バ美肉系決闘者お嬢様筋肉おじさんの往く遊戯王VRAINS   作:mazy

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ありがとうございます!ありがとうございます!!

今回も決闘は無しで申し訳ない……



13話 現実③

「──御初に御目にかかります。SOLテクノロジー社の財前と申します」

「……美濃川です。お会いできて光栄です」

 

 折り目正しく御辞儀をしてから右手を差し出してくる、青髪に緑のメッシュが入る特徴的な前髪をした長身の青年に、こちらも握手で応える。

 

「いえ、光栄なのはこちらです。 ──MINOS(ミノス)社の美濃川照雄氏と言えば、この業界で目端の効く者ならば誰でも知っている、()()()なのですから」

 ここはDen-Cityに住まう者なら誰もが知るマンモス(属性反発作用は無い)企業・SOLテクノロジー本社ビル。

 そして営業スマイルも爽やかな彼の名は財前 晃(ざいぜん あきら)。 その特徴的なビジュアルからわかるように"原作"の登場人物であり、決闘の腕も確かで、要所要所の出番にも恵まれた結構なメインキャラである。

 遊戯王VRAINSの主要キャラである宿命とでも言おうか、彼の人生もまた、実に壮絶なものである。

 彼は片親の家庭で育った後、親が子連れ同士で再婚するも、その親二人は早々に不慮の事故で死去。かくして16歳にして血の繋がらない6歳の妹以外の家族を失ってしまう。この時点で人生ハードモードにも関わらず、親達の遺した遺産は本来頼るべき親類や部外者達に蚕食され全て奪われるという人生ナイトメアモード。しかし、それでも晃少年は類い稀なハッカーとしての才能を頼りに、時には非合法な手段に手を染めてまで、必死に妹を守って来た。

 そして血の滲むような努力の果てに、SOLテクノロジーという一流企業の正社員となり、こうしてセキュリティ部門の部長という確固とした地位を手に入れたのだ。

 ……いや、こうして文字にしてみるとスゲーな財前さん。転生で得た知識を利用してうまいことやってる自分が恥ずかしくなるよ。

 もし彼と同じ状況に放り込まれたら、仮に前世の知識があったとしても、自分ではとても彼のように生きることは出来ないだろうと確信出来る。

 初対面だが俺は既に君のことが好きだ(無限敬意編)。

 

「……はて、どのように噂されているやら。悪評でなければいいのですが」

「御謙遜を。Dentuberの支援事業からスタートして、決闘指南書の発行や、アスリートや決闘者を対象にしたトレーニング施設の開設。 更には近年はサポートAi事業にも投資を始めて、どれもはっきりとした結果を出していらっしゃる。社員こそ少数ですが、大きな影響力を持っていらっしゃるMINOS社の慧眼には、協賛している私どもSOLテクノロジーも舌を巻いているのですよ。──まるで未来を見通す眼をお持ちのようで」

「……光栄です。しかしそうも手放しに褒められては何やら恐ろしくもありますな」

「ははは。ご冗談を……」

 

 うーん……褒める(てい)でガッツリ探りを入れてきているなぁ。

 ていうか財前さん、若くしてこんな大企業の部長になるだけあって、身に纏う(オーラ)が凄い。まだ二十代だろうに、既に海千山千の老獪な底知れ無さすら感じる……人生経験の厚みでは到底太刀打ち出来ない自分では、精々鍛え上げた五感で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()な。

 

 さて、中身があるんだか無いんだかわからないお堅い社会人トークはさておいて、自分が何故SOLテクノロジー本社にお邪魔しているかを説明しよう。

 先日ハッカー集団ハノイの騎士の一人──通称モブハノイを捕まえてSOLに引き渡したアリア(自分)だが、SOLテクノロジーから聴取の仔細を聞いたところ、案の定彼──予想した通り未成年で、しかもまだ中学生二年生だったとか──は大した情報はもっていなかったらしい。

 どうやらハノイから供給されていた彼の使用デッキは敗北時点でデータが消去されるようになっていたらしく、そこから情報を得ることは不可。

 この世界、というかDen-Cityに住む決闘者は特にそうなのだが、カードを実体のある物として所有することは少ない。

 

 遊戯王シリーズが他のカードゲーム作品と一線を画している最たる物が、決闘盤(デュエル・ディスク)の存在だ。腕に着けた機械にカードをセットし、立ったまま決闘を行うことが出来るというこの画期的な発明は革命的なもので、歴代アニメにおいてはそこからの発展として《ライディングデュエル》や《アクションデュエル》などを生んだ。それは遊戯王VRAINSにおいても……と、いけないいけない。つい脱線してしまった。

 決闘盤の存在は遊戯王世界において大きなものだ。()()()()()と言ってもいい。つまり何が言いたいかと言うと、前世のようにあるいは他のカードゲームアニメのように、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 更にはこの町に住む人々の多くが、SOLテクノロジー製のデジタルの決闘盤を持っているため、決闘をするにはそれさえあれば事足りる。故に、少なくともこのDen-Cityにおいては、カードを実物として所有する人は少数派なのである。

 ちなみに自分はデッキをしっかりと物理カードとして所有している。姫様といつでも一緒にいたいのは当たり前だよなぁ!? 

