ』

 

 その冷静なコメントを受けて、逆に闘志が湧いてきた。

 さんざん悪党をやってきたのだから、ここであっさりイングリッドのいうことを聞く物分かりのいいオジサンになる必要なんざ何一つない、と。

 セキュリティのアルゴリズムを相手の介入方式に合わせてリジェクトする。

 彼女のクラッキングが解除され、体に自由が戻る。

 

「(イングリッド。一つ教えてやる。俺たちと違い、普通の人間の命は一つだ)」

『ええ。知ってるわ。時代遅れね』

「(だろうな。けど、そんな連中の中にも俺のお気に入りの連中がいるんだよ)」

 

 いろんな連中の顔が頭によぎる。

 そのツラの中に、あの未完成品のアン・ムラサメの顔や、非人道的なことばっかりしてるムラサメ研究所の『先生』連中や、純真無垢な怪物である『奉仕者』たちが浮かんだ。

 

『あなたって、えこひいきのクソ野郎ね。助けたい命だけ助ける、ヤバいやつよ』

「(的確なご指摘、ありがとうございます、だ。俺を殺すか?)」

『全然。なんか楽しそうだから、ムラサメ研にえっちなカラダ用意しといてね』

 

 適当に汚いおっさんのカラダでも用意してやろうなどと思いながら、リュウは、うなじの有線ケーブルを引き抜いた。

 

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