 ……なお、SOLテクノロジーはクラウドサービスとしてカードデータを有料でユーザーに提供しているのだが、某有名Dentuber(誰やろなぁ…?)が使用しているという理由で()()()()()のカードシリーズはやたら値上げしている模様。他のカリスマ決闘者のカードもこの例に漏れず、最近も()()()()使()()()()()が値上がりしている。これが資本主義である。

 

 閑話休題。

 モブハノイの話に戻ろう。

 そもそも彼がハノイの騎士入りした経緯というのがひどい。

 数週間前、中二病と破滅主義を拗らせた彼は某匿名SNSでLINKVRAINSやSOLテクノロジーについて不満をぶちまけるという実に非ィ生産的な毎日を送っていたのだが、そんな彼に接触してきた人物が居たのだそうだ。

 ネットでそんなヤツに自分から関わり合いになろうとする時点でろくな人間では無いのが確定してるようなものだが、実際その人物は彼を言葉巧みに煽てあげると同時に、ハノイの騎士が崇高な使命を持った秘密組織であり、その主である《リボルバー》なる人物がどれ程素晴らしいか刷り込み、彼をすっかりイカれた文明回帰論者に仕立て上げたらしい。

 そのやりとりのログ自体は彼の端末に残されていたそうだが、決定的な情報は一切提示されておらず、その煽動者の素性については何も分からず仕舞い。

 ただ一つ──"()()()()()"というそのアカウント名しか分からなかったそうだ。

 

 ……うん。スペクターって、()()スペクターだよね……。いや、まぁ、アイツならそれくらいやりかねないな……リボルバーの強火な信者なのもイメージ通りだし、洗脳紛いの勧誘でハノイの騎士を増やすぐらいやるだろうな……。

 

 かくして、モブハノイの聴取は空振りに終わり、罪状も違法なプログラムやアバターを使用していた件ぐらいであり、未成年ということもあり、本人と親御さんにキツく言い含めた上でLINKVRAINSへのアクセス権の一定期間剥奪(返還予定は不明)で終わりとなったのだそうだ。

 これで一件落着となれば話は簡単だったのだが、SOLテクノロジー上層部の人間がそれに待ったをかけたらしい。

 

 その理由について財前さんは「判断能力の無い子供をテロリスト紛いの存在に仕立て上げる存在がLINKVRAINSに蔓延っているのは由々しき自体であり、セキュリティ部門総力を上げてその解決に当たるべきであるとして、今回の事件の証人である霊迷院アリア氏、あるいは()()()()()()()()()()()()()()に聴取を行うよう命令を受けた」という話だが、当然ながら実情は違うな。

 

 ロスト事件──正式名称・()()()プロジェクトと、LINKVRAINS崩壊を目論む()()()の騎士その名称の一致を、SOLテクノロジー上層部は見過ごせなかったのだろう。

 ついでに色々と謎の多いこちらに何かしらの探りも入れられたら一石二鳥と言った感じかな?

 

 

「なるほど……やはり華やかに見えるDentuberの世界も一筋縄ではいかないものなのですね。勉強になります」

 既に社交辞令の応酬は終わり、時折飛んでくる鋭い質問を鍛え上げた筋肉で表情や声色を操作してどうにか受け流し、先日のアリアとモブハノイの決闘についても、持ち込んだ録画データを元に聴取を終えた。(尤も、収穫はモブハノイの使用カードと戦法がわかったという程度だが、それでもセキュリティ部門として価値のある情報だと財前さんは言ってくれた。少しは彼の役に立てただろうか……といかんいかん絆されてる)

 

 そんなわけで、一段落ついてから話題はいつの間にやらDentuberについての話に移っていた。

 彼自身決闘者であり、LINKVRAINSを運営するSOLテクノロジーの社員なこともあるのか、それとも()()()()でなのか、彼はLINKVRAINSで活躍するカリスマ決闘者についてもなかなかに造詣が深い。

 自分がアリアの()()()として活動していることを知る人が少ないこともあり、あまりこの手の話題を他人と話すことがないせいか、ついつい自分も話に熱が入る。

 それでもそれとなくアリアの素性について探るような質問をしてくる時は、彼の声色の少し緊張の色が乗るのでその度に気を張るようにはしていたが、やはり"原作"で好感を持っていた人物とこうして共通の話題を語れるというのは、転生者ならではの楽しみがあり、ついついこれからのDentuber支援事業の展望などを話してしまうのだった。

 

「あー……ところで、美濃川氏としては最近注目の新人Dentuberなどいらっしゃるのでしょうか?」

 と、不意にそんなことを訊ねて来る財前さん。その表情は営業スマイルのままであるが、一瞬その頬がこわばりかけたのが見て取れた。

 緊張、だろうか。

 やはりこういう所は()が心配な()()()なのだな、と思った。

 

「ム……そうですね。最近活躍目覚ましいのはやはり──《ブルーエンジェル》でしょうか」

「そっ……!……そうですか、ブルーエンジェル。なるほど、なるほど」

 

 すぐに表情を取り繕ったが、一瞬目に喜色が浮かんだのはお見通しである。なんだよかわいいなこの人。(百済木さん並みの感想)

 

 ブルーエンジェル。

 その名の通り青い天使を思わせる美少女アバターを身に纏う決闘者であり、今年にデビューしたばかりだと言うのに、早くも数多くの決闘者を下してファンを獲得して来た、今最も勢いがある決闘者の一人である。使用デッキは悪戯(拷問)好きな天使達【トリックスター】。これが先述した()()()()()()()()()()()である。

 なんと言ってもその売りは可愛らしく明るい笑顔と、それとは裏腹に相手に執拗にダメージを与えるバーン戦術で相手を完膚なきまでに()()()()る決闘スタイルのギャップで、シンプルにかわいくて強いという点で老若男女問わずの人気が出ただけでなく、『ブルーエンジェルにチクチクバーンされたいナリ…』『いや、あの天使を俺がわからせる…!』と言った一部のマニアックな男性(あるいは女性も……)からの人気もあり、今や新たなカリスマ決闘者誕生の呼び声も高い。

 残念ながらアリア(自分)はまだ彼女と決闘したことはないが、彼女の決闘自体は何度か見たことがある。相手すらも観客に見立て、全身全霊で自分とモンスター達を()()()その決闘スタイルは、実に見応えがあった。

 ()()では『こんな陰湿な決闘スタイルで人気出るものか?』と思っていたが、やはり何事も見せ方でいくらでも変わるものである。あと、ソリッドヴィジョンってやっぱ偉大だね……モンスターが入れ替わり立ち代わり動き回るだけで満足感が出るもの。

 ──そう、こんな派手なキャラが単なるモブというわけもなく、彼女もまた、()()()()()である。

 

 そしてその《中の人》こそ、()()葵ちゃん。

 言うまでもなく目の前の財前晃氏の妹君であり、遊戯王VRAINSのヒロイン……ヒロインで……ヒロインかなぁ?いや、ヒロインだと思いますよ自分は。そう、ヒロインである!(自己暗示)

 リアルの彼女はLINKVRAINSの明るく元気なブルーエンジェルとはうってかわって、どちらかというとクール、悪く言うなら暗めの性格をしている。

 それは複雑な家庭環境や、SOLテクノロジーに勤める兄目当ての人間に嫌気が差しているからなど種々な理由あってのものであるが、とにかくそのせいで()()では主人公藤木遊作との積極的な絡みも薄く、かといって性格が真逆なブルーエンジェルとしては、主人公Playmakerとの接触は基本的に決闘ありきなのであまり……いや、全然ラブでコメな気配は無かった。

 それは遊戯王VRAINS最終回でも変わらず、正直ヒロイン(仮)を通り越してヒロイン(笑)とすら言われていたものだった。

 ていうか主人公がコミュ障クールキャラでヒロインが主人公にリアルで積極的に絡もうとしないってもう設定段階で色々間違えているような……正直本編の遊作にとって葵ちゃんは《財前晃の妹》というポジションでしか無かったっていうか……。

 

 閑話休題(やめやめ)!!

 

 とにかく、そんな本編キャラがどんどん周りに現れ始めているのが今の自分の現状である。

 恐らく()()がスタートするのは来年の5月で確定と見て良いだろう。

 財前さんと今関係を持てたのはかなり大きい。

 これからも良好な関係を築けるように頑張るとしよう。

 

 

と、そんなことを思いながら帰路に着いたのが3日前。

 

「さあ、霊迷院アリア! このブルーエンジェルが貴方の不敗神話を終わらせて、あ・げ・る♡」

 

なんでこうなったかなぁ……?

 




次回、バ美肉系お嬢様筋肉おじさんVSうわキツ系さいかわ天使ちゃん
デュエルスタンバイ!

本編スタート前に主人公以外の視点からの番外編を入れようと思うのでアンケートにお答えいただくと嬉しいです

  • 血に染まらぬ猟犬
  • 悩み多き番犬
  • 風を追う少年
  • 未だ英雄ではない二人
  • 悪魔に闘志を燃やす天使
  • 燃える闘魂と筋肉
